あるもの探しの旅

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2015/02/28

日本海寒鱈まつり2015@鶴岡〈後編〉

《前編「1年ぶりの湯田川温泉」より続き》

あの人もこの人も、あれもこれも、お久しぶりね~
5年ぶりの寒鱈まつり

 前編で述べた通り、「日本海寒鱈まつり」前夜の1月17日(土)は、鶴岡の奥座敷こと湯田川温泉に宿泊しました。そのため特設会場となる鶴岡銀座商店街には、10時30分の開始後間もない11時前に余裕をもって無事到着。

festa-kandara2015.jpg【Photo】作曲家の中田喜直が「雪の降るまちを」の着想を得たとされる鶴岡。目抜き通りの銀座通り商店街に雪が舞う。寒鱈まつりにふさわしく、底冷えする(あいにくの?)吹雪交じりの空模様のもとで開催された第27回鶴岡日本海寒鱈まつり会場

 酒田中町通りでは28年前、鶴岡銀座通りでは27年前から冬の観光行事として開催されている寒鱈まつり。鶴岡市由良や、現在は鶴岡市に編入された旧温海町道の駅「しゃりん」、遊佐町「鱈ふくまつり」など、寒の季節に庄内各地で開催されるこの催しには、毎年多くの人が訪れます。
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【Photo】庄内浜に揚がる海産物の旬と美味しさ、調理法、さばき方など、庄内ならではの魚食文化に関する啓発を行う「庄内浜文化伝道師」でもある「魚神」上林榮孝社長が、寒鱈汁を味噌で味付け。第27回鶴岡日本海寒鱈まつり会場にて

 庄内浜では、産卵を控えた寒の時季に水揚げされる真ダラを寒ダラと呼び、とりわけ珍重します。白子が入った10kgクラスのオスで、魚体へのダメージが少ない延縄漁による釣り物ならば、軽く1万越えは確実。漁獲量が多い底引き網漁物ですら、1万円近くの高値を呼びます。

 そんな寒ダラが千両役者ぶりを発揮する庄内地方の郷土料理が「どんがら汁寒鱈汁)」です。

 身(胴)とガラ(アラ)を全て使い切るどんがら汁には、豆腐やダイコンなどの脇役を入れる派・入れない派、味付けが味噌だけ派・酒粕を加える派など、家ごと異なる流儀と味があります。同様に寒鱈まつりでも店ごと味付けが異なるため、会場内で食べ歩きできるのが最大の魅力。

 今回、庄イタが寒鱈まつりを訪れたのは5年ぶり。魚市場青年部、鮨商組合、麺類食堂組合などの常連に交じって新規参入組も加わり、今年は全14団体が参加。燃料費の高騰や消費増税を受け、鱈汁は1杯600円となりましたが、催しを主催した鶴岡銀座商店街振興組合・日本海寒鱈まつり実行委員会によれば、およそ2万人が訪れたといいます。

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【Photo】 一昨年、鮮魚店の2/3ほどを和食処として改装する以前の「魚神」本店では、土日休日限定でアラ汁を無料で提供していた(上右写真。現在は休止)。ガラから滲み出した旨味たっぷりの醤油仕立てのアラ汁の旨かったのなんの...( º﹃º` )。
 遠~いその味の記憶を頼りに、行列に並んだ魚神が鶴岡郵便局と共同出店したテント裏には、地物の証である由良漁港に水揚げした船名とオス・メスの違い、魚体の重量を記した保冷箱が山積み(上左写真)

tsuruoka-kandara-matsuri2014.jpg【Photo】鍋から立ち上る湯気とともに、鱈汁の香りが鶴岡銀座通りを包み込む(画像提供:鶴岡市食文化推進室)

 27回目の開催を迎え、庄イタのようなリピーターが少なからず存在するこの催し。行列で隣り合わせたのは、毎年のように訪れているという仙台の女性グループ。世界一のクラゲ展示で人気の加茂水族館と寒鱈まつりをカップリングし、今年も昨年同様にバス4台を仕立てた河北新報トラベルのツアー参加者でした。

 この日も貸切桧風呂で朝湯を満喫した湯田川温泉ますや旅館では、食べる量をセーブし、早めに朝食を済ませていました。それでも会場に到着した11時時点での空腹感は、ほぼ皆無(笑)。

 そこで腹ごなしを兼ねて、まずは南北に450mほどの寒鱈まつり会場をぐるりと一巡。これは目当ての団体の出店ブースの行列の出来具合をチェックするためでもあります。

 リピーターが多いということは、出店者それぞれに異なる味付けとの再会を心待ちにしているファンがいるということ。長い行列は人気度のバロメーターと見ることもできるでしょう。

 時折激しく雪が舞う鶴岡銀座商店街通りには、テント張りの店がズラ~リ。鱈汁のおいしそうな香りが鼻腔をくすぐると、それまでの満腹感がたちまちにして雲散霧消。食欲スイッチオン!!

uoshin-dongara2-2015.jpg【Photo】鍋から立ち上る湯気に乗って漂ってくるどんがら汁の香りが激しく食欲をそそる(上写真)。底冷えする鶴岡銀座通りにできた行列に並ぶ人々の熱い目線は鍋にくぎ付け(下写真)。

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 寒鱈汁の基本は味噌ベース。酒粕がきいたパンチのある味付けが例年なされる鶴岡銀座商店街婦人会は2杯目に回す戦法で臨んだ今年。寒鱈汁のゆうパックを冬季限定で取り扱う鶴岡郵便局が、鮮魚店兼和食処「魚神(うおしん)」と共同で出店するテントをまずは目指しました。

 魚神は、山形道・鶴岡IC近くに2店舗を構える鮮魚店で、由良漁港直送の海産物を中心に扱っています。庄内観光物産館内の店にほど近い淀川町にある本店は、和食処メインの店舗として一昨年リニューアル。

festa4-kandara2015.jpg【Photo】魚神の神林社長が自ら味付けした寒鱈汁。ご覧の通り、たっぷりのガラから滲み出たコクと旨味に天然岩ノリの磯の香りが加わり、期待通りのそれはそれは結構な一杯

 改装前の魚神本店で、週末限定で振る舞われていたのが、ガラがたっぷりと入った醤油仕立てのアラ汁。それは魚を扱うプロとしての心意気を示して余りある忘れ難い逸品でした(現在は提供休止)。無料サービスでも決して手を抜かないアラ汁の記憶が、庄イタをして、その行列へと導いたのです。

festa5-kandara2015.jpg【Photo】お久しぶりね~♪ 鶴岡銀座商店街婦人会のお母さんたちお手製のどんがら汁は、5年ぶりの滋味深い母なる味

 果たせるかな、それは産卵を控えて養分を蓄えたアブラワタなどのガラから滲み出たコクが、味噌の風味と絡んで、まさに王道を行くどんがら汁。1杯目の余勢を駆って向かったのは、毎回必ず完食している鶴岡銀座商店街婦人会のブースです。

festa6-kandara2015.jpg【Photo】鶴岡銀座商店街婦人会の寒鱈汁。酒粕のきき具合は例年通り。盛りを含めて今回は少しお上品な仕上がりだったかも

 2杯目の鶴岡銀座商店街婦人会は、観光客向けに万人受けするよう、今年はソフィストケイトされた印象。気持ち的には、もう一杯食したいところでしたが、真ダラのようなお腹周りになりかねません。ますや旅館で食した前夜分を含め、タイプの異なる寒鱈汁3杯を食し、ドンもガラも 身も心も満たされて会場を後にしました。

 冬来たりなば春遠からじ。国内有数の渡り鳥の越冬地である宮城県北の伊豆沼周辺では、例年より1週間早くオオハクチョウやマガンの北帰行が始まりました。最上川河口周辺でも、間もなくハクチョウたちがシベリアに向けて旅立つことでしょう。

 明日から弥生3月。西回り航路の表玄関だった江戸期の繁栄ぶりを窺わせる壮麗な時代雛が、庄内で独自の発展を遂げた雛菓子とともに出迎えてくれる「日本海ひな街道」が、先行した酒田に続き、鶴岡ほか各地で始まります。


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2015/02/21

日本海寒鱈まつり2015@鶴岡〈前編〉

 年間を通して最も気温が低い季節の出口が遠くに見えてきた感がある今日この頃。寒の時季に庄イタが条件反射的に恋しくなるのが、薪火の香り漂うナポリピッツァと庄内の郷土料理「どんがら汁」。(⇒ 一体どんな組み合わせだよッ\(`-´) )

 鉛色の雲が低く垂れこめ、怒涛渦巻く厳しい表情を見せる冬の日本海。そんな季節、鶴岡・庄内観光物産館や酒田・海鮮市場といった物産施設や市中の鮮魚店の主役は、産卵期を迎えた真鱈(マダラ)。庄内浜では、小寒から節分までの寒入り時季が漁の最盛期となるマダラ。鮮度が高い釣り物には1万円前後の高値が付くことも。

Dongara-Zuppa-Kandara.jpg【Photo】寒の時期に揚がる真ダラの脂が乗った白身(胴・ドン)は勿論のこと、タヅ・タダミ(白子)、骨、目玉、エラといった内臓(ガラ)まで余すところなく使う豪快な庄内浜の郷土料理「どんがら汁(=寒鱈汁。略して鱈汁とも)」。〝たらふく〟の語源とされる旺盛な食欲でイカやカニなどを捕食し、ふんだんに栄養を蓄えたアブラワタ(肝臓)は、深い味わいを醸し出す文字通りのキモとなる(画像提供:鶴岡市食文化推進室)

 その地の多彩で奥深い魅力を知り、その奥義に精通した庄内系たらんと欲し、それを自任し、かくあるべしと自らに課し、ゆえに言葉に責任を持つ以上、日々の鍛練を怠っては、庄内系の名折れというもの。

kandara_Biglietto2015.jpg 東日本大震災の発生を受けて、被災地では復興・減災に関するさまざまな事案が同時並行的に展開しています。そのため、かつてのような頻度で彼の地を訪れることが出来ず、丹精込めた生命の糧をお世話になっている庄内の皆さんに不義理を重ねていることに忸怩たる思いでおりました。

 このままではイカン!!と一念発起したのが昨年末。年末のレポートでご報告した聖地・庄内訪問の折、自らを追い込む意味で、2010年1月に開催された「第22回日本海寒鱈まつり」以来、久しく参加していないこの催しの前売り券(右写真)を購入したのです。

 今年で27回目を迎えた鶴岡日本海寒鱈まつり開催にあわせ、5年ぶりとなるこの催しに参加した庄イタ。前編ではまつり前夜に投宿した湯田川での顛末を一席。

あの人もこの人も、あれもこれも、お久しぶりね~
1年ぶりの湯田川温泉。

 明治維新以降、多極分散型ではなく東京一極集中の国づくりを進めてきた日本。急速に進んだ経済のグローバル化は、産業の空洞化と地方の疲弊という負の側面をもたらしました。

 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、文化の多様性保持と、関連産業が発展することで地域が活力を生み出すべく、自治体間連携を促進させる「創造都市ネットワークThe Creative Cities Network)」を2004年(平成16)に創設しました。

tri-jizou.jpg【Photo】湯田川温泉へと向かうR345湯田川街道沿いにある通称「飴舐め地蔵」。庄内地方では、路傍の地蔵にお手製の下げ飾りを奉納する習慣がある。口に飴を擦り込んで願掛けをすると願いが叶うという三体のお地蔵様。折からの地吹雪のため、口の周りではなく顔の半分が粉糖のような雪で覆われ、寒さに凍えていた

 エントリーは、文学、映画、音楽、工芸、デザイン、メディア・アート、食文化の7カテゴリーで強みを有する自治体による申告制。カテゴリーごとの専門家委員会による審査を通過すれば、「Creative City(創造都市)」として認定されます。

shomen-terme.jpg【Photo】優しい肌触りの豊富なお湯は源泉かけ流し。湯田川温泉「正面湯」

 昨年12月、かねてより産官学を挙げてGastronomy(ガストロノミー=食文化)分野での創造都市登録を目指してきた鶴岡市が、フロリアノーポリス(ブラジル)、順徳(中国)とともに日本国内では初となる認証を受けました。これで世界8都市が、ガストロノミー分野での認定都市となりました。

 2015年2月現在、7分野で全69都市が登録されている創造都市には、日本では以下の6都市が指定を受けています。名古屋・神戸(デザイン)、金沢(工芸)、札幌(メディア・アート)、浜松(音楽)、そして鶴岡(食文化)。

 新たに登録を目指す動きも顕在化しています。新潟市はコメを中心としたガストロノミー分野で登録を目指す一方、アジア初の国際ドキュメンタリー映画祭を'89年から開催してきた山形市は、映画部門で今年申請の予定です。

 一方で、ユネスコ世界遺産委員会が認証し、世界161カ国、1,007件が登録される「世界遺産(World Heritage)」は、富岡製糸工場や石見銀山などの例を見ても、知名度向上による波及効果が広く認識されています。かたや創造都市ネットワークは、そうした広がりを現状ではまだ持ち合わせていません。

cena-masuya-20150117.jpg【Photo】日本海寒鱈まつり前夜、湯田川温泉ますや旅館の夕食から。羽黒宿坊の精進料理「胡麻豆腐の餡かけ」、「ひろっこ(アサツキ)とエゴ(海藻の一種)の酢味噌和え」、「カラゲ(エイの干物からかい)の煮物」、「鮭の粕漬け焼物」、「田川カブ甘酢漬」、荒波が打ちつける岩場で浜の女性たちが手摘みする天然岩ノリをトッピングする味噌味の「どんがら汁」(下写真)ほか、冬ならではの庄内の味が並んだ

masuya-zuppa-dongara.jpg それでも人口流出と高齢化が進む地方都市にとって、交流人口の増加や新たな雇用確保などのプラス効果が期待されるこの取り組み。食文化創造都市への認定を受け、真価が問われる今後の展開に注目したいところです。

 東北各地を訪れてきた庄イタが、改めて申し上げたいのが、〝食〟を軸に俯瞰した山形県庄内地方は、極めて魅力溢れる地域であるということ。その概略は、拙稿「鶴岡のれん」〈2013.11〉でも歳時記的に述べたので、ここでは繰り返しません。

masuya-fujisawakabu-tempura.jpg【Photo】サクっと揚がった天麩羅の衣の中は、濃厚な生クリームのごとき白子。紅白の色合いや姿格好、すがすがしい余韻を残す辛味からして、すぐにそれと分かった藤沢カブ(上写真中央) 藤沢カブと庄内浜産天然寒ブリを大根おろしでみぞれ煮に。素材の素晴らしさもあり、氷見の寒ブリを使ったブリ大根に勝るとも劣らぬ旨さ。恐れ入りました(下写真)

fujisawakabu-mizore.jpg 鶴岡市域では、現在確認されているだけで50品目の在来作物が存在します(拙稿「どこかの畑の片すみで」〈2007.12〉参照)。北前船交易や山岳信仰を通して域外との歴史的な交流があり、そうした中で固有の文化が育まれ、表情豊かな四季折々の食材を取り入れた特徴ある伝統食が受け継がれてきました。そんな数ある中のひとつが、どんがら汁です。

 激しい吹雪に見舞われた月山道路や強風による地吹雪でR112の視界が遮られる中、1年ぶり以上となる湯田川温泉の定宿「ますや旅館」に着く頃には、風格と趣ある瓦屋根の共同浴場「正面湯」には明かりが灯っていました。

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【Photo】山の畑が深い根雪に覆われるこの季節。とりわけ貴重な藤沢カブを雪室から掘り出し、庄イタに分けて下さった後藤清子さん(左)と後藤勝利さん(右)ありがとうございます~(T_T)

 夕餉の食卓には、ひそかに期待していた女将特製のどんがら汁が。無論それは美味でしたが、望外の喜びだったのが、天然物ならではの上品な脂が乗った庄内浜産寒ブリと藤沢カブのみぞれ煮を食することができたこと。

 天ぷらでも供された藤沢カブは、宿泊前日に女将の中鉢泰子さんが、生産者の後藤勝利さんに「少しでいいから分けてもらえないか」と相談して届けてもらったと伺い、女将の心遣いに感激しきり。

fujisawa-kabu2015.1.jpg【Photo】11月に山の畑から掘り出し、泥つきのまま、雪室に保存しておいた藤沢カブ

 在来作物の研究に携わっている山形大学農学部の江頭宏昌准教授によれば、穀物が不作となりそうな天候不順の年でも、お盆時期に播種すれば秋に収穫可能なカブは、飢えをしのぐ越冬食としての意味合いがあったといいます。東北の中山間地に在来系のカブが多く存在するのは、先人の知恵でもあるのです。

 寒鱈まつり会場に向かう前に、後藤さんに一言お礼を申し上げたく、久方ぶりにご自宅に伺いました。すると後藤さんは、収穫したまま雪室に保存していた藤沢カブと、奥様の清子さんお手製の甘酢漬けをお土産に分けて下さいました。

 湿度100%の雪中で保存した藤沢カブは、みずみずしさを保ったまま細胞が凍らないよう化学変化を起こします。すると辛味に甘さが加わるのです。今は深い雪に覆われた山中の畑に採種のため残しているカブを掘り起こしに行かない限り、みずみずしい藤沢カブを手にすることはできません。

 頂戴した藤沢カブは、仙台に戻ってから浅漬けにしたほか、パクリ専門の闇リストランテ「Taverna Carlo(タベルナ・カルロ)」で、みぞれ煮ますや風にして食し、感激の余韻に浸ることができました。後藤さん、本当にありがとうございました。

 こうして久しくご無沙汰していた人たちとの再会を果たし、アツアツの寒鱈汁を頂く前から、ほっこりとココロ癒された湯田川を後にして、寒鱈まつりが開催される鶴岡銀座商店街を目指したのでした。to be continued.

日本海寒鱈まつり2015@鶴岡〈後編〉

「5年ぶりの寒鱈まつり」に続く。


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2015/02/08

今年の女鶴餅は自家製もあっさげ

お年取り前夜@村上・鶴岡・酒田・遊佐 「2014 呑み納めレポート」より続き

食べ納め@酒田L'Oasis ロアジス
「女鶴」と血統を受け継ぐ新品種「酒田まめほの香」


 1年を締めくくる恒例の食べ納めは、今回もあらかじめ予約していた酒田・清水屋マリーン5「L'Oasisロアジス」へ。(昨年のくだりは拙稿「新春縁起藤沢カブ」〈2014.1〉参照)

gran-chef-Ota2013.1.jpg【Photo】年回りが幾つも離れた後輩の指導にあたる傍ら、厨房の第一線で活躍する太田政宏グランシェフ(写真中央。月刊誌Piatto2013年3月号特集「日本海ひな街道」取材時に撮影)

 今でこそ定着した〝地産地消〟という言葉はおろか、概念すら存在しなかった1970年代初頭。豊かな山海の美味に恵まれた庄内地方ならではの〝フランス風郷土料理〟と称される誰もなしえなかった新境地を、故・佐藤久一氏との共同作業で開拓したグランシェフ、太田政宏さんが、厨房の指揮を執ります(拙稿「佐藤久一さんのこと」〈2008.3〉参照)

l'oasis2014-1.jpg【Photo】アミューズ。由良寒ダラのカクテル仕立て。マッシュポテトと生クリームを和えた優しい味付けとフワフワの食感が夢見心地へと誘い、新たな美味との出合いへの期待を高める。庄内豚のパテとピクルス、鴨のスモーク

 第一線から一度は身を引くも、ロアジス開業と同時に現場復帰。生涯現役を宣言し、後進の指導に当たりながら満70歳を超えて活躍する太田さんは、まさに料理人の鏡。輝かしい実績もさることながら、庄イタが心底から尊敬する方なのであります。

l'oasis2014-2.jpg【Photo】オードブル。庄内浜産ホウボウの洋風天ぷら フレッシュなトマトソースとエシャロット風味。ほのかな衣の塩味が絶妙

 1年ぶりに訪れた店内は、上方の影響を受けた酒田言葉で語らう人々で賑わっていました。年の瀬を迎えて店内は満席。その様子は、日本随一のフランス料理と賞賛された「ル・ポットフー」伝説の揺籃期を見るよう。

l'oasis2014-3.jpg【Photo】3種類から選べるスープ。旬を迎えたガサエビのマリニエール。庄イタが高校時代に酒田東急インに移転後のル・ポットフーで食した記憶が今も鮮明な一皿

 なぜならそこは、伝説の原点となるも、1976年(昭和51)に発生した酒田大火で焼失した清水屋デパートが建っていた場所。しかもJR酒田駅前に建設された東急イン(現・ホテルイン酒田駅前)に移る以前にル・ポットフーがあったのと同じ5階フロア。料理を待つ間、ふと40数年前にタイムスリップしたかのような感覚に捉われました。

l'oasis2014-4.jpg【Photo】メイン。庄内浜産黒メバルと温製小松菜、ホタテ貝柱と天使のエビのポワレ

 新奇さをてらわず、王道をゆくオーセンティックなフレンチなればこそ、違いが際立つ太田さんの円熟した味に魅了されたことは申し添えるまでもありません。

l'oasis2014-5.jpg【Photo】デセール。紅玉のキッシュ、ショコラとイチゴのアイスクリーム

 「お越しになる時は、いつも混んでいてあまりお構いできずに申し訳ありません」と仰るフロア係三川美和子さんや、忙しく立ち振る舞う厨房から、わざわざ見送りにいらして頂いたグランシェフに恐縮しつつ、お礼を申し上げて失礼しました。

 残すは新年を迎えるにあたっての最重要ミッション。酒田女鶴本女鶴を入手することです。

sakatameduru-yakihaze.jpg【Photo】仙台雑煮の庄イタ家における必須アイテム2点。餅は渡部正宏さんが天日乾燥した酒田女鶴の丸餅。津波で甚大な被害を受けた北上川河口に位置する石巻・長面湾の焼きハゼ。干しズイキと羅臼昆布との合わせ出汁で上品なコクと深みを出す

 古来より、歳神様をお迎えする神と人との交歓の儀式でもあった正月には、鏡餅をお供えし、白米が貴重品だった藩制時代にあっても、統制外だった糯米から作るお餅が庶民の食卓に上る最高の贅沢でした。

 伊達政宗の命を受けた川村孫兵衛による北上川の大規模改修により、新田開発が進み、港湾整備がなされた石巻から海路で運ばれた伊達藩領のコメは、江戸の米相場を左右する大きな影響力を持っていました。

 幕末まで幾度となく見舞われた飢饉への備えから、伊達藩は米作に重きをおきました。現在の宮城県北や岩手県一ノ関市周辺にかけての穀倉地帯では、庶民による餅食文化が花開きました。

 これは反面、コメ以外の特産品開発に無頓着だったがため、伊達藩では味噌のような一部例外を除いて商品経済が発達しなかったという作家・司馬遼太郎の「街道をゆく」における分析は、正鵠を得ていると庄イタは考えます。

Carnaroli-riso.jpg【Photo】頭を垂れた稲穂が風に揺れる季節。どこのコメどころかと思いきや、看板にはリゾットに最適なコメ「CARNAROLI(カルナローリ)」の表示が???

 曾祖父の代まで遡ると、地元で世界農業遺産指定に向けた機運が高まる沃土「大崎耕土」の心臓部にあたる涌谷(わくや)町で広大な水田を有する地主だったという庄イタのルーツ。孫兵衛による改修前は、暴れ川だった迫川・江合川・旧北上川に挟まれた涌谷町や美里町にかけて現在広がる美田は、天賦のものではなく、先人の努力の結晶にほかなりません。

primavera-riso.jpg【Photo】雪解け水を張った水田は、稲の植え付け前の季節にだけ出現する水鏡と化し、残雪を頂く山並みを映し出す。どこぞや東北で春先に出現する田園風景と思いきや、ここはイタリア屈指の米どころピエモンテ州ヴェルチェッリ県

 イタリアの代表的な水田地帯であるピエモンテ州ノヴァーラNovaraとヴェルチェッリVercelli周辺からミラノ西方のロンバルディア州の田園風景に、妙に懐かしさを覚えるのは、そんな出自や前世から受け継ぐDNAが影響しているのでしょう。

mezuru.jpg mamehonoka.jpg【Photo】女鶴(左写真手前)と酒田女鶴の血統を引く新品種「酒田まめほの香」(右写真手前)

 かつて出合ったことのない素晴らしい食味に驚愕した糯米「酒田女鶴」を知ったのが2009年(平成21)。作り手である酒田市吉田の渡部正弘さん・由美子さんとの幸運な出会いがあったのが2年後の産直山居館でのこと。その収穫作業の真っ最中に伺ったのが翌2012年10月。

 講談社勤務の編集者から、のちに酒田市助役に転じた伊藤珍太郎の名著「庄内の味」に記述があり、存在だけは知っていたのが酒田女鶴の原種「女鶴」。

nunome2014.12.jpg【Photo】血筋を絶やすことなく女鶴を植えつけてきた堀芳郎さんの圃場。純白の根雪に覆われた田んぼを吹き抜けてゆく北風が肌を刺す

 効率化の波にのまれて消えていった幻の品種が、その持てる美点を最も発揮するとされた飽海郡北平田村(現酒田市)円能寺に隣接する布目(ぬのめ)で今日まで命脈を繋ぐことができた恩人・堀芳郎さんとのご縁をたぐり寄せるように出会ったくだりは拙稿「酒田女鶴と本女鶴〈2012.10〉」を参照願います。

meduru.jpg【Photo】蒸しあげたばかりの女鶴。「女鶴の餅の肌も雪のように白かったならばさらにたいへんなものであろうとおもうが、見た目において多少のひけ目はあってもこの餅、舌にのせてからはあまりに優秀である」(伊藤珍太郎著「改訂・庄内の味」〈1981「本の会」刊〉より)

 もはや代えがきかない女鶴の素晴らしい食感を、R18な表現で例えるならば、雪国育ちの日本女性のしっとりとキメ細やかで滑らかな玉の肌。女鶴を搗(つ)きあげた餅の吸い着くような粘りとコシ・伸びは尋常ならざるものがあります。

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【Photo】女鶴は自宅で蒸し上げ、餅やパン生地を自家製できる自動生地捏ね機で楽チン餅つき(上写真)。産直あさひグーで購入したヤマグルミを使い、胡桃餅として正月の食卓を飾った(下写真)

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 久々に伺った渡部さんのもとには、2007年(平成19)から庄内バイオ研修センターで開発に取り組み、渡部さんの実験圃場で収穫したという糯米「酒田まめほの香(酒田糯14号)」の餅がありました。

 2004年(平成16)に新潟で品種登録された赤糯米「紅香」に酒田女鶴を交配し、それぞれの特徴である枝豆の香りと女鶴の血をひく優れた食味を兼ね備えた新品種なのだといいます。

mamehonoka-mochi.jpg【Photo】2015年度からの本格市場参入を目指し、種苗法に基づく品種登録申請を昨年行った「酒田まめほの香」(左写真)

 納屋には精米した糯米があり、その香りはまさに枝豆。旬は重ならないので冷凍物かフリーズドライのだだちゃ豆で炊き込みご飯にしたり、茶豆を挽いた「づんだ」と和えてづんだ餅にすれば香りが増幅しそうです。旬が重なるホッコクアカエビ(甘エビ)や数の子との食べ合わせは鉄板でしょう。

mamehonoka-zoni.jpg【Photo】渡部さんから頂いた酒田まめほの香の丸餅を仙台雑煮で試食。酒田女鶴から受け継いだ粘りと滑らかな舌触り。枝豆の残り香がほのかに漂う。最大の特徴である枝豆の香りは、焼いたままで食すると、さらに強く感じる(右写真)

 物々交換の良き伝統が残る庄内の生産者の例に倣って、酒田女鶴と豆ほの香餅の代金を受け取ろうとしない渡部さん。このままでは申し訳ないので、産直で別途購入することにしました。

 ご自身が育てた酒田まめほの香を手渡すよう、渡部さんから頼まれてお邪魔したのが堀芳郎さん宅。女鶴の餅つきをするのは例年30日だと伺っていました。過去2年は菓子折の箱に入った丸餅を物々交換で頂いていましたが、今回は最大のミッション達成のため、精米のまま女鶴を購入させて頂くことに。

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 里雪で畑が覆われる前の昨年11月上旬、酒田市飛鳥の後藤博さんから根付きのままで譲って頂き、今も庄イタ宅の庭に植えてあるのが「平田赤ネギ」(拙稿〈2007.9〉参照)。前日、鶴岡市みどり町「クックミートマルヤマ」で山伏ポーク(拙稿〈2014.7〉参照)のバラ肉しゃぶ用スライス(右下写真)を確保していました。

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 十三浜のワカメ(拙稿〈2012.4〉参照)を含め、これまで皆さまに幾度となくお勧めしてきた〝天下無敵の豚しゃぶ〟の具材となる冬場が最も美味しくなる小松菜を入手するために寄ったのが、鶴岡市渡前の井上農場です。周囲を雪に囲まれながらも幾分温かさを感じるビニールハウス内では、馨さん・悦さん夫妻が小松菜の収穫を行っておいででした。

inoue-nojyo2014.12.jpg【Photo】井上農場ではご自宅に隣接した納屋で小松菜の袋詰め作業中だったご長男貴利さんから庄イタ家定番のコメ「はえぬき」5kgと小松菜5把を購入。近くのビニールハウスでは、奥様が小松菜の収穫中。「悦さーん」と背後からお名前を呼ぶと、驚いたように振り向いた悦さん。庄イタの姿を認めると、いつもの飛びきりの笑顔で迎えてくれた

 独特な石油系の香り漂う特徴的な泉質が気に入って、10年以上通い続けているのが長沼温泉の日帰り入浴施設「ぽっぽの湯」。ご近所住まいでもないのに欠かさず所有している入浴回数券で心身ともにリフレッシュ。

Gassan2014.12.28.jpg【Photo】井上農場のビニールハウスを裏手に回ると、神々しい輝きを放つ月山が雪原の先に一望のもと

 純白の衣を纏った月山に見送られながら帰宅した後、取りかかったのが餅作りです。自宅には堀さん宅のように杵と臼はありませんが、生地こね機「レディースニーダーKN-30」にお出まし願いました。搗(つ)きたての女鶴は胡桃餅で、雑煮で食したのが酒田女鶴と酒田まめほの香。堀さんや渡部さんのような整った仕上がりには程遠くとも、得がたい美味しさに変わりはありません。ご縁に感謝。

自家製もあっさげ」という今回のタイトルの意味が最後まで謎だった方への脚注 ☞ 「・・・さげ」は、上方では「・・・さかい」という表現の影響を受けた庄内地方の言い方。「あっさげ」とは「あるから」「あるので」の意味。角餅文化の東日本では珍しく西日本の丸餅を食する庄内ならでは言い回し

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2015/02/01

お年取り前夜@村上・鶴岡・酒田・遊佐

【はじめに】
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 はや睦月を過ぎ、今日から如月。今さら師走の話題を持ち出すのは、若干気が引けますが...。

「2014 呑み納め」レポート

 年の瀬が押し迫った12月末に庄内を訪れる(⇒「帰省する」と言った方が正確か?)ことが、2003年春に庄内系へと突然変異して以降、恒例となっている庄イタ。特に酒田女鶴と原種である(本)女鶴の餅を知ってからは、きまって酒田を訪れています。

amazake-kikkawa_20101010.jpg 仕事納めの翌日、拙稿「新年明けまして女鶴餅」(2013.1)の内容と、ほぼコピー&ペーストの行程で酒田を目指しました。

 最短ルートの最上川沿いを下るR47ではなく、大幅な回り道になることを重々承知の上で、R113を小国町から新潟・関川村を経由して村上市に立ち寄りました。その目的は「鮭を極める哲人」(2007.11)で取り上げた「味匠喜っ川」で塩引き鮭と酒びたし、リゾットやパスタの絶品ソースになる鮭のクリームスープ、さらには道中のエネルギー源となる天然麹甘酒「雪の華」を購入すること。

【photo】越後村上の風土、匠の技、そして家付き酵母が三位一体となって、芸術品のごとき域に達する塩引きや酒びたしが作られる味匠喜っ川(下写真)。天然麹甘酒「雪の華」(上写真)に用いる米麹は、丸4日間をかけて行う昔ながらの一升枡麹蓋づくりによる。「作り手の我を捨てて、謙虚な気持ちで虚心坦懐に麹と向き合うことで、やっと麹菌が目指す上品で自然な風味になってくれるようになりました」と吉川真嗣専務は語る

kikkawa_dicembre2010.jpg 目的を遂げた後は、この季節にしては比較的穏やかな冬の表情の笹川流れと沖合に浮かぶ粟島を眺めつつ、いつものようにR7ではなく日本海沿いを北上しました(下写真)

sasagawa_nagare2014.12.jpg 新潟と山形の県境にある鼠ヶ関にほど近い「あつみ温泉IC」と、山形自動車道「鶴岡JCT」間の日本海沿岸縦貫自動車道25.8kmが開通したのが2012年。これにより移動時間の短縮が図られ、村上の街と鶴岡との距離が、ぐっと近く感じられるようになっています。

 拙稿「寒鱈汁、寒鱈汁、寒鱈汁。」(2010.1)などで過去取り上げた「日本海寒鱈まつり」前売り券を「やまがたの地酒佐野屋」で購入したほか、鶴岡でも立ち回り先をウロウロ。ゆえに酒田に到着した頃には、とっぷりと日が暮れていました。

 酒田市日吉町で1867年(慶応3)に創業した酒販店「久村」では、かつて常連客が夜な夜な集い、店飲みをしていたといいます。

kumura-sakaba.jpg その棟続きで居酒屋「久村の酒場」が開業したのが1961年(昭和36)。夏場は冷蔵ショーケースを兼ねるオリジナリティ溢れるガラストップのカウンター席は、今も地元の旦那衆憩いの場として愛されています(下写真)。

kumura-sakaba-counter.jpg 昭和の風情を色濃く残す気取らない酒場は、太田和彦氏や吉田類氏らに賞賛されるなど、多くのメディアで取り上げられています。現在では、知らぬ同士も肩寄せ合って善男善女が酒田の酒肴を嗜(たしな)むことができる居心地の良い店であり続けています。

mokkiri-kumura-sakaba.jpg【photo】北庄内の地酒が揃う久村の酒場。定番は、もっきりのコップ酒(右写真)

 外呑み・家飲みともにワインが主流の庄イタではありますが、その信条は〝郷に入っては郷に従え〟。しぼりたて新酒が出回る季節に酒田を訪れたのですから、「上喜元 特別純米 仕込第一号」もっきりで乾杯!!

 定番のおでん・ゲソ揚げなどをつつきながら、二杯目は「鯉川 純米吟醸 鉄人うすにごり」。三杯目の「菊勇・三十六人衆純米吟醸あらばしり美山錦」で三段目ロケットに点火。庄イタにとって日本酒の指南役である阿部ご夫妻と、この夜初対面のお三方を含む意気投合したメンバー6名で2軒目を目指しました。

yukiguni-2014.12.jpg【photo】もっきりから打って変わって仕上げは冬が似合う名作カクテル「雪国」(左写真)

 路面が凍結した圧雪路に足元をとられながら流れた先が「ケルン」。お目当ては名高いスタンダードカクテル「雪国」を考案した国内最高齢の現役バーテンダー、井山計一さん(89歳)がシェーカーを振った一杯。途中から加わった酒田出身だという姉妹二人も加わり、袖触れ合うも他生の縁な宴席を締くくりました。

 ちなみに雪国と並ぶ店のもう一つの名物でもあるカウンター奥に掲げられる井山さんの自作による川柳は、「おいおいと追いかけて来る年の数」。

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 一年の邪気を祓(はら)う霊力が宿るとされる〝若水〟は、元旦の早朝に汲むのが本筋ですが、日程の都合で3日だけフライング。ε=ε=┏(; ̄▽ ̄)┛

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 標高2,236mの鳥海山頂には、鳥海山大物忌神社の本宮が鎮座します。大物忌神は穢れを清める神様。信仰の対象とされた鳥海山の地中で磨かれ、御神力を宿した伏流水は、若水として最適ではありませんか。

【photo】赤い尖塔に十字架を頂く白亜の鶴岡カトリック教会。木造ロマネスク様式聖堂としては東北地方では最も古い1903年(明治36)築

 かく申す庄イタ。この日カトリック鶴岡教会を訪れていました。それは初代司祭を務めたダリベル神父の出身地、ノルマンディ地方のデリブランド修道院から1903年(明治36)に献堂記念として寄贈された日本国内で唯一の黒マリア像を6年ぶりに拝観するがため。

 前回は2008年の年末。厨房に入ったオーナーシェフ自らが創作料理を出していた頃のアル・ケッチァーノで、6年連続の食べ納めに鶴岡を訪れた時のこと。(拙稿「今年も当たり年!」2008.12参照)マリア像は東北芸術工科大学で14か月を要した修復作業を終え、その年の春に聖堂の左身廊部に戻ってきていました。

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 イタリア・カトリックでは、東方三博士が救世主の誕生を祝うため、エルサレムを訪れた1月6日はエピファーナ(Epifana)の祝日。この日をもって待降節から1ヵ月以上続いたナターレ(クリスマス)の期間が終わります。その前夜、箒に跨った老婆ベファーナ(Befana)がやってきて、行いの良い子どもにはお菓子を、良くない子には炭を置いてゆくのです。(2007年11月拙稿「クリスマス ところ変われば」参照)

presepia-tsuruoka.jpg 国指定重要文化財に指定されるロマネスク様式の聖堂を訪れた27日は、上記理由でクリスマス期間だったため、6年前と同様にキリスト生誕の模様をジオラマで表現した素朴なプレゼーピオがマリア像の前に飾られていました。

 聖水で十字を切り、しばしの間、清浄な祈りの場に身を置き、心洗われてからバッカスまつり@久村の酒場に臨むという、八百万(やおよろず)の神がおわします極めて日本的な1日は、こうして暮れてゆきました。

 翌朝は湧水の郷・遊佐町へ。車のトランクスペースには、25ℓ容量のポリタンクを2個積んでいました。まずはJR遊佐駅構内の「遊佐カレー遊佐駅本店」で、カプチーノを一杯。

 カプチーノには、イタリア・ボローニャに本部を構える「Segafredo Zanettiセガフレード・ザネッティ」がブラジルの自家コーヒー園での栽培から焙煎まで一貫生産するアラビカ種・ロブスタ種を絶妙の配合でブレンドしたエスプレッソローストの豆を使っています。

 水は三ノ俣集落にある交流施設「さんゆう」前に引かれた鳥海山麓では屈指の口当たりの良い伏流水「鳥海三神の水」を用いているのだそう。なるほど仙台の「セガフレード・ザネッティ・エスプレッソ」フランチャイズ店で頂くのとは一味違う、まさに神通力のなせる丸みのあるお味でした。

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【photo】水量豊かな遊佐町「菓子舗 光月堂」の店先に湧く湧水

 遊佐カレー遊佐駅本店を運営するほか、食の都・庄内から選りすぐった食材を扱う「フーデライト庄内」代表の佐藤幸夫さんから、町内でお勧めの湧水を〝鳥海三神カプチーノ〟を飲みながら聞き出しました。

 それは、かつては菓子作りにも用いていたという「菓子舗 光月堂」の湧水。もうひとつのタンクには、10年以上に及ぶフィールドワークで発見した丸勝金物店の敷地にある「丸勝の水」を。遊佐の町場にあまた存在する鳥海山の恵みである湧水では、屈指の水量で湧出してくる丸勝の水。その美味しさもまた申し分のないものです。

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【photo】遊佐町「丸勝金物店」の敷地に設置された石盆に轟々と音を立てて湧き出す湧水

 これで新年を寿ぐにふさわしい鳥海山の御神力を備えた若水2つを確保。残る最大のミッション遂行前に、2014年の食べ納めに席をあらかじめ確保していた店の予約時刻が迫っていました。

次回「今年の女鶴餅は自家製もあっさげ」に続く


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