あるもの探しの旅

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日本海寒鱈まつり2015@鶴岡〈前編〉

 年間を通して最も気温が低い季節の出口が遠くに見えてきた感がある今日この頃。寒の時季に庄イタが条件反射的に恋しくなるのが、薪火の香り漂うナポリピッツァと庄内の郷土料理「どんがら汁」。(⇒ 一体どんな組み合わせだよッ\(`-´) )

 鉛色の雲が低く垂れこめ、怒涛渦巻く厳しい表情を見せる冬の日本海。そんな季節、鶴岡・庄内観光物産館や酒田・海鮮市場といった物産施設や市中の鮮魚店の主役は、産卵期を迎えた真鱈(マダラ)。庄内浜では、小寒から節分までの寒入り時季が漁の最盛期となるマダラ。鮮度が高い釣り物には1万円前後の高値が付くことも。

Dongara-Zuppa-Kandara.jpg【Photo】寒の時期に揚がる真ダラの脂が乗った白身(胴・ドン)は勿論のこと、タヅ・タダミ(白子)、骨、目玉、エラといった内臓(ガラ)まで余すところなく使う豪快な庄内浜の郷土料理「どんがら汁(=寒鱈汁。略して鱈汁とも)」。〝たらふく〟の語源とされる旺盛な食欲でイカやカニなどを捕食し、ふんだんに栄養を蓄えたアブラワタ(肝臓)は、深い味わいを醸し出す文字通りのキモとなる(画像提供:鶴岡市食文化推進室)

 その地の多彩で奥深い魅力を知り、その奥義に精通した庄内系たらんと欲し、それを自任し、かくあるべしと自らに課し、ゆえに言葉に責任を持つ以上、日々の鍛練を怠っては、庄内系の名折れというもの。

kandara_Biglietto2015.jpg 東日本大震災の発生を受けて、被災地では復興・減災に関するさまざまな事案が同時並行的に展開しています。そのため、かつてのような頻度で彼の地を訪れることが出来ず、丹精込めた生命の糧をお世話になっている庄内の皆さんに不義理を重ねていることに忸怩たる思いでおりました。

 このままではイカン!!と一念発起したのが昨年末。年末のレポートでご報告した聖地・庄内訪問の折、自らを追い込む意味で、2010年1月に開催された「第22回日本海寒鱈まつり」以来、久しく参加していないこの催しの前売り券(右写真)を購入したのです。

 今年で27回目を迎えた鶴岡日本海寒鱈まつり開催にあわせ、5年ぶりとなるこの催しに参加した庄イタ。前編ではまつり前夜に投宿した湯田川での顛末を一席。

あの人もこの人も、あれもこれも、お久しぶりね~
1年ぶりの湯田川温泉。

 明治維新以降、多極分散型ではなく東京一極集中の国づくりを進めてきた日本。急速に進んだ経済のグローバル化は、産業の空洞化と地方の疲弊という負の側面をもたらしました。

 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、文化の多様性保持と、関連産業が発展することで地域が活力を生み出すべく、自治体間連携を促進させる「創造都市ネットワークThe Creative Cities Network)」を2004年(平成16)に創設しました。

tri-jizou.jpg【Photo】湯田川温泉へと向かうR345湯田川街道沿いにある通称「飴舐め地蔵」。庄内地方では、路傍の地蔵にお手製の下げ飾りを奉納する習慣がある。口に飴を擦り込んで願掛けをすると願いが叶うという三体のお地蔵様。折からの地吹雪のため、口の周りではなく顔の半分が粉糖のような雪で覆われ、寒さに凍えていた

 エントリーは、文学、映画、音楽、工芸、デザイン、メディア・アート、食文化の7カテゴリーで強みを有する自治体による申告制。カテゴリーごとの専門家委員会による審査を通過すれば、「Creative City(創造都市)」として認定されます。

shomen-terme.jpg【Photo】優しい肌触りの豊富なお湯は源泉かけ流し。湯田川温泉「正面湯」

 昨年12月、かねてより産官学を挙げてGastronomy(ガストロノミー=食文化)分野での創造都市登録を目指してきた鶴岡市が、フロリアノーポリス(ブラジル)、順徳(中国)とともに日本国内では初となる認証を受けました。これで世界8都市が、ガストロノミー分野での認定都市となりました。

 2015年2月現在、7分野で全69都市が登録されている創造都市には、日本では以下の6都市が指定を受けています。名古屋・神戸(デザイン)、金沢(工芸)、札幌(メディア・アート)、浜松(音楽)、そして鶴岡(食文化)。

 新たに登録を目指す動きも顕在化しています。新潟市はコメを中心としたガストロノミー分野で登録を目指す一方、アジア初の国際ドキュメンタリー映画祭を'89年から開催してきた山形市は、映画部門で今年申請の予定です。

 一方で、ユネスコ世界遺産委員会が認証し、世界161カ国、1,007件が登録される「世界遺産(World Heritage)」は、富岡製糸工場や石見銀山などの例を見ても、知名度向上による波及効果が広く認識されています。かたや創造都市ネットワークは、そうした広がりを現状ではまだ持ち合わせていません。

cena-masuya-20150117.jpg【Photo】日本海寒鱈まつり前夜、湯田川温泉ますや旅館の夕食から。羽黒宿坊の精進料理「胡麻豆腐の餡かけ」、「ひろっこ(アサツキ)とエゴ(海藻の一種)の酢味噌和え」、「カラゲ(エイの干物からかい)の煮物」、「鮭の粕漬け焼物」、「田川カブ甘酢漬」、荒波が打ちつける岩場で浜の女性たちが手摘みする天然岩ノリをトッピングする味噌味の「どんがら汁」(下写真)ほか、冬ならではの庄内の味が並んだ

masuya-zuppa-dongara.jpg それでも人口流出と高齢化が進む地方都市にとって、交流人口の増加や新たな雇用確保などのプラス効果が期待されるこの取り組み。食文化創造都市への認定を受け、真価が問われる今後の展開に注目したいところです。

 東北各地を訪れてきた庄イタが、改めて申し上げたいのが、〝食〟を軸に俯瞰した山形県庄内地方は、極めて魅力溢れる地域であるということ。その概略は、拙稿「鶴岡のれん」〈2013.11〉でも歳時記的に述べたので、ここでは繰り返しません。

masuya-fujisawakabu-tempura.jpg【Photo】サクっと揚がった天麩羅の衣の中は、濃厚な生クリームのごとき白子。紅白の色合いや姿格好、すがすがしい余韻を残す辛味からして、すぐにそれと分かった藤沢カブ(上写真中央) 藤沢カブと庄内浜産天然寒ブリを大根おろしでみぞれ煮に。素材の素晴らしさもあり、氷見の寒ブリを使ったブリ大根に勝るとも劣らぬ旨さ。恐れ入りました(下写真)

fujisawakabu-mizore.jpg 鶴岡市域では、現在確認されているだけで50品目の在来作物が存在します(拙稿「どこかの畑の片すみで」〈2007.12〉参照)。北前船交易や山岳信仰を通して域外との歴史的な交流があり、そうした中で固有の文化が育まれ、表情豊かな四季折々の食材を取り入れた特徴ある伝統食が受け継がれてきました。そんな数ある中のひとつが、どんがら汁です。

 激しい吹雪に見舞われた月山道路や強風による地吹雪でR112の視界が遮られる中、1年ぶり以上となる湯田川温泉の定宿「ますや旅館」に着く頃には、風格と趣ある瓦屋根の共同浴場「正面湯」には明かりが灯っていました。

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【Photo】山の畑が深い根雪に覆われるこの季節。とりわけ貴重な藤沢カブを雪室から掘り出し、庄イタに分けて下さった後藤清子さん(左)と後藤勝利さん(右)ありがとうございます~(T_T)

 夕餉の食卓には、ひそかに期待していた女将特製のどんがら汁が。無論それは美味でしたが、望外の喜びだったのが、天然物ならではの上品な脂が乗った庄内浜産寒ブリと藤沢カブのみぞれ煮を食することができたこと。

 天ぷらでも供された藤沢カブは、宿泊前日に女将の中鉢泰子さんが、生産者の後藤勝利さんに「少しでいいから分けてもらえないか」と相談して届けてもらったと伺い、女将の心遣いに感激しきり。

fujisawa-kabu2015.1.jpg【Photo】11月に山の畑から掘り出し、泥つきのまま、雪室に保存しておいた藤沢カブ

 在来作物の研究に携わっている山形大学農学部の江頭宏昌准教授によれば、穀物が不作となりそうな天候不順の年でも、お盆時期に播種すれば秋に収穫可能なカブは、飢えをしのぐ越冬食としての意味合いがあったといいます。東北の中山間地に在来系のカブが多く存在するのは、先人の知恵でもあるのです。

 寒鱈まつり会場に向かう前に、後藤さんに一言お礼を申し上げたく、久方ぶりにご自宅に伺いました。すると後藤さんは、収穫したまま雪室に保存していた藤沢カブと、奥様の清子さんお手製の甘酢漬けをお土産に分けて下さいました。

 湿度100%の雪中で保存した藤沢カブは、みずみずしさを保ったまま細胞が凍らないよう化学変化を起こします。すると辛味に甘さが加わるのです。今は深い雪に覆われた山中の畑に採種のため残しているカブを掘り起こしに行かない限り、みずみずしい藤沢カブを手にすることはできません。

 頂戴した藤沢カブは、仙台に戻ってから浅漬けにしたほか、パクリ専門の闇リストランテ「Taverna Carlo(タベルナ・カルロ)」で、みぞれ煮ますや風にして食し、感激の余韻に浸ることができました。後藤さん、本当にありがとうございました。

 こうして久しくご無沙汰していた人たちとの再会を果たし、アツアツの寒鱈汁を頂く前から、ほっこりとココロ癒された湯田川を後にして、寒鱈まつりが開催される鶴岡銀座商店街を目指したのでした。to be continued.

日本海寒鱈まつり2015@鶴岡〈後編〉

「5年ぶりの寒鱈まつり」に続く。


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