あるもの探しの旅

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2015/06/28

Il dolce e l'amaro スウィート & ビター 〈後編〉

GELATO Artigianale e Caffè IzzoGELATI BRIO

Il dolce e l'amaro スウィート & ビター〈前編〉
GELATO Artigianale @ GELATI BRIO より続き


1-1435249079793.jpg 東北北部も梅雨入り。蒸し暑さを感じる日が増えるこれからの季節。美味しいクールダウンの選択肢として、押えておきたいのが、仙台中央通りに3年前の春フランチャイズストアが進出したSegafredo Zanetti Espressoのイタリア版かき氷「Granitaグラニータ」。

 そして庄イタ的には絶対に外せないのが、古今東西、性別年齢を問わず人を笑顔にする稀有な食べ物「Gelatoジェラート」。アイスクリームは乳脂肪分8%以上。対してジェラートは味付けにもよりますが5%前後。「体型維持を心掛けていても、クリーミーな誘惑には弱くて...」と仰る方にとってもビタミン類やたんぱく質などの栄養価が高いジェラートはヘルシーな心強い味方です。

【Photo】エスプレッソ・グラニータ(¥430)は、エスプレッソ&ミルクにクラッシュアイスを加えたイタリア夏の定番フローズンドリンク。セガフレード・ザネッティ・エスプレッソ仙台中央通り店では、エスプレッソにチョコレートを加えたメッツォメッツォ(¥430)、ブラッドオレンジ(¥440)ほか、期間限定のグラニータも

 18,000年前の旧石器時代、スペイン北部のアルタミラや15,000年前のフランス・ラスコーで洞窟に壁画として描かれた野牛は、あくまでも狩猟の対象でした。10,000年前のメソポタミアで初めて人は山羊の乳を飲んだと考えられています。牛を農耕用の家畜としたのが8,500年前のトルコから西アジア地域。

latte-nakahora.jpg 紀元前400年前後と推定されるブッダの臨終後、弟子が師の教えを古代インド語で記した大般涅槃経には、現代のヨーグルトやチーズと考えられる乳製品の存在を窺わせる以下の記述があります。

〝牛から乳を出し 乳より酪を出し 酪より生蘇を出し 生蘇より熟酥を出し 熟酥より醍醐を出す 醍醐は最上なり〟「醍醐味(だいごみ)」の語源となった牛乳を得ることで、人類の栄養状態は向上し、今日の繁栄を築く要因となりました。

【Photo】牛乳の醍醐味を知るならばコレ。中洞牧場牛乳(次回詳報)

 旧約聖書「出エジプト記」では、預言者モーゼは約束の地である理想郷カナンを〝乳と蜜が流れる地〟と表現しています。これは家畜の乳と蜂蜜が、エジプトで迫害を受けるユダヤの民をパレスチナへと駆り立てるだけの当時から非常に価値あるものであったということ。

AltamiraBison.jpg 【Photo】世界文化遺産スペイン・アルタミラ洞窟壁画(部分)。旧石器時代に野を駆けていた野牛を巧みな筆致で描いたのは、パブロ・ピカソの遥か遠い祖先

 紀元前4世紀にマケドニアを建国したアレクサンドロス大王(BC356-BC323)や、葡萄酒は嗜まなかったといわれるユリウス・カエサル(BC100‐44)も、氷雪に乳や蜂蜜や果物を加えて食することを好んだといいます。

 唐(618-907)の時代に、現在もモンゴルなど中央アジアで親しまれるKumis(馬乳酒)を凍らせた菓子の製法を東方見聞録の中で伝えたのがマルコ・ポーロ(1254‐1324)。このようにアイスクリームやジェラートの起源には諸説あります。

1-giolitti_roma_2003.jpg【Photo】カエサルが礎を築いた永遠の都ローマで屈指の人気を誇るジェラテリアが、1900年創業の「Giolitti ジオリッティ」。年中客足が途絶えることがなく、全体でこの3倍以上はあるショーケースには、選択に困るほど多種多様なジェラートがズラ~リ。2つの味が選べるPiccolo(S)で2.5エウロ。cassa(レジ)で先払いし、カウンターでレシートを提示し、coppa(カップ)かcono(コーン)を選択してフレーバーを選ぶシステム。生クリームのトッピングが無料なので、con panna(コン・パンナ)と告げる。〝Veni,vidi,vici(来た、見た、勝った)など、明瞭簡潔な表現を好んだ名文家カエサルが、この店を訪れたなら、こう言ったに違いない。「Veni,vidi, .........emi. ⇒来た、見た、(うーん......... さんざん迷った末に)買った」

 パドヴァ大学で教鞭を執っていたマルクアントニオ・ズィマーラ(1475-1535)が、火薬の原料となる硝石を加えて水を冷却する方法を発見したのが16世紀初め。

 サンタ・トリニタ聖堂のファサードやボーボリ庭園を設計したほか、フィレンツェを拠点に自然科学の分野で多才ぶりを発揮したベルナルド・ブォンタレンティ(1531-1608)は、美食家でもありました。ブォンタレンティは、セミフレッド(=半冷凍)に仕立てたズコットをメディチ家の求めに応じて創作したと伝わります。

getato_kisetsu.jpg 1533年、オルレアン公(後のアンリ2世)との婚礼に臨むカテリーナ・デ・メディチに随行した菓子職人ルッジェーリが、席上アーモンド風味のソルベ(=シャーベット)を披露。それまでは手づかみで料理を食べていた当時のフランス王族は、洗練されたその味に魅了され、上流階級の間で氷菓子が広まります。

 もともと政略結婚だったため、アンリ2世はカテリーナに対しては冷淡で、関係は氷のように冷え切っていました。世界に冠たる中華思想の持ち主であるフランス人から嫉妬されたルッジェーリは、奸計を巡らされ、やがてフィレンツェへと追いやられます。スウィート&ビターな人生の栄華は、シャーベットが溶けゆくように儚いもの。

【Photo】中洞牧場牛乳が次回番外編のテーマゆえ、比較のためにパティスリー・グラス・キセツでオーダーした「蔵王ミルク」&「生姜レモン」〈上写真〉、前編のGELATI BRIOでは辛口プロセッコと共に味わった「アルフォンソマンゴー」&ずんだ味の「枝豆」〈下写真〉。各ダブル(¥390)

gelato-kisetsu2.jpg さて、ジェラート発祥の国イタリアには、現在およそ35,000軒のジェラテリアが存在するのだといいます。OEMの既製品を仕入れたり、濃縮果汁や製菓用ペーストを使用するケースも存在しますが、味にうるさい地元っ子の支持が高いのは、旬の果物や新鮮な牛乳から毎朝手作りされるジェラートを提供するGelateria artigianaleジェラテリア・アルティジャナーレ

 そんなジェラートを提供するジェラテリアが、昨夏相次いで仙台に登場しました。

 仙台第二合同庁舎並びの本町定禅寺通り沿いに昨年7月オープンした「Pâtisseries Glaces Kisetsuパティスリー・グラス・キセツ」。

 パティスリーと看板にある通り、フランス発祥のエクレール(エクレア)に加え、ジェラート(こちらの店ではアイスクリームを指すフランス語「グラス」を標榜)も自家製で提供する、といったほうが正確かもしれません。

 日替わりで6種類が店頭に並ぶジェラートのうち、これまで庄イタが食したゲランドの塩、蔵王ミルク、生姜レモン、枝豆などは香味があっさりした印象。シングル360円・ダブル390円・トリプル420円という価格設定からして、こちらは複数の味を試すのが得策かと。

(エクレアに関しては、40年以上にわたって愛される「とびばいさ甘座」のモカエクレアをおいて他に経験則を持ち合わせておりません。よって今回は華麗にスルー。(^^)ゞ)

gelatibrio2.jpg そしてもう一軒。サンモール一番町から南町通りを越え、東北大学片平キャンパス方向に南下した一角に昨年8月登場したのが「GELATI BRIOジェラーティ・ブリオ」(上写真)です。

 こちらのジェラートは、KIDS(12歳以下限定)200円・シングル380円・ダブル450円・トリプル520円という価格帯。存在感のあるレバーマシンで淹れるナポリスタイルの本格エスプレッソ・ダブル「Caffè Doppio」(¥400)やアイスカフェラッテ「Caffè Lattefreddo)」(¥450)などの一部カッフェには、以下の通りジェラートとのセット料金が適用されます。(シングル600円・ダブル680円・トリプル740円。エスプレッソ・シングルの場合-100円)
 gelati-brio4.jpg【Photo】GELATI BRIO のショーケースは7連×2列。下写真のような果物を丸ごと練り込むジェラート・アッラ・フルッタやミルク系など、最大で14フレーバーの色とりどりなジェラートが味わえる。まったりとキメ細やかで目が詰まった滑らかな食感は、生地の絶妙な空気含有量に由来するもの

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 福島市で育ち、仙台で10年ほど暮らしたオーナーの磯部智広さん。日本初のイタリアンスタイル・バール・ジェラテリアとして玉川高島屋S・C内に1986年に開業した「アンティカ」で、ジェラタイオ(=ジェラート職人)やバリスタとしての腕を磨きました。

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【Photo】「マスカルポーネ」がおまけでトッピングされたValrhonaのクーベルチュールを使った「Choco」が、スペイン・バレンシア地方アルマンサ産の赤ワインの香りと混然一体となって溶けあう(左)  グリーンキウイとバナナのフレーバー「キバナ」。アルゼンチン・パタゴニア地方でイタリア系移民が世界最南端のブドウ栽培地域に1909年に設立した国内最古のワイナリーHumberto Canale。伝統的なブドウ品種トロンテスのアフターに苦味を伴う特徴的な蜂蜜のような芳香が漂う(右)

 ジェラートとの相性を想定し、知人のソムリエにセレクトを依頼して取り揃えているのが、肩肘を張らずに楽しめるグラスワイン各種(泡・赤・白¥500~)。グラスワインを傾けつつ味わうジェラート。これがまた目からウロコの新境地!!この夏、庄イタの新たなマイブームを呼びそうな予感が。ビールはMessina(¥600)とNastro Azzuro(¥700)の2種類を用意。イタリアには少なくないバール・ジェラテリアのスタイルを踏襲しています。

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【Photo】親しい間柄同士なら好みのフレーバーを分けあうのも楽しい。赤肉のレノンメロン「Melone」(+50円)とダークチェリー「Amarena」(左)、ド定番「ピスタチオ」(+100円)&実山椒「Pepe Giapponese」のダブルに、ワンスプーンお味見で酸っぱい杏「Albicocche」がおまけ(右)

 香りの良い稀少なシチリア産を店内でローストする「ピスタチオ」、トリノ伝統のヘーゼルナッツ風味チョコレート「ジャンドゥーヤ」、美食の街ボローニャ発のFABBRI で知られるダークチェリーをシロップに漬けこんだ「アマレナ」などは、ジェラートが国民食ともいえるイタリアの定番フレーバー。

gerati-brio1.jpg インドの最高級品種「アルフォンソマンゴー」や季節ごとのフルーツを練り込んだ各種ジェラーティ・アッラ・フルッタ、栗カボチャとルッコラ「ズッコラ」、新タマネギ「Cipolla」などのスペチャリテも加わります。

 仙台味噌とチョコレートが出合った「Choco&Miso」ほか、(今季は商品化に至らなかったものの)仙台せりのようなご当地フレーバーにも挑戦。鶴岡の生産者と繋がっただだちゃ豆がこの夏登場予定とのこと。これは期待できそうですね。

【Photo】屋外のテラス席ほか店内はカウンターのみ。ジェラートはカップが基本。庄内砂丘産のアンデスメロンを使用した「Melone」と「マスカルポーネ」のダブル(¥450)

 そして是非ともお試し頂きたいのが、たったひと匙で夢見心地へと誘ってくれる岩手「中洞(なかほら)牧場」のジャージー乳「ミルク」(+100円)。哺乳類のDNAを根源からくすぐってやまない良質なクリームの香りに魅了されます。

 仙台では藤崎の地下2F生鮮コーナーで、2013年のご当地牛乳グランプリで最高金賞を受賞した中洞牧場牛乳(720mℓ1,180円 500mℓ 810円 130mℓ 270円)を先月から取り扱い始めました。素材そのものを味わうのも結構ですが、類い稀なミルクの風味を凝縮させたジェラートをお召し上がりになれば、中洞ジャージー牛乳の格の違いを実感できるはず。

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【Photo】「アフォガート」(¥550)のカップリングは、誰が何と言っても中洞ミルク+Izzoのカッフェ(左)。セルフの後掛けゆえ、それぞれを少し味わってからお好みによりグラニュー糖を加えたエスプレッソをタラ~リするか、苦さの中に甘味を秘めたカッフェ・ナポレターノと組み合わせるかはお好みで

 そしてミルキーなジェラートに熱いエスプレッソを注ぐスウィート&ビターなイタリアンドルチェ「Affogato al caffèアッフォガート(・アル・カッフェ)」はいかがでしょう。GELATI BRIOでは、中洞ジャージーミルクと極めつけのカッフェとの共演による甘くほろ苦い大人の味との出逢いが待っています。イタリア語のaffogatoは溺れた状況を指す形容詞。底なし沼のごとき大人だけの悦楽に溺れてみるのも悪くないかと。

gelatibrio3.jpg【Photo】焙煎したコーヒー豆の雑味を封じ、旨味だけを引き出す最適な抽出圧が得られるよう設計された専用レバー式エスプレッソマシンを操作する磯部智広さん。或る時はジェラタイオ、また或る時はバリスタ。バールのバンコ(立ち飲み)感覚で頂くカッフェは、いずれも庄イタ納得の味(上・下写真)

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 コーヒー市場を席巻するスターバックスなどシアトル系の上陸すら許さないイタリア。エスプレッソの本場ナポリのバールを彷彿とさせる厚くキメ細かい褐色のクレマに覆われた「Izzoイッツォ」のエスプレッソをベースに少量のフォームドミルクを加えたマッキアート(¥350)、氷と砂糖を加えてシェークする夏の定番シェケラート(¥500)など、エスプレッソベースのドリンク類も秀逸な出来栄えです。
 
Shakerato-brio.jpg Izzo Caffè は1979年にポンペイ近郊で創業。同じくナポリ発祥の「Passalacquaパッサルアックア」(1948年創業)や「KIMBOキンボ」(1963年創業)と比べて歴史は浅いものの、創業者のヴィンチェンツォ・イッツォ氏はコーヒー好きが高じ、焙煎所を立ち上げるだけでは飽き足らず、自社のコーヒー豆に最適な抽出を可能にするレバー式エスプレッソマシンまで自作してしまったマニアックな人物。

【Photo】フルボディのエスプレッソ・ドッピオにたっぷり目のグラニュー糖。個人的な好みでミルクを少々追加。ロックアイスを加えてシェーク10秒。ひんやり冷たいフローズン・エスプレッソ「Caffè shakeratoカッフェ・シェケラート」の出来上がり

 昨年10月、ポンペイ遺跡の近くにあった本社工場が、放火とみられる火災で全焼する不幸な出来事がありました。現在はナポリとローマを結ぶ高速A1アウトストラーダ・デル・ソル沿いのローマから1時間ほどの町で事業を再開。カンパーニャ州からラツィオ州へと拠点を移しましたが、カッフェのスタイルはエスプレッソの聖地であるナポリの王道から、いささかもブレてはいません。

1-DSC_0724.jpg【Photo】エスプレッソとフォームドミルクの二層からなる「Caffè macchiatoカッフェ・マッキアート」。温めたミルクをエスプレッソに加えるカフェラッテより豆の持ち味が感じられる。イタリア人がするようにスプーン1.5杯程度グラニュー糖を加えると、より美味に

 時流に流されない普遍的なエスプレッソ&バール文化を確立している南イタリアのエスプレッソに顕著なのは、強靭なボディと長い余韻を残す深煎り豆の甘い香り。そこに欠かせないのがロブスタ種。世界のコーヒー生産の2/3を占めるアラビカ種は、多様な個性が際立つスペシャルティコーヒーのように、ウイスキーに例えればシングルモルトのような存在。


caffe-brio.jpg かたや主演を演じる華やかさはなくても、エスプレッソ・ナポレターノの名脇役がロブスタ種。アラビカ種をベースに、深いコクと香りを閉じ込める豊かな泡立ちを生み出すロブスタ種を加えた9種類の豆が、心地よい和音を響かせるブレンデッドウイスキーのように調和するIzzoのカッフェ。

 たとえミルクが加わっても、いささかも魅力が色褪せないのは、分厚い褐色の微細なクレマに覆われたエスプレッソがあってこそ。レバー式マシンが創造する深遠なるカッフェ・ナポレターノの真髄をご体験あれ。

【Photo】このクオリティと味わいにして、その価格はイタリア本国とさして変わらぬ1杯200円。Bravissimo!!

 売り切れ必至のミルクジェラート@GELATI BRIO。並み外れた美味しさは、早朝から仕込みを始める磯部さんの誠実な仕事あってこそは言わずもがな。いまだ解き明かされぬもう一つの鍵、素材となるジャージー牛乳が、いかなるものかを探るため、延長戦突入の次回は、岩手県岩泉町の中洞牧場を訪れます。 

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logo_brio.jpgGELATI BRIO ジェラーティ・ブリオ

・住:仙台市青葉区一番町1-6-23 shuon 358 ビル1F
・Phone:022-302-5669
・営:(火~木) 11:00~20:00  (金) 11:00~21:00
   (土) 10:00~21:00  (日) 10:00~20:00  月曜定休
    禁煙 バンコ・カウンター6席 テラス4卓12席   Pなし
・URL:https://www.facebook.com/GELATI.BRIO

ジェラーティ ブリオジェラート / あおば通駅広瀬通駅仙台駅

●夜総合点★★★★ 4.5 ●昼総合点★★★★ 4.0

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2015/06/14

Il dolce e l'amaro スウィート & ビター 〈前編〉

GELATO ArtigianaleGELATI BRIO

 政情不安による内戦の勃発、独裁体制下での人権抑圧、Islamic State(イスラミック・ステート:通称IS)やBoko Haramボコ・ハラムなどのイスラム過激派組織の台頭。

 こうした脅威に直面するシリアなど中東地域やアフリカ大陸から、欧州へと逃れてくる難民への対応が現在進行形の深刻な社会問題と化している昨今。

 その最前線のひとつが、チュニジアから東へ113kmの地中海に浮かぶイタリア領最南端に位置するペラージェ諸島では最大のIsola di Lampedusaランペドゥサ島と、さらに北方へ180kmあまり離れたシチリアです。昨年だけで17万人にも上るボート難民がイタリア領内に逃れてきているのです。

1-Pelagie_Islands_map_it.jpg

 シチリア・アグリジェンドから通年運航されるフェリーで8時間、Alitalia アリタリアが1日3便を運行するパレルモ空港から1時間、スペインの大手LCC(格安航空会社) Vueling ブエリングが1日1便ローマ・フィウミチーノ空港と1時間20分で結ぶランペドゥサ島。

 遥かイタリア本土からは遠いため、10年ほど前までは手つかずの自然が残り、ダイビング愛好者に知られる以外、海で生計を立てる素朴な島でした。


Viaggi Lampedusa.jpg

 旅行情報サイト「トリップアドバイザー」®が、口コミをもとに選定する「トラベラーズチョイス(TM) 世界のベストビーチ」で第3位となったLa spiaggia dei Conigliラビット・ビーチ)が、近年にわかに脚光を浴びています。日本でも海の透明度の高さゆえに停泊する小舟が、空中に浮遊するようにしか見えないと話題となりました。

 イタリア最南端に位置する美しいこの小島が直面しているのが、冒頭で述べた政情不安に揺れるアフリカから逃れてくる不法移民問題です。今年に入ってからだけでもランペドゥサ島近海でボートが転覆するなどして女性や子どもを含む1,800名以上の犠牲が出る一方、急造された受け入れ施設は満杯状態が続いています。

barchetta-mediteran-NHK.jpg【Photo】定員を遥かに超える難民を乗せ、アフリカからイタリアを目指して地中海を北上する難民船(NHK総合テレビ「クローズアップ現代」画面より)

 政治難民の処遇は、まず受け入れた国が責を負うのが、従来のEU内におけるルール。人道的見地から難民救護にあたるイタリアですが、難民の急増を受け、EU加盟国全体で負担を分担すべきとイタリアやドイツは主張。イギリス・フランス・スペインなどは従来の立場を変えていません。第二次大戦における戦勝国の論理がまかり通る戦後レジームの転換は、ここでこそ迫られているように思えてなりません。

 珍しく硬派な話題で切り出した今回。

 専門的な経済書としては異例の世界的ベストセラーとなったフランスの経済学者トマ・ピケティ氏の著作〝LE CAPITAL AU XXIe SIECLE〟(邦題「21世紀の資本」みすず書房刊)にも話は及びます。

21st-capitalism.jpg r > g

〝資本収益率(r)は、経済成長率(g)を凌駕する〟

 日本と西欧20カ国に関する過去200年分の所得税や相続税の膨大なデータをもとに導き出されたのが、上記の不等式で示される命題。

 著者が言わんとする核心を噛み砕いて言えば、「資本主義体制下では、地道な労働の積み重ねによる所得増は、不動産や株取引で得られる収入を超えることはなく、格差は拡大する一方である」ということ。


 そこで思い起こしたのが、石川啄木の第一歌集「一握の砂」に収められた一首。

  はたらけど
  はたらけど 猶(なほ)わが生活(くらし) 楽にならざり
  ぢっと手を見る

 妻子を養うため、朝日新聞東京本社の前身である東京朝日新聞で校正係として働き始めた啄木。なれど給金を花街通いにつぎ込み、宮崎郁雨や金田一京助、北原白秋などから返済のあてのない借金を重ね、26歳で夭逝した啄木に関しては、どうもピケティ理論はしっくりこないと思う次第で...。

1-Thomas PikettyTED.jpg

【Movie】2014年6月ベルリンで行われたトマ・ピケティ氏による「21世紀の資本論についての新たな考察」と題する16分ほどの講演(日本語字幕入りTED動画にリンク)

 700頁に及ぶ労作の中で、ピケティ氏は富の世界的再分配を目的とする富裕層への累進課税システムの構築を提唱しています。尖鋭化する暴力が連鎖し、憎悪が憎悪を生むスパイラルに陥っている冷戦終了後の世界。

 人類の歴史で繰り返されてきた争いは、おもに国家間の利権絡み、あるいは志向する政体、宗教、民族の相違に起因したものでした。21世紀の世界が直面しているのは、富の独占と貧困がもたらす根深い矛盾です。新たな対立軸が浮き彫りとなった現状に照らし、格差解消の処方箋としてこの本は読み解かれるべきと考えます。

 定員の10倍もの人々を舟に押し込む悪質なブローカーが介在する難民の流入に対し、財政状況が厳しいイタリア政府は非常事態を宣言。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や欧州委員会は、イタリアへの対症療法的な財政援助以外、事態打開に向けた根本的な解決への道筋を示せずにいます。

【Movie】大西洋上を東進する低気圧に向かって吹く南風シロッコは、アフリカの熱気だけでなくサハラ砂漠の砂塵と、時にどんよりした雨雲をも運んでくる。粒子の細かい砂塵に雨が加わると、屋外に干したままの洗濯物や路上駐車の車はシミだらけの悲惨な状況に。シロッコの影響はイタリア領最南端のランペドゥサ島、マルタ島、ラグーザやアグリジェントなどのシチリア南岸だけに留まらない。アドリア海最深部にあるヴェネツィアの満潮と重なると、サンマルコ広場など街中至る箇所が冠水するアックア・アルタ(acqua alta=高潮)に見舞われる

affogato-brio.jpg こうしている間にも、移民に比較的寛容なドイツや北欧が入国を受け入れてくれる淡い希望を胸に、イタリアを目指す難民たちは、命の危険を冒してまでも海を渡ろうとしています。

 地中海を渡ってくるのは難民だけではありません。初夏を迎える頃、サハラ砂漠の赤く粒子の細かい砂塵を伴ってイタリア半島に吹き付ける湿気を帯びた熱風が「Sciroccoシロッコ」です。南イタリアでは5月初旬でもシロッコが吹く日には軽く30℃を超えることが珍しくありません。普段は乾燥した地中海性気候のもとで暮らすゆえ、この風が吹くと頭痛や倦怠感など体の不調を訴えるイタリア人も。

【Photo】中洞牧場ミルクジェラートIZZOエスプレッソ・ナポレターノ。それぞれ単品でも一級品のゴージャスな組み合わせによる甘くほろ苦いアッフォガートは大人の味。昼下がりのGELATI BRIO にて(右上写真)

brio-prosecco-mango.jpg サマータイムに切り替わり、日が長くなると、Barバール〈2007.9拙稿「Barバール」参照〉のメニューに登場する氷菓子Granitaグラニータと、イタリア全土でおよそ35,000店といわれるジェラート専門店Gelateriaジェラテリーアは、イタリアの夏には欠かせない存在〈2009.7拙稿「トロける夏の誘惑 イタリア編」参照〉

 蒸し暑さにおいてはイタリア以上の日本列島では、現在まさに梅雨前線が北上中。鬱陶しい雨の季節を通り越し、前世イタリア人の想いは太陽の季節へ。中洞ミルクジェラートIZZOエスプレッソ・ナポレターノ、そして季節の果物をまるごと使用したジェラート・アッラ・フルッタヴィーノ・ビアンコが、庄イタ的にこの夏ブーム到来の予感がしています。

【Photo】インドの最高級品種アルフォンソマンゴーのゴージャスな香味が溶け込んだジェラート(左)。細やかな泡が立ち上る辛口のプロセッコで味覚を刷新するごと、濃厚な至福のひとときを反復体験できる。ヴェネツィアの立ち飲み居酒屋「Bacaroバーカロ」風に「ombraオンブラ」を一杯。この夏のアフターファイブは、こんなクールダウンからスタートしてみては。薄暮のGELATI BRIO にて(上写真)

 ピケティ理論を図式化した「r > g」の向こうを張って、「中洞牧場ミルクジェラート+IZZOエスプレッソ・ナポレターノ=向かうところ敵なしのアッフォガート」という命題を提示したところで前編は一区切り。

 その実証の場、ジェラテリーア・バール「GELATI BRIOジェラーティ・ブリオ」を後編でご紹介します。

Il dolce e l'amaro スウィート & ビター〈後編〉へ続く
to be continued.


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