あるもの探しの旅

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Il dolce e l'amaro スウィート & ビター 〈前編〉

GELATO ArtigianaleGELATI BRIO

 政情不安による内戦の勃発、独裁体制下での人権抑圧、Islamic State(イスラミック・ステート:通称IS)やBoko Haramボコ・ハラムなどのイスラム過激派組織の台頭。

 こうした脅威に直面するシリアなど中東地域やアフリカ大陸から、欧州へと逃れてくる難民への対応が現在進行形の深刻な社会問題と化している昨今。

 その最前線のひとつが、チュニジアから東へ113kmの地中海に浮かぶイタリア領最南端に位置するペラージェ諸島では最大のIsola di Lampedusaランペドゥサ島と、さらに北方へ180kmあまり離れたシチリアです。昨年だけで17万人にも上るボート難民がイタリア領内に逃れてきているのです。

1-Pelagie_Islands_map_it.jpg

 シチリア・アグリジェンドから通年運航されるフェリーで8時間、Alitalia アリタリアが1日3便を運行するパレルモ空港から1時間、スペインの大手LCC(格安航空会社) Vueling ブエリングが1日1便ローマ・フィウミチーノ空港と1時間20分で結ぶランペドゥサ島。

 遥かイタリア本土からは遠いため、10年ほど前までは手つかずの自然が残り、ダイビング愛好者に知られる以外、海で生計を立てる素朴な島でした。


Viaggi Lampedusa.jpg

 旅行情報サイト「トリップアドバイザー」®が、口コミをもとに選定する「トラベラーズチョイス(TM) 世界のベストビーチ」で第3位となったLa spiaggia dei Conigliラビット・ビーチ)が、近年にわかに脚光を浴びています。日本でも海の透明度の高さゆえに停泊する小舟が、空中に浮遊するようにしか見えないと話題となりました。

 イタリア最南端に位置する美しいこの小島が直面しているのが、冒頭で述べた政情不安に揺れるアフリカから逃れてくる不法移民問題です。今年に入ってからだけでもランペドゥサ島近海でボートが転覆するなどして女性や子どもを含む1,800名以上の犠牲が出る一方、急造された受け入れ施設は満杯状態が続いています。

barchetta-mediteran-NHK.jpg【Photo】定員を遥かに超える難民を乗せ、アフリカからイタリアを目指して地中海を北上する難民船(NHK総合テレビ「クローズアップ現代」画面より)

 政治難民の処遇は、まず受け入れた国が責を負うのが、従来のEU内におけるルール。人道的見地から難民救護にあたるイタリアですが、難民の急増を受け、EU加盟国全体で負担を分担すべきとイタリアやドイツは主張。イギリス・フランス・スペインなどは従来の立場を変えていません。第二次大戦における戦勝国の論理がまかり通る戦後レジームの転換は、ここでこそ迫られているように思えてなりません。

 珍しく硬派な話題で切り出した今回。

 専門的な経済書としては異例の世界的ベストセラーとなったフランスの経済学者トマ・ピケティ氏の著作〝LE CAPITAL AU XXIe SIECLE〟(邦題「21世紀の資本」みすず書房刊)にも話は及びます。

21st-capitalism.jpg r > g

〝資本収益率(r)は、経済成長率(g)を凌駕する〟

 日本と西欧20カ国に関する過去200年分の所得税や相続税の膨大なデータをもとに導き出されたのが、上記の不等式で示される命題。

 著者が言わんとする核心を噛み砕いて言えば、「資本主義体制下では、地道な労働の積み重ねによる所得増は、不動産や株取引で得られる収入を超えることはなく、格差は拡大する一方である」ということ。


 そこで思い起こしたのが、石川啄木の第一歌集「一握の砂」に収められた一首。

  はたらけど
  はたらけど 猶(なほ)わが生活(くらし) 楽にならざり
  ぢっと手を見る

 妻子を養うため、朝日新聞東京本社の前身である東京朝日新聞で校正係として働き始めた啄木。なれど給金を花街通いにつぎ込み、宮崎郁雨や金田一京助、北原白秋などから返済のあてのない借金を重ね、26歳で夭逝した啄木に関しては、どうもピケティ理論はしっくりこないと思う次第で...。

1-Thomas PikettyTED.jpg

【Movie】2014年6月ベルリンで行われたトマ・ピケティ氏による「21世紀の資本論についての新たな考察」と題する16分ほどの講演(日本語字幕入りTED動画にリンク)

 700頁に及ぶ労作の中で、ピケティ氏は富の世界的再分配を目的とする富裕層への累進課税システムの構築を提唱しています。尖鋭化する暴力が連鎖し、憎悪が憎悪を生むスパイラルに陥っている冷戦終了後の世界。

 人類の歴史で繰り返されてきた争いは、おもに国家間の利権絡み、あるいは志向する政体、宗教、民族の相違に起因したものでした。21世紀の世界が直面しているのは、富の独占と貧困がもたらす根深い矛盾です。新たな対立軸が浮き彫りとなった現状に照らし、格差解消の処方箋としてこの本は読み解かれるべきと考えます。

 定員の10倍もの人々を舟に押し込む悪質なブローカーが介在する難民の流入に対し、財政状況が厳しいイタリア政府は非常事態を宣言。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や欧州委員会は、イタリアへの対症療法的な財政援助以外、事態打開に向けた根本的な解決への道筋を示せずにいます。

【Movie】大西洋上を東進する低気圧に向かって吹く南風シロッコは、アフリカの熱気だけでなくサハラ砂漠の砂塵と、時にどんよりした雨雲をも運んでくる。粒子の細かい砂塵に雨が加わると、屋外に干したままの洗濯物や路上駐車の車はシミだらけの悲惨な状況に。シロッコの影響はイタリア領最南端のランペドゥサ島、マルタ島、ラグーザやアグリジェントなどのシチリア南岸だけに留まらない。アドリア海最深部にあるヴェネツィアの満潮と重なると、サンマルコ広場など街中至る箇所が冠水するアックア・アルタ(acqua alta=高潮)に見舞われる

affogato-brio.jpg こうしている間にも、移民に比較的寛容なドイツや北欧が入国を受け入れてくれる淡い希望を胸に、イタリアを目指す難民たちは、命の危険を冒してまでも海を渡ろうとしています。

 地中海を渡ってくるのは難民だけではありません。初夏を迎える頃、サハラ砂漠の赤く粒子の細かい砂塵を伴ってイタリア半島に吹き付ける湿気を帯びた熱風が「Sciroccoシロッコ」です。南イタリアでは5月初旬でもシロッコが吹く日には軽く30℃を超えることが珍しくありません。普段は乾燥した地中海性気候のもとで暮らすゆえ、この風が吹くと頭痛や倦怠感など体の不調を訴えるイタリア人も。

【Photo】中洞牧場ミルクジェラートIZZOエスプレッソ・ナポレターノ。それぞれ単品でも一級品のゴージャスな組み合わせによる甘くほろ苦いアッフォガートは大人の味。昼下がりのGELATI BRIO にて(右上写真)

brio-prosecco-mango.jpg サマータイムに切り替わり、日が長くなると、Barバール〈2007.9拙稿「Barバール」参照〉のメニューに登場する氷菓子Granitaグラニータと、イタリア全土でおよそ35,000店といわれるジェラート専門店Gelateriaジェラテリーアは、イタリアの夏には欠かせない存在〈2009.7拙稿「トロける夏の誘惑 イタリア編」参照〉

 蒸し暑さにおいてはイタリア以上の日本列島では、現在まさに梅雨前線が北上中。鬱陶しい雨の季節を通り越し、前世イタリア人の想いは太陽の季節へ。中洞ミルクジェラートIZZOエスプレッソ・ナポレターノ、そして季節の果物をまるごと使用したジェラート・アッラ・フルッタヴィーノ・ビアンコが、庄イタ的にこの夏ブーム到来の予感がしています。

【Photo】インドの最高級品種アルフォンソマンゴーのゴージャスな香味が溶け込んだジェラート(左)。細やかな泡が立ち上る辛口のプロセッコで味覚を刷新するごと、濃厚な至福のひとときを反復体験できる。ヴェネツィアの立ち飲み居酒屋「Bacaroバーカロ」風に「ombraオンブラ」を一杯。この夏のアフターファイブは、こんなクールダウンからスタートしてみては。薄暮のGELATI BRIO にて(上写真)

 ピケティ理論を図式化した「r > g」の向こうを張って、「中洞牧場ミルクジェラート+IZZOエスプレッソ・ナポレターノ=向かうところ敵なしのアッフォガート」という命題を提示したところで前編は一区切り。

 その実証の場、ジェラテリーア・バール「GELATI BRIOジェラーティ・ブリオ」を後編でご紹介します。

Il dolce e l'amaro スウィート & ビター〈後編〉へ続く
to be continued.


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