あるもの探しの旅

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Pasta? Not Pasta?

パスタか? パスタではないか?

パスタの聖地にジャッジを挑んだ勇猛果敢な新商品


Viaggio al Mondo ~あるもん探しの旅~」では、いわゆるマスプロダクツを滅多に取り上げません。

 数少ない例外は、'08年「今年も当たり年?」、同「ボジョレー後日談&自然派ワインよもやま話」、'11年「ボジョレー騒動はさておき...」、'12年「どうせなら真っ当な新酒を」と、ネガティブキャンペーンを展開してきたボジョレー・ヌーボー。

 ブドウの出来の如何に関わらず収穫は解禁日(11月第3木曜)優先。炭酸ガス浸潤による特殊な製法によるアルコール発酵期間はわずか4~5日で、世間一般のワインの造りとは全く異質。ワイン評論の第一人者ヒュー・ジョンソンに言わせれば〝雑な造りの、(酸が)鋭くアルコールが強すぎるものがあまりに多い(「ポケットワインブック」)〟。

 ボージョレーワイン委員会(Inter Beaujolais)、インポーター、大手小売店などのステークホルダーが、そのお寒い品質とは裏腹に、噴飯ものの美辞麗句を並び立て、金額ベースで全輸出先の半数を占める大・大得意先の日本各地で繰り広げる厚顔無恥な解禁商法への義憤に駆られてのこと。

cupnoodle-pastastyle.jpg【Photo】カップヌードル初のパスタ製品「カップヌードル パスタスタイル」。ボロネーゼ(左)ボンゴレ(右)メーカー希望小売価格¥198(税別)

 日本語を解さないイタリア人観光客が、大胆にもEspressoとパッケージに表記された紅茶(午後の紅茶)と日本茶(伊右衛門)に手を出し〝Mamma mia!!(=なんてこった!!)〟と公共の場で吐き出す事態を避けるため、老婆心から注意喚起をしたのが、「Attenzione, questo non è espresso.」(2011.12)。

 前回Sai che buono? に登場したSaiKeBonと同様に、庄イタが無性にイジりたい衝動に駆られる新商品「カップヌードル パスタスタイル」が、日清食品から6月29日に全国発売となりました。

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【Photo】上蓋をめくった状態。ボロネーゼのかやくはフリーズドライの味付け豚肉そぼろ・玉ネギ・ニンジン。ボンゴレは味付けアサリ・赤唐辛子。添付の粉末ソースと調味オイルを取り出し、熱湯を注いで待つこと5分。湯切りしてソースとオイルを和える

 創業者の安藤百福(1910-2007)氏が〝食足世平(しょくたりてよはたいらか)〟の精神で、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を1年を要した試行錯誤の末に発明したのが1958年(昭和33)。厚生省が発表したこの年の厚生白書では、日本人の25.9%が栄養不足であり、食生活の改善が急務であると指摘されていました。

 インスタントラーメンの生みの親である百福氏は、2005年に野口聡一宇宙飛行士とともに国際宇宙ステーションに雄飛した宇宙食ラーメンの開発を陣頭指揮。会長職に就いてなお生涯現役を貫き、満96歳で急性心筋梗塞で亡くなりました。健康と長寿の秘訣を問われると、週2回のゴルフと、創業以来毎日欠かさず昼食で食べていたチキンラーメンを理由に挙げていたのだといいます。

cupnoodle-pastastyle2.jpg【Photo】カップヌードルの2倍超の太さで新開発したストレート麺は、表面のもっちりした食感とプリッとした歯切れが特徴だというが...

 カップヌードル パスタスタイルは、1971年に誕生し、カップ麺をワールドワイドな商品に成長させた「CUP NOODLE」で培った特許技術である多層構造の麺生地を切り出し、過熱蒸気で小麦のデンプン質をアルファ化し、植物油で揚げたストレート乾麺。カップヌードルブランド初のパスタに位置付けられています。

 ペペロンチーノ以外は、ナポリタンとタラコ味という日本独自の味付けで展開する同社としての先行ブランド「Spa王」は、湯切り1分の生麺タイプ。乾麺を5分間湯煎するパスタスタイルは、イタリア伝統のボンゴレとボロネーゼの2種類。Spa王とは別ジャンルの商品ということなのでしょう。

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【Photo】〝PASTA〟ではなく〝PASTA STYLE〟とした日清食品の意図はいかに。イタリア人による惨憺たるアンケート結果を受けた急遽の変更なのか、それとも深い意味はないのか、実食してその理由を探ってみては?

 何故にパスタスタイルを今回のお題にしたかは、特設サイトの意表を突いた新発売キャンペーンの内容に尽きます。

【特設サイトURL】  http://www.cupnoodle.jp/pastastyle/

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Q. カップヌードル パスタスタイルをパスタとして認めてもらえますか?

 カップ麺のパイオニア日清食品が、乾燥パスタ発祥の地とされるイタリア・カンパーニャ州ナポリ県グラニャーノを舞台に、社の威信を賭けた新製品の出来栄えに聖地のお墨付きを得るべく、いかにも無謀な  ...もとい、大胆な作戦に打って出ました。

 持参したカップヌードル パスタスタイルをグラニャーノの住民157名に食べてもらい、パスタか、パスタではないか、二者択一の質問を投げかけます。

pastastyle-donna2.jpg【Photo】「パスタか、パスタではないか。」乾燥パスタ発祥の地グラニャーノの街頭で、全身がパスタで出来た温厚誠実なイケ麺インタビュアーMr.Pasta Judge (上写真左)が、舌の肥えた人々に感想を求めるも...

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 【Photo】リサーチ冒頭に登場するのはPanetteriaパネッテリーア(パン屋)の女性。申し訳ないけどという表情で一言「Non né Pasta, no.(=パスタじゃないわ。違う)」

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 絶品が揃うグラニャーノ産パスタとの比較において、即席麺の仕上がりは言わずもがな。〝もうすこしがんばりましょう〟のボンゴレに比べれば、味付けだけはまずまずだと庄イタがジャッジしたボロネーゼで挑戦した冒頭から暗雲が垂れ込めます。

 味覚は人それぞれ。なかには「Pasta!」という声も聞かれますが、Non né Pasta! を連発される完全アウェーのままインタビューは続き、果てはこんなフレーズも...。

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【Photo】顔をしかめて「Mamma mia!(=なんてこった!)」とは手厳しい。ほかにも「出直してこい!」「ゴムっぽい、違う」など辛辣な声も飛び出す始末

【Movie】パスタスタイルの品質に絶大な自信を抱いてパスタの聖地に乗り込んだMr.Pasta Judge (46歳)が、グラニャーノの人々の反応に一喜一憂。困惑と悲哀の表情を浮かべるプロモーション動画

 グラニャーノ産のパスタが、いかに別格の存在であるかについては「珠玉のパスタ、Gragnano グラニャーノ」(2010年7月)で、当時は代官山に日本の旗艦店があったEataly のご紹介と共に詳細を述べているので参照願います。

 パスタの味にはうるさいグラニャーノの人々による判定は、パスタだ ⇒ 14% パスタじゃない!! ⇒ 86% と完膚なきまでの完敗。

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 2001年2月9日、イタリア共和国カルロ・アツェリオ・チャンピ大統領は、〝乾燥パスタにはsemola di grano duro (=荒挽きデュラム小麦粉)と水だけを用いること〟と定めた大統領令に署名。現在もイタリア国内で販売される乾燥パスタには、この規定が適用されます。

 カップヌードル パスタスタイルのパッケージに表記された油揚げ麺の原材料は以下の通り。小麦粉・植物油脂・食塩・醤油・卵粉・大豆食物繊維。

 すでにこの時点でアウト!! なのですが(笑)、イタリアらしからぬ(?)厳格な大統領令を知ってか知らでか、グラニャーノ入りしたMr.Pasta Judge らロケ隊を待ちうけていたのは、厳しい結果でした。

 そこで創業者の孫である安藤徳隆氏が率いる日清食品が下したのは、以下の決断。

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アンケート結果を気にせず発売に踏み切る(^_^;

 ワールドワイドな展開をはかるカップヌードルブランド。前回「Sai che buono?(=どんだけ旨いか知ってる?)」で触れた欧州向け生産拠点であるハンガリー工場の生産ラインで、CUP NOODLES PASTA STYLEを生産し、パスタとは認めてもらえなかったイタリアでも日本と同様に発売するのでしょうか?

 イタリア・グラニャーノでの挫折をバネに、発売に合わせて公開された特設サイトでは、日本のユーザーに向けたアンケートを絶賛実施中。(画像クリックでサイトにリンクします)

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 グラニャーノ産パスタの購入機会が増えつつあるニッポンの判定は、本日のところ以下の通り。 パスタだ! ⇒ 28% パスタじゃない!! ⇒ 72% 肯定派がイタリアの倍の数字ですが、やはり微妙な評価と言わざるをえません。

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 事の真相はいかに。見逃せないのが回答者が下した判定に対するMr.Pasta Judge のリアクション。

no! nonepasta.jpg

 「パスタだ!」判定へのMr.Pasta Judge のリアクション例(上)。「パスタじゃない!」評価への哀感漂う反応例(下)。〝もう一度ジャッジする〟を何度かクリックすると、異なるパターンが登場して結構楽しめます。

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 判官贔屓の日本人の心理をついた自虐マーケティング戦略に伸るか反るか。

Giudizio_Universale-Vasari-Zuccari.jpg ブルネレスキ設計によるフィレンツェのドゥオーモの天蓋内部にジョルジョ・ヴァザーリとフェデリコ・ツッカリが描いたフレスコ画「最後の審判」(部分)を唐突に登場させ、カップ麺にまつわる異例の連作を締めくくるとします。

 さて、あなたの審判はいかに。レッツ、ジャッジ!?

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