あるもの探しの旅

« L'anima d'Italia イタリア魂 | メイン | 山に聞き 牛に聞く »

Composta di fico con buon vino del casa

イチジクのコンポートと実力発揮のイタリアワイン


 イチジクが旬を迎えています。旧約聖書「創世記」では、楽園エデンで無垢な日々を送っていたアダムとイブが、蛇にそそのかされ、リンゴとイチジクのいずれかと考えられる禁断の果実を食べたことで、人は知恵を得たとされています。

 互いの裸体を恥じた2人が身につけたのは、かつて武田久美子が写真集My Dear Stephanieで、世の男性諸氏の目を丸くさせた貝殻ビキニではなく、(^ ^; イチジクの葉でした(⇒リンゴの葉はあまりに小さいゆえ当然かと)。知恵を手に入れた代償として楽園を追放された人類にとって、初めての衣装はイチジクだったのですね。

Otranto-cattedorale-faciata.jpg【Photo】ビザンティン帝国の拠点として聖地エルサレムへ向かう巡礼者や十字軍が行き交ったのが、イタリア最東端に位置する港町プーリア州Otranto オートラント。11世紀にノルマン人が初期キリスト教聖堂の遺跡があった地に創建したロマネスク様式の「Cattedrale 大聖堂」(上写真)

Cacciata-Paradiso-catedrale-Otranto.jpg【Photo】ロマネスク彫刻が施された柱頭を頂く円柱がアーチを支えるオートラント大聖堂の身廊部で見逃してならないのが、床一面に敷き詰められたキリスト教や土着の多神教から題材をとった生命の樹を中心とする12世紀のモザイク画。その一部、このアダムとイブが手にする禁断の果実は、まさにイチジク(上写真)

iwagaki-fukura2015.7.jpg  紀元前9400年頃にはヨルダンでイチジクが栽培されていた痕跡が発見されており、最も初期に食用とされた作物のひとつと考えられます。トルコ・エジプト・アルジェリアなど、イタリアを含む地中海沿岸で盛んに栽培されているイチジクですが、庄イタの行動エリアでイチジク産地といえば、その北限とされる秋田県にかほ市を挙げずにはおけません。

【Photo】今年7月19日、遊佐町吹浦で食した金浦産天然岩ガキ。ここ数年で最も岩ガキの身入りが良かったこの夏。殻付き特大(600円)を注文し、ヨダレを流しながら待つことしばし。ご覧の通りプックリとメタボな大トロ状態の身を口に含むと...。 口の中はトロけるようなハーレムと化し、その甘い至福の余韻はいつ果てるともなく延々1時間は続いた

 山形県最北の遊佐町と県境を接するにかほ市を毎年欠かさずに訪れているのは、滋養豊富な鳥海山の伏流水が育んだ岩ガキを食さんがため。2005年(平成17)、仁賀保町・象潟町と合併し、にかほ市の一部となった旧金浦町ほか、象潟・小砂川・吹浦と産地が密集するこの地域の岩ガキが旬を迎える夏だけでなく、鳥海山の南裾野には名水スポットが数多く存在しており、年間を通して庄イタの出没率が高いエリアです。

kaneura_onsuiro2007.jpg【Photo】獅子ヶ鼻湿原付近から湧出する膨大な量の伏流水は、夏でも水温7℃前後。太陽熱で水温を上げるため、浅く広く作られた金浦温水路 <拙稿「日本初の温水路 先人の英知が遺した日本初の太陽光温水装置『上郷温水路群』@ 秋田・象潟」2009.8参照>

 真夏でも手を切るほど冷たい鳥海山の伏流水を主に水田の農業用水として活用するため、先人が苦労して整備した日本初の温水路群の現地リサーチのため、にかほ市大竹地区を過去にも訪れています。そこはイチジク生産が盛んな土地でもありました。

s-suke69_nikaho.jpg【Photo】イチジク栽培の北限とされる秋田県にかほ市大竹地区の「いちじく屋 佐藤勘六商店」(http://ichijiku-ya.com/ )の看板商品「いちじく甘露煮」は、この地方の伝統的な味付け。R7道の駅象潟「ねむの丘」でも入手可

 旧金浦町大竹地区を中心に1世紀の歴史があるこの地のイチジク栽培。昭和40年代に栽培が本格化したのがホワイトゼノア種。寒冷地でも栽培可能で、小ぶりながら風味がよく型崩れしにくいため、完熟前に収穫して保存食として主に甘露煮に加工してきました。

 ところが、カミキリムシによる食害によって、この20年ほどで栽培面積が半減。現在およそ40の生産農家の高齢化もあいまって生産者数も激減しています。事態打開のため、生産者や地元の加工業者・自治体などで構成される「にかほ市いちじく振興会」が一昨年に発足。「プロジェクト九(←「イチジク」と読ませる)」と銘打った新たな販路拡大に向けた取り組みが始動しました。3軒の農家が鳥による食害防止ネットで木を覆って完熟させた生食用ホワイトゼノアの出荷も昨年から始まっています。

 生活のあらゆるシーンが多分にイタリアナイズされた庄イタとしては、イタリアでもポピュラーな果実であるイチジクをコンポート(赤ワイン煮)で食するのが常道(下写真)。その相伴はヴィーノ・ロッソをおいてほかにはありません。

composto-fico.jpg

 先日訪れた仙台市青葉区国分町のワインバー「土筆」では、新潟・佐渡産のイチジクのコンポートにリコッタチーズを載せ、生ハムで包み込んだ一品が登場。酸味・甘味・塩味が絡み合い、北イタリアのエレガントなピノ・ネロ100%のヴィーノ・ロッソと絶妙なアッビナメントを体感できました。

 かたや、ワインセラーに常時300本以上のイタリアワインのストックを抱える仙台市青葉区某所の闇リストランテ「Taverna Carloタヴェルナ・カルロ」でも、この時季の定番はイチジクのコンポート。シナモンスティック・スターアニス(八角)・クローブ(丁子・チョウジ)で香り付けしたコンポートは、フレッシュチーズと軽めのヴィーノ・ロッソとの相性が抜群。

 コンポートの仕込みに用いるのは長期熟成に向くそれなりの価格のセラーアイテムではありません。そこで登場するのが、階段下のパントリーに無造作に置かれた「CO-OP ITALIA イタリア生協連合会」と「日本生協連」が提携し、日本市場では2011年から発売されているヴィーノ・ロッソ。ブドウ品種はサンジョヴェーゼが主体となります。

vino-rosso-coop-italia.jpg パルマハム、パルミジャーノ・レッジャーノ、アチェート・バルサミコ・トラディショナーレなど、珠玉の食材が揃う美食の州エミリア・ロマーニャ州で1963年に発足した生産協同組合「Cevico チェヴィーコ」。4,500軒あまりのブドウ生産者、15の醸造所が加盟するイタリア国内屈指の規模の生産組合です。

 イタリアワイン法で最上位にあたるDOCG(統制保証原産地呼称)を白ワインとして初めて認定された「Albana di Romagna アルバーナ・ディ・ロマーニャ」ほか、加盟する複数の醸造所が、DOC(統制原産地呼称)・IGT(典型的生産地表示)クラスのヴィーノを厳格な品質管理のもとで年間10万トン生産しています。

coop-italia-bianco.jpg CO-OP ITALIA では1紙パック入りを主力としてベストセラーを続けるというだけあって、デーリーユースにピッタリなイタリアの王道をゆく安定感のある味わい。日本市場には750mℓ 容量ボトルで輸入されています。みやぎ生協での実勢価格はなんと500円台。

 魅了される香りや多彩なニュアンスを感じる複雑味、長い余韻といった卓越したワインが持ち合わせる美質を求めるのは無理でも、守備範囲が広そうな親しみやすい「だし」系の旨味が広がります。たかがワンコイン+αの安ワインと侮るなかれ。気取らずにワインと共に日本の食卓を彩るのには、こうしたミディアム・ライトボディタイプはむしろ好都合。ヴィンテージ表記はありませんが、コストパフォーマンスに優れたチャーミングなヴィーノです。

 トレッビアーノ種が主体という白(左上写真)も試しましたが、赤はアルコール度数が11%、白は10.5%と低めなので、良い意味でスルスルと飲めてしまいます。イタリア人のソウルフードと言っても良いシンプルなトマトソースのパスタや白身肉には鉄板でしょうし、家族で囲む毎日の食卓で本領を発揮するイタリアワインの魅力が十分味わえます。

 今年も判で押したように決まり文句のグレート・ヴィンテージを吹聴し、11月第3木曜の解禁日に向けた商戦真っ最中の「某ージョレ・●ーボー」なんかより、よほど胸を張ってオススメできる魅力的な酒質を備えています。

baner_decobanner.gif
ブログランキング・にほんブログ村へ


Luglio 2018
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

archive.gif

Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.