あるもの探しの旅

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Piovere dal cielo棚からボタ餅

pescare un'orata rara con gamberi
海老で鯛を釣った件


1456218845721.jpg 今回は、ネタ元を明かさぬことをお許し願います。何故ならば、バックラベル(右写真)に表記された42%という高いアルコール度数もさることながら、希少性も極めて高いボトルの中の液体が、瞬間蒸発しかねないがため。と、いう訳で異例の投稿となりますが、どうぞご了承ください。

 とある庄イタの立ち回り先で、とある一品を食しながら、その店のオーナー氏とカウンター越しに会話をしていた時のことです。

astiLaSelvatica.jpg グラスでオーダーできるワインやビールがストックされている冷蔵ショーケースの片隅に、見覚えのある特徴的な手描き風のイラストが描かれたカートンボックスが置いてあるのが目に留まりました。

 庄イタが箱の中身として想像したのは、エチケッタ(ラベル)に、そのイラストをDOCG アスティ・スプマンテとして唯一使っている作り手「La Caudrina ラ・カウドリーナ」のアスティ・ラ・セルヴァティカです。

【Photo】プリントラベルのドンナ・セルヴァティカ。ラ・カウドリーナのアスティ・ラ・セルヴァティカ

 なぜならば、このアスティ・スプマンテは、輸入飲料や食品を扱う「カルディコーヒーファーム」ほか、楽天市場などでも取扱いがあり、日本で唯一入手しやすいがため。

 「イラストが描かれているその箱だけど、アスティ・スプマンテを仕入れたのですか?」という庄イタの問いに対するオーナー氏の答えは、予想を覆す意外なものでした。

 直訳では〝野生の女〟となる「Donna Selvatica ドンナ・セルヴァティカ」と呼ばれるそのイラストに庄イタの視線が釘付けとなった理由は、Viaggio al Mondo 2007年6月の投稿「伝説のグラッパ職人、ロマーノ・レヴィ ~ 天使のグラッパ職人は生き仏だった」をご覧ください。

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【Photo】2006年10月。ピエモンテ州クーネオ県ネイヴェの自宅兼蒸留所のアトリエにて。頸椎を痛めて体調が優れない中、まさに一期一会の時間を割いて下さったロマーノ・レヴィさんは、この1年半後、80歳で天に召された。数え切れぬほどのファンタジーを紡ぎ出してきたその手の温もりと柔らかな感触は、今も庄イタの右手に鮮明に残っているPhoto by Takashi Aoyagi

 レヴィさんとの橋渡しの労をお願いしたアグリツーリズモ「Rupestr ルペストゥル」オーナーのジョルジョ〈2007.9「アグリツーリズモRupestr との出逢い」参照〉からの依頼を受け、レヴィさんとのご縁を直接つないでくれたのが、ジョルジョの友人であるラ・カウドリーナの当主で醸造家のロマーノ・ドリオッティさんでした。

Levi-al-centro.jpg

【Photo】2015年7月。青森市のイタリアン「AL CENTRO 」でコース料理の締めくくったのが、レヴィさん生前の2005年に瓶詰めされたグラッパ(右)。これが庄イタ的には直近のレヴィ体験だった。レヴィ翁の没後にボトリングされた復刻版ながら、記録更新は、つい先日、予期せず某所にて果たされた

 そのイラストは、ワインの醸造過程で発生するブドウの果皮や種などの搾り滓を原料に、加熱釜でアルコール成分を蒸留・抽出する蒸留酒「Grappa グラッパ」を、イタリアでは唯一直火式の蒸留設備で製造していたロマーノ・レヴィ(1928-2008)のグラッパのラベルに登場していたもの。

libro-levi22.jpg ワインジャーナリスト、ルイジ・ヴェロネッリ(1926-2004)により〝Grappaiolo Angelico (天使のようなグラッパ職人)〟と世に紹介され、伝説となったロマーノ・レヴィ。2008年5月にレヴィさんが逝き、2年後にはハーブ入りグラッパを担当していた姉リディアさんも亡くなります。

 創刊にスローフード協会が関わった「Vini d'Italia」と同格の影響力があるイタリアワイン評価本「I Vini di Veronelli 」の版元がヴェロネッリ出版。同社からはラベルを150ページに渡って収録した画集(右写真)が出版されるほど。

 現在、市場に出回るレヴィさんが生前にラベルを描いたグラッパ、特にドンナ・セルヴァティカがモチーフとなると、ゆうに5万円以上。90年代以前のヴィンテージグラッパには、桁違いの驚くようなプレミア価格がついています。世界中にマニアが存在する一方、希少性が徒(あだ)となり、まがい物が出回っているとのまことしやかな噂も。

   

【Movie・前編】2012年公開のレヴィ・セラフィーノ蒸留所におけるグラッパ造りの模様。冒頭に登場するレポーターを挟んで左側がマウロ・マルティーニ氏、右側がファブリツィオ・ソブレロ氏。深さ7mの貯蔵庫でおよそ1年保管したDOCG バルバレスコの醸造に用いられたヴィナッチャから、直火式の銅製蒸留釜カルダイアを含む蒸留装置アランビッコでアルコール蒸留をする工程

 レヴィさんの晩年、「Distilleria Levi Serafino レヴィ・セラフィーノ蒸留所」のアシスタントとして働いていたファブリツィオ・ソブレロ氏と、マウロ・マルティーニ氏が、蒸留所を引き継ぎ、レヴィさん亡き後の今も以前と変わらぬ製法でグラッパ造りを続けています。 

   

【Movie・後編】マウロ・マルティーニ氏により1本づつ手詰めされるボトリングから、ファブリツィオ・ソブレロ氏によるラベルの手貼り工程の模様。ロマーノ・レヴィさんの生前と変わらぬ大量生産がきかない伝統的な製法を受け継いでいることが窺える

 レヴィさんの健康状態が思わしくなくなって以降、ラベル以外のほとんどの仕事を任されていた二人の後継者が、レヴィ・セラフィーノ蒸留所で作り続けるグラッパは、現在日本の正規代理店を通して1本2万円前後で入手が可能です。印刷に変わったラベルは、生前レヴィさんが描いたドンナ・セルヴァティカのバリエーション違い。

levi-serafino-barolo.jpg カウンター越しに見つけた冷蔵ショーケースの中のボトルは、そんな1本でした。

 エチケッタにはBaroloと記されていることから、バローロ地区の造り手が持ち込んだ高貴品種ネッビオーロのヴィナッチャを原料としているグラッパです。(左写真)

 オーナー氏が、さらっと語るその用途を聞いて驚いてしまいました。

調理酒として、素材との組み合わせを試そうと思っています

 「エッ!? 」 素材選びには妥協を知らぬショップオーナーであることは、これまでの付き合いから重々承知していたつもり。それにしても贅沢極まりない話ではありませんか!!

 レヴィさんのもとを訪れた経験があることを明かすと、心の広いオーナー様(⇒ここは敬称付き♥)は、「グラッパグラスがなくて申し訳ありません」と言いながら、なんとデミタスカップに注いだ1本2万円以上もするグラッパを味見させてくれたのです。

 その日私がオーダーした一品は380円。いわば海老で鯛を釣った格好。イタリア語ならば「晴天から雨が降ってくる」という意味のPiovere dal cieloという慣用句がピッタリな展開です。
 
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 店としては、ディジェスティーヴォ(食後酒)として仕入れたのではなく、あくまで香り付けの〝調理酒〟。まして、こちらはゴチに預かっている身。「せっかくだからグラッパグラスで...。」などと、本音 ワガママを言える立場ではありません。まして、女性客中心の業態からして、仮にグラッパグラスを置いていても、恐らくニーズはゼロ(笑)。

 補糖や香料・カラメル色素など人為的な添加を一切行わない本来のグラッパならではの力強さ、そして4年に及ぶオーク樽熟成による円熟味。長い余韻を残す琥珀色の液体を飲み干し、謝意を伝えた去り際、こう言い残すのを忘れませんでした。

grappa-glass.jpg 「またグラッパを味見させてもらってもいい? 次はちゃんとお代も払うので。」

 臆面もなくこうした発言をする庄イタは、おそらくはオーナーが望む本来の客筋とは程遠いはず。なぜならメニューには載るはずもない〝調理酒を飲ませて欲しい〟と言っているのですから。

 店のメニューとのアッビナメント(=組み合わせ)を試みるべく、「次回は自前のグラッパグラス(左写真)を持参するかも...。」と、図に乗って二の矢を放つ庄イタ。

 「ハイ、どうぞ。」と言いつつも、オーナー氏が浮かべた笑いが、若干引きつって見えたのは気のせいでしょうか(;^ω^)。

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