あるもの探しの旅

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2016/03/20

さくらの便りは北の国から

桜が香る〝春待ちチーズ〟共働学舎「さくら」
× バラ香るロゼ・スプマンテ+α


 仙台市街地中心部を南北に貫く東二番町通りを挟んで、仙台市役所の筋向かいが青葉区役所。その裏手にチーズ専門店「Fromagerie & Café Au Bons Ferments オー・ボン・フェルマン(下写真)はあります。

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 Viaggio al Mondo では、「Sale dolce サーレ・ドルチェ(=甘い塩)」と称されるエミリア・ロマーニャ州チェルヴィアの天日塩を取り上げた折〈2008.7 拙稿「こっちの塩は甘いぞ」参照〉と、ソメイヨシノが開花した直後、仙台では最も遅い積雪記録となった降雪について記した「桜と名残り雪」でご紹介しました。〈2010.4 拙稿「桜と名残り雪」参照〉

 花便りで驚いたのが、仙台市宮城野区の榴岡天満宮で、昨年12月25日に梅が開花したこと。天満宮によれば、ここ数年、梅の開花は2月下旬から3月上旬だったといいます。極端な暖冬が自然の営みにも影響していたのですね。

Au_Bons_Ferments2.jpg【Photo】国内外のさまざまなタイプのチーズを取り揃えたある日のオー・ボン・フェルマン。フランスチーズ鑑評騎士のショップオーナー足立武彦さんは、シニアワインアドバイザーの資格も有し、店内でワインとチーズの組み合わせを体感できる催しを定期的に実施している

 そんな暖冬傾向が一変したのが、年が改まった1月中旬から。連日寒い日が続いた仙台では、梅の見頃が続いています。そんな春まだ浅い3月。スギ花粉症の方にとっては、ありがたくない花粉前線も東北まで北上。咽喉や目鼻の不快感に苛まれるじっと我慢の季節が今年もやって参りました。

 三寒四温を繰り返し、やがて寒さに震える季節が終わります。ウグイスの初鳴きを観測した仙台でも週後半からは寒さが緩み、春近しを感じる陽気となりました。日本気象協会による桜の開花予想では、総じて昨年に続き、今年も早咲きのようです。

kobai-hakubai.jpg【Photo】接ぎ木されて一株となった早咲きの紅梅と、遅咲きの白梅とが凍える寒さの中で咲き揃う。オー・ボン・フェルマンからほど近い勾当台公園の一角で見つけた小さな春の足音(2016.3.12 撮影)

 イタリアかぶれの庄イタをしても、ニッポンに生を受けて良かったと思うのが、間もなく訪れる桜の季節。うららかな陽気のもとで愛でるソメイヨシノは、こと長い冬を越す東北の地においては、春を迎えた喜びの象徴にほかなりません。

 冬から春への境となる春分の日は、昭和23年に施行された「国民の祝日に関する法律」では〝自然をたたえ、生物をいつくしむ〟日と定義されています。

 昼と夜の長さが同じになる春分の日は、年によって日が変わります。今年は本日3月20日で、日曜日と重なるため、翌日が振替休日となります。連休で得をした気分になるのは、やはり精神構造がイタリア人ゆえでしょうか。

hitome-senbon2015.jpg【Photo】1922年(大正12)に植樹されたソメイヨシノやシロヤマザクラなど、1,200本ほどの桜並木が見られる「一目千本桜」。阿武隈川の支流・白石川沿いに8kmにわたって続く宮城県南きっての桜の名所。父親が小さな男の子を乗せた車を曳く姿がほほえましい親子を見守る満開の桜(2014.4.12 撮影)

sakura_logo2.jpg カトリック国のイタリアでは、キリストの生誕を祝う「Nataleナターレ(クリスマス)」と同様、主の復活を祝う「Pasquaパスクア(復活祭)」は、重要な意味を持つ祝日。敬虔なキリスト教徒にとっては、すべからく万人に訪れる誕生より以上に十字架からの復活は、意味深い奇蹟と考えられるわけですね。

 春分の日を過ぎた最初の満月の夜が明けた日曜日がパスクアと定められており、春分の日と同じ移動祝日で、今年は3月27日。月の満ち欠けの関係から、来年は4月16日がパスクアと、振れ幅が大きい祝日でもあります。

 啓蟄を過ぎ、風ぬるむ季節の訪れを待ち焦がれる今の時季、毎年いち早く春の息吹を届けてくれるのが、ほんのりと桜の香りがするチーズ「さくら(下写真)

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 繊細な日本人の感性が生んだこのチーズは、北海道上川郡新得町の農事組合法人「共働学舎新得農場」で生産されます。1月初旬から、桜の季節が終わる5月下旬にかけての季節商品となります。

 十勝平野の最北部に拓かれた共働学舎新得農場には、自閉症や引きこもりなど、心身にハンディを抱え、一般社会に居場所を見つけられない人々が集います。そこでは日々の糧を生み出す家畜とともに、自然の摂理に沿った農作業を行うおよそ70名が、自給自足による共同生活を送っています。

 林業とソバ栽培が盛んな新得町にあって、西に日高山脈、北に大雪連峰を望む総面積70haほどの南東向き斜面に拓かれた新得農場では、有機農法による野菜・そば栽培なども行いますが、生産活動の主力は酪農。

 付加価値が高いチーズ生産ほか、ブラウンスイス種の肉牛・ホエー豚などの飼育に取り組んでいます。現在はブラウンスイス85頭とホルスタイン10頭から、朝夕2回の搾乳が行われます。

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【Photo】広大な十勝平野の北部、新得町は昼夜の寒暖差を生かしたそば栽培に適している。約6,300人の人口に対して、飼育される牛の頭数は33,000以上!!

nozomu_miyajima_libro.jpg 開設以来、農場主を務めるのは宮嶋 望氏(65)。米国内でチーズ生産量が最も多いウィスコンシン州にある農場「Vogel Farm 」での2年間の実地研修後、酪農学を専攻したウィスコンシン大学マディソン校を卒業。1978年(昭和53)に入植しました。

 6頭の乳牛からスタートし、翌年モッツァレラから着手したチーズ作りは、1984年(昭和59)に本格稼働。お手本となったのは、酪農やチーズ生産に関して工業化が進んだ米国ではなく、地域の伝統に培われた欧州各地のチーズ作りでした。

【Photo】共働学舎の理念を記した宮嶋氏の最新刊「いらない人間なんていない」(いのちのことば社2014/6刊)

 1998年(平成10)、79点が出品した「第1回 ALL JAPAN ナチュラルチーズコンテスト」(主催:中央酪農会議において「ラクレット」が最高賞を受賞。2004年(平成16)には、スイス・フランス・イタリア3ヵ国で構成する「Caseus Montanus (山のチーズ委員会)」主催の「山のチーズオリンピック」ソフトチーズ部門で、さくらが金賞に輝きます。

 共働学舎新得農場は、競争社会からドロップアウトした人々が集い、生きがいを感じる仕事を通して、自分の居場所と、もう一人の自分を見いだす場でもあります。そのありようは、色も形も異なる花たちが、共働学舎という一本の木に、それぞれのペースで花開いてゆくかのよう。そんな作り手たちの姿と、さくらとが、重なります。

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【Photo】半地下の床下に炭を敷き詰め、札幌軟石を積み上げた共働学舎新得農場のチーズ熟成庫。成形した凝乳の塊を塩水に浸し、熟成庫に移して後も、時おり塩水を染み込ませた晒(さらし)で磨きながら寝かせること3ヵ月。スイスでは表面を溶かしてジャガイモに塗って食するセミハードチーズ「ラクレット」が完成する

 トッピングされた一輪のエゾヤマザクラは、ヨーロッパの人々に日の丸を連想させ、エキゾチックな桜のフレーバーが、遠い日本を想起させるのでしょう。さくらは、国内はもとよりチーズの本場ヨーロッパで催される各種コンテストで、数々の受賞歴を積み重ねてきました。

 春先限定のさくらは、表皮までホロホロとした淡雪のようにしっとり柔らかな食感。桜餅に通じる和の香りに牛乳の甘さ、薄味の塩気、そしてヤギ乳から作るシェーブルチーズに似たほのかな酸味が加わります。出荷までの熟成期間を10日程度に留め、繊細な風味を残しています。

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 全体を覆う白い粉は、味噌の仕込みで用いる酵母「ジオトリカム・カンディダム」によるもの。カビではなく、この酵母を用いる製法で作られる共働学舎のチーズが、「プチ・プレジール」(上写真)

 プチ・プレジールを桜葉で香り付けし、熟成が進み過ぎない段階で一輪のヤマザクラを添えたソフトタイプのチーズが、さくらです(下写真)

 さくらのベースとなるPetit plaisir の意味は、フランス語で「小さな喜び」。さくらには、冬のモノクローム世界から芽吹きの季節を迎える今の時季に似つかわしい、ほんのり桜色のロゼがイメージ的にぴったりです。

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 今シーズン初のさくらは、共働学舎の各種チーズを取り扱うオー・ボン・フェルマンで例年通り購入。アドリア海に面したイタリア中部マルケ州のごく限られた地域だけで栽培されるブドウ「Lacrima ラクリマ」から醸したスプマンテを合わせてみました。

 ラクリマは、顕著なバラの香りが特徴となるアロマティックなブドウです。桜はバラ科の植物。バラの香りとの親和性は高いだろうという読みでした。ただ、果皮に割れが生じやすく、収穫時期の見極めが難しいため、栽培が難しい品種とされます。〈2011.11拙稿「ボジョレー騒動はさておき...」参照〉

 素晴らしいDOCG 白ワイン「Verdicchio dei Castelli di Jesi Riserva ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ・リセルヴァ」 の造り手である「Marotti Campi マロッティ・カンピ」は、通常DOC 赤ワイン「Lacrima di Morro d'Alba ラクリマ・ディ・モッロ・ダルバ」を醸すこのブドウを、アロマ感を活かすシャルマ方式(密閉タンク方式)で、発泡性のある辛口スプマンテに仕上げました。

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【Photo】イタリア中部マルケ州アンコーナ県のごく一部だけで栽培されるバラの薫香を漂わせる品種「ラクリマ」。個性的なこのブドウをスプマンテに仕立てたのが、モッロ・ダルバ地区の造り手「マロッティ・カンピ」。バラ科の桜の香りが魅力のさくらとの相性はいかに

 淡いピンクの色調からイメージする品種特有のバラ香との相性はまずまず。時間と労力を要する瓶内二次発酵を行うため、いきおい高価となるシャンパーニュやフランチャコルタのように持続性が高い細やかな泡の立ち上がるシルキーさはありません。泡の感触が食感に障(さわ)るうえ、渋みのもととなるタンニンを意外と感じるため、ガンベロロッソ式3段階評価では★で第1ラウンドを終了。

 半分ほど残ったさくらには、蜂蜜のワンダーランド「藤原養蜂場」で購入した「盛岡石割桜一番蜜」を少しだけ垂らしてみました。その途端、さくら本来の香りが数倍増しとなり、一気に花開いたのです。予定外の第2ラウンドは寺内大吉さんの採点(⇒昭和世代はご存じかと)でも1.5ランクアップで★★ の満点に迫る組み合わせとなりました(下写真)

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 さくらと合わせるため、自宅にストックしていたヴィーノとのアッビナメント(組み合わせ・マリアージュ)を試みるべく、今季2個目のさくらを買い求めようと、仕事帰りに再び訪れたオー・ボン・フェルマン。店内では、さくらと3種類の産地が異なるロゼとの組み合わせを体感するショップイベントの真っ最中でした。

 テーブル席では6名ほどが、淡いピンク色のグラス3杯と切り分けたさくらを前に、真剣な面持ちでロゼとさくらの相性を確かめています。自転車で移動中だったため、同好の輪に加わることはできません。「そっちがグラス3杯なら、こっちはボトル3本返しだっ!」 堺雅人ばりの意気込みを胸に、家路を急ぎました。

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【Photo】赤と比べて圧倒的に数少ないロゼの自宅ストック。(右から順に)「Cerasuolo Montepulciano d'Abruzzo チェラスオーロ・モンテプルチァーノ・ダブルッツォ1999」、「Dolcedorme Rosé ドルチェドルメ・ロゼ 2014」、「Principessa Cerasuolo プリチペッサ・チェラスオーロ2014」。特別な日に飲みたいアブルッツォの巨人「Valentini ヴァレンティーニ」はお飾り(^ ^; 。結局選んだのは左端のヴィーノ・ロッソ

 当初考えていたアッビナメントの本命は、カラブリア州の作り手「Ferrocinto フェッロチント」が、長期熟成型の偉大な「Taurasi タウラージ」を生む南イタリアの赤品種「Aglianicoアリアニコ」から醸したロゼ。畑の標高が400m以上と高く、南らしからぬエレガントな造りが魅力。

 対抗は2013年に新潟市西蒲区に誕生した「カンティーナ・ジーオセット」を起業した瀬戸潔さん(54)が、山形の契約農家が生産するスチューベンをチャーミングに仕上げた1本。第1ラウンドでは、さくらの繊細な風味を覆ってしまうタンニンの存在が気になったため、結局は知り合いのソムリエが推奨するプーリア州のヴィーノ・ロッソを選んでみました。

 捲土重来を期す第3ラウンド。挑戦者はイタリア半島のかかとの位置にあたるプーリア州産「Fatalone Teres ファタローネ・テレス2014」。本来は高い熟成能力を備えた力強い赤ワインとなる品種「Primitivo プリミティーヴォ」を、15℃から18℃程度に冷やして飲む造りをあえて狙った変則パターンです。

fatalone-sakura2.jpg 「Ridge」や「Clos du Val」など、成功を収めているカリフォルニアの「Zinfandel ジンファンデル」と同一品種であることが、20世紀後半のDNA検査で判明したプリミテーヴォ。色が濃いロゼ風に仕立てたファタローネ・テレスとの組み合わせは、いわば変化球勝負。

 州都Bariバーリから、どこまでも平坦な地形が続く内陸側へ40kmあまり南下した「Gioia del Colle ジョイア・デル・コッレ」は、良質な赤ワイン産地。円錐形の石積み屋根が特徴の住居「トゥルッリ」で名高い「Alberobello アルベロベッロ」の西方約30km の海抜365mの丘陵地にブドウ畑を所有する「Pasquale Petrera パスクアーレ・ペトレーラ」。

 イタリアにおけるオーガニック認証機関の先駆けであるICEAから有機認定を受けているパスクアーレ・ペトレーラ醸造所の信条は、ブドウの樹を人と同じように慈しむこと。自らが欲することをブドウにも同じように与えるため、常に細心のケアを怠りません。

 太古そこが海底だったことを物語る貝の化石が出てくる石灰岩と粘土の赤黒い土壌。ヴィーノ・ロッソとしては淡く、ロゼとしては濃い微妙な色合い(上写真)は、発酵前に果汁に果皮を浸すマセレーションを、ロゼと同程度の30時間に留めたスキンコンタクトによるもの。樹齢25年ほどのプリミティーヴォが完熟する10月後半に収穫後、樽は用いずステンレスタンクで12ヵ月、瓶内3ヵ月の熟成を経て、リリースされます。

 「Negroamaro ネグロアマーロ」種をメインとするイタリアン・ロゼの発祥とされるDOC Salice Salentino サリーチェ・サレンティーノ」を含め、お値打ち品が多いこの地域では、夏の日中は40℃越えが珍しくありません。5代前の創業者ニコラ・ペトレーラが好んだという、冷やして飲むロゼ風の仕上がりのヴィーノ・ロッソです。

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 青葉区広瀬町のワインショップ「Wine Store ブドウの木(下写真)で、さくらとの組み合わせを前提に、選択のお手伝いをして下さったのが、オーナー・ソムリエの奥山和茂さん。

tag-fatalone.jpg セラーに200種前後を取り揃えるワインには、奥山さんがプロフィールを記したタグ(右写真)が1本ごとついています。

 ワインは店内のカウンターやテーブル席でフード類と共に頂くことができます。家飲み用には、表示価格の25%引きで購入可能(6本以上の場合30%OFF)。 よって店頭価格3,440円のファタローネ・テレスの購入価格は2,580円でした。

 比較的手頃な価格帯のヴィーノ・ロッソですが、安ワインにありがちな単調さやヌケ感は皆無。ふくよかな果実の旨味が伸びやかに広がります。渋味のもととなるタンニンは希薄で、飲み口は滑らか。

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 パスクアーレ・ペトレーラ醸造所の地下セラーには、クラシックやヒーリング音楽が流れています。えもいわれぬ心地よさを感じさせる癒しの秘術は、ワインがそこで体得するのかもしれません。

 ファタローネ・テレスは過剰な自己主張をせず、繊細なさくらの風味がより引き立つよう、優しくエスコートするかのよう。ファタローネの名は、2代目フィリッポ(左写真)のニックネームにちなんだもので、il Fatalone とは、俗にいう〝女たらし〟のこと(笑)。

 ただでさえ情熱的なイタリア男をして、そう言わしめるのですから、フィリッポは相当お盛んだったのでしょう( ^0^;)。自家製のヴィーノ・ロッソと牛乳を500mℓずつ飲むことを朝の日課としていたフィリッポ。98歳で天寿を全うした日とて、その例外ではなかったといいます。そんな酒とバラの人生を謳歌したフィリッポの精神と、作り手のブドウへの愛情がこの1本に体現されているように感じました。

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 北の大地に春の訪れを告げる桜が香り立つ共働学舎のさくら。そこに集う心に悩みを抱える人たちのように遅咲きのさくらに寄り添い、引き立て役を果たしてくれたFatalone Teres 2014 vinには、アッビナメント★★に加え、あっぱれ助演男優特別賞を献上したいと思います。

【Photo】共働学舎のさくらに添付の栞(しおり)に描かれた一輪の桜

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Fromagerie & Café Au Bons Ferments
 フロマージュリー&カフェ オー・ボン・フェルマン
 住:仙台市青葉区上杉1丁目4-10 庄建上杉ビル1F
 Phone : 022-217-2202
 営) 12:00~22:00 月曜定休

Wine Store ブドウの木
 住:仙台市青葉区広瀬町3-48
 Phone : 022-796-2293
 営) ・ダイニングバー 13:00~22:00 L.O.  ・カフェ13:00~17:00 日曜定休


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2016/03/06

おまさん まっこと上等な「ぬた」を知っちゅうが?

あなたはホントに美味しい「ぬた」をご存知ですか ?

Sa la molt buona salsa verde da Tosa ?

ryoma_sakamoto.jpg タイトルがコテコテの土佐弁であることから明らかなように、出張で訪れた高知で、旧交を温める機会に恵まれました。

 仙台から伊丹経由で高知龍馬空港入りした庄イタ。大政奉還への道筋を示した幕末の志士は、空の玄関口のニックネームとして平成の世の土佐に蘇ったぜよ。

【Photo】大阪・伊丹を経由して高知入りした庄イタを含む一行8名。出迎えて下さった高知新聞社の計らいで、高知龍馬空港から市内への移動の道すがら立ち寄ったのが、観光名所として名高い桂浜。太平洋を睥睨するかのように立つ坂本龍馬像

 出張初日の講演会会場となった自由民権記念館で地元紙・高知新聞社のS氏と合流したのが20時過ぎ。互いに旧知の仲であり東京から参加したD社のK氏を伴って、20年ぶりの再会となるS氏に案内されたのが、噂通りにがっかりポンだった(笑)観光名所「はりまや橋」からほど近い「鮨処すごろく」。

 「酔鯨」や「土佐鶴」など比較的ポピュラーな銘柄ではなく、「文佳人」「美丈夫」「しらぎく」といった地元ならではの日本酒を飲み比べ。

utsubo.jpg【Photo】端麗な飲み口で盃が進んだ文佳人特別純米を相伴に「鮨処すごろく」で食したのが、コラーゲンの宝庫なのだというウツボの唐揚げ。太平洋に面した沿岸部以外は山がちな地形の高知県。冷蔵技術が発達する以前、時間を要する内陸部までの運搬後も生きながらえる生命力が強いウツボ料理が伝わってきた

 幸いなことに鮨処すごろくは、居酒屋風の一品料理が充実しており、清流・四万十川の汽水域だけで育まれる香り高いアオサノリの天ぷら、塩味で頂くカツオのたたき、土佐清水で揚がる脂が乗った清水サバ、高知の山間部で食するのだというウツボの唐揚げなど、土佐ならではの味覚を堪能できました。

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 皿盛りの刺身の付け合わせとして小皿で登場したのが、鮮やかな緑のペースト(上写真)。前世イタリア人が、こうしたSalsa verde (=緑のペースト)で真っ先に思い浮かべるのは、リグーリア州ジェノヴァ発祥のバジル香るペスト・ジェノヴェーゼです。

 リグーリア地方では、細長く捻じったショートパスタ「Trofie トロフィエ」に和えるペスト・ジェノヴェーゼよりも、高知のサルサ・ヴェルデは幾分か淡い色合い。枝豆を漉して滑らかにした「土佐ずんだ」が登場したのか?とも思いましたが(笑)、それは「ぬた」と呼ばれる冬の土佐ではポピュラーな合わせ調味料なのでした。

 一般に「ぬた和え」=「酢味噌和え」として認識されることが多いと思います。ところが高知における「ぬた」は一味違います。

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 決め手となるのは「葉ニンニク(上写真)。結球部が肥大化する前段階で、茎と葉を食用とするのです。土佐のぬたは、ニンニク葉を刻んで鉢ですりおろし、白味噌と和え、砂糖と酢で味を調えるのが基本。柑橘栽培が盛んな高知ならではの柚子酢や麦味噌を用いたり、砂糖の分量を変えたりと、それぞれ家庭の味が存在するのだそう。

 鮨処すごろくで出されたのは、そうした自家製ぬたでした。定番のブリのみならず脂が乗ったアジやカツオとも好相性。これは断言できます。「げに うまいぜよ!(=ホント美味しい! )」

 高知新聞社のS氏は「サニーマート」や「サンシャイン」など、質と価格では全国展開する大手スーパーが到底太刀打ちできないという地元資本の食品スーパーでも置いている既製品もさることながら、手作りのぬたを推奨するのでした。

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【Photo】比較の意味で購入した食品スーパー「サニーマート」のPBブランド「よいち水産」製の「土佐のにんにくぬた」。鶏の唐揚げ、豆腐、コンニャクなど、汎用性が高い万能調味料となる

 その意味で幸運だったのが、高知での宿泊先ブライト パーク ホテルの立地と曜日回り。宿は高知城の追手門から一直線に伸びる追手筋(おうてすじ)に面しており、そこでは元禄時代から300年以上続き、現在は「日曜市」の名で知られるメルカート(街路市・マルシェ)が開かれるのです。

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【Photo】天守閣の大手(正面)に位置する追手門。本丸と大手門とを、こうして一か所から眺めることができるのは、高知城が唯一なのだという

 露店に並ぶのは、高知市近郊の農家が持ち寄る野菜や果物、山菜などの生鮮品。そして刃物・骨董・植木などの日用品。さらには創傷ややけどに効くといわれる「狸の油」といった珍品まで、品揃えのバリエーションは実に豊富。およそ430軒の露店が、1.3kmにわたって軒を連ね、観光客を含む多くの人出で賑わいます。路上で終日開かれる露天市としては、日本一の規模を誇ります。

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 2泊3日で訪れた高知出張の最終日が日曜日に当たったため、ちょうどホテルの目の前で日曜市が開催される巡りあわせに恵まれた次第。そこで早めに朝食を済ませ、南国情緒を醸し出すカナリーヤシ(フェニックス)が、中央分離帯に列をなす追手筋へと繰り出しました(上写真)

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【Photo】日曜市を散策していて目に留まった珍品の一例。土佐の大皿料理「皿鉢(さわち)料理」の「組みもの」で中心に盛られるのが、尾頭付きのまま背開きにして酢で締めたサバで酢飯を包み込んだ「サバ姿寿司」(上写真左)。その応用編「アジ姿寿司」(上写真右)。 やけどに効能があるという「狸の油」(下写真)。乗り合わせたタクシーの運転手氏に言わせると、本物とあえて銘打っているものの、実際のところは何が入っているかは闇鍋に近いのだという(笑)

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 高知城に向かう西行き2車線を車両通行禁止として日曜市は開かれます。一方で東向き2車線側を対面通行に変更(下写真)。いかにも柔軟かつ合理的なシステムではありませんか。

 これは、可動式の中央分離帯を2か所を開放することで、特段の減速指示をせぬまま、大胆にも対面通行をさせてしまうイタリアの高速道路工事でも恒常的に行われる運用法です。

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【Photo】高知での宿泊先となったブライトパークホテルの部屋から追手筋を撮影。通常は西方向に向かう車両が通る2車線を占有使用して日曜市が開かれる。設営準備中につき、まだ人影はまばら

 「自由は土佐の山間より出づ」という自由の精神を尊び、薩長の専制に反発し、自由民権運動の推進役を担った異骨相(いごっそう)気質を受け継ぐ高知市民からは、「南国土佐はラテンやき、当然ちゃ。」という声が聞こえてきそう。

 万が一の保険のため、サニーマート系列の毎日屋大橋通り店で、PBブランドよいち水産製「土佐のにんにくぬた」5袋入り1パックを入手してはありました。なれど庄イタが目指すは、前夜の打ち上げの席で地元の事情通から聞き出していた〝とある容器〟に入った自家製葉ニンニクのぬた。

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【Photo】日曜市で長ネギと横並びで売られていた高知市宗安寺地区産の「葉ニンニク」。地元では「ニンニク葉」とも。葉ニンニクは、高知と沖縄で栽培が盛んだが、ニンニク生産量が国内では最も多い青森では、ほぼ見かけない

 まず見つけたのは、材料となる「葉ニンニク」そのもの。麻婆豆腐など中華料理に用いる事が多く、通常は結球部を食するニンニクを若いうちに葉と茎を食用にする野菜です。秀吉の朝鮮出兵に参加した長宗我部元親の兵が土佐に持ち帰ったとのこと。高知市に隣接する南国市に位置する高知龍馬空港の周辺でも、葉ニンニクが盛んに栽培されている様子が見て取れました。

 葉ニンニクが身近な存在である高知においては、すき焼きに入れるのは長ネギではなく葉ニンニク。焼き鳥もネギ間ではなく、葉ニンニク間。炒め物での登場率も高いとのこと。このように葉ニンニクは土佐の暮らしに深く根付いた食材なのです。

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 そこには肝心のぬたが見当たらなかったため、駅前電車通りと接する東端の「1丁目」から高知城に向かって「6丁目」まである日曜市を西へ向かって歩みを進めてゆきました。街路樹がクスノキの巨木へと変わるのが5丁目から。

 日曜市の露店にはすべからく「〇丁目北〇番」といった地番がついており、したがって位置も固定の割り当て制になっています【MAP】。

 その一角、5丁目南322番に目指すものがありました。お手製の目印だと事情通から教えられたのが、かつて駅弁とセットで売られていたお茶が入っていたポリエチレン製の茶瓶。昔懐かしい半透明のポリ容器に入った農家のお母さんお手製のぬたを遂に発見したのです。

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 爪楊枝が刺さった細切れの自家製コンニャクが、ぬたの試食用として用意されています。それは鮨処すごろくのぬたとは一味違うピリリと辛いぬたでした。冷凍すると色褪せずに日持ちすると店主の高橋光江さんから聞き出し、迷わず購入。

 すぐ近くにも赤いスクリューキャップ容器に入った自家製のぬたが置いてあったので、そちらもゲット。そうして日曜市をくまなく散策し、確保したお手製のぬたは、2個という結果でしたが、食べ比べができるという点では上々の成果と言えましょう。

 こうして初期の目的を果たしたものの、訪れてみたい場所が一つ残っていました。それは日曜市6丁目角の「ひろめ市場」。7時の開店と同時に、屋台村がオープンするというのです。

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【Photo】朝9時をまわったばかりのひろめ市場。夜9時にはあらず。これが高知における朝のスタンダードであるかどうかは定かではない

 およそ4,000平方メートルの敷地に500の客席がある飲食コーナーでは、予想通り、朝っぱらからカンパーイ!! の声が響いており、「箸拳(はしけん)」や「可杯(べくはい)」「返杯」といった酒豪文化が息づく高知ならではの土地柄に感心するやら呆れるやら。
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【Photo】ひたすら酒を呑みたいがためとしか思えない土佐伝統の「可杯(べくはい)」。大きさが異なる3つの杯(天狗・ひょっとこ・おかめ)の絵が描かれたサイコロを「♪ベロベロの神様は・・・」で始まる囃子唄とともに振り、サイコロが向いた人が絵柄の出た杯で酒を呑む。ひょっとこの口には指で塞ぐ穴が空いている。いずれも座りが悪いので、呑み干すまでは杯を置くことができない

baca-wine.jpg Quando sei a Roma, vivi come i romani (=郷に入っては郷に従え)を旅先での行動規範とし、赤ワイン体験なら数知れない庄イタ。

 大ジョッキで飲み干す「バカワイン(右写真)を、見識を広めるためと称し、出張初日にS氏に案内された2軒目「大衆酒場はりまやオリバ」で注文。同じ穴のムジナなのでした。

 お酌をしたお猪口を飲み干した相手が、即座にその杯を差し返し、一つの杯で延々と差しつ差されつを繰り返す返杯も初体験。興が乗るまま久方ぶりに興じた可杯も登場。高知2日目の夜も存分に満喫しました。

 前日の大雨から一転、青空が広がった3日目は、日曜市に繰り出すことを固く心に誓っていました。昼前の便で伊丹に向かう段取りだったため、さすがに乾杯の輪には加わることなく高知を発ちました。
 
 高知のお母さんの言いつけ通り、日曜市で手に入れた2個のぬたは、帰宅後すぐに冷凍室へと直行(下写真)

due-nuti.jpg 鮨処すごろくでは、S氏の薦めで寒ブリやアジを食べ合わせたように、ぬたは脂乗りの良い刺身との相性は抜群なのです。

 そこで翌週末、マリンゲート塩竃前に震災翌年オープンした「Pizzeria La Gita」でナポリピッツァを食すために訪れた塩竃で仲卸市場に立ち寄り、冬に旬を迎える生食可能な新鮮なメカジキを購入しました。

 メカジキは、英語でSword fish、イタリア語でPesce spadaspada =剣)と呼ばれる通り、長く尖った上顎が特徴のカジキの一種。気仙沼が水揚げ日本一ですが、これは塩竃に水揚げされた大型のメカジキだったそう。

pesca-spada@nuta.jpg 果たせるかな、宮城の味メカジキと高知の味ぬたとの食べ合わせの相性は、非のつけどころなし。はやいっさん(=もう一度)言うきに。「げに うまいぜよ!!

 19年連続日本一の記録を更新している気仙沼のカツオ水揚げ高を少なからず支えているのが、高知のカツオ漁船。

 高知の漁船員の皆様、カツオを追って黒潮を気仙沼まで北上する際は、船の冷凍庫にぬたを忘れずに保管されますよう。束の間の休息を気仙沼でとられる際、こってりとした脂が乗ったメカジキと、ぬたの食べ合わせを試されてはいかがでしょう。

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今回の高知出張ミッションの成果は、震災から5年を経る3月11日(金)と12日(土)に防災プロジェクト「いのぐ」の一環として高知新聞紙上に。河北新報朝刊には3月13日(日)に3ページ特集「高知むすび塾」詳報として掲載予定。出張の趣旨に関して皆さまが曲解なさらぬよう、付け加えておきます。

土佐の日曜市
 毎週日曜日開催: 夏期間(4月-9月)5:00~18:00
             冬期間(10月-3月)5:30~17:00
             ※ 上記は設営および撤収に要する時間を含む
             ※ 1月1日・2日・よさこい祭りと重なる場合は休み
 

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