あるもの探しの旅

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おまさん まっこと上等な「ぬた」を知っちゅうが?

あなたはホントに美味しい「ぬた」をご存知ですか ?

Sa la molt buona salsa verde da Tosa ?


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 タイトルがコテコテの土佐弁であることから明らかなように、出張で訪れた高知で、旧交を温める機会に恵まれました。

 仙台から伊丹経由で高知龍馬空港入りした庄イタ。大政奉還への道筋を示した幕末の志士は、空の玄関口のニックネームとして平成の世の土佐に蘇ったぜよ。

【Photo】大阪・伊丹を経由して高知入りした庄イタを含む一行8名。出迎えて下さった高知新聞社の計らいで、高知龍馬空港から市内への移動の道すがら立ち寄ったのが、観光名所として名高い桂浜。太平洋を睥睨するかのように立つ坂本龍馬像

 出張初日の講演会会場となった自由民権記念館で地元紙・高知新聞社のS氏と合流したのが20時過ぎ。互いに旧知の仲であり東京から参加したD社のK氏を伴って、20年ぶりの再会となるS氏に案内されたのが、噂通りにがっかりポンだった(笑)観光名所「はりまや橋」からほど近い「鮨処すごろく」。

 「酔鯨」や「土佐鶴」など比較的ポピュラーな銘柄ではなく、「文佳人」「美丈夫」「しらぎく」といった地元ならではの日本酒を飲み比べ。

utsubo.jpg【Photo】端麗な飲み口で盃が進んだ文佳人特別純米を相伴に「鮨処すごろく」で食したのが、コラーゲンの宝庫なのだというウツボの唐揚げ。太平洋に面した沿岸部以外は山がちな地形の高知県。冷蔵技術が発達する以前、時間を要する内陸部までの運搬後も生きながらえる生命力が強いウツボ料理が伝わってきた

 幸いなことに鮨処すごろくは、居酒屋風の一品料理が充実しており、清流・四万十川の汽水域だけで育まれる香り高いアオサノリの天ぷら、塩味で頂くカツオのたたき、土佐清水で揚がる脂が乗った清水サバ、高知の山間部で食するのだというウツボの唐揚げなど、土佐ならではの味覚を堪能できました。

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 皿盛りの刺身の付け合わせとして小皿で登場したのが、鮮やかな緑のペースト(上写真)。前世イタリア人が、こうしたSalsa verde (=緑のペースト)で真っ先に思い浮かべるのは、リグーリア州ジェノヴァ発祥のバジル香るペスト・ジェノヴェーゼです。

 リグーリア地方では、細長く捻じったショートパスタ「Trofie トロフィエ」に和えるペスト・ジェノヴェーゼよりも、高知のサルサ・ヴェルデは幾分か淡い色合い。枝豆を漉して滑らかにした「土佐ずんだ」が登場したのか?とも思いましたが(笑)、それは「ぬた」と呼ばれる冬の土佐ではポピュラーな合わせ調味料なのでした。

 一般に「ぬた和え」=「酢味噌和え」として認識されることが多いと思います。ところが高知における「ぬた」は一味違います。

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 決め手となるのは「葉ニンニク(上写真)。結球部が肥大化する前段階で、茎と葉を食用とするのです。土佐のぬたは、ニンニク葉を刻んで鉢ですりおろし、白味噌と和え、砂糖と酢で味を調えるのが基本。柑橘栽培が盛んな高知ならではの柚子酢や麦味噌を用いたり、砂糖の分量を変えたりと、それぞれ家庭の味が存在するのだそう。

 鮨処すごろくで出されたのは、そうした自家製ぬたでした。定番のブリのみならず脂が乗ったアジやカツオとも好相性。これは断言できます。「げに うまいぜよ!(=ホント美味しい! )」

 高知新聞社のS氏は「サニーマート」や「サンシャイン」など、質と価格では全国展開する大手スーパーが到底太刀打ちできないという地元資本の食品スーパーでも置いている既製品もさることながら、手作りのぬたを推奨するのでした。

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【Photo】比較の意味で購入した食品スーパー「サニーマート」のPBブランド「よいち水産」製の「土佐のにんにくぬた」。鶏の唐揚げ、豆腐、コンニャクなど、汎用性が高い万能調味料となる

 その意味で幸運だったのが、高知での宿泊先ブライト パーク ホテルの立地と曜日回り。宿は高知城の追手門から一直線に伸びる追手筋(おうてすじ)に面しており、そこでは元禄時代から300年以上続き、現在は「日曜市」の名で知られるメルカート(街路市・マルシェ)が開かれるのです。

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【Photo】天守閣の大手(正面)に位置する追手門。本丸と大手門とを、こうして一か所から眺めることができるのは、高知城が唯一なのだという

 露店に並ぶのは、高知市近郊の農家が持ち寄る野菜や果物、山菜などの生鮮品。そして刃物・骨董・植木などの日用品。さらには創傷ややけどに効くといわれる「狸の油」といった珍品まで、品揃えのバリエーションは実に豊富。およそ430軒の露店が、1.3kmにわたって軒を連ね、観光客を含む多くの人出で賑わいます。路上で終日開かれる露天市としては、日本一の規模を誇ります。

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 2泊3日で訪れた高知出張の最終日が日曜日に当たったため、ちょうどホテルの目の前で日曜市が開催される巡りあわせに恵まれた次第。そこで早めに朝食を済ませ、南国情緒を醸し出すカナリーヤシ(フェニックス)が、中央分離帯に列をなす追手筋へと繰り出しました(上写真)

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【Photo】日曜市を散策していて目に留まった珍品の一例。土佐の大皿料理「皿鉢(さわち)料理」の「組みもの」で中心に盛られるのが、尾頭付きのまま背開きにして酢で締めたサバで酢飯を包み込んだ「サバ姿寿司」(上写真左)。その応用編「アジ姿寿司」(上写真右)。 やけどに効能があるという「狸の油」(下写真)。乗り合わせたタクシーの運転手氏に言わせると、本物とあえて銘打っているものの、実際のところは何が入っているかは闇鍋に近いのだという(笑)

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 高知城に向かう西行き2車線を車両通行禁止として日曜市は開かれます。一方で東向き2車線側を対面通行に変更(下写真)。いかにも柔軟かつ合理的なシステムではありませんか。

 これは、可動式の中央分離帯を2か所を開放することで、特段の減速指示をせぬまま、大胆にも対面通行をさせてしまうイタリアの高速道路工事でも恒常的に行われる運用法です。

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【Photo】高知での宿泊先となったブライトパークホテルの部屋から追手筋を撮影。通常は西方向に向かう車両が通る2車線を占有使用して日曜市が開かれる。設営準備中につき、まだ人影はまばら

 「自由は土佐の山間より出づ」という自由の精神を尊び、薩長の専制に反発し、自由民権運動の推進役を担った異骨相(いごっそう)気質を受け継ぐ高知市民からは、「南国土佐はラテンやき、当然ちゃ。」という声が聞こえてきそう。

 万が一の保険のため、サニーマート系列の毎日屋大橋通り店で、PBブランドよいち水産製「土佐のにんにくぬた」5袋入り1パックを入手してはありました。なれど庄イタが目指すは、前夜の打ち上げの席で地元の事情通から聞き出していた〝とある容器〟に入った自家製葉ニンニクのぬた。

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【Photo】日曜市で長ネギと横並びで売られていた高知市宗安寺地区産の「葉ニンニク」。地元では「ニンニク葉」とも。葉ニンニクは、高知と沖縄で栽培が盛んだが、ニンニク生産量が国内では最も多い青森では、葉ニンニクを見かけない

 まず見つけたのは、材料となる「葉ニンニク」そのもの。麻婆豆腐など中華料理に用いる事が多く、通常は結球部を食するニンニクを若いうちに葉と茎を食用にする野菜です。秀吉の朝鮮出兵に参加した長宗我部元親の兵が土佐に持ち帰ったとのこと。高知市に隣接する南国市に位置する高知龍馬空港の周辺でも、葉ニンニクが盛んに栽培されている様子が見て取れました。

 葉ニンニクが身近な存在である高知においては、すき焼きに入れるのは長ネギではなく葉ニンニク。焼き鳥もネギ間ではなく、葉ニンニク間。炒め物での登場率も高いとのこと。このように葉ニンニクは土佐の暮らしに深く根付いた食材なのです。

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 そこには肝心のぬたが見当たらなかったため、駅前電車通りと接する東端の「1丁目」から高知城に向かって「6丁目」まである日曜市を西へ向かって歩みを進めてゆきました。街路樹がクスノキの巨木へと変わるのが5丁目から。

 日曜市の露店にはすべからく「〇丁目北〇番」といった地番がついており、したがって位置も固定の割り当て制になっています【MAP】。

 その一角、5丁目南322番に目指すものがありました。お手製の目印だと事情通から教えられたのが、かつて駅弁とセットで売られていたお茶が入っていたポリエチレン製の茶瓶。昔懐かしい半透明のポリ容器に入った農家のお母さんお手製のぬたを遂に発見したのです。

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 爪楊枝が刺さった細切れの自家製コンニャクが、ぬたの試食用として用意されています。それは鮨処すごろくのぬたとは一味違うピリリと辛いぬたでした。冷凍すると色褪せずに日持ちすると店主の高橋光江さんから聞き出し、迷わず購入。

 すぐ近くにも赤いスクリューキャップ容器に入った自家製のぬたが置いてあったので、そちらもゲット。そうして日曜市をくまなく散策し、確保したお手製のぬたは、2個という結果でしたが、食べ比べができるという点では上々の成果と言えましょう。

 こうして初期の目的を果たしたものの、訪れてみたい場所が一つ残っていました。それは日曜市6丁目角の「ひろめ市場」。7時の開店と同時に、屋台村がオープンするというのです。

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【Photo】朝9時をまわったばかりのひろめ市場。夜9時にはあらず。これが高知における朝のスタンダードであるかどうかは定かではない

 およそ4,000平方メートルの敷地に500の客席がある飲食コーナーでは、予想通り、朝っぱらからカンパーイ!! の声が響いており、「箸拳(はしけん)」や「可杯(べくはい)」「返杯」といった酒豪文化が息づく高知ならではの土地柄に感心するやら呆れるやら。
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【Photo】ひたすら酒を呑みたいがためとしか思えない土佐伝統の「可杯(べくはい)」。大きさが異なる3つの杯(天狗・ひょっとこ・おかめ)の絵が描かれたサイコロを「♪ベロベロの神様は・・・」で始まる囃子唄とともに振り、サイコロが向いた人が絵柄の出た杯で酒を呑む。ひょっとこの口には指で塞ぐ穴が空いている。いずれも座りが悪いので、呑み干すまでは杯を置くことができない

baca-wine.jpg Quando sei a Roma, vivi come i romani (=郷に入っては郷に従え)を旅先での行動規範とし、赤ワイン体験なら数知れない庄イタ。

 大ジョッキで飲み干す「バカワイン(右写真)を、見識を広めるためと称し、出張初日にS氏に案内された2軒目「大衆酒場はりまやオリバ」で注文。同じ穴のムジナなのでした。

 お酌をしたお猪口を飲み干した相手が、即座にその杯を差し返し、一つの杯で延々と差しつ差されつを繰り返す返杯も初体験。興が乗るまま久方ぶりに興じた可杯も登場。高知2日目の夜も存分に満喫しました。

 前日の大雨から一転、青空が広がった3日目は、日曜市に繰り出すことを固く心に誓っていました。昼前の便で伊丹に向かう段取りだったため、さすがに乾杯の輪には加わることなく高知を発ちました。
 
 高知のお母さんの言いつけ通り、日曜市で手に入れた2個のぬたは、帰宅後すぐに冷凍室へと直行(下写真)

due-nuti.jpg 鮨処すごろくでは、S氏の薦めで寒ブリやアジを食べ合わせたように、ぬたは脂乗りの良い刺身との相性は抜群なのです。

 そこで翌週末、マリンゲート塩竃前に震災翌年オープンした「Pizzeria La Gita」でナポリピッツァを食すために訪れた塩竃で仲卸市場に立ち寄り、冬に旬を迎える生食可能な新鮮なメカジキを購入しました。

 メカジキは、英語でSword fish、イタリア語でPesce spadaspada =剣)と呼ばれる通り、長く尖った上顎が特徴のカジキの一種。気仙沼が水揚げ日本一ですが、これは塩竃に水揚げされた大型のメカジキだったそう。

pesca-spada@nuta.jpg 果たせるかな、宮城の味メカジキと高知の味ぬたとの食べ合わせの相性は、非のつけどころなし。はやいっさん(=もう一度)言うきに。「げに うまいぜよ!!

 19年連続日本一の記録を更新している気仙沼のカツオ水揚げ高を少なからず支えているのが、高知のカツオ漁船。

 高知の漁船員の皆様、カツオを追って黒潮を気仙沼まで北上する際は、船の冷凍庫にぬたを忘れずに保管されますよう。束の間の休息を気仙沼でとられる際、こってりとした脂が乗ったメカジキと、ぬたの食べ合わせを試されてはいかがでしょう。

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今回の高知出張ミッションの成果は、震災から5年を経る3月11日(金)と12日(土)に防災プロジェクト「いのぐ」の一環として高知新聞紙上に。河北新報朝刊には3月13日(日)に3ページ特集「高知むすび塾」詳報として掲載予定。出張の趣旨に関して皆さまが曲解なさらぬよう、付け加えておきます。

土佐の日曜市
 毎週日曜日開催: 夏期間(4月-9月)5:00~18:00
             冬期間(10月-3月)5:30~17:00
             ※ 上記は設営および撤収に要する時間を含む
             ※ 1月1日・2日・よさこい祭りと重なる場合は休み
 

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