あるもの探しの旅

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2016/04/21

いざ、紅白三番勝負。

Gli abbinamenti tre vini bianchi contro formaggio la Rossa.
Formaggio Cigliegio Atto さくらチーズ 第三幕


vino_rosso_Sanitatis.jpg 日々の食卓を豊かにする佳酒があれば、それで良しとする〝ノムリエ〟の庄イタが、尊敬の念を抱く職業のひとつがソムリエです。

【Photo】ローマ・パンテオン脇の路地奥にある「Biblioteca Casanatense カサナテンセ図書館」所蔵の養生訓「Tacuina sanitatis 」(14世紀)に収められた赤ワインの効能に関する挿絵

 広範な知識に基づく的確な助言、サーヴ時に最良の状態を引き出す温度管理、ヴィンテージごとにピークが異なるワインの秘めたる香りを開かせる抜栓のタイミング...。

 改まった雰囲気のレストランで現場経験を積んだプロフェッショナルならではのサービスと、深いワインへの愛情とその美点を引き立たせようというという情熱、一期一会の時間を提供しようという心遣いを感じる接客。そんな立ち振る舞いには感心するばかり。

Degustazione-del-vino.jpg ソムリエが首から下げるTastevin タストヴァン(左写真)は銀製が正式とされ、これは権謀術策渦巻く中世ヨーロッパにおいて、ヒ素による毒殺を未然に防ぐための名残りだといいます。
 
 かたや一介のノムリエにすぎない庄イタは、山梨・勝沼産ワインを好きなだけ飲み比べできる「ぶどうの丘」をかつて訪れた際、試飲用に購入する〝なんちゃってタストヴァン〟(代金1,100円。持ち帰り可)しか持ち合わせておりません(^0^;。

 ソムリエ教則本的には、チーズに限らず食事とワインのabbinamento アッビナメント(=組み合わせ、マリアージュ)には、いくつかの法則が存在します。

 一般論として、(白身肉には白ワイン、赤身には赤ワインといった風に)食材とワインの色合いを合わせるべし。それぞれの産地を合わせるべし。コクや香りなど味わいの特徴を合わせるべし。チーズとの組み合わせに迷ったら、とりあえず赤ワインを合わせてみるべし。

Cheese2013_0922.jpg

【Photo】スローフード協会が主体となってお膝元のピエモンテ州クーネオ県ブラで開催するチーズの祭典「CHEESE」で用意されるプログラムのひとつMaster of Food 。フレッシュ・硬質・スモークなどタイプの異なるチーズとワインとの相性に関するレクチャー

 こうした基本を踏まえた正攻法では、塩気のある食べごたえがある青カビ系には同じ産地のしっかりとした赤がピッタリ。(例:熟成した北イタリア産Gorgonzola piccante ゴルゴンゾーラ・ピカンテ(下写真)には、北イタリアのAmarone アマローネまたはBarbaresco バルバレスコ。南仏のRoquefort ロックフォールならばChaor カオールないしはBordeaux ボルドー)

golgonzola-cheese2013.jpg

 ブルーチーズとの組み合わせの変則技として、コクがある芳醇な甘口デザートワイン(例:Recioto di Soave レチョート・ディ・ソアーヴェ、Passito di Pantelleria パッシート・ディ・パンテッレリーア、 Vin santo ヴィンサントなど)を合わせると、塩味が穏やかに中和され、見事な調和を生み出します。

 ワインとチーズに限らず、漬物と日本酒といった発酵食品同士の組み合わせは、基本的に相性が良い場合が多いもの。最良のカップリングがなされた時は、互いを高めあう素晴らしい出合いとなることでしょう。

marco-bartori@tsukushi.jpg

【Photo】シチリア沖の孤島パンテッレリーア島産デザートワイン。2014年、栽培法が世界無形文化遺産に登録された地面を這うような形状に仕立てたブドウ「Zibibbo ジビッボ(別名:Moscato di Alessandria モスカート・ディ・アレッサンドリア)」を収穫後、8月の日差しのもとで乾燥。凝縮した甘味の雫を堪能できるPassito di Pantelleria BUKKURAM Sole d'Agosto パッシート・ディ・パンテッレリーア・ブックラム・ソーレ・ディ・アゴスト2012(右) 酒精強化のマルサラ酒に用いる品種「Grilloグリッロ」をアルコール発酵後50hℓの樽で20年以上熟成させたVecchio Samperi Ventennale ヴェッキオ・サンペーリ・ヴェンテンナーレは、複雑な辛口(左)。いずれもチーズとの相性が良い ※ ロケ地:「土筆

 さくらの季節に連作で取り上げている「La Rossa ラ・ロッサ」は、山羊乳を使ったチーズ。一般的に山羊乳のチーズは、山羊乳由来の個性的な風味があります。組み合わせるワインは、爽やかな酸味を感じる若いうちは青草のニュアンスが好相性であろう「Sauvignon Blanc ソーヴィニョンブラン」を。シャープで濃密なコクが加わる熟成した山羊乳チーズには、カリンやナッツの風味がある「Fiano フィアーノ」など、ボディがある白やタンニンが強すぎない軽めの赤でもOK。

vini-bianco-la-rossa.jpg

 このイタリア版さくらチーズを購入したばかりの頃は、桜葉の甘い香りが山羊乳の酸味を和らげ、ベースとなったクセの少ない「Robiola ロビオラ」のフレッシュタイプに桜の香りが乗っている印象でした。

moscato2014-vajra.jpg La Rossa の熟成度合いに合わせて抜栓するヴィーノ(上写真)を用意。1ラウンドに選んだのが、「Giuseppe Domenico Vajra G.D.ヴァイラ」のD.O.C.G.Moscato d'Asti モスカート・ダスティ2014」。

 名醸地Barolo バローロ屈指の好条件に恵まれた畑を所有する作り手による爽やかな微発泡性のヴィーノ・ビアンコです。

 前回、プロフィールをご紹介したLa Rossa はピエモンテ州ランゲ丘陵南部アルタ・ランガ地方産のチーズ。ゆえに〝産地を合わせるべし〟という鉄則に沿った選択ですね。

 ワインに関する嗜好が庄イタとほぼ合致するオンラインショップ「にしのよしたか」を運営する西野嘉高氏が店主を務める大阪市生野区の観光名所になっている生野コリアタウンにほど近い「西野酒店」を訪れて購入したうちの1本です。

guido-abbinamenti-vajra.jpg

 10℃~12℃が飲用適温であること、そして果物との組み合わせほか、全卵+卵黄に砂糖とモスカート・ダスティを加えて撹拌したカスタードクリーム状のZabaione ザバイオーネ、ヘーゼルナッツのタルトといったピエモンテの郷土菓子が、推奨するアッビナメントとして、バックラベルに記載されます(上写真)

DSCF7626.jpg マスカットの豊かなアロマが香るモスカート・ビアンコ種は、愛好する白ブドウ品種のひとつ。アルコール度数が6%程度に達した時点で発酵を止め、微発泡性に仕立てるモスカート・ダスティの産地ピエモンテ州アスティからアルバにかけての地域では、ロビオラに合わせることが少なくありません。

 バローロの作り手として高い評価を受けるG.D.ヴァイラの現当主、アルド・ヴァイラ氏は、1881年に創設された「La Scuola Enologica di Alba アルバ醸造学校」で1985年まで教鞭をとっていた知性派。

 微発泡ゆえのヴェルヴェットのごとき口当たりと、心地よいモスカートの甘い香りが、La Rossaの塩味を包み隠してくれます。比較的あっさりした若めのRobiola ロビオーラのトロ~っとした食感と、ほのかに香る桜の香りとの相性は★★判定。

 第2ラウンドは、打って変わって個性派の出番。

tag-longaliva.jpg 共働学舎「さくら」とドンピシャの好相性だったPasquale Petrera パスクアーレ・ペトレーラ「Fatalone Teres ファタローネ・テレス2014」を購入した青葉区広瀬町「Wine Store ブドウの木」オーナー・ソムリエ奥山和茂さんのセレクトです。
 
 山羊乳100%チーズながら、酸味を打ち消す桜の香りが漂うLa Rossa の特徴をお伝えすると、トレント自治県にある醸造所「Longariva ロンガリーヴァ」のIGT(=典型的地域表示付)Graminè グラミーネ2013」を推奨いただきました。

 Longariva は、ロミオとジュリエットの街ヴェローナから、オーストリア国境のブレンナー峠を目指して高速A22を北上したラガリーナ渓谷に位置する街、ロヴェレートでマルコとロザンナのマニカ夫妻が1976年に創業した醸造所です。

Vallagarina-torentino.jpg

【Photo】ドロミテの山並みが北方に迫り、背後にはイタリア最大の湖沼ガルダ湖が控えるトレンティーノ地方。オーストリアと国境を接するトレンティーノ・アルト・アディジェ特別自治州は秀逸な白ワインの産地。アディジェ川沿いから急峻な岩山に続く傾斜地に、この地域伝統のブドウ棚「pergola ペルゴーラ」(=パーゴラ)で白ブドウが栽培される

 Graminè は、イタリア語と併用される公用語ドイツ語が優勢なアルト・アディジェ地方では、ドイツ語表記で「Ruländerルーレンダー」となる白ブドウ品種「Pinot Grigio ピノ・グリージョ」100%のヴィーノ。

gramine-longariva.jpg

 ロゼに近い透き通った独特の色合いは、破砕したブドウ果汁の醸しの段階で、品種名の由来となったグレー(伊語:Grigioがかった淡い赤銅色の果皮とのマセレーション(=醸し発酵)を時間をかけて行うため。

 グラスから立ち上がる完熟した白桃や上品な花の香りから察する予想に反して味わいはドライ。品種の特徴である分厚いボディを備えており、飲み応えもあります。

 角が取れた酸味にしろ、コクとして認識される土壌由来のミネラリーさにしろ、突出した要素がなく、飲み口はあくまでも滑らか。アフターに心地よい余韻が長く残ります。「う~む、これは印象的」

 同郷で組み合わせるセオリーからすれば、ピエモンテとトレンティーノの距離は決して近くはありませんが、気候的には同じ冷涼な北イタリア。次第に山羊乳ならではのコクが増してきたLa Rossaとの組み合わせはバランス良好。カップリングとしては期待を上回る最上ランク★★★を献上です。

 耳障りの良い〝自然派〟なるキーワードを掲げ、日本のワインマーケットを席巻してゆく状況に率直な疑問を呈した(2008年11月拙稿「ボジョレー後日談&自然派ワインよもやま話」参照) 経緯がある庄イタ。個性的な風味のワインを数多く取り揃える某インポーターが取り扱うだけに、いささか構えて開けたのですが、これは〝当たり〟でした。

giacosa-arneis06.jpg 第3ラウンドは、ピエモンテ州クーネオ県ネイヴェに醸造所を構え、地元では誰もが偉大な作り手として尊敬する「Bruno Giacosa ブルーノ・ジャコーザ」が復活させた白品種「Arneis アルネイス」100%のD.O.C.G.Roero Arneis ロエロ・アルネイス2006」。

 作り手の見極めと品質管理において信頼できるインポーター「AVICO アビコ」社が輸入したピエモンテの優良ヴィンテージ2006年を指名買いしたものです。

 庄イタが自ら課している鉄則が〝産地を訪れたヴィンテージを確保すべし〟。

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【Photo】早熟なアルネイスの収穫はとうに終え、黒ブドウのバルベーラや収穫期を迎えたネッビオーロなどのブドウの葉が色づいた2006年10月末のロエロ。1杯のグラスを通して、10年前に訪れたこのブドウ畑へとタイムスリップできるのもワインの愉しみ

 熟成が進み、一段とコクが増したLa Rossa の塩気を、硬質なミネラル感と、時間を置いて温度が上がり始めてから開いてくる完熟リンゴや清楚な花のニュアンス、後味として残る嫌みのない苦味が和らげてくれます。

 率直な感想としては、アンティパストからオイル系パスタ、そしてグリルした鳥や豚肉といった料理と合わせたいワイン。抜栓直後は★★かと思った相性は、次第にボディの厚みと複雑味を増した最終ジャッジでは、★半分を積み増して★★+判定。

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【Photo】ロエロ・アルネイスの規範とされるジャコーザにふさわしいのは、例えばこんな美味しいアンティパスト。 (奥から順に) 鶏白レバーのブルスケッタ、福島県郡山市田村町ふるや農園の放牧豚プロシュット、トスカーナ風インサラータ、春キャベツのピューレ、イタリア風卵焼き、紅白ダイコンのピクルス、カポナータ ※ロケ地:福島市 「 オステリア・デッレ・ジョイエ

 山羊乳チーズとの相性が良いとされるVini Bianchi(=白ワインの複数形)と、La Rossa(=赤)とのアッビナメント紅白三番勝負の模様を今回はお届けしました。

 三番勝負を終えた時点で、まだ1/4が残っていたLa Rossa は、山羊乳らしいワイルドな風味が増す一方、桜の香りは風前の灯となり、購入直後とは別物へと変貌してきました。時間無制限アッビナメント延長戦の実況中継は、また次回。

to be continued...


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2016/04/09

Formaggio Cigliegio Atto II さくらチーズ 第二幕


Robiola di capra in foglia Cigliegio


 前回は北海道から一足早い桜の便りとなるチーズ、共働学舎「さくら」を取り上げました。盛岡では早くも石割桜が開花。過去40年で最速だった去年と同じペースで桜前線が北東北に到達し、仙台で満開宣言が出された今回は第二幕。

 西ヨーロッパ各地にチーズ作りを広めた古代ローマ以前に起源を持つイタリア版さくらチーズの話題をお届けします。

formaggi-Taccuino_Sanitatis.jpg【Photo】ローマ・パンテオン脇の路地を入った先にある「Biblioteca Casanatense カサナテンセ図書館」所蔵の養生訓「Tacuina sanitatis 」(14世紀)に収められた中世のチーズ作りの様子

 仙台市泉区「グリーンマート桂店」のチーズ売り場には、数こそ多くはありませんが、時として希少な輸入チーズがお目見えします。

 先日、そこを物色していて目に留まったのが、さくらと同じような小さな円筒形をしたチーズを濃緑色の葉で包み、赤い紐で縛った「La Rossa ラ・ロッサ」。

 「ムムッ、チーズのこんなパッケージングには見覚えがあるぞっ!

Ciliegia_Cerise2.jpg それもそのはず。La Rossa(下写真 / 税込1,975円)は、美味の宝庫である我が郷里ピエモンテ州南部、Alta Langa アルタ・ランガ地方産なのでした。

 それは牛・羊・山羊のいずれかの乳を用いる小ぶりなチーズを指す「Robiola ロビオーラ」の中でも、最も数が少ない山羊乳100%のチーズを、ピエモンテに自生する桜の葉を塩蔵し、包み込んだ変わり種です。

【Photo】「Tacuina sanitatis 」に収録の14世紀イタリアにおけるサクランボ狩りの模様

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 2006年(平成18)に製品化された当初は日本から空輸した桜の葉を使用していたというLa Rossa。日伊合作によるこのチーズが誕生する契機を作ったのが、ナチュラルチーズの輸入販売会社「フェルミエ」代表で、欧州各地のチーズに関する多くの著作がある本間るみ子さん。

formaggi-italiani-RHomma.jpg ヨーロッパのナチュラルチーズに魅了された本間さんがフェルミエ社を立ち上げたのが、ちょうど30年前。設立当初チーズは絶対にフランスに限ると考えていた本間さんが、イタリアのチーズの奥深い魅力に開眼したのは、彼の地を訪れるようになってからだといいます。

【Photo】作り手に会うため訪れたイタリア全土から、バリエーション豊かな19 のチーズを紹介する本間るみさんの著作「チーズで巡るイタリアの旅」〈駿台曜曜社1999年刊〉。 ランゲ丘陵や山岳地域を中心に伝統製法によるチーズが数多いピエモンテ州とヴァッレ・ダオスタ自治州には、冒頭の1章を割り当て、写真入りで5つのチーズを紹介。かぐわしい香りが届くような内容で旅情をかきたてられる

 正式な名前がないマンマの味的な自家製を含めると、イタリア全土に存在するチーズの数を正確に把握するなど、どだい無理な話。個性派揃いのチーズに限らず、製法や道具に対して画一的な衛生基準を求め、域内の市場拡大を狙ったEU 統合には功罪両面があり、本来の製法、つまるところ本物の味が失われていった側面も。

mappa-formaggi-DOP.jpg

 農産・畜産・海産物の生産・加工・調整の全工程が、特定の地域内で規定に沿って行われなければならないD.O.P (保護指定原産地表示)や、工程のいずれかが該当すれば認定を受けられるI.G.P (保護指定地域表示)に認定される50種近いFormaggi (チーズの複数形)が各地に存在しています(上写真)

IGP-logo.jpgDOP-logo.jpg 食に対する飽くなき情熱にかけては目を見張るものがあるイタリアは、製法や産地などに関してEU が定める厳格な規定をクリアした製品が最も多いお国柄。
 
【Photo】D.O.P (左)I.G.P (右)認定マーク

 フレンチレストランがそうであるように、食事の締めくくりに(飲み残した)ワインとともにチーズを食するのがフランス。イタリアでもそうした食ベ方をしますが、むしろ(魚介系を除く)料理の素材としてチーズが活用されることが多いように思います。

 パスタ料理にブロックごとすりおろすハードチーズはいわずもがな。たとえば北部のリゾットやポレンタの味付けのほか、パンとともに食するフォンデュータ、中部ならばピアディーナやカルボナーラ、そして南部ではナポリピッツァやインサラータ・カプレーゼと、枚挙に暇(いとま)がありません。

gianni_paula_lorena.jpg【Photo】ジャンニ(中央)とパオラ(右)の娘ロレーナ(左)、息子のフランチェスコほか、9名のスタッフで運営されるCORA Formaggi で生産する多彩なチーズの一例

 リグーリア州との境界が5kmほど南に迫るピエモンテ州南部、小高い山々と丘陵地帯が広がるアルタ・ランガ地方の小さな村Monesiglio モネジーリオにLa Rossa の作り手であるCORA Formaggi 社はあります。この地域の女性たちは、自家用や地元消費用に山羊乳のチーズを何世代にもわたって作ってきました。

con-staff_cravette.jpg

【Photo】イタリアの食とワインに関して最も影響力がある出版社「ガンベロ・ロッソ」が、その味がIndimenticabile (=忘れられない)で、最も美味しい山羊乳で作るロビオーラチーズだというお墨付きを与えたのが、CORA Formaggiの「Robiola del Castello ロビオーラ・デル・カステッロ」。2014年からは原料のミルクは、全て自社の飼育場「La Cravette」で生産。飼育場を支えるスタッフとコーラ夫妻

 ともにアルタ・ランガ地方で生まれ育ち、1985年に若くして結ばれたジャンニ・コーラとパオラ・フラッキア夫妻。二人が趣味で自宅用に手作りしていたチーズの本格的な製造に乗り出したのが1998年。近隣の生産者から牛乳や羊乳を仕入れるほか、2014年には自前の飼育施設「La Cravette ラ・クラヴェッテ」でヤギ300頭の自家飼いを開始。以前にも増して搾乳したての新鮮なミルクの調達が可能となりました。

SF0147630.jpg【Photo】スローフード運動発祥の地、ピエモンテ州ブラで隔年開催される乳製品の多様性に触れることができる国際イベント「Cheese 」には、このCastagno (=クリ)の葉で包み込んだチーズ「Castagneto」のような小規模な生産者による多種多様なチーズが一堂に会する

 燻製のほか、塩水や蒸留酒に浸したイチジク・クリ・ブドウ・クルミなどの葉で包み込んだり、さまざまなハーブ、干し草、トリュフ、殺菌効果がある灰、ワインの醸造過程の副産物である発酵したブドウ果皮などで表面を覆うことで、風味付けや保存性を高めた個性豊かなチーズは、イタリアやフランスを中心に欧州各国に多数存在します。

 La Rossa の原型となるチーズ「Robiolaロビオラ」は山羊乳製。古代ローマ以前の先住民族ケルト人まで歴史が遡る「Robiola Di Roccaverano ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ」は、ロンバルディア州ヴァレーゼ県の山岳地域で作られる「Formaggella del Luinese フォルマッジェラ・デル・ルイネーゼ」と並び、D.O.P 認定チーズでは数少ない山羊乳チーズとなります。

SF0149356.jpg【Photo】ピエモンテ州アスティ県Roccaverano からクーネオ県にかけての丘陵地帯がD.O.P エリアとなるチーズ「ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ」。50%以上の山羊乳の使用が義務付けられており、季節によっては牛乳と羊乳の混入が規定上では可能。新鮮なうちは寄せ豆腐のような外観だが、熟成が進むと黄色から赤っぽく変化。味わいもまた変わる

 ジャンニとパオラは、製法を受け継ぐ農家を訪ね歩いたり、文献を通してチーズ作りの技術を磨きました。彼らが使用するのは、2月から11月にかけての最も風味がよい山羊の乳。

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【Photo】CORA Formaggi の原料乳生産を担う「La Cravette ラ・クラヴェッテ」で飼育するヤギの中で頭数が最も多いのは、原産地であるスイスの地域名に由来する「Saanen ザーネン種」

 ピエモンテ伝統の葉包みチーズですが、加工に適した葉を確保し、殺菌してから一個ずつ手で包み込む手間がかかるため、近年ではあまり見られなくなりました。

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【Photo】La Cravetteではスイスアルプス地域原産のヤギ「Camosciate delle Alpi カモシアーテ・デッレ・アルペ種」も飼育する

 スローフード協会では、本部があるピエモンテ州Bra ブラを会場に、チーズと乳製品の祭典、その名もズバリ「Cheese チーズ」を1997年から隔年で開催しています。昨年9月のCheese 2015には、3日間の会期中に世界中から27万人が参加するブラを挙げての一大イベントに成長しています。

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【Photo】 目移りするほどのチーズをはじめとする伝統食材が勢ぞろいしたCheese 2015。トスカーナ州南部ピエンツァ近郊で作られる「Pecorino ペコリーノ」を、クルミの葉を敷き詰めたテラコッタ製の壷で追熟させた「Riserva Foglia Noce リセルヴァ・フォーリア・ノーチェ」ほか、羊乳チーズがてんこ盛り

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 伝統を重んじ、品質向上のための労を惜しまないCORA Formaggi は、2013年に開催されたCheese2013で、地域性豊かな秀れた作り手が対象となる「Locale del buon formaggio」に選出されています。

locale_buon_formaggio_2013.jpg

【Photo】 レンネット(凝乳酵素)を加えた山羊乳の成型作業を行うパオラさん

 フェルミエ社の本間さんが、Cheese 2003 を視察した足で、当時すでに取引があったCORA Formaggi の工房を訪れたのが、2003年9月末のこと。

 そこにはチーズを包む目的でグラッパに漬け込まれたさまざまな木の葉がありました。CORA Formaggi では、木の葉で熟成・風味付けする伝統的な製法によるチーズ作りの合間に、野山から葉を集め、洗浄してからグラッパで殺菌する作業を自前で行っていました。

 ジャンニとパオラは、桜・笹・柏・柿などの葉を和菓子や寿司に取り入れる文化が日本で培われてきたことを本間さんから教わります。
 
foglia_ciliegia.jpg

【Photo】近隣の野山に自生する西洋サクランボの木から採取した桜葉は、水で洗浄してから塩蔵。La Rossa のためだけに使われる

 そこでイタリアに自生する「Ciliegia(西洋サクランボ)」の葉を塩蔵して山羊乳チーズと組み合わせてはどうか、という話の展開から、伝統を踏まえた新たなチーズ作りに向けた挑戦が始まります。

 脂肪酸が多い山羊乳のチーズは、フランスの「Chèvre シェーヴル」、イタリアの「Caprino カプリーノ」、スイスの「Ziegenkäseツィーゲンケーゼ」など、タイプは多様。程度の違いはありますが、酸味を感じるのが一般的。

sakura-mochi-murakamiya.jpg

 試行錯誤の末に出来上がった試作品は、桜葉の甘い香りが素材由来の酸味を和らげ、桜餅(上写真は青葉区北目町「村上屋餅店」謹製)を彷彿とさせる香りがかすかに漂う上々の出来栄えでした。

 2年目からは桜餅のように葉ごと食べることができるよう、西洋サクランボの葉よりも芳香性が強い日本のオオシマザクラの葉を空輸。チーズの中に刻んだ葉を含ませることで、より桜のニュアンスが強く出た仕上がりとなりました。2013年からは再びピエモンテの桜葉を使用しています。

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【Photo】日伊合作によるCORA Formaggi 社のLa Rossa。直径10cm×高さ4cmほどの山羊乳100%のロビオラを、自ら集めた地元の桜葉で一つずつ包み込み、10日から15日の熟成を経て出荷される。賞味期間は45日

 La Rossa は、山羊乳チーズの常で日を追うごとに風味が変化するため、まずはフレッシュなうちに御開帳。イタリアの桜葉は、日本のそれとは違って硬く食用には不向き。うっすらと赤っぽい外皮に覆われた白いロビオラの中身は、とろ~りクリーミーな食感。

 繊細なヤマトナデシコのような共働学舎の「さくら」と比較すると、塩味が強く、山羊乳チーズらしい酸味は感じません。しっかりしたミルクの風味の余韻に桜の残り香が重なります。

la-rossa-abbinamento.jpg

 クセがない優しい味わいの牛乳製のさくらとはタイプを変えて試みたヴィーノとLa Rossa のアッビナメント(上写真)に関しては、長くなるので【 Atto】第三幕にて。

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