あるもの探しの旅

« いざ、紅白三番勝負。 | メイン | 正真正銘、これぞトリュフチョコレート!! »

延長戦 三番勝負

Gli abbinamenti tre vini contro formaggio la Rossa
Formaggio CigliegioAtto さくらチーズ 第四幕


 桜前線の北上に合わせてお届けして参りました桜の香り漂うチーズに関する話題。加熱したモッツアレラチーズのように、伸ばしに伸ばしてきましたが、いよいよ今回が最終章となる第4 弾です。

shiogamazakura2016.jpg

【Photo】種自体が国指定天然記念物に指定される「鹽竈桜(しおがまざくら)」。国府が置かれた多賀城の鬼門となる北東に位置する宮城県塩竈市「志波彦神社・鹽竈神社」。その境内には60本ほどの八重咲きのサトザクラの一種、鹽竈桜があり、うち27本が天然記念物に指定されている。ソメイヨシノに遅れること10日ほどで、30~50枚の花弁が手毬状に花開く見ごろを迎える。4月24日に催された今年の鹽竈神社花まつりにて

 ピエモンテ州南部、リグーリア州にほど近いアルタ・ランゲ地方産の山羊乳チーズ「La Rossa ラ・ロッサ〈2016.4拙稿「Formaggio CigliegioAtto II 】 さくらチーズ 第二幕」参照〉と、Vini Bianchi との組み合わせ三番勝負で消費しきれなかった残り1/4は、熟成が一段と進んでいます。

 そんな山羊乳チーズの特徴であるピリっとした風味が加わり、表面のオレンジ色が濃くなり、香りが一段と強くなって購入当初は感じられた桜葉の香りを覆い隠してきました。

atto4-la-rossa.jpg

 チーズに限らず日本で流通する加工食品には、食品衛生法で賞味期限の表示義務があります。その日付が迫りつつある状況ではありましたが、そもそも賞味期限とは、美味しく食することができる期日の目安にすぎません。

 多種多様な微生物や菌の活動によって熟成が進む(=風味が変化する)ナチュラルチーズは、加熱して菌が死滅するプロセスチーズとは違い、誤解を恐れずに言えば、食べ頃はあっても厳密な賞味期限など存在しないに等しい発酵食です。

 日を追うごと濃厚さが増したLa Rossa から想起した延長戦の組み合わせは、フルボディのヴィーノ・ビアンコを筆頭格に、渋味として感じるタンニンが強くない赤ワインや濃密なデザートワインなど。

St-Valentin-pinot-grigio2010.jpg

 1本目に選んだのは、南チロル地方屈指の優れた作り手「San Michele Appiano サン・ミケーレ・アッピアーノ」。

 その最上級ライン「Sanct Valentin サンクト・ヴァレンティン」の単一品種から作られる辛口白ワイン全5種類の中でも、特に傑出している「Pinot Grigio ピノ・グリージオ2010」。(左写真)

 第三幕で最良の組み合わせだった「Graminè グラミーネ2013」と同じトレンティーノ・アルト・アディジェ特別自治州の同じブドウ品種から作られており、比較の意味でキャスティングした次第。

 ロゼのような色合いのグラミーネは個性が際立つ演技派でしたが、オーストリアと国境を接し、ハプスブルグ帝国時代はオーストリアに併合されていたため、現在も優勢な独語表記ではSt.Michael-Eppan ザンクト・ミカエル・エッパンとなるサン・ミケーレ・アッピアーノは、いわば誰もが認める二枚目スター的なキャラ。ブドウ品種が同じでも、造り手によって個性が全く異なる見本のよう。

 アルト・アディジェ地方の中核となる街、ボルツァーノ周辺のブドウ生産農家350軒が組合員として加盟する協同組合組織に関しては、2013年6月に醸造家ハンス・テルツァー氏をお招きし、仙台で行われた試飲会レポートで詳報しています。〈2013.8拙稿「ビアンキスタ、面目躍如。」参照〉

St-Valentin-LaRossa.jpg

  試飲会で気に入って3本まとめ買いした時の印象から、キンキンには冷やさず、香りをたたせるため、あえて赤ワイン用の大ぶりなグラスを選びました。

 白の専門家〝Bianchista ビアンキスタ〟の異名を持つ醸造家が理想とするブドウの個性がピュアに伝わるボリューミーで密度の高い白ワインの世界観が、余すところなく表現されています。

 グラスからは熟れたマスクメロンやアップルマンゴーのゴージャスな香りが立ち上がってきます。スモーキーなニュアンスがあるピノ・グリージオと、熟成が進んだLa Rossa との相性は、極めて申し分ありません。

 スケールの大きなフルボディのサンクト・ヴァレンティン・ピノ・グリージオ2010ヴィンテージは、長熟に耐える白品種としてのピノ・グリージオの可能性を雄弁に物語る出来栄え。
 
 単体でもワインと対話するメディテーションも可能な素晴らしいヴィーノゆえ、ついスルスルとグラスが進みます。我に返って下した組み合わせ評定は、言わずもがなの★★★。

 さらに熟成が進み、一段と風味が増してきたLa Rossa には、もはや赤ワインが似つかわしいように思えました。

marotti-campi-lacrima.jpg

〝コクや香りなど味わいの特徴を合わせるべし〟とは、前回述べたアッビナメントの常道。

 そこで取り出したのが、アドリア海にほど近い中部イタリア・マルケ州アンコーナ県Morro d'Alba モッロ・ダルバ周辺だけで栽培されるブドウ品種「Lacrima Nera ラクリマ・ネラ」から醸したヴィーノ・ロッソ2本(左写真)。エチケッタをご覧の通り、作り手はいずれも「Marotti Campi マロッティ・カンピ」。

 共働学舎さくらとのアッビナメントでは、ラクリマを泡仕立てにしたスプマンテと組み合わせましたが、泡ものとの相性は今ひとつ。〈2016年3月拙稿「さくらの便りは北の国から」参照〉 捲土重来を期してラクリマのスティルワインに候補を絞り、アッビナメント延長戦第2ラウンドに臨みました。

LaRossa-lacrima2013.jpg

 完熟すると実割れしやすく、裂け目から果汁が滲み出すさまが、涙(伊語:Lacrima )に似ているため、ラクリマと名づけられたというこの品種。

 そのリスクが高まる9月下旬まで収穫を控え、最適なタイミングで手摘みしたブドウを2-3年落ちのフレンチバリック樽で12ヵ月熟成後、6ヵ月の瓶熟を施す(一般に上級ラインを意味する)Superiore スーペリオーレ(上写真左側)という選択肢も手元にあるにはありました。
 
 La Rossa との相性を考慮し、最終的に選んだのは、「Lacrima di Morro d'Alba Rubico ラクリマ・ディ・モッロ・ダルバ・ルビコ2013」。

 こちらは、収穫したブドウの8割は通常のアルコール発酵を施しますが、2割を房のまま密閉したタンクで醗酵させる(イタリアの新酒ノヴェッロに用いる)炭酸ガス浸漬法で醸してから圧搾し、両者をブレンド後にステンレスタンクで6ヵ月、瓶熟2ヵ月の熟成を経て出荷されるカジュアルなタイプです。

 ピエモンテ州モンフェラート原産とされ、食事との汎用性が高い黒ブドウ「Dolcetto ドルチェット」と風味が似ているアロマティックな希少品種ラクリマ〈2011.11拙稿「ボジョレー騒動はさておき...」参照〉。前回のスプマンテでは、★評価に留まったものの、相手を変えた二度目の桜チーズとのアッビナメント結果はいかに。

cavalchina-la-rosa.jpg

 ヴィーノが樽を使っていない分、ストレートに感じられる品種の特徴であるバラの甘い香りが、刺激的なチーズの風味をマイルドに和らげてくれます。スプマンテでは阻害要因となった泡がない分、組み合わせの妙が生かされ、評定は及第点の★★。

 延長戦の最後は、北イタリアのデザートワインで締めましょう。桜はバラ科の植物であることから、選んだのはバラの花を意味する「La Rosa ラ・ローザ2006」。

 ラ・ロッサにラ・ローザ。単なる語呂合わせです(^ ^;ゞ。

miele-castagno-rosa.jpg

 La Rosa は、赤用に混醸されるケースが多い黒ブドウ「Molinaraモリナーラ」と、微発泡のMoscato d'Asti が第三幕1本目で登場した白ブドウ「Moscato モスカート」を収穫後、潜在アルコール度数が18度に達する12月まで陰干してから圧搾。年明けの春に瓶詰めされます。

 醸造所でブドウの陰干しを目の当たりにした2003vinを今年開けた「Vin San Giusto ヴィン・サン・ジュスト」のように、6年に及ぶ樽熟期間に60%まで凝縮する珠玉のデザートワインと比べれば、あっさりした仕上がりです。

 ガルダ湖の南東、アディジェ川流域の盆地に醸造所を構える「Cavalchina カヴァルキーナ」という作り手によるものです。

miele-la-rossa.jpg

 今年50 回目を迎えたイタリア最大のワイン見本市「Vinitaly ヴィニタリー」が毎年4月に開催されるヴェローナを擁するヴェネト州のD.O.Cゾーンでいえば、そこは同郷の「Soaveソアーヴェ」の名声に隠れがちな佳酒「Bianco di Custoza ビアンコ・ディ・クストーザ」や、軽やかな赤「Bardorinoバルドリーノ」を産出する地域です。

 凝縮したブドウを圧搾して得られる天然の甘味と綺麗な酸味が絡み合うこのデザートワインと、刺激的な風味の山羊乳チーズとの組み合わせには、美味しいものには目がないイタリア人もそうするように、媒介役となる蜂蜜を加えた方が良さそうでした。

 ラベルに「Sapore pungente accostalo ai formaggi (=刺激的なチーズの風味を和らげる)」と記されたトスカーナ産クリの花蜜Miele Castagno (上写真)を取り出しましたが、後味に苦味が残り、熟成した山羊乳チーズとの相性はよくありません。

ishiwari-la-rosa.jpg

 そこで引っ張り出したのが、共働学舎さくらにも使った盛岡・藤原養蜂場の石割桜一番蜜。

 国指定天然記念物に指定される石割桜や、桜の名所として親しまれる盛岡城址に近いビルに設置した巣箱の蜜蜂が集めた花蜜はメープルシロップを煮詰めたような上品な風味で、心地よい甘い香りが広がります。

 チーズのコクはそのままに、鋭角的な刺激を蜂蜜が優しく包み込んでゆきます。そこに加わるLa Rosa の適度な甘味と酸味。
 
 チーズ、ヴィーノ(⇒桜はバラ科)、蜂蜜の全てが桜というキーワードでつながり、色合いまで揃って三位一体の調和を生み出します。

 「che Buono !♪ (=なんて美味いんだっ!♪)」と感嘆しつつ、庄イタが下した評定は、最高点に星半分オマケして★★★

石割桜2.jpg

【Photo】盛岡地方裁判所前庭の真っ二つに割れた周囲21mの花崗岩の裂け目からは、高さ10m・根回り4.3mの樹齢380年と推定されるエドヒガンザクラ「石割桜」が生えている。例年4月中旬に開花するが、過去40年で最速だった昨年と同じ4月8日に今年は開花した。国指定天然記念物

 お届けして参りました桜にちなんだチーズとヴィーノのアッビナメント劇場全4幕。こうして大団円を迎えたのでした。 

baner_decobanner.gif
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

Luglio 2018
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

archive.gif

Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.