あるもの探しの旅

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2016/08/20

Breakfast at Mutsuminato ~陸奥湊で朝食を~

三位一体の黄金比。キミよ知るや「ヒラメの漬け丼」
旨さどっぷり@八戸

 米国の小説家トルーマン・カポーティ原作による1961年公開の映画「ティファニーで朝食を(原題:Breakfast at Tiffany's )」は、早朝の人通りがないニューヨーク5thアヴェニューの高級宝飾店ティファニー前に1台のタクシーが停車するシーンで始まります。

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 タクシーから降り立ったのは、名前のないネコとの自由奔放な一人暮らしをNYのアパートで謳歌するホリー・ゴライトリー(オードリー・ヘップバーン)。

 原作の設定ではコールガール役ゆえ、仕事明けなのか、あるいは夜通し遊んで帰宅の途中なのかもしれません。長い髪をアップにまとめ、前髪にティアラをあしらったホリーは、ジバンシィの黒いカクテルドレスに身を包み、5連の模造パールネックレスで装い、レイバンのサングラスをかけています。

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 そんなドレッシーな装いにもかかわらず、ホリーはショーウインドーを覗きこみながら、紙コップのコーヒーを手に紙袋から取り出したデニッシュ・ペストリーをパクリと立ち食い。(上画像)

 パンとコーヒーだけの朝食というと、ヨーロッパが渡航先のパッケージツアーに組み込まれるホテルの定番「コンチネンタル・ブレックファースト」でご経験の方もおいでかと。

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 飲み食いが生きがいである欧州のラテン民族は、往々にして深夜まで家族や友人とアルコールと共に動物性蛋白質が中心の夕食をふんだんに摂取します。そのため、反動としての簡単な朝食スタイルが定着しています。

 肉食系のヨーロッパから見れば、総じて草食系と言って差し支えない日本人。前夜によほどハメを外して深酒をしない限り、パンとコーヒーだけの朝食では物足りないと感じるのでは?

 イカと並んで青森県八戸(はちのへ)港が水揚げ日本一のとある白身魚の美点を最大限に引き出したほっぺが落ちそうになる絶品朝ごはんを頂くため、夜半に仙台を発った8月某日。途中で休憩をとりながら東北自動車道を北上すること300km。早朝に八戸入りしました。

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 時刻は7時15分。およそマンハッタンとは雰囲気が異なるJR八戸線・陸奥湊駅前通り(上画像)を散策しながら、庄イタが思い起こしたのは、街並みとシチュエーションが似ているようで似ていないこの映画の冒頭シーンでした。

 陸奥湊駅前通りから500mほど離れた館鼻(たてはな)岸壁で日曜朝に開催される「館鼻岸壁朝市」に規模では譲りますが、1953年(昭和28)開設当時の猥雑な雰囲気が色濃い「八戸市営魚菜小売市場(下画像)をはじめ、時間が遡ったかのような錯覚を覚える陸奥湊駅前通りは、ディープな魅力に溢れています。

 駅を挟んで陸奥湊駅前通りの東西300 mほどの区間では、日曜を除く早朝3:00から正午まで「陸奥湊駅前朝市」が開かれます。

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 苦味が特徴の地キュウリ「糠塚キュウリ」が目を引く露天市や、養殖物とは明らかに異なる突起が目立つ形状と、のるかそるかの特有のクセがないため、宮城の養殖ホヤが正直苦手な庄イタでもOKな天然マボヤなどが店頭に並ぶ魚市場。そこで働くお母さんを指す南部弁「イサバのカッチャ」たちが居並びます。(上・下画像)

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 良質な脂が乗り切った「八戸前沖サバ」を食した2014年夏の訪問レポートでは、市営魚菜小売市場の朝ごはんをご紹介しました〈2014.11拙稿「発進! みちのく潮風トレイル」参照〉が、今回の目的地は違います。

 JR陸奥湊駅北口にあるイサバのカッチャ像の前をウミネコの繁殖地として知られる鮫町の蕪島(かぶしま)方面に右折、目指すは活気ある陸奥湊駅前通り沿いにあって、朝8時を回る頃には店の前に行列が出来始める「みなと食堂(下画像)で一番人気の「ヒラメの漬け丼」(税込1,000円)。

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 よしもと芸人とにかく明るい吉村が会長を務め、こよなく丼ものを愛する全国津々浦々の人々で組織する一般社団法人 全国丼連盟が、2014年(平成26)秋に実施した第1回全国丼グランプリには、日本各地から1,262種類の丼ものがエントリー。

 全11ジャンルのうち、海鮮丼部門で金賞に輝いた7点の一つが、2011年(平成23)に登場し、口コミで美味しさが全国に伝わり、今では八戸みなと食堂の看板メニューとなったヒラメの漬け丼です。

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 ブサかわ犬「わさお」ともども、日本海に面した鰺ヶ沢で見逃せない夏の風物詩イカカーテンで知られる肉厚のイカ、津軽海峡のクロマグロ、脂の乗りが尋常ではない八戸前沖サバ、陸奥湾の養殖ホタテなど、三方を海に囲まれた青森の名だたる海産物を差し置き、青森の県魚はヒラメなのです。

 昨年6月、テレビ朝日の番組「いきなり!黄金伝説。」2時間スペシャル「他県からなぜかお客が集まる大人気ローカル食堂」で、みなと食堂が取り上げられました。それに喰いついた家族の強い求めに応じ、みなと食堂を初めて訪れたのが昨年11月。〝寒平目〟ならではの上質な脂と引き締まった歯応えが堪能できるヒラメの旬を迎えた時季でした。

minato-shokudo-counter.jpg【Photo】店内はカウンター8席と4人掛けテーブル1卓。「本日の四合わせ丼(ホタテ・マグロ・イクラ・甘エビ)1,300円」「ヒラメ漬け+エンガワ半々丼1,300円」など品書きは、マジックペンで手書きした無造作な張り紙というのも漁師町ならでは(上画像)。飾らない店のしつらえとは対照的に、ヒラメの漬け丼は、店主の繊細かつ緻密な仕事のなせるものに相違ない

 みなと食堂をご夫婦で切り盛りする店主の守 正三(もりしょうぞう)さん。遠洋漁業や鮮魚店での従事経験を通して魚の目利きを培いました。

 陸奥湊駅前通りの一角に、空き倉庫を改装したみなと食堂がオープンしたのが、2001年(平成13)。翌年12月に東北新幹線が盛岡から八戸まで延伸し、観光資源の掘り起こしが求められていた時期と符合します。

hirame-zuke01.jpg【Photo】特製ダレに漬けたヒラメの切り身がびっしりと敷き詰められ、地鶏の卵黄がトッピングされた「ヒラメの漬け丼」(味噌汁・小鉢付き1,000円)。守さんの丁寧な仕事が光る八戸ならではの朝ごはん。上画像は昨年11月に食したヒラメの漬け丼・せんべい汁セット(小鉢付き1,350円)。ご当地の味で地域おこしをしようと、八戸の市民ボランティア団体「八戸せんべい汁研究所」(通称「汁゛研(じるけん)」)が企画したのが「B1グランプリ」。2006年2月に八戸で第一回が開催された

 10年目の節目を迎えた2011年(平成23)、店を一躍スターダムの座に押し上げたが、ヒラメの漬け丼でした。稚魚を放流しているため、ヒラメは年間を通して八戸近海で水揚げされます。昔の漁師料理をもとに、独自の工夫を加えてメニュー化したのだといいます。

hirame-zuke02.jpg【Photo】漬けヒラメ・地鶏の卵黄・漬けタレが染みた温かなご飯。具材はこれだけ。シンプルなれど奥が深い三位一体のアンサンブルが至福の朝へと導く

 水揚げされてから2日間低温熟成させ、うま味成分が増したヒラメの白身は、透明感を保ちつつ飴色がかってきます。注文を受けてから特製の漬けダレに切り身を漬け込みますが、その時間が長すぎても素材の甘味を損なうため、3分程度に留めます。

 そうして素材が最も美味しいタイミングを見極め、暖かいご飯が盛られた丼に、ねっとりした食感の熟成ヒラメの漬け切り身を重ね合わせながら埋め尽くすよう並べてゆきます。

 昨年11月に初めてヒラメの漬け丼を口にして思ったのが、「これは最強のカルパッチョ+リゾット発祥のイタリアにとって、青天の霹靂(へきれき)な創作料理として逆輸出できるぞ」ということ。

hirame-zuke03.jpg【Photo】ヒラメの漬けダレは、青森県三戸郡田子町(たっこまち)特産のニンニク「福地ホワイト」+本みりん+「陸奥八仙」で知られる地元八戸酒造の「陸奥男山」からなる合わせ醤油の卵かけご飯 × 熟成漬けヒラメの豪華版。これが旨くないはずがなかろうというもの

 ヴェネト州産の辛口スパークリングワインProsecco プロセッコに白桃のピューレを加えたカクテル「ベリーニ」や、牛の生肉を使った料理「カルパッチョ」発祥の店といえば、ヴェネツィアの超有名店「HARRY'S BAR(ハリーズ・バー)」。

 イタリアでも現在ではポピュラーとなったのが生魚を使ったカルパッチョ。日本から逆輸出された魚のカルパッチョを考案したのは、銀座の有名店「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務オーナーシェフ。

 つなぎのソース役を箸で潰した卵黄が果たすニンニク醤油ベースのリゾット+かもめ食堂式漬けヒラメのカルパッチョというド鉄板な組み合わせは、イタリア人・日本人だけでなく国籍を問わず人気を博すことでしょう。守さん、いかがでしょ?

hirame-zuche2016.8.jpg【Photo】「卵かけご飯が嫌い」と仰る方でなければ、日本人のDNAに訴えてやまないリピート必至のヒラメの漬け丼。三社大祭の期間中で、街のあちらこちらからお囃子の笛の音が聞こえてくる2016年盛夏ver. 。2度目にして改めて実感「いい仕事してますねぇ~」

 すんなり入れた店内には、守さん夫妻以外まだ誰もいません。カウンター席の奥に陣取り、そんな妄想を巡らしつつ、高まる期待を胸に丼が運ばれてくるのを待つことしばし。庄イタに限らず、ほとんどの客が注文するのはヒラメの漬け丼であることがわかります(笑)。

 それも無理はありません。ほっかほかの卵黄かけご飯に、これでもか!!とばかりに旨さを極めた熟成ヒラメの漬けがたっぷりと加わるのですから。漬けヒラメ・卵黄・しょうゆダレご飯が織り成す絶妙な三位一体の黄金比率には、誰しもが魅了されるに違いありません。

 ぜひっ!

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 伝説や歌舞伎に題材をとった極彩色の奇想天外な27台の大型山車(上・下画像)や、獅子頭による統一がとれた権現舞一斉歯打ちが見事な法霊神楽(下動画)、頭を噛まれると子どもが聡明になるとされる虎舞など、古式ゆかしい時代行列が繰り広げる圧巻のスペクタクル「八戸三社大祭」。

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 起源を295年前の享保年間まで遡る八戸三社大祭は、国指定重要無形民俗文化財に指定される全国各地の「山・鉾・屋台行事」32件の一つとして今年の秋にユネスコ無形文化遺産への登録が見込まれています。その3日目「お還り」と重なったその日。

 八戸ステイ2日目の朝は、八戸前沖サバを食そうと心に決めていました。みなと食堂から市営魚菜小売市場に事前確認に立ち寄ってから庄イタが向かった先は、JR八戸線鮫駅からほど近い蕪島(下画像)

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 昨年11月22日のみなと食堂への初訪問時は、蕪島の中心に建つ弁財天を祀る蕪嶋神社に立ち入ることができませんでした。それは不幸にも同年11月5日未明に発生した火災で蕪嶋神社の社殿がご神体ともども全焼してしまったがため。

kabushima2015.11.jpg【Photo】2015年11月22日に八戸を訪れた際の蕪島。同月5日未明に発生した火災で焼け落ちた蕪嶋神社の社殿が残る

 現在、社殿が建っていた場所は更地になっています(下画像)。八戸市民の篤い信仰を集める神社ゆえ、2年後の再建を目指し、官民を挙げた取り組みが行われています。海鳥の一大繁殖地を間近で目にすることができるのは極めて珍しいため、蕪島は天然記念物に指定されています。

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 繁殖期のピークには3万羽以上のウミネコが乱舞する蕪島も、雛鳥たちの巣立ちの季節を迎え、大多数が南へ移動したウミネコは数えるほどが留まる状況でした。そこで目撃したのが、ウミネコ親子の朝ごはん。

kabushima_2012.6.15.jpg【Photo】2012年6月。火災発生前の蕪嶋神社境内。抱卵中のウミネコで足の踏み場に注意を要する状態。孵化(うか)して間もない雛(下画像右側)は保護色の羽毛に覆われている

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 子育て中のウミネコにあっては、エサの横取りは日常茶飯事。縄張り意識が強いため、境界を越えた場合、相手がたとえ小さな雛鳥だろうと、長く鋭利な嘴(くちばし)で容赦なく攻撃します。厳しい生存競争を生き抜いて巣立つのは、孵化した雛の1/3程度なのだそう。

 蕪島からほど近く、イカの水揚げも多い鮫浦港から運んだのでしょうか。一匹のヤリイカをくわえた親鳥が、成鳥とさして変わらぬ大きさに育った茶褐色の羽毛に覆われた雛鳥がいる自らの縄張りに舞い戻ったところでした。高級品のヤリイカを狙うとは、さすがイカの町八戸のウミネコは口が肥えてるなぁ。と妙な感心をした庄イタ。

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 春先から初夏にかけてのピーク時と比べ、生存競争のライバルが少なくなったためか、口移しではなく地面にイカを差し出しました(上画像)。成長期の雛鳥は大食漢でもあります。待ってましたとばかりに雛鳥がイカにありつくのかと思いきや・・・。

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 雛の目の前でイカをたちまちにして一飲みにしたのは親鳥のほうでした(上画像)。意表を突かれた雛鳥は、鳴き声を上げながらエサをねだるかのように親鳥のもとにすり寄ってずっと離れませんが、目を合わせない親鳥はそれに応じる素振りを見せません(下画像)

 これは紛れもないウミネコが子別れの時期を迎えた証拠。甲斐甲斐しくエサを運び続けた親鳥は、巣立ちが近くなると雛にエサを与えなくなります。そうして突き放すことで我が子の独り立ちを促すのです。

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 成人年齢を18歳に変更する民法の改正案が来年の通常国会に提出される運びとなったこの夏、18歳に選挙権が引き下げられた初の参院選が実施されました。

 厳しい野生の掟を目の当たりにして、「立派な大人になるんだよ」と、親離れ間近となった雛鳥にエールを送ったのでした。

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みなと食堂
 住:青森県八戸市大字湊町字久保45-1
 Phone:0178-35-2295 *予約不可
 営:6:00~15:00 日曜定休 P有り

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