あるもの探しの旅

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Compagna di Piemonte = ピエモンテ同窓会 =

旧交を温め、白トリュフに耽溺す

 年が改まり、昨年11月に神奈川県鎌倉市JR大船駅近くの「アトリエキッチン鎌倉」で開催された「白トリュフとピエモンテ料理の夕べ」。

 魅惑的な響きと香り漂う集いの場となったアトリエキッチン鎌倉に揃ったのは、イタリア大使館の書記官や料理研究家など、20名以上の多彩な顔触れ。その中に懐かしい顔もありました。

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【Photo】2006年10月31日の朝。カネッリでの一週間を過ごしたRupestrで同行メンバーとともにセルフタイマー撮影した1枚。10年の時を経て、八巻さん(左から6番目)、ジョルジョ(中央)、西川さん(右から3番目)と庄イタ(左端)が再び集った

 まずはピエモンテ州アスティ県カネッリのアグリツーリズモ「Rupestrルペストゥル」オーナーシェフ、ジョルジョ・チリオ氏。竹灯籠に灯を点す点灯ボランティアを共に行った「宵の竹灯籠まつり」で新潟・村上を案内後、鶴岡を経て翌日仙台駅まで送った2007年10月以来の再会です。

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【Photo】2007年10月。サケが大好物というジョルジョを伴い、宵の竹灯籠まつりの折に訪れたのが新潟県村上市。古風な町屋造りの商家が建ち並ぶ鮭の町・村上をそぞろ歩きしながら立ち寄ったのが「イヨボヤ会館」や、梁と組み柱が4間幅の吹き抜け天井を支える築200年の「吉川酒舗」など。「味匠 喜っ川」で、いつになく神妙な面持ちで、芸術作品のごとき鮭の加工品を試食するジョルジョ。塩引きや酒びたし用に鮭を干している店舗奥に案内すると、両手を広げて感激を露わにした

 今シーズンは白トリュフが不作で量の確保が難しく、例年以上に貴重な白トリュフをピエモンテから携えての来日となりました。

 そして2006年10月末にイタリア・トリノで開催された「テッラ・マードレ2006」と「サローネ・デル・グスト」の取材旅行でご一緒した雑誌「四季の味」前編集長の八巻元子さん、フードライターの沖村かなみさん、盛岡在住の税理士でジョルジョから〝Azzuco アズーコ〟とピエモンテ訛りの(?)ファーストネームで呼ばれる西川温子(あつこ)さん。

piatto2012_04morioka.jpg ジョルジョとのご縁を繋いで下さった西川さんには、仙台圏で29万部を発行する月刊誌Piatto2012年4月号の巻頭特集「春の日帰りトリップ・盛岡女子旅」の地元ナビゲーターとしてご登場頂き、震災後の無事を確認していました(画像左側)

 一方、ジョルジョ、八巻さん、沖村さんとは、イタリアでご一緒した翌年の秋、西川さんも含めて鶴岡「イル・ケッチァーノ」で同窓会よろしく会食しています。

 その時もジョルジョは白トリュフを持参しており、心ゆくまでピエモンテの妙なる香りを満喫できるはずでした。

 ところが、ここで述懐する事件が起きたため、忘れがたい一夜として今も記憶に残るイル・ケッチァーノでのピエモンテ同窓会 第1章を振り返ると...。

 カネッリにある醸造所「Gancia ガンチア」の辛口スプマンテ「Carlo Gancia Metodo Classico Brut(上段左)で乾杯。お任せコース一皿目の定番「ワラサと満月の海の塩」(上段中央)以降は大皿取り分けで魚料理5皿が立て続けに運ばれてきました。

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 続いてパスタ料理3皿・ピザ1枚・アクアパッツァが次々と登場(下画像4点)。こんな大盤振る舞いが続き、肝心の真打ち白トリュフの登場を待ち焦がれるうち、胃袋の物理的な許容量は限界に到達しつつありました。

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 ジョルジョの発案でRupestr滞在中に催されたガラディナーで、テッラ・マードレ2006に招聘された奥田政行シェフが60名を超える参加者にメインディッシュとして提供したのと同じ「庄内牛の牛タン・ゴボウの香りの煮込み」(下段左)に続き、3皿目の肉料理「米沢牛のタリアータ・山ブドウのヴィンコットソース風味」(下段右)が出た後、厨房から「この後ドルチェを召し上がりますか?」とコース終了を意味する打診がありました。

 その問いかけに唖然として顔を見合わせたが、テーブルを囲んだ一同。

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 その頃から料理人としての本分以外に割く時間と労力がキャパを遥かに越え、オーバーワークで極端に疲弊していたオーナーシェフ氏。肝心の白トリュフを使った料理をなんと出し忘れたのです。ガーン....。(0д0!!)

 パサパサの状態で厨房から出てきた店主の様子からも、気力・体力ともに万全ではないことは明らか。悪びれるかのようにエヘヘ...と頭をかくシェフを前にすると、誰もが彼を叱責する気すら萎えてしまったのでした。

 満腹のあまり、ドルチェはおろか締めのカッフェすら、誰もこの夜はオーダーしなかったように記憶しています。この目でジョルジョが厨房に預けるところまでを確認した白トリュフを、私たちは一片たりとも口にすることはできませんでした。Mamma mia !!(=なんてこったい!!

。゚+(。ノдヽ。)゚+。。・゚・(*ノД`*)・゚・。(oTT) piangereeee (TTo)。・゚・(*ノД`*)・゚・。+(。ノдヽ。)゚+。゚

 心ここにあらずで質の低下が顕著となった某店からは次第に足が遠いた一方、涙なくしては語れないよもやの展開で食べ損ねた我が郷里の超高級食材、白トリュフへの思慕は募るばかり。

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 秋のトリュフ狩りシーズンを迎えると、大ぶりな白トリュフを手にした白トリュフの精が、庄イタの夢枕に立つようになりました(上画像 / イメージ図)

 悶々とした日を送る中で、西川さんから今回の企画開催を知らされました。そこに前回〝目の保養だけじゃねぇ...。〟で述べた通り、旧友から送られてきたピエモンテ土産のレシピ本に載った白トリュフのリゾットが、リベンジへと庄イタを駆り立てたのです。いざ鎌倉!

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【Photo】大船駅西口から徒歩3分のアトリエキッチン鎌倉へと向かう道すがら。店の前を流れる柏尾川に架かる電線に留まる鵜(ウ)の群れ。庄イタの目には、ウ長調の「白トリュフ序曲」の譜面であるかのように映った

 庄イタにとっては、期せずして〝ピエモンテ同窓会 第2章〟の場となったアトリエキッチン鎌倉を主宰する和田茂幸さんは、自然豊かな鎌倉市北西部に自家菜園を所有。畑とキッチンスペースを舞台に幅広い世代の食育に資するさまざまな催しを企画・運営しておいでです。

 Facebookを通じ、会費7,000円で事前に提示された白トリュフとピエモンテ料理の夕べのメニューは以下の通り。

 ・前菜:ペペロナータ(パプリカ)など自家製野菜ブルスケッタ3種
 ・チーズ:ロッカベラーノ産山羊のチーズ モスカートのモスタルダ添え
 ・パスタ:タリオリーニ 卵黄と白トリュフ添え
 ・メイン:肉ときのこの煮込み料理
 ・ドルチェ:ビスコッティなど
 ・自家製ワイン3種(シャルドネ、ドルチェット・ダスティ、モスカート・ダスティ)

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【Photo】東の空から昇ってきた晩秋の朝日に輝く朝霧が立ち込めたRupestr のブドウ畑。果樹園なども含めた耕作面積はおよそ3ha。海抜450mの高台にあるブドウ畑から北方に目線を転じた遥か先には、万年雪を頂くヨーロッパアルプスの山並みが連なる

 宿泊客を迎え入れるアグリツーリズモに改装する以前、1994年にブドウの古い品種名を名前にしたレストランとして開業したRupestr。ジョルジョは「ピエモンテの葡萄畑の景観」として2014年にユネスコ世界文化遺産に登録された地元カネッリの大手ワイナリー「Gancia ガンチア」で醸造の仕事に就いていました。

 自家製ヴィーノほか、フルーツのシロップ漬け「モスタルダ」、イタリアンパセリ・オリーブオイル・アンチョヴィなどで作るピエモンテ風ソース「バニェット・ヴェルデ」など、Rupestr製瓶詰め食品も当日は購入可とのご案内でした。とはいえ、何につけ段取り通りには物事が進まないのがイタリアです。

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 またも短命政権に終わったレンツィ元首相が推し進めた民営化が思うように捗らないイタリアの郵政公社Posteitaliane の国際郵便でカネッリから発送した販売用の荷物は指定通りの期日に届かずじまい。

 よって、Rupestr 滞在時、美味しさに刮目した微発泡性でほんのり甘いマスカット風味の「Moscato d'Asti モスカート・ダスティ」(上右側)を購入しようという目論見は、こうしてあえなく水泡に帰したのでした。Mamma mia !!!

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 一度や二度、計画が狂った程度で凹んでいては、飛びぬけて陽気なジョルジョがそうであるように、筋書きのないドラマが日常となるイタリアでは生きてゆけません。

 気を取り直し、白トリュフとピエモンテ料理の夕べの模様をさっくりとご紹介しましょう。

【Photo】夢か現(うつつ)か幻か。幾度となく夢枕に立った白トリュフの精が、庄イタの眼前に現る!!の図。概して内省的な人が多いといわれるPiemontese(=ピエモンテ人)らしからぬジョルジョ。突き抜けた陽気さから、Napoletano(=ナポリ人)に勘違いされるばかりか、そのウェット感が皆無の明朗快活さゆえ、Americano(=アメリカ人)ともいわれるのだとか(苦笑)

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 開始時刻まで幾分か早めに到着したアトリエキッチン鎌倉では、ジョルジョや八巻さんらが仕込みの真っ最中(上画像)

 自ら栽培した白ブドウ「シャルドネ」のみを使用し、数年前にRupestrの地下に完成させた醸造施設で醸すジョルジョとはおよそイメージがかけ離れた(笑)エレガントでスッキリした印象のヴィーノ・ビアンコでまずは乾杯。

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 蝶ネクタイ姿でビシっと決めたジョルジョが、冒頭にゆる~く挨拶。立食形式で肩が凝らないカジュアルな雰囲気のもとで会合はスタートしました。

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 少し熟成させた山羊乳チーズ「ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ」、ズッキーニやパプリカのブルスケッタ、黒ダイコンなど鎌倉産西洋野菜のバーニャカウダ、鶏肉のキノコソース煮込など、ジョルジョがマンマのクリスティーナから受け継いだ優しい味付けがなされたお手製料理が皿盛りで登場。

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 うやうやしくジョルジョが取り出した白トリュフは、卵と白トリュフを練り込んだピエモンテの乾燥パスタ「Tajarin タヤリン」に混ぜ込んでの提供となりました(下画像)

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 本来はスライサーで白トリュフを目の前でシュリシュリしてもらい、料理にかけてもらうのが最もトリュフの香りが立つ食べ方です。今季はシーズン当初から白トリュフが不作のため価格が高騰。量の確保が困難だったため、あまねく参加者に白トリュフを楽しんでもらおうというジョルジョの配慮です。

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 それでもお代わりを所望した参加者には2皿目が行き渡る量は用意されていました。古代ローマに起源が遡るというレディ・ファーストを流儀とする庄イタは、最後に鍋にこびりついた残りをパンですくって食べるピエモンテ式食べ方を実践(上画像)

 次に予定にはなかった料理が登場。加熱すると甘味が出るポロネギ(リーキ)の旨味がジンワリ広がるリゾットです(下画像)。滋味深く優しいジョルジョの味付けに、ピエモンテ滞在中、我が家代わりに温かく迎え入れてくれたRupestrで過ごした日々が蘇ります。

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 前稿でご紹介した旧友から送られてきたRiso Gallo社発行のレシピ本101 Risotti dei migliori ristoranti del mondo.(=世界の至高のレストランのリゾット101皿)に推挙したいリゾットに続く〆のドルチェは、モスタルダが付け合わされたピエモンテの素朴な焼き菓子2種類とパンナコッタ(下画像)

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 Rupestr 滞在中、道案内をしている自覚があるのかないのか、どこへ向かうにもジョルジョは猛スピードで先導するのが常。遅れを取ってはならじと大型ワゴン車でタイヤを鳴らしつつ爆走しなくてはなりませんでした。

 時として立ち込める濃霧で前方の視界が悪い中、車酔いとも戦っていたはずの同乗者を含め、強いられる緊張から解放されたのがRupestrでジョルジョが用意する食事だったのです。

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【Photo】(左から)料理研究家の山内千夏さん、今回も元気いっぱいだったジョルジョ、同窓会メンバーの西川温子さん、同じく沖村かなみさん、同じく八巻元子さん、庄イタ

 前世の記憶を呼び覚ます白トリュフとジョルジョの手料理で、郷里への里心がむしろ募った感すらあったこの集い。年が改まってから、自分はなんと果報者なのだろうと実感した後日談がありました。それはまたいずれ。

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