あるもの探しの旅

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至福のデザートワイン

祝・Wine Adovocate 誌100点獲得 !
超レア。アヴィニョネジ ヴィンサント飲み比べ


 身も心もあま~くトロける「デザートワイン」はお好きでしょうか?

 北イタリアで過ごした前世を含めずとも、数限りなくワインとの出合いを経験してきた庄イタ。フィネス(⇒「洗練された高貴さ」といった意味のワインへの賛辞)を感じるヴィーノ・ロッソに負けず劣らず、いや、それ以上に色めき立つのが、甘美な夢見心地へと誘ってくれるデザートワインなのです。

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【Photo】前稿「イタリア瓶属 大移動 」で、日本国内には一握りのストックしか残っていないであろうQuorum Barbera d'Asti'99と並べてチラ見せした「BUKKURAM Passito di Pantelleria D.O.C. ブックラム・パッシート・ディ・パンテレッリア」。作り手は「Marco de Bartoli マルコ・デ・バルトリ」。グラスから立ち上がる濃密な香りを皆さまにお届けできないのが残念!!

 日本では、赤白問わずワインを飲み慣れた筋金入りのワインラヴァーでも、極甘口と聞くと及び腰になる向きが少なくないと思います。

 かたや、蜂蜜や香草を加えて葡萄酒を嗜んだ古代ローマから脈々と続く食文化を培ってきたイタリアにおいて、甘い苦いを問わずDigestivo ディジェスティーヴォ(食後酒)は欠かせない存在。

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【Photo】シチリア島の南東沖に浮かぶ火山島パンテレッリア島で造られるBUKKURAM Passito di Pantelleria 。強烈な日差しと強風が吹きすさぶもと、エジプト原産のブドウ「Zibibbo ジビッボ」を8月初旬に収穫後、4週間天日干し。マスカット由来の贅沢な香りが凝縮した庄イタが偏愛するデザートワインのひとつ(ロケ地:青森市長島「Al Centro」)

 イタリア語で男性名詞のdigestivoは、形容詞では〝消化を助ける〟という意味。元来は消化促進を目的に食事の最後に薬草入りの比較的アルコール度数が高いリキュールを少量クイッと飲むものでした。

 イタリア各地には、さまざまなリキュールが存在し、広く愛好されています。日本でもソーダ割が食前酒としてポピュラーな「CAMPARI カンパリ」のようなビター系リキュールの最右翼は、世界で最も苦い酒といわれる「Fernet Brancaフェルネット・ブランカ」。カンパリと同様ミラノが発祥です。

 形容詞では〝苦い〟を意味する「Amaroアマーロ」と呼ばれるジャンルの苦味が主体となるリキュールは、糖分抜きの薬用養命酒+煮詰めたソルマックのイタリア版カクテルといった風情です。(☜ どんな味やねん!)

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【参考】フェルネット・ブランカほどは苦み走ってはおらず、比較的アプローチしやすいアマーロがモンテネグロ。2014.5拙稿「Digestivo(=食後酒)は適量を。<後編> Tanti tanti digestivi.~5月X日はディジェスティーヴォの日~」参照

 アマーロではイタリア国内シェアNo.1の「Montenegro モンテネグロ」は、40種類の薬草・スパイスを調合。シチリア生まれの「Averna アヴェルナ」などを含め、酸いも甘いもくまなくリキュールを飲み尽くすなど、プロフェッショナルなバーテンダーといえども土台無理な話でしょう。

 例えば、アドリア海に面したマルケ州アンコーナ県を訪れた際、デザートと共に供されたのが、中部イタリアを代表する赤ワイン用ブドウ品種サンジョヴェーゼにサクランボの一種、サワーチェリーを砂糖と漬け込んだ「Vino di Visciole ヴィーノ・ディ・ヴィショレ」。存在すら知らず、初めて口にするその美味しさに魅了されました。

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 ユニークなところでは、フランチェスコ修道会が発祥とされる「Nocino ノチーノ」。熟す前の6月にクルミを収穫、ウロのまま純粋アルコールにシナモン・丁子・砂糖などと漬け込みます。

 ノチーノの本場とされるモデナと同じくオニグルミが自生する仙台では、無農薬栽培されたレモンを一定量確保できた時、レモンの果皮をアルコールに漬け込む「Crema di Limoncello クレマ・ディ・リモンチェッロ」と同様に自家製を楽しんでおりました。

【Photo】収穫したての青グルミをアルコールに漬け込んだ翌日の状態(右)と、前々年に自作したノチーノ(左)。そのうち仕込みの顛末をご紹介します 

 多種多様なイタリアン・リカーのみならず、先日、〝ジャパニーズ・ピザ〟を食べに行きましょうと某グルマン氏に誘われて伺った大阪ミナミのお好み焼き「おかる」の流れで、大人が集う隠れ家的な東心斎橋のバー「Old Course」で頂いた3年熟成した琥珀色のレアものアブサンもまた絶品なのでした。

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【Photo】大阪ミナミのバーOld Courseで頂いたアブサン「Vieux Pontarlier ヴィユー・ポンタリエ」2種。スイス国境にほど近いフランス・ポンタルリエで1915年のアブサン禁止法以前から続く蒸留所「Les Fils d'Emile Pernot エミール・ペルノ」製。厳選した地元のニガヨモギ、スペイン産アニスシード、プロヴァンス産フェンネルなどを調合。加水して飲まなかったため、美しいグリーンに変化する前のベースとなる65度のアブサン(左)を3年間オーク樽で熟成させた琥珀色の3ans(右)は、オーナー・バーテンダーの安岡啓介氏曰く「この先いつ入手できるか分からない」超限定品。馥郁たるその香りは、アブサンとは全くの別物

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 百花繚乱の食後酒の中から、一つだけ晩餐を締めくくる一杯を選ぶとすれば、とっておきのデザートワインを指名することでしょう。

 口に含んだ途端、押し寄せる百花蜜のごとき蜂蜜のさまざまなニュアンスや、完熟メロン・完熟白桃・ナッツ・カラメルソース・焦がしバター・カカオ成分70%のチョコレートなどの風味が渾然一体となって響きあいます。 

 有名どころは、仏ボルドー地方Sauternesソーテルヌ地区、ハンガリー・Tokaj トカイ地方、ドイツ・ライン河流域やモーゼル河流域のトロッケンベーレンアウスレーゼといった世界三大貴腐ワイン。

 ボトリティス・シネレア菌(貴腐菌)がブドウに付着すると、果皮には菌糸による極小な穴が無数に穿(うが)たれます。そこから水分が蒸発し、干しブドウ状態となった白ブドウを数回に分けて一粒ずつ選別しながら手摘みするのです。雨がちな年はブドウが腐敗し、作り手の努力が水泡に帰することも。貴腐ワインが高値を呼ぶ理由は、こうしたリスクと隣り合わせにある稀少性と、ブドウ畑に投下される膨大な労力とによります。
 
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【Photo】プリムール(⇒ 蔵出し前に予約購入すること)で入手したシャトー・ディケム'98。歳月を重ねることで、リリース当初の淡い飴色が次第に深みを増してゆくのは、いつの日かこのバースデーヴィンテージのボトルを開ける娘の人生に共通する(のかもしれない) 

 とは言っても、ソーテルヌの頂点に立つ「Château d'Yquemシャトー・ディケム」は、所有する東京ドーム24個分以上に匹敵する113haの広大なブドウ畑から、ブランド大好きな日本を上得意先とするLVMHLouis Vuitton Moët Hennessy)グループ傘下の潤沢な財力に物を言わせ、750mℓ容量ボトルで平均6万5千本程度、多産な年は10万本以上を生産します。

 アルプス以北の国々のように川沿いに立ち込める霧が成長を促す貴腐菌の力によるのではなく、太陽の国イタリアでは、デザートワインを造る場合、陰干ししたブドウから凝縮したワインを造る「Passitoパッシート」という手法が用いられてきました。

 トスカーナ州で陰干しブドウから造られるのが、聖なるワインという意味の「Vinsanto ヴィンサント」。なかでもVino Nobile di Montepulciano D.O.C.G. ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノの優良生産者として名高い 「Avignonesi アヴィニョネジ」は、極めつけの造り手です。

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 今回も過去ネタで恐縮ですが、話は9ヵ月前に遡ります。

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 横浜・馬車道のイタリアワイン専門店「il Calice イル・カリーチェ」で、アヴィニョネジの稀少なヴィンサントを2種類グラスで飲めるという、庄イタにとっては願ってもない機会がありました。

 用意されたのは、白ブドウ「マルヴァジア」と「トレッビアーノ・トスカーノ」を収穫後3~4ヵ月陰干ししてから除梗・圧搾し、密閉した50ℓ容量のオーク樽で10年の歳月をかけて造られる「Vin Santo di Montepluciano D.O.C ヴィンサント・ディ・モンテプルチアーノD.O.C 」(下画像左側)。

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 そして黒ブドウ「プルニョーロ・ジェンティーレ(≒ サンジョヴェーゼ)」を2月まで陰干ししてから同様の製法で作られ、高価かつ入手困難な「Occhio di Pernice Vin Santo di Montepluciano D.O.Cオッキオ・ディ・ペルニーチェ・ヴィンサント・ディ・モンテプルチアーノD.O.C 」(上画像右側)。

 いずれも圧搾した果汁を清澄し、幾度も使いまわしをする栗材の樽へと移す際、樽の底に残る代々受け継がれてきたMardeマードレと呼ばれる酵母の澱を混ぜてから密閉します。

 その酵母が神品と呼ぶにふさわしい琥珀色の濃密な液体へと10年の歳月をかけて昇華してゆく手助けをするのだといいます。

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【Photo】1999年ヴィンテージからエチケッタのデザインを一新するも、その造りは先人が培った伝統を忠実に受け継いでいるヴィンサント・ディ・モンテプルチアーノ2000 vin

 優良年に限り仕込みを行うアヴィニョネジのヴィンサントは、北米向けに2000年vinで1,500本が出荷された100mℓ瓶を除き、ハーフボトル(375mℓ)で年産1,000本前後しか市場に出回りません。ゆえに目にする機会が極めて限られる逸品です。

 日本における正規輸入元のモンテ物産が扱う2000vinのヴィンサントが参考価格41,990円、オッキオ・ディ・ペルニーチェは 54,510円。これはボルドー特別一級の栄誉に浴するシャトー・ディケムが市場に出回り始める価格の倍以上。世界一高価なワインといわれるエゴン・ミューラーのような優良生産者の手になるトロッケンベーレンアウスレーゼほどではありませんが、極甘口ワインの最高峰の一つに違いありません。

 妙なる香り。夢見心地へと誘う素晴らしい味わい。非のつけどころを見出すのが困難なこの1本の難をあえて言うなら、もう少し懐に優しい値段であってほしいことでしょうか(苦笑)。

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【Photo】収穫したブドウを6カ月陰干しすることで重量の90%を占める水分が揮発。外気に晒された屋根裏部屋での10年の樽熟成の間に50ℓ容量ギリギリに充填した液体は、わずか8ℓほどに目減りするという。これぞまさに神の雫!!

 同様の製法を6年熟成に置き換えた珠玉のヴィンサントを少量生産するのが「San Giusto a Rentennano サン・ジュスト・ア・レンテンナーノ」。キアンティ・クラシコゾーン南端の古都シエナにほど近いガイオーレ・イン・キアンティ地区にある醸造所をブドウの収穫を終えたばかりの10月に訪れた時、窓を開け放った醸造所の最上階に案内され、竹の簾に房ごと広げられたブドウや使いこまれた熟成樽を前にマードレの役割について説明を受けました。

 素晴らしい風味のヴィンサントをテイスティングしながら、熟成の鍵を握るマードレから連想したのが、代々注ぎ足しをする老舗うなぎ屋秘伝のタレ(笑)。真剣な表情で庄イタに説明を続けるルカ・マルティーニ・チガラ氏にそんなギャグが通じるわけもなく、言葉を飲み込んだのでした。

 その中でルカ氏が素晴らしいと絶賛していたのが、ほかならぬアヴィニョネジのオッキオ・ディ・ペルニーチェ・ヴィンサント・ディ・モンテプルチアーノだったのです。

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【Photo】黒ブドウから造られるヴィンサントは〝ヤマウズラの瞳〟という意味の「オッキオ・ディ・ペルニーチェ」という呼称で呼ばれる。庄イタが試飲した2000年ヴィンテージは、世界で最も影響力があるワイン評価本Wine Adovocate 誌において「イタリア国内外を問わずライバルなど存在しない」と絶賛され、98点を獲得。翌2001年vinは、1990年vin以来のパーフェクトスコア100点評価を受けた

 それはもはや液体にして液体にはあらず。濃密な琥珀色の飲む宝石と呼ぶにふさわしいトローリ高い粘性を備えています。

 きっちりグラスに15mℓずつ注がれた液体をグラスの中でスワリング(⇒ 空気に触れさせて香りを開かせるべくグラスを回すこと)すると、グラスの内側に張り付いた半液体の動きはスローモーションを見ているかのよう。

avignonesi-odp1.jpg 【Photo】白ブドウから造るヴィンサントよりも更に色合いの濃さが増すオッキオ・ディ・ペルニーチェ・ヴィン・サント・ディ・モンテプルチアーノ2000vin
 
 値段が値段だけに、なかなか手が届かない高嶺の花をグラス1杯2,000円と2,500円で味わうことができた貴重な機会。いずれも極甘口とはいえ、ただ甘ったるいのではなく、雑味のない純粋な甘味と酸味が共存しており、ベタつくことはありません。

 アヴィニョネジのヴィンサントは、観光ガイド本に紹介されている一般的なヴィンサントの飲み方であるヴィスコッティ類を浸して飲むシロモノではありません。

 サン・ジュスト・ア・レンテンナーノのヴィンサントもそうですが、もはや神秘体験に等しいアヴィニョネジのヴィンサントと巡り合う幸運に恵まれた時は、フルオーケストラの響きのように幾重にも押し寄せる万華鏡のごとき甘味とめくるめく香りに身を委ね、心ゆくまでワインと対話をするのが良ろしいかと。

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