あるもの探しの旅

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2018/08/26

魚舞う魚醤ジェラート Gelato Cetarese con alici secchi

トッピングはチンアナゴさながらの煮干し3匹 (笑)


 大阪の街全体が、スチームオーブンレンジで加熱されているかのような平成最後の夏。ギラつく日差しで目の前が白っぽくなり、ボーッとする意識の中で白日夢の妄想バカンス@ナポリを満喫しました(トホホ...)。

 熱帯夜が明けた本日の大阪。予想最高気温は35℃の猛暑日。かたや向こう1週間のナポリの天気予報を見る限り、最低気温は20~22℃。意外なことに日中でも30℃超えの日はありません。

 リアル避暑バカンス@ナポリ。う~む魅惑的な響きだ・・・。

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 2回シリーズでお届けした播州赤穂ネタで今回も引っ張りますが、既にメインディッシュはご紹介済み。最後に赤穂で出合ったナポリとその近郊の町ゆかりのデザートを召し上がって頂きましょう。ボナペティート~♪

 ナポリにおいては、ピッツァは〝Piatto unicoピアット・ウニコ〟(☞ 一品完結型の料理)だと考えられています。先付や前菜から始まる改まったコース料理ではなく、一皿で栄養バランスが取れる食事として庶民に受け入れらてきた歴史があります。

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【photo】この8月にリニューアルオープン5周年を迎えた仙台「Pizzeria Padrino del Shozan ピッツェリア・パドリーノ・デル・ショーザン」は、アマルフィ海岸での優雅なリゾート気分に浸れる。リニューアルオープン直後に食したナポリ菓子「Coda di Aragosta コーダ・ディ・アラゴスタ」

 イタリアの権威ある料理評価本「Gambero Rosso ガンベロ・ロッソ」誌が、Web版で2016年から実施している「Top Italian Resutaurant」の大阪編において、2年連続で選出されたのが、ザ・リッツ・カールトン大阪のイタリア料理「スプレンディード」。その立役者となったのが、2014年12月末に料理長として就任したイタリア中部マルケ州出身のオリアナ・ティラバッシさん。

 スプレンディードがこの夏実施している90分間50種以上のスイーツ食べ放題の「ピーチアフタヌーンブッフェ」に挑む強靭な別腹を備えた乙女ほどのツワモノではないため、前回・前々回のレポートでご紹介したナポリとほぼ同等の30cmサイズのピッツァを平らげた締めくくりは、サックリめの分量で仕上げたいと思います。

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 まず1品目は6月24日(日)のドルチェから。「Mio & Tempurina ミオ・エ・テンプリーナ」前稿参照で昼食を済ませた足で向かったのが、1年牡蠣の産地である赤穂市坂越(さこし)

 前もって訪れた「さくらぐみ」で、西川明男オーナーシェフがプロデュースしたナポリ菓子専門店「坂利太サリータ」が市内坂越にあるとの情報を得ていたのです。

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salita(サリータ)〟とはイタリア語で上り坂のこと。坂越の地名にちなんだ店名ですね。

 そんな洒落っ気がある西川シェフが、岡山県倉敷市の美観地区に触発され、築70年の民家を改装。ナポリ菓子「コーダ・ディ・アラゴスタ」をメインとするパステッチェリア坂利太としてオープンさせたのが2015年7月。

 モデルとなった倉敷の黒瓦を頂く切妻屋根と白塗りのなまこ壁や貼り瓦に木組みの格子窓が特徴の二層からなる蔵造りの町並みそのものは、確かに趣あるものです。

 坂越に赴く前日に訪れた倉敷美観地区の目抜き通りには、あろうことか趣味の悪い立て看板や無粋なのぼり旗が乱立。あまりのアイデンティティの無さに幻滅した湯布院「湯の坪街道」ほど地に落ちてはいませんが、せっかくの美観を損なっている印象を抱きました。

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 8世紀の中庸まで歴史を遡ることができる赤穂の製塩は、入浜式塩田開発が進んだ江戸期に規模が拡大。商都大坂のみならず、江戸へ向けて塩を荷積みする廻船や西回り航路の北前船が寄港した坂越には、文化庁が日本遺産に認定した景観保存地区の街並みが残っています。

 チュニジアンブルーの暖簾 & サインボードと小さな立て看板に留めた坂利多の外観は、歴史ある坂越地区の景観に溶け込むものでした。

 頻繁にナポリへと足を運び、自他ともに認める〝ナポリばか〟こと西川明男氏だけに、(落書きだらけである点を除けば)歴史ある街並みの景観を大切にするイタリア人に見習ったのでしょう。

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 笠が閉じた寸足らずの松茸のような形状のスポンジ生地にラム酒のシロップをたっぷり含んだ素朴な「Baba バッバ」、二枚貝状の焼き菓子「Sfogliatella スフォリアテッラ」と同じナポリっ子に愛される伝統菓子のひとつに「Coda di Aragosta コーダ・ディ・アラゴスタ」があります。

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【photo】坂利太で購入したマロンクリーム風味コーダ・ディ・アラゴスタ(540円)。チョココロネほどでなくとも、成獣になる前のモスラ幼虫と似ていなくもないかも。福島が生んだ昭和の名作曲家、古関裕而が作曲し、今は亡きザ・ピーナッツの二人が劇中歌として歌った有名なこのフレーズが浮かぶ。♫ Mothra ya Mothra, Dengan kesaktian hidupmu(♫モスラヤ モスラ ドゥンガン カサクヤン インドゥムゥ)☞ れっきとしたインドネシア語なのだそう

 前々日、さくらぐみでデザートとして出されたナポリ菓子のスフォリアテッラは、ラード溶液を塗ったセモリナ粉の生地を極薄に伸ばして幾層にも重ねたタッピと呼ばれる生地を二枚貝のような形に仕上げています。

angela_salita.jpg【photo】見本用にカットされたスフォリアテッラ(左上 税別450円)、坂利太オリジナルのマシュマロを中に仕込んだ「アンジェラ」(右3点 税別480円)、同じくホワイトチョコと生クリームを詰めて表面をブルーベリーで覆った「季節フルーツのブーケ」(左下 税別480円)

 リコッタチーズとセモリナ粉をメインにレモンやオレンジの香りを添えた中身を詰めてから焼成するスフォリアテッラと同じ焼き菓子でも、クリームを後詰めするコーダ・ディ・アラゴスタは、生地の層の間隔が広く、ざっくりしたその形状は、名前が意味する通りにまさに伊勢エビの尾。

 こよなくナポリを愛する西川シェフプロデュースの坂利太では、カスタードクリームベースのコーダ・ディ・アラゴスタと、オーブンで温めて食べるマシュマロベースのクリームを詰めたオリジナル商品「アンジェラ」をメインに置いていました。

aragosti_salita.jpg【photo】こちらはコーダ・ディ・アラゴスタ。アンジェラと同様、坂利太では常時5種類の味を用意(税別450~500円)

 成人女性の握り拳ほどの大きさのスフォリアテッラに対し、坂利太のコーダ・ディ・アラゴスタは15cm近くもあります。ゆえに店頭では食さず、マロンクリーム風味を持ち帰りました。

 夏場は坂越浦で養殖される真牡蠣はオフシーズン。坂越浦の牡蠣エキス入りのソフトクリーム「海のミルク」はありませんでしたが、体感気温が40度近い気温の中を駐車場から移動したカラダが欲したのが、地元の丸尾牧場のミルクを使用した「生乳ソフトクリーム」(税別518円)。

 カップやコーンではなく、ご覧の通りアラゴスタのコーンがソフトクリームの器となるのが坂利太流下画像

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 冷房が利いた店内から外に持ち出すと、あっという間に溶け出すのは必至。混雑する店内の隅っこであらかた食べてしまいました。

 ソフトクリームは、素材の良さを物語るコクと滑らかさが際立つプレミアムな食感。アラゴスタと同様、ソフトクリームと生地とを一緒に食べると、ラードを含んだアラゴスタの存在感が勝ってしまいます。当然、クリームを食べ尽くした最後に残るのはアラゴスタ。それが一層その印象を強くします。

 私が知る限りにおいて、ナポリにもアラゴスタの生地を使ったジェラテリアが存在しないのは、そんな理由なのでしょう。

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 2品目は8月5日(日)のドルチェ。Mio & Tempurina ミオ・エ・テンプリーナから海辺の御崎へと向かった目的は、さくらぐみに隣接する手作りジェラートの店「Sciò Sciòショーショー」。

 さくらぐみのスタッフTシャツが目的だった前回とは異なり、2度目の今回はジェラートが目当てです。 

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 冷蔵ケースの中には、ピスタチオ(+100円)・スイカ・温州ミカン・キウイバナナ・イチジクなどのジェラートと、ピーチ・スモモ・マンダリンオレンジのソルベ(=シャーベット)など、色とりどりな18種類のフレーバーが用意されていました。

 その中で、おやっ?と庄イタが思ったのが「チェターラ風」。その言葉にピンと来るアナタは、以前よりViaggio al Mondo の熱心な読者であるはず。

colatura_alici-cetara.jpg 西暦79年に発生したヴェスヴィオ火山の噴火で命を落とした博物学者プリニウスが著した「博物誌」に記載がある通り、塩蔵したイワシを主原料に発酵させた魚醤「Garum ガルム」は、古代ローマ人の食卓に欠かせない調味料でした。

 ローマ帝国の滅亡により忘れ去られたガルムは、13世紀に「Colatura コラトゥーラ」という新たな名前で復活左画像。30年ほど前に一度は途絶えた魚醤を官民挙げた取り組みで再復活させたカンパーニャ州サレルノ県Cetara チェターラ下画像の関係者が、2009年11月に開催された「男鹿・イタリア 魚醤フォーラム2009」で、しょっつるの本場・秋田県男鹿市に集いました。

 千載一遇の機会を逃してはならじと仙台から男鹿までの往復560kmを日帰りで爆走。フォーラムに参加した読み応えたっぷりな詳報を9年前にまとめています《2009.12拙稿io sono shozzurista ショッツリスト宣言」参照》

Cetaramare.jpg 「チェターラ風って、魚醤を使ったジェラート?」

 日本の生活では、ほぼ役に立たないニッチかつディープな庄イタの知識の泉から発した質問に女性スタッフは驚いた様子で問いかけを肯定。その上で、こう尋ねたのでした。

 「頻繁にイタリアに行ってらっしゃるんですか?」

 ひきつった笑いを浮かべながら問いかけを否定しつつも、心の声は、こうつぶやいていました。「Si, tutte le sere. Ma nei miei sogni . (=Yes, every night. But in my dreams.=ハイ、夜な夜な。夢の中でですけどね。)」

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 そんな〝イタリアばか〟丸出しな庄イタが注文したのは、探求心をくすぐってやまないチェターラ風とマロングラッセのダブル(上画像 税込480円)。ご覧の通り、トッピングは3匹の煮干し。

 チェターラで作られる魚醤コラトゥーラ(正確にはColatura di Alici コラトゥーラ・ディ・アリーチ)の主材料となるのがカタクチイワシです。

 果たしてどれだけの人が、庄イタのように西川シェフの遊び心を自ずから理解するかは不明ですが、昨今もてはやされるインスタ映えするビジュアル上のインパクトを狙っているのでしょう。

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 ジェラート自体は、ミルクの甘さにコラトゥーラに由来する潮の風味がいい感じのアクセントになっています。
 
 飾りじゃないのよ煮干しは。ということで3匹とも頭から食べましたが、予想通り、ジェラートとの組み合わせをうんぬんする次元ではないのでした。

 ジェラートから立ち泳ぎで海に還ろうといわんばかりの煮干しの姿から思い起こしたのが、耐えきれない暑さから逃れようと駆け込んだ京都水族館にいたコレ(笑)。

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 サワークリームやジェラートとの相性が良く、粉糖をかけて食するプレーンな「パンドーロ」と並び、イタリアでは主にクリスマスシーズンに少しづつ時間をかけて食べられるドライフルーツが入った菓子が「パネットーネ」《2007.12拙稿「クリスマスところ変われば」参照》

 先月レシピを変更したばかりで、しっとり感がアップしたのだというパネットーネも+300円で追加できます。

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 異常な暑さが続いた大阪でも、先々週の後半は猛暑が一段落。秋の気配を感じるようになりましたが、先週月曜からは再び蒸し暑さがぶり返しています。7月初旬の梅雨明けから続く酷暑を気力で乗り切っていますが、ネイティブ関西人ですら「もうエエ加減、勘弁してほしいわ」と弱音を吐いています。

 そんなさなか、イタリア・トリノ発祥のジェラテリア「GROM グロム大阪店」が9月2日(日)をもって閉店。大阪店の閉店により、GROMは日本市場から撤退することになります。

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 2003年、北イタリアにおけるスイーツの聖地トリノで1号店がオープンするや、素材を厳選したジェラートは、たちまちにして人気を博しました。2009年には新宿を皮切りに日本進出。関東圏と大阪に店舗を展開し、本場の味を届けてくれた店がなくなるのは寂しい限り。
 
 そういえば、昨年以上に鬱陶しく感じられたクマゼミたちがメスに求愛する鳴き声が、いつの間にか減ってきたように思います。

 枝先に残されたクマゼミの抜け殻に、空蝉(うつせみ)の儚さを思い、ゆく夏を惜しむ8月の最終週なのです。

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坂利太(サリータ)
・住:兵庫県赤穂市兵庫県赤穂市坂越2083
・Phone:0791-48-8658
・営:10:00~17:00
   毎週火曜・第1水曜・第3月曜定休(祝日の場合は翌日休)
・URL: https://www.facebook.com/salitaaragosta
・Pあり(海沿いのまちなみ保存地区無料駐車場を利用 )
・禁煙 ・カード不可

Sciò Sciò(ショーショー)
・住:兵庫県赤穂市兵庫県赤穂市御崎2-1
・Phone:0791-45-3030
・営:10:00~18:00
   毎週火曜・第1水曜・第3月曜定休(祝日の場合は翌日休)
・URL:https://www.facebook.com/scioscio2018/
・Pあり(伊和都比売神社近く、向かい側の御崎温泉無料駐車場を利用)
・禁煙 ・カード不可

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2018/08/12

Mio & Tempurina ミオ・エ・テンプリーナ@赤穂

そこにもナポリの風は吹いていた。


 四方を海に囲まれた温帯モンスーン気候の日本とは様相が異なる中国大陸の気候を基にした二十四節気では立秋を過ぎました。そう言われてみれば、夜の帳が下りた夙川河川敷公園からは、少し気が早い秋の虫の鳴き声が聞こえてきます。

 さりとて太陽が高い時間帯は、拙宅からクルマで12分ほどの距離にある甲子園球場からの高校球児が繰り広げる熱戦を伝えるTV中継でご覧の通り、うだるような暑さが関西では続いています。

 この時季、大阪発祥のパインアメとしょっぱい飴ちゃんをバッグに忍ばせている大阪のおばちゃんにうっかり「食欲の秋到来」などと言おうものなら、「えっ、もう秋やて?何アホなこと言うとんねん!」と突っ込まれそう。

 残暑厳しき列島各地では8月いっぱい夏祭りや花火大会が行われています。

【Movie】毎年8月12日から8月15日の4日間開催される徳島阿波おどりに先立ち、昨年8月11日に徳島市で催された選抜阿波おどり大会前夜祭より。女性の健康美が躍動する法被踊り、たおやかで息が合った妖艶な女踊り、ダイナミックな男踊りからなる各有名連の精鋭によるショーアップされたステージプログラムは見応え十分。courtesy of Tokushima Simbun

 昨年、特に見応えがあったのが、徳島市のアスティとくしま(県立産業観光交流センター)を会場に徳島阿波おどり開幕前日に行われた「選抜阿波おどり大会前夜祭」。各有名連の精鋭が揃った踊り子による演舞は、Bravissimi!!男女問わず最上級賛辞ブラボーの複数形)の一言。

 見る阿呆となった翌日は、市役所前演舞場で初日を観覧。にわか連の一員としても踊る阿呆に。2泊3日の日程で滞在した徳島で、姉妹都市である仙台の夏を彩る仙台七夕でエッセンスに触れた阿波おどりの魅力と、露地ものが旬を迎えた特産のすだちを絞った徳島の美味にどっぷりと漬かりました。

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 日盛りに日なたを歩こうものなら、命の危険を感じるほどだった今年の京都。前祭・後祭とも山鉾巡行ではなく宵山を巡った雅(みやび)やかな京都祇園祭とは対照的に、全速力で辻を曲る勇壮果敢な「やりまわし」で知られる岸和田だんじり祭を、ピエモンテ州クーネオ前世県人会の代わりに庄イタが所属している関西宮城県人会の伝手(つて)で来月訪れる予定です。

 阿波おどりの話題で始まった今回。3年前の2月、出張で訪れた高知で発見したペスト・ジェノヴェーゼ的な万能調味料、葉ニンニクの「ぬた」をViaggio al Mondoで取り上げて以来の四国ネタではありません。《2016.3拙稿「おまさん まっこと上等な「ぬた」を知っちゅうが?」参照》

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 蝉時雨と呼ぶには、ただ鬱陶しいだけで全くもって情緒に欠ける 仮に松尾芭蕉が山寺で耳にしても〝閑さや岩にしみ入る...〟の句は浮かばなかったはず)クマゼミが発するNon è bel canto(ノン・エ・ベルカント →「美しい歌」を意味するイタリアオペラ伝統の歌唱法ベルカントとは真逆)な雄叫びをBGMに、ジリジリと焼けつく夏真っ盛りの季節にお届けするナポリ第二弾。

 本来であれば、南イタリア・カンパーニャ州からのバカンス便り!!と申し上げたいところ。

 諸般の事情により(庄イタ的には甚だ不本意ながら)、ナポリまで往復する旅費と時間をかけずとも、十分に納得できるピッツァ・ナポレターナと出合うことができる兵庫県赤穂市が話の舞台です(TT)。

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 気を取り直して、庄イタの太鼓判とともに皆さまに今回ご紹介するのは、前回レポートした「さくらぐみ」から巣立った女性コンビが活躍するナポリ郷土料理の店「Mio & Tempurina ミオ・エ・テンプリーナ上画像

 さくらぐみを取り上げた前回、ナポリの道化・プルチネッラが描かれた「真のナポリピッツア協会」と「ナポリピッツァ職人協会」の看板を真っ当なピッツェリアを見分ける一つの目安として挙げました。その例外として、自薦の上で審査を受ける協会に未加盟であっても、本場の伝統に則(のっと)った製法と確かな腕を持つ店の具体例として名前のみご紹介したのをご記憶でしょうか。

 2007年に真のナポリピッツア協会日本支部が旭屋出版から発行した「真のナポリピッツァ技術教本」で紹介されている移転前のさくらぐみメンバーとして、身内からマスターと呼ばれる西川明男氏を挟んで、当時ピッツァイヨーラとして活躍していた滋賀出身の松岡佳代子さん下左画像と厨房に入っていた広島出身の柴田美緒さん下右画像のお顔を見ることができます。お二人は都合14年の長きに渡って、さくらぐみでキャリアを重ねました。

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 その間、松村さんは2度にわたって渡伊。名匠エンツォ・コッツィアのもと、ナポリ「La Notizia ラ・ノティツィア」や、2004年にスローフード協会が設立した「Università degli Studi di Scienze Gastronomiche 食科学大学」で、19世紀まで庶民は手づかみで食べていたロングパスタ下画像や揚げピッツアなどの〝Cibo di strada チーボ・ディ・ストラーダ(ストリートフード)〟やナポリの伝統食に関する講師を務め、師と慕うマエストロ、アントニオ・トゥベッリ氏上画像がナポリで営む「Timpani & Tempura ティンパニ・エ・テンプラ」、そして海の幸に恵まれた赤穂と地理的条件が似ているジェノヴァ近郊のピエヴェ・リグーレ「La Cucina di Gian Paolo Belloni ラ・クチーナ・ディ・ジャン・パオロ・べローニ」でも腕を磨きます。

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 かたやミオ・エ・テンプリーナではピッツァ以外を受け持つ柴田さんは、ヴェスビオ山の麓にあるオッタヴィアーノに6カ月滞在。イタリアを代表するグルメ評価本Gambero Rosso ガンベロ・ロッソで最高ランクの三ツ星評価を受けるパスティッチェリア「Pasquale Marigliano パシュクアーレ・マリリアーノ」で本場の技と心に触れます。

 穏やかな時間が流れ、美味しい食材と良い水があり、心地よい風が吹き抜ける赤穂の風土を気に入ったお二人は、2013年6月、柴田さんのお名前であり、イタリア語で〝私の〟という意味のMio、そして敬愛するアントニオ・トッヴェッリさんから頂いた〝可愛い天ぷらちゃん〟とでも訳せば良いニックネーム、Tempurinaをドッキングさせた名前の店をオープン。現在に至ります。 

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【photo】ロードサイドに立つミオ・エ・テンプリーナのサインボード。ロングパスタを手づかみするナポリ伝統の食べ方のシルエット、PIZZE, DOLCI, VINI,( 全て複数形でピッツァ・デザート・ワイン)に加え、気になるのが「TIMBALLI ティンバッリ」。シチリアを含め、南イタリアに異なる呼び名で同様の料理が存在するが、パスタや米とラグーソースやトマトソースなどの具を円柱状に固めたナポリの伝統料理が「TIMBALLO ティンバッロ(単数形)」。〝I PIATTI TIPICI NAPOLETANI〟 (ナポリ料理専門店)と謳っている店の性格を物語る看板に偽りはない

 ちなみに1981年に開店した日本におけるナポリピッツァの草分け的存在、さくらぐみから巣立ったピッツァイオーロ(男性)・ピッツァイヨーラ(女性)の数は、同店の西川オーナーシェフでもすぐには思い浮かばないのだそう。

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【photo】焼きあがったオーバー30cmサイズのピッツァを乗せたプレートを手にしたカメリエーレ(フロア係)が、所狭しと配置されたテーブルの間を行き交うナポリ下町のピッツェリアというよりは、つい長居をしたくなるようなゆったりとした時が流れるミオ・エ・テンプリーナ

 果せるかな、店内に足を踏み入れると同時に警察犬並みに働く庄イタの〝いい店探知嗅覚〟がビビッドに反応するホンモノだけが持つ雰囲気がMio & Tempurinaには漂っていました。

 感覚的な話なので説明しがたいのですが、良い店には吟味した食材を使用した料理から立ち上る心地よい〝香り〟が漂っていることが少なくありません。時には談笑する先客の表情から、居心地の良さをお裾分けしてもらったりもします。

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【photo】グリーンのタイルで覆われた薪窯は、西川明男師匠の門下生ゆえナポリの「Gianni Acunto ジャンニ・アクント」製。薪火の暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモツ松岡さんが選んだ小麦粉は、本場ナポリでトップシェアを誇り、さくらぐみ時代から扱いに慣れた「CAPUTO カプート社」の看板商品で、コシの強い生地に仕上がるサッコロッソをメインに使用。天候や気温によって発酵時間が短いサッコブルなどとの配合割合や水分や塩などの分量を微調整する

Lete-MioTem.jpg ピッツェリアに関しては、店の顔と言える窯の熱源が電気ではなく、食欲をそそる香りを生地につける薪火であるかどうか。そしてそれがハンドメードや国産窯より性能が高く、ピッツァの出来栄えを左右するナポリ製か。生地に使っている小麦粉の袋があれば、その銘柄も気になるところ。

【photo】ミオ・エ・テンプリーナのミネラルウォーターは、セリエA2017シーズンで強豪ユベントスと優勝争いをしたSSCナポリのユニフォームスポンサー「Leteレテ」。採水地はアペニン山脈南部のカゼルタ県プラテッラ村。硬度900以上。同じカンパーニャ州産「Ferrarelleフェラレッレ」と比べて発泡は弱め

 ミオ・エ・テンプリーナでは、イタリアのように家族が揃って和気あいあいと食事ができる空間づくりを心掛けているとのこと。事実、そこではゆったりした時間が流れていました。

 そんな空気感を醸し出す店内のインテリアや調度品からはナポリへの深い愛情、そして伝統への敬意が感じ取れるのでした。            

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 前回詳報した6月末にさくらぐみを訪れた翌々日、そして8月初旬にも再訪。味にブレがないことを確認の上で、ミルキーなモッツァレラ・ディ・ブッファラ作りに欠かせない水牛ちゃんが反芻するように胃袋の記憶を呼び戻してみます。

《6/24 アンティパスト》・・・フリット・ディ・ガンベッリ 

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赤穂産 小太海老(サルエビ)のフリット。小麦粉でカラッっと素揚げした小太海老の食感が絶妙。殻が柔らかく頭から丸かじりすると、後を引く味噌の旨味が口いっぱいに広がる。お好みでレモンを軽く絞って(860円)

《8/5 アンティパスト 》・・・インサラータ・ディ・マーレ

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 赤穂の新鮮な海の宝石サラダ ナポリ風。(ウニやアワビをエサにしているグルメな南三陸町志津川湾産の旨味の塊のようなタコの食味にはかなわないが)赤穂からほど近い明石海峡は流れが速く、歯応えのあるマダコの漁場として名高い。エビ、イカ、ひよこ豆と野菜のシンプルなサラダ(1~2人前990円/2~4人前1,510円)

《6/24 & 8/5 プリモピアット》・・・ピッツァ・マリナーラ・コン・ポモドリーニ

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 名店の誉れ高い「さくらぐみ」で、西川師匠や兵庫県明石市で「Ciroチーロ」を2004年に開いた先輩の小谷紀三子さんに鍛えられ、さくらぐみの窯を任されたピッツァイヨーラ松村さんの腕前を物語るジューシー&モチモチ&パリパリサクサクな食感が楽しめるマリナーラ。庄イタ的には前々日に古巣で食したピッツァを上回る出来栄え。Brava!!(1,510円)

《8/5 プリモピアット》・・・ピッツァ・クアットロ・スタジオーニ

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 四季を意味する名のピッツァ。新鮮な牛乳を使用するフィオル・ディ・ラッテとトマトソースをベースに、手前右から時計回りにパルミジャーノ・レッジャーノ,黒オリーブ,マッシュルーム,ハムをトッピング。バジルの香りと共に4つの味が楽しめる欲張りピッツァ(1,940円)

《6/24 プリモピアット》・・・スパゲッティ・アル・リモーネ

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 赤穂産エビのシチリアレモンクリームソース。ほのかなレモンの酸味が爽やかなクリームソースと相性の良い太めのスパゲッティに絡む(1,570円)

《6/24 セコンドピアット》・・・アル・フォルノ・デル・ジョルノ

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 赤穂産マダイのピッツァ窯ハーブ & レモン蒸し焼き。真鯛の旨味を活かし、味つけはあっさり目の仕上がり(1,990円)

《6/24 & 8/5 カッフェ》・・・エスプレッソ

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 ナポリ発祥のロースター「Izzo イッツォ」創業者が設立したエスプレッソマシンメーカー「My Way」製レバー式マシンでエスプレッソを抽出する松村さん。豆はIzzoほどストロングスタイルではなく、マシンの脇に袋があるナポリのロースター「Passalaqua パッサラックア」の「Mehari メハリ」。スプーンで砂糖を入れてもなかなか沈み込まないキメ細やかで分厚いクレマが香り高いカッフェの美味しさを物語る

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 こうしてミオ・エ・テンプリーナで登場した料理を改めて思い起こしているうち、リラックスした状況下で行うのだというエサの反芻をしている牛さんのように、タラ~リとヨダレが垂れてきました(º﹃º )。


【photo】京都市上京区の菅原院天満宮神社は、学問の神様である菅原道真が生誕した地に建つ。道真公の産湯となった「初湯の井戸」は、受験や病気平癒にご利益があるとされ、名水の誉れ高い。一般的には龍が多い手水口(ちょうずぐち)だが、牛とご縁が深かった道真公にちなんでそこでは牛。見ようによってはヨダレにも...?。(前稿でダァー!! の雄叫びと共に登場したアントニオ猪木氏と同様、本筋とは無関係です)

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 季節ごとに入れ替わるグランドメニューのセコンドピアットには、アクアパッツァ(1,990円)もオンリストしてあります。総じて魚介系の料理は素材の味を削がないよう、シンプルな味つけです。

 赤穂という土地柄を考え、これまでに訪れた2度ともピッツァ以外には魚介系の料理を食べました。肉食系の方には、阿蘇天然ミネラル豚香心ポークのロースト(1,890円)や、北海道池田町産の褐毛和種いけだ牛のビステッカ(2,910円)といった選択肢も。

 海の幸に恵まれ、自然豊かな赤穂は、大阪市内の喧騒を離れてリフレッシュするにはピッタリなロケーションといえます。

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【photo】清流千種川(ちくさがわ)が播磨灘に注ぐ赤穂市街地から川沿いに遡り、坂越(さこし)方面へ。茶臼山からは生島が防波堤となり波静かな天然の良港で、かつて北前船が寄港した坂越湾が一望のもと。坂越浦に浮かぶ生島は天然記念物に指定される常緑樹林帯で覆われ、緑豊かな坂越湾の地形から植物プランクトンが豊富なため、養殖される牡蠣は1年出荷できるほどに成長する

 先日、赤穂を訪れた折は、アルコール発酵した液体に関しては今更申し上げるまでもなく、生食するのも庄イタは大好きなブドウ、安芸クイーンやシャインマスカットなどの高級品種や、珍しい桃など、近隣で生産されるフルーツ類も豊富に出回っていました。
 
 作る人が心豊かで健やかでなければ、心に響く料理は作れないと、松村さん・柴田さんは仰います。まさにその通り。

 アントニオさん仕込みのTimballo Napoletanoも機会があれば食したみたいものです。(アントニオさんの苗字は「猪木」ではなく「トゥベッリ」です。念のため)

*****************************************************************

Mio & Tempurina ミオ・エ・テンプリーナ

・住:兵庫県赤穂市城西町129
・Phone:0791-46-5787
・営:昼 11:30~14:00
   夜 17:30~21:00
   月曜定休
  ※木曜・金曜のみランチセット(1,620円)あり
    サラダ+ドリンク+3種類から選ぶパスタorピッツァ
   その他の日はアラカルトメニューから
・URL: https://www.facebook.com/Mio.e.Tempurina/
・Pあり・禁煙・カード不可

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