あるもの探しの旅

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Mio & Tempurina ミオ・エ・テンプリーナ@赤穂

そこにもナポリの風は吹いていた。


 四方を海に囲まれた温帯モンスーン気候の日本とは様相が異なる中国大陸の気候を基にした二十四節気では立秋を過ぎました。そう言われてみれば、夜の帳が下りた夙川河川敷公園からは、少し気が早い秋の虫の鳴き声が聞こえてきます。

 さりとて太陽が高い時間帯は、拙宅からクルマで12分ほどの距離にある甲子園球場からの高校球児が繰り広げる熱戦を伝えるTV中継でご覧の通り、うだるような暑さが関西では続いています。

 この時季、大阪発祥のパインアメとしょっぱい飴ちゃんをバッグに忍ばせている大阪のおばちゃんにうっかり「食欲の秋到来」などと言おうものなら、「えっ、もう秋やて?何アホなこと言うとんねん!」と突っ込まれそう。

 残暑厳しき列島各地では8月いっぱい夏祭りや花火大会が行われています。

【Movie】毎年8月12日から8月15日の4日間開催される徳島阿波おどりに先立ち、昨年8月11日に徳島市で催された選抜阿波おどり大会前夜祭より。女性の健康美が躍動する法被踊り、たおやかで息が合った妖艶な女踊り、ダイナミックな男踊りからなる各有名連の精鋭によるショーアップされたステージプログラムは見応え十分。courtesy of Tokushima Simbun

 昨年、特に見応えがあったのが、徳島市のアスティとくしま(県立産業観光交流センター)を会場に徳島阿波おどり開幕前日に行われた「選抜阿波おどり大会前夜祭」。各有名連の精鋭が揃った踊り子による演舞は、Bravissimi!!男女問わず最上級賛辞ブラボーの複数形)の一言。

 見る阿呆となった翌日は、市役所前演舞場で初日を観覧。にわか連の一員としても踊る阿呆に。2泊3日の日程で滞在した徳島で、姉妹都市である仙台の夏を彩る仙台七夕でエッセンスに触れた阿波おどりの魅力と、露地ものが旬を迎えた特産のすだちを絞った徳島の美味にどっぷりと漬かりました。

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 日盛りに日なたを歩こうものなら、命の危険を感じるほどだった今年の京都。前祭・後祭とも山鉾巡行ではなく宵山を巡った雅(みやび)やかな京都祇園祭とは対照的に、全速力で辻を曲る勇壮果敢な「やりまわし」で知られる岸和田だんじり祭を、ピエモンテ州クーネオ前世県人会の代わりに庄イタが所属している関西宮城県人会の伝手(つて)で来月訪れる予定です。

 阿波おどりの話題で始まった今回。3年前の2月、出張で訪れた高知で発見したペスト・ジェノヴェーゼ的な万能調味料、葉ニンニクの「ぬた」をViaggio al Mondoで取り上げて以来の四国ネタではありません。《2016.3拙稿「おまさん まっこと上等な「ぬた」を知っちゅうが?」参照》

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 蝉時雨と呼ぶには、ただ鬱陶しいだけで全くもって情緒に欠ける 仮に松尾芭蕉が山寺で耳にしても〝閑さや岩にしみ入る...〟の句は浮かばなかったはず)クマゼミが発するNon è bel canto(ノン・エ・ベルカント →「美しい歌」を意味するイタリアオペラ伝統の歌唱法ベルカントとは真逆)な雄叫びをBGMに、ジリジリと焼けつく夏真っ盛りの季節にお届けするナポリ第二弾。

 本来であれば、南イタリア・カンパーニャ州からのバカンス便り!!と申し上げたいところ。

 諸般の事情により(庄イタ的には甚だ不本意ながら)、ナポリまで往復する旅費と時間をかけずとも、十分に納得できるピッツァ・ナポレターナと出合うことができる兵庫県赤穂市が話の舞台です(TT)。

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 気を取り直して、庄イタの太鼓判とともに皆さまに今回ご紹介するのは、前回レポートした「さくらぐみ」から巣立った女性コンビが活躍するナポリ郷土料理の店「Mio & Tempurina ミオ・エ・テンプリーナ上画像

 さくらぐみを取り上げた前回、ナポリの道化・プルチネッラが描かれた「真のナポリピッツア協会」と「ナポリピッツァ職人協会」の看板を真っ当なピッツェリアを見分ける一つの目安として挙げました。その例外として、自薦の上で審査を受ける協会に未加盟であっても、本場の伝統に則(のっと)った製法と確かな腕を持つ店の具体例として名前のみご紹介したのをご記憶でしょうか。

 2007年に真のナポリピッツア協会日本支部が旭屋出版から発行した「真のナポリピッツァ技術教本」で紹介されている移転前のさくらぐみメンバーとして、身内からマスターと呼ばれる西川明男氏を挟んで、当時ピッツァイヨーラとして活躍していた滋賀出身の松岡佳代子さん下左画像と厨房に入っていた広島出身の柴田美緒さん下右画像のお顔を見ることができます。お二人は都合14年の長きに渡って、さくらぐみでキャリアを重ねました。

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 その間、松村さんは2度にわたって渡伊。名匠エンツォ・コッツィアのもと、ナポリ「La Notizia ラ・ノティツィア」や、2004年にスローフード協会が設立した「Università degli Studi di Scienze Gastronomiche 食科学大学」で、19世紀まで庶民は手づかみで食べていたロングパスタ下画像や揚げピッツアなどの〝Cibo di strada チーボ・ディ・ストラーダ(ストリートフード)〟やナポリの伝統食に関する講師を務め、師と慕うマエストロ、アントニオ・トゥベッリ氏上画像がナポリで営む「Timpani & Tempura ティンパニ・エ・テンプラ」、そして海の幸に恵まれた赤穂と地理的条件が似ているジェノヴァ近郊のピエヴェ・リグーレ「La Cucina di Gian Paolo Belloni ラ・クチーナ・ディ・ジャン・パオロ・べローニ」でも腕を磨きます。

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 かたやミオ・エ・テンプリーナではピッツァ以外を受け持つ柴田さんは、ヴェスビオ山の麓にあるオッタヴィアーノに6カ月滞在。イタリアを代表するグルメ評価本Gambero Rosso ガンベロ・ロッソで最高ランクの三ツ星評価を受けるパスティッチェリア「Pasquale Marigliano パシュクアーレ・マリリアーノ」で本場の技と心に触れます。

 穏やかな時間が流れ、美味しい食材と良い水があり、心地よい風が吹き抜ける赤穂の風土を気に入ったお二人は、2013年6月、柴田さんのお名前であり、イタリア語で〝私の〟という意味のMio、そして敬愛するアントニオ・トッヴェッリさんから頂いた〝可愛い天ぷらちゃん〟とでも訳せば良いニックネーム、Tempurinaをドッキングさせた名前の店をオープン。現在に至ります。 

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【photo】ロードサイドに立つミオ・エ・テンプリーナのサインボード。ロングパスタを手づかみするナポリ伝統の食べ方のシルエット、PIZZE, DOLCI, VINI,( 全て複数形でピッツァ・デザート・ワイン)に加え、気になるのが「TIMBALLI ティンバッリ」。シチリアを含め、南イタリアに異なる呼び名で同様の料理が存在するが、パスタや米とラグーソースやトマトソースなどの具を円柱状に固めたナポリの伝統料理が「TIMBALLO ティンバッロ(単数形)」。〝I PIATTI TIPICI NAPOLETANI〟 (ナポリ料理専門店)と謳っている店の性格を物語る看板に偽りはない

 ちなみに1981年に開店した日本におけるナポリピッツァの草分け的存在、さくらぐみから巣立ったピッツァイオーロ(男性)・ピッツァイヨーラ(女性)の数は、同店の西川オーナーシェフでもすぐには思い浮かばないのだそう。

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【photo】焼きあがったオーバー30cmサイズのピッツァを乗せたプレートを手にしたカメリエーレ(フロア係)が、所狭しと配置されたテーブルの間を行き交うナポリ下町のピッツェリアというよりは、つい長居をしたくなるようなゆったりとした時が流れるミオ・エ・テンプリーナ

 果せるかな、店内に足を踏み入れると同時に警察犬並みに働く庄イタの〝いい店探知嗅覚〟がビビッドに反応するホンモノだけが持つ雰囲気がMio & Tempurinaには漂っていました。

 感覚的な話なので説明しがたいのですが、良い店には吟味した食材を使用した料理から立ち上る心地よい〝香り〟が漂っていることが少なくありません。時には談笑する先客の表情から、居心地の良さをお裾分けしてもらったりもします。

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【photo】グリーンのタイルで覆われた薪窯は、西川明男師匠の門下生ゆえナポリの「Gianni Acunto ジャンニ・アクント」製。薪火の暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモツ松岡さんが選んだ小麦粉は、本場ナポリでトップシェアを誇り、さくらぐみ時代から扱いに慣れた「CAPUTO カプート社」の看板商品で、コシの強い生地に仕上がるサッコロッソをメインに使用。天候や気温によって発酵時間が短いサッコブルなどとの配合割合や水分や塩などの分量を微調整する

Lete-MioTem.jpg ピッツェリアに関しては、店の顔と言える窯の熱源が電気ではなく、食欲をそそる香りを生地につける薪火であるかどうか。そしてそれがハンドメードや国産窯より性能が高く、ピッツァの出来栄えを左右するナポリ製か。生地に使っている小麦粉の袋があれば、その銘柄も気になるところ。

【photo】ミオ・エ・テンプリーナのミネラルウォーターは、セリエA2017シーズンで強豪ユベントスと優勝争いをしたSSCナポリのユニフォームスポンサー「Leteレテ」。採水地はアペニン山脈南部のカゼルタ県プラテッラ村。硬度900以上。同じカンパーニャ州産「Ferrarelleフェラレッレ」と比べて発泡は弱め

 ミオ・エ・テンプリーナでは、イタリアのように家族が揃って和気あいあいと食事ができる空間づくりを心掛けているとのこと。事実、そこではゆったりした時間が流れていました。

 そんな空気感を醸し出す店内のインテリアや調度品からはナポリへの深い愛情、そして伝統への敬意が感じ取れるのでした。            

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 前回詳報した6月末にさくらぐみを訪れた翌々日、そして8月初旬にも再訪。味にブレがないことを確認の上で、ミルキーなモッツァレラ・ディ・ブッファラ作りに欠かせない水牛ちゃんが反芻するように胃袋の記憶を呼び戻してみます。

《6/24 アンティパスト》・・・フリット・ディ・ガンベッリ 

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赤穂産 小太海老(サルエビ)のフリット。小麦粉でカラッっと素揚げした小太海老の食感が絶妙。殻が柔らかく頭から丸かじりすると、後を引く味噌の旨味が口いっぱいに広がる。お好みでレモンを軽く絞って(860円)

《8/5 アンティパスト 》・・・インサラータ・ディ・マーレ

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 赤穂の新鮮な海の宝石サラダ ナポリ風。(ウニやアワビをエサにしているグルメな南三陸町志津川湾産の旨味の塊のようなタコの食味にはかなわないが)赤穂からほど近い明石海峡は流れが速く、歯応えのあるマダコの漁場として名高い。エビ、イカ、ひよこ豆と野菜のシンプルなサラダ(1~2人前990円/2~4人前1,510円)

《6/24 & 8/5 プリモピアット》・・・ピッツァ・マリナーラ・コン・ポモドリーニ

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 名店の誉れ高い「さくらぐみ」で、西川師匠や兵庫県明石市で「Ciroチーロ」を2004年に開いた先輩の小谷紀三子さんに鍛えられ、さくらぐみの窯を任されたピッツァイヨーラ松村さんの腕前を物語るジューシー&モチモチ&パリパリサクサクな食感が楽しめるマリナーラ。庄イタ的には前々日に古巣で食したピッツァを上回る出来栄え。Brava!!(1,510円)

《8/5 プリモピアット》・・・ピッツァ・クアットロ・スタジオーニ

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 四季を意味する名のピッツァ。新鮮な牛乳を使用するフィオル・ディ・ラッテとトマトソースをベースに、手前右から時計回りにパルミジャーノ・レッジャーノ,黒オリーブ,マッシュルーム,ハムをトッピング。バジルの香りと共に4つの味が楽しめる欲張りピッツァ(1,940円)

《6/24 プリモピアット》・・・スパゲッティ・アル・リモーネ

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 赤穂産エビのシチリアレモンクリームソース。ほのかなレモンの酸味が爽やかなクリームソースと相性の良い太めのスパゲッティに絡む(1,570円)

《6/24 セコンドピアット》・・・アル・フォルノ・デル・ジョルノ

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 赤穂産マダイのピッツァ窯ハーブ & レモン蒸し焼き。真鯛の旨味を活かし、味つけはあっさり目の仕上がり(1,990円)

《6/24 & 8/5 カッフェ》・・・エスプレッソ

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 ナポリ発祥のロースター「Izzo イッツォ」創業者が設立したエスプレッソマシンメーカー「My Way」製レバー式マシンでエスプレッソを抽出する松村さん。豆はIzzoほどストロングスタイルではなく、マシンの脇に袋があるナポリのロースター「Passalaqua パッサラックア」の「Mehari メハリ」。スプーンで砂糖を入れてもなかなか沈み込まないキメ細やかで分厚いクレマが香り高いカッフェの美味しさを物語る

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 こうしてミオ・エ・テンプリーナで登場した料理を改めて思い起こしているうち、リラックスした状況下で行うのだというエサの反芻をしている牛さんのように、タラ~リとヨダレが垂れてきました(º﹃º )。


【photo】京都市上京区の菅原院天満宮神社は、学問の神様である菅原道真が生誕した地に建つ。道真公の産湯となった「初湯の井戸」は、受験や病気平癒にご利益があるとされ、名水の誉れ高い。一般的には龍が多い手水口(ちょうずぐち)だが、牛とご縁が深かった道真公にちなんでそこでは牛。見ようによってはヨダレにも...?。(前稿でダァー!! の雄叫びと共に登場したアントニオ猪木氏と同様、本筋とは無関係です)

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 季節ごとに入れ替わるグランドメニューのセコンドピアットには、アクアパッツァ(1,990円)もオンリストしてあります。総じて魚介系の料理は素材の味を削がないよう、シンプルな味つけです。

 赤穂という土地柄を考え、これまでに訪れた2度ともピッツァ以外には魚介系の料理を食べました。肉食系の方には、阿蘇天然ミネラル豚香心ポークのロースト(1,890円)や、北海道池田町産の褐毛和種いけだ牛のビステッカ(2,910円)といった選択肢も。

 海の幸に恵まれ、自然豊かな赤穂は、大阪市内の喧騒を離れてリフレッシュするにはピッタリなロケーションといえます。

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【photo】清流千種川(ちくさがわ)が播磨灘に注ぐ赤穂市街地から川沿いに遡り、坂越(さこし)方面へ。茶臼山からは生島が防波堤となり波静かな天然の良港で、かつて北前船が寄港した坂越湾が一望のもと。坂越浦に浮かぶ生島は天然記念物に指定される常緑樹林帯で覆われ、緑豊かな坂越湾の地形から植物プランクトンが豊富なため、養殖される牡蠣は1年出荷できるほどに成長する

 先日、赤穂を訪れた折は、アルコール発酵した液体に関しては今更申し上げるまでもなく、生食するのも庄イタは大好きなブドウ、安芸クイーンやシャインマスカットなどの高級品種や、珍しい桃など、近隣で生産されるフルーツ類も豊富に出回っていました。
 
 作る人が心豊かで健やかでなければ、心に響く料理は作れないと、松村さん・柴田さんは仰います。まさにその通り。

 アントニオさん仕込みのTimballo Napoletanoも機会があれば食したみたいものです。(アントニオさんの苗字は「猪木」ではなく「トゥベッリ」です。念のため)

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Mio & Tempurina ミオ・エ・テンプリーナ

・住:兵庫県赤穂市城西町129
・Phone:0791-46-5787
・営:昼 11:30~14:00
   夜 17:30~21:00
   月曜定休
  ※木曜・金曜のみランチセット(1,620円)あり
    サラダ+ドリンク+3種類から選ぶパスタorピッツァ
   その他の日はアラカルトメニューから
・URL: https://www.facebook.com/Mio.e.Tempurina/
・Pあり・禁煙・カード不可

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