あるもの探しの旅

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エオリアの花蕾 Capperi

お試しあれ、エオリア風パスタ
カンタン、オイシイ、Pasta all'eoliana


 南米チリ出身の詩人パブロ・ネルーダ(1904-1973)【下画像】は、30代の半ばまではビルマ・インドネシア・アルゼンチンなどの領事を歴任。マドリッド領事に着任した2年後の1937年、反ファシズムを掲げソ連が後押しする人民戦線政府と右派フランコ将軍率いる軍が衝突してスペイン内線が勃発します。

 3年に及んだ内戦で、ネルーダは迫りくるファシズムの横暴と権力の座に就いたフランコ独裁政権の圧政に苦しむ民衆の姿を目の当たりにします。

neruda-portrait.jpg 任期途中での召還命令による帰国後の1945年、共産主義の拡大に懸念を抱く米国の影響下にあった当時のチリで共産党所属の上院議員として初当選を果たします。1945年の第二次世界大戦終結後、米ソを対立軸とする東西冷戦の余波は、キューバほか中南米諸国にも及びます。

 1948年、チリ共産党が非合法化され、親米的な政策を進めるビデラ政権に批判的だったネルーダに政治犯として逮捕令状が出ます。そのため、ネルーダは妻デリア・デル・カリルと共に祖国からの逃避行を余儀なくされました。

Photo from the Nobel Foundation archive

 追手を逃れつつ、アンデス山脈を越えて陸路アルゼンチンに入国。国外脱出に成功するも、チリ政府が手を回したため、フランスやイタリアでは入国を拒否されます。苦境にある詩人に救いの手を差し伸べたのが、ナチスによる無差別爆撃を糾弾したゲルニカを1937年に発表後、故国スペインから主たる創作の場をパリに移し、フランス共産党員でもあった画家パブロ・ピカソでした。

 地下活動を通じてソ連・チェコスロバキア・ポーランド・ハンガリーといった東欧諸国ほかインド・中国などへの亡命生活を続けます。

【Movie】1976年チリ生まれのパブロ・ラライン監督作品「Naruda(邦題:ネルーダ~大いなる愛の逃亡者)」。チリ政府から追われる身となったネルーダの謎多き脱出劇が初めて映画化された。2016年カンヌ国際映画祭では登竜門的な監督週間に出品され、2017年ゴールデングローブ賞外国語映画賞にノミネートされた

 1952年、ネルーダ夫妻をイタリアで受け入れたのが、楽園カプリ島出身の文筆家であり郷土史研究家であったエドウィン・チェリオの別邸です。チリの政治状況が変わり、1958年に共産党が合法化されて祖国に戻った後の1971年、ネルーダはノーベル文学賞を受賞します。
 
for a poetry that with the action of an elemental force brings alive a continent's destiny and dreams.(=南米大陸の運命と人々の希望に生命を吹き込んだ根源的で力強い詩業に対して)〟

 このようにスウェーデンアカデミーが示した受賞理由は、弾圧に屈することなく苦難に立ち向かう生き方と作品を通し、言語芸術の力を示して余りある詩人への賛辞でした。

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 20世紀最大の詩人と評され、今もなおチリの国民的な文学者であり、政治家や外交官としての顔も持ち合わせていたネルーダ。

 詩人のイタリアにおける隠遁生活を、島の純朴な郵便配達の青年マリオとの心の交流を通して描き、静かな感動を呼んだのが、1994年公開の映画「Il Postino イル・ポスティーノ」です。

 詩情あふれる映画の世界観を見事に表現し、オスカーを受賞したテーマ曲を作曲したのがルイス・バカロフ(1933~2017)。アルゼンチン生まれでイタリアに帰化後、1960年代マカロニ・ウエスタン全盛のイタリア映画界でコンポーザーとして頭角を現します。巨匠エンニオ・モリコーネの代役で引き受けたこの仕事が代表作と言ってよいでしょう。

Trosi_Il_postino.jpg つましい漁師の家庭に生まれ、長じて父からは跡を継ぐことを望まれ、寡黙で口下手だったマリオ。巧みな比喩表現を用いた詩が特徴であったネルーダとの交流を通して、美しい言葉を紡ぎ出す詩作の醍醐味に目覚めてゆきます。

 ニュー・シネマ・パラダイスでは映画技師アルフレードを演じたネルーダ役の名優フィリップ・ノワレを向こうに回し、マイケル・ラドフォードとともに監督も務めたナポリ出身でマリオ役のマッシモ・トロイージ【右画像】は、クランクアップの12時間後、心筋梗塞のため41歳で早逝しました。

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 重い心臓病をおして撮影に臨んだトロイージのスワンソングとなったイル・ポスティーノの撮影が行われたのは、パブロ・ネルーダが実際に滞在したイスキア島や高級リゾート地化されたカプリではなく、住民の暮らしぶりが垣間見えるナポリ沖のプロチダ島とシチリア北方のIsole Eolie エオリア諸島の一つ、自然豊かなサリーナ島です。

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 オーストリアから南フランスまで東西1,000kmに及ぶアルプス山脈やイタリア半島の南北を貫くアペニン山脈が形成されたアフリカ大陸とヨーロッパ大陸のプレート衝突による造山活動で、イタリア半島がおおよそ現在の長靴型の姿となったのは、1千万年前頃といわれます。

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【Photo】ローマ神話に登場するVulcanusウルカヌスは火の神。その妻、Aitnē アイトネがシチリアの活火山エトナの語源。ウルカヌスの英語読みVolcanoボルケーノのもととなったのが、イタリア語のVulcano ヴルカノ。エオリア諸島の最南端に位置し、水着着用の露天泥風呂がある火山島ヴルカーノから眺めた(左から)二つの頂きを有するサリーナ島、ホテルや飲食店が多く、エオリア観光の起点となるリーパリ島、エオリア諸島では最も小さなパナレア島

 7つの島で最大のリーパリ島にちなむリーパリ諸島の異名を持つエオリア諸島は、現在から258万8000年前~1万1700年前までを指す第四期更新世の火山活動で島々が誕生しています。よって、地球46億年の歴史においては新しい陸地です。

 その一つであるストロンボリ島は、小規模なマグマ噴火を間欠泉のごとく繰り返えす「ストロンボリ式噴火」の由来となった火山島。火口から真っ赤な溶岩を絶え間なく噴出するさまから〝地中海の灯台〟と称されています。

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【Photo】〝isola verde 緑の島〟と形容されるサリーナ島では、エオリア諸島最高峰のMonte Fossa delle Felciフェルチ山(962m)とMonte dei Porriポッリ山(860m)との間の低地や海沿いに2,500人ほどの住民が暮らす。収穫後に太陽のもとで乾燥させたブドウで作るデザートワイン「Malvasia delle Lipari マルヴァジア・デッレ・リーパリ」が特産

 シチリア島は紀元前6000年頃にヨーロッパ大陸から渡ってきたシカニ人など、3つの異なる先住民族が暮らす地でした。紀元前8世紀、シチリア島を含む南イタリア地域に移民が奨励されたギリシャ人が入植を開始します。

 エオリアとは、ギリシャ神話に登場する風神Aeolus アイオロスにちなむ名。エアコンのCMソングにもなった「風のエオリアby 徳永英明って曲もありました。

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【Photo】サリーナ島でイル・ポスティーノの撮影が行われたのが、断崖の上にあるPollara ポッラーラ地区。ラストシーンで亡きマリオを思って詩人が歩いた海辺には撮影当時と変わらぬさざ波が寄せては返す

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 年間を通してティレニア海の潮風が吹き抜けてゆくサリーナ島で最も多く栽培されるブドウ、マルヴァジア・ビアンカから作られるワインの中でも特に名高いのが「Malvasia delle Lipari passito D.O.C. マルヴァジア・デッレ・リーパリ・パッシートD.O.C.」。

 強烈な天日のもとで日干しして作られるこのデザートワインと並ぶ島のもう一つ特産物が「Cappero カッペロ」(複数形:Capperi カッペリ / 英語:Caper / 日本語:ケッパーないしはケイパー)です。

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 瓶詰めを目にする機会が多いケッパーは、地中海沿岸の乾燥した地域に自生する多年生のフウチョウボク科ツル性植物の花芽です。花弁をつける5月末~7月末、40℃に迫る暑さを避けるため早朝と夕刻に手摘みで開花前の閉じた蕾を収穫。3カ月ほど塩蔵する間、撹拌しながら苦味を抜き、食用とするものです。

 紫色のネムノキに似た長いおしべを持つ淡いピンクが入り混じった白いケッパー花は、たった1日でしぼんでしまいます。花の命は短くて...。その実である「Cucunci ククンチ」もサリーナ島の特産。長細いグリーンオリーブのような形状をしており、こちらも塩蔵して食用となります。

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 ナポリ発祥のパスタ料理「プッタネスカ」では黒オリーブと共に具材となるほか、イル・ポスティーノの公開翌年に訪れたカプリ島のテラス席で食べたカジキマグロのソテーでも添え物的に使われていました。

 小粒でも独特の風味があるケッパーは、スモークサーモンの添え物となるのように、アクセントとして料理の引き立て役に回ることがほとんど。主役というよりは脇役の印象があるかもしれません。

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 そんな価値観を打ち破ったのが、昨年秋に梅田阪急百貨店本店で開催されたイタリアフェア会場にいらっしゃったイタリア料理研究家の長本和子さんに教えて頂いた直径2cm前後もある大粒のケッパー【上画像】を使う〝Pesto all'eoliana ペスト・アッレオリアーナ〟です。

 手間いらずで美味しいエオリア風ペーストには、それぞれ家庭の味があります。基本はケッパー+アーモンド+フレッシュバジル+トマト(+お好みでミントの葉少量)の組み合わせ。オリーブオイル少量を加えて適度な粘性になるまでミキサーにかけ、仕上げに粉チーズとオイルで味を調えます。

 ここで使用するのが、酸味で本来の味が失われている酢漬けではない塩蔵ケッパーで、水で30分ほど塩抜きし、塩味が残った状態のものを使います。用途はロングパスタのラグーソースとして使うことが多いとのこと。

 冷製に用いるカッペリーニは論外として、細目のスパゲッティーニより太い1.7~1.8mm(茹で時間8~10分)程度で、表面が白っぽく見えるブロンズダイスで成形してソースが良く絡むスパゲッティまたはリングイーネとの相性が良いと思います。

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【Photo】夏のある日のTaverna Carlo タヴェルナ・カルロ。スパゲッティは聖地グラニャーノ産をアルデンテで。茹で上がり時間を考慮してラグーを準備。サリーナ島特産のデザートワイン「マルヴァジア・デッレ・リーパリ」では日干しブドウを用い、最も多く栽培されるマルヴァジア・ビアンカは、6世紀~10世紀にかけてビザンツ文化圏となったサルデーニャ島経由でサリーナ島に伝わった。紀元前12世紀頃、フェニキア人によってもたらされた白ブドウ「Nuragusヌラーグス」を使い、エチケッタにサルデーニャ特有種の花Aqilegia Nuragicaが描かれた「Pala パーラ」という作り手によるコストパフォーマンスが非常に高い南の島のワインNuragus di Cagliari D.O.C.ヌラーグス・ディ・カリアリD.O.C.と南の島の料理との組み合わせ

 ケッパーは、エオリア諸島には野生であるほか庭木としても珍しくない花です。多年生で10年以上を経過すると茎が木質化してきます。流れ出した溶岩が海岸線で固まったことを物語る黒い火成岩の岩肌が切り立った海岸線を形作るサリーナ島の北側にアマルフィから12世紀に移住した人々が住みついたという太古は溶岩の噴出口だったMalfaマルファ地区の土壌で育つものは一回り花弁が大きく味も格別。

maurizia-de-lorenzo.jpg インポーターである「EeT 株式会社」のブースにいらしたのが、お顔を拝見してすぐに分かった長本さん。

 その隣にはサリーナ島でケッパーを栽培する「Sapori Eoliani サポーリ・エオリアーニ」のマンマ、マウリツィア・デ・ロレンツォさん【左画像】もおいででした。
 
 笑顔が素敵なマウリッツィアさんは、3年前の11月、エオリアの海のような透き通った青い瞳の持ち主だった息子ロベルトをバイク事故のため35歳の若さで失う悲運に見舞われています。

saporieolianisalina.jpg マウリッツィアさんの父ピーノから受け継いだサリーナ島のケッパーを世に広めようとした矢先、志半ばにして不慮の事故で逝った息子の意志を継ぎ、サポーリ・エオリアーニ代表の座に就いたのがマウリツィアさんでした。同社のWebサイト〈 www.saporieolianisalina.it 〉では、ケッパーの花に囲まれたロベルトが笑顔を浮かべています。【右画像】

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 塩蔵ケッパー、アーモンド、フレッシュバジル、トマトさえあればカンタンに出来、嬉しいことにしかもオイシイSpaghetti all'eoliana スパゲッティ・アッレオリアーナ。

 拙宅併設のTaverna Carlo タヴェルナ・カルロでは、適度に冷えたヴィーノ・ビアンコを相伴にエオリア諸島に思いを馳せる定番メニューと化しています。

 パブロ・ネルーダは、サリーナ島のような素朴なたたずまいが当時は残っていたであろう1950年代の初めに過ごしたカプリ島についての詩を残しています。最後にその一節をご紹介しておきましょう。

  カプリ島の恋人たち (翻訳:大島博光)

  島はそのたたずまいのなかに
  時間と風に磨かれた金貨のような魂をもち
  手つかずのアーモンドのように
  野生のアーモンドのように
  生(き)のままだ
  そこでわたしたちの愛は眼に見えぬ塔だった
  煙りのなかで顫(ふる)えていた

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Richetta
 エオリア風パスタ レシピ(4人分)

《材料》
 パスタ320g 塩蔵ケッパー60g アーモンド(生orロースト)20粒
 フレッシュバジル25枚 トマト2個 EXVオリーブオイル100~150cc
 粉チーズ(パルミジャーノまたはペコリーノ)40g
《手順》
1:塩蔵ケッパーを水に浸して30分ほど塩抜きしておく(適度な塩分を残す)
2:乾燥パスタをアルデンテに茹でる
3:粗く刻んだアーモンド、種を除いて刻んだトマト、ケッパー、バジル、
 オリーブオイルをミキサーでペースト状にする(アーモンドの粒が残る程度)
4:ミキサーからボウルに移し、粉チーズを混ぜ込み、オリーブオイルを加え、
 馴染ませてから、茹で上がったパスタに和える

サポーリ・エオリアーニ輸入元「EeT ~ da Roma
2018年秋の百貨店イタリアフェア出展スケジュール

 9/19〜30 新宿伊勢丹 イタリア展(※9/25は休み)
 9/26〜10/2 日本橋三越 地下プロモーション
 10/3〜8 札幌丸井今井 イタリア展
 10/4〜10 大分トキハ イタリア展
 10/17〜22 新潟伊勢丹 イタリア展
 10/17〜23 鹿児島山形屋 イタリア展
 10/24〜30 日本橋三越 地下プロモーション
 10/31〜11/6 阪急梅田本店 イタリア展
 11/14〜19 静岡伊勢丹 イタリア展
 11/14〜20 新宿伊勢丹 プラドエピスリー

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