あるもの探しの旅

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2018/12/22

祝・解禁!白いダイヤモンド 【後編】

Shine on you crazy White Diamond [ part.2 ]
 

 白いダイヤモンドことアルバ産白トリュフに相応しい2本、バローロに本拠を置くViettiD.O.C.G.バルバレスコ'89、バルバレスコに本拠を置くGaja の表記上はD.O.C.でも実体はD.O.C.G.バローロ'96という極上の変化球を仕込んで臨んだ東心斎橋「Pesce Rosso」での一夜を振り返りましょう。

 事前にK氏と庄イタが持ち込んだワインの素性をソムリエの小田浩司マネージャーから聞き出していたH氏は「二人が思いっきりハードルを上げたので」と苦笑い。そりゃそうです。世界で最も高価な食材に釣り合うそれなりのワインを用意したのですから。

Bollinger.R.D.jpg

 遥か高みへと昇り詰めるであろう2本目・3本目に至る流れを考え、H氏がスターターに選んだシャンパーニュは「Bollinger ボランジェ」。「Krug クリュッグ」などと共に英国王室御用達の栄に浴する6軒の造り手の一角を占めます。その特級銘柄にあたる「R.D. 2002 Extra Brut エール・デ '02 エクストラ・ブリュット」で乾杯。

 H氏がお好きな映画「007」の原作者イアン・フレミングが1956年に発表した「Diamonds are Forever(ダイヤモンドは永遠に)」にボランジェの名が初めて登場しています。映画化8作目の「Live and Let Die(死ぬのは奴らだ)」('73年公開)では脇役的な扱いでしたが、シリーズ11作目「Moonraker(ムーンレイカー)」('79年公開)においてボランジェとのプロモーションタイアップ契約が成立。映画冒頭からブランド名入りワインクーラーが映し出されました。
 Moonraker-bollinger.jpg 10作目「The Spy Who Loved Me(私を愛したスパイ)」('77年公開)まではタイアップ先だったドン・ペリニョンばかりを飲んでいたジェームス・ボンド。流した浮名は数知れぬボンドですが、ことシャンパーニュに関してはボランジェ一筋へと宗旨替えしています。

 新作が公開されるごと話題に事欠かない007MI6(英国秘密情報部)秘密兵器開発主任Qがスパイ仕様の特装を施したアストンマーティンDB5などの歴代ボンドカーをはじめ、今や日本円換算で10億円を超すといわれるタイアップ契約と引き換えにボランジェは作中での寡占状況を維持しています。
 007bollinger.jpg【Photo】映画007とボランジェのタイアップ商品例。拳銃のサイレンサーをかたどった専用ケース入りタイアップボトルの「ボランジェ2002BRUT」。ダイヤル式のロックを開錠する番号は「007」。バレバレである(上画像) 現時点でのシリーズ最新作「スペクター」で6代目ボンド、ダニエル・クレイグが着用したオメガ・シーマスター300(下画像
OMEGA_Seamaster_Bond.jpg

 007最新作「Spector スペクター」でジェームス・ボンドが着用したオメガ・シーマスター300 &ストラップを愛用しておいでで、実はMI6の諜報部員かもしれないH氏も購入したという007パッケージのシャンパーニュをリリースするなど、前々回サンドバッグ状態にしたボージョレ・ヌーボーほどではありませんが、商魂たくましい一面もボランジェは持ち合わせているようです。

 話はさらに本筋から脱線しますが、10作目でも殺し屋として登場、公開済みの全24作を通して敵役としては唯一の連続出演を果たしたのが鋼鉄の歯を持つ大男ジョーズです。これ見よがしにラベルを撮影カメラに向けたボランジェR.D.を自慢の光り輝く前歯で抜栓、本来は無重力ゆえ空間に液体が漂うはずの宇宙船内で地球上と何ら変わらぬさまで恋人ドリーとグラスを交わします。

 ジェームス・ボンドのお気に入りという設定はまだしも、ジョーズまでもというオチがブランドイメージ向上に寄与したかどうかは微妙なところかと。

wine-bottles.jpg


 2002年はシャンパーニュ地方の当たり年。ピノ・ノワールをベースに出来が良かったシャルドネを例年より多めの比率で混醸、R.D.は瓶内二次発酵によって生じる澱を取り除く作業を11年もの長きに渡って行わず、出荷直前の2013年9月に澱抜きが行われています。

 R.D.とは、Récemment Dégorgé(=「最近澱抜きした」の意)の略で、良作年'02vinは、イタドリや栗のハチミツ、ドライフルーツのような芳醇な複雑味が特徴。それでいて、オールドヴィンテージシャンパーニュにしてはフレッシュさも持ち合わせています。「うーむ、コレは美味しい。」

 英国生まれで駐日英国大使館発行のパスポートを所持するH氏。フィッシュ&チップスからローストビーフまでドライな泡もので通す英国紳士と相通じるアルコールの嗜好から察するに、ロンドンで授かった産湯はご自宅に常備しておいでだというMoët & Chandonに加え、締めの定番The Macallanと「007カジノ・ロワイヤル」でボンドが注文するカクテル「ヴェスパー・マティーニ」のベースとなるGordon'sというシャンパーニュ&スコッチウイスキー&ジンの3種混合だったはず。

 そんな妄想を巡らしながら、2皿目まではR.D.'02vinで通しました。

prosciutto-cavallo.jpg・1皿目:ピエモンテ産馬肉の生ハム パルミジャーノチーズ
     with ボランジェR.D.2002上画像

 店に預けておいたバルバレスコ'89と実質的にバローロなランゲ・スペルス'96が開くよう、1皿目の登場時点で珠玉のネッビオーロ2本をアイドリング状態に移し、白トリュフの饗宴は幕を開けたのです。
 

hariica-akakabu-beats.jpg・2皿目:紀州産ハリイカと赤カブ ビーツのピューレ上画像

☞ 暑く乾燥した夏から収穫期まで理想的な条件下で傑出したワインが造られてから29年。一口目から血統の良さを示し、本領発揮のVietti Barbaresco Masseria '89が登場下画像

vietti-barbaresco89.jpg「まさにエレガント!! グラスのエッジがレンガ色からオレンジ色に変化していることから察することができる熟成が進んだネッビオーロの上品な深みが素晴らしい。」


gamberorosso&celeriac.jpg・3皿目:赤海老とセロリアック 秋トリュフの香り上画像


pesce_rosso2018.11.13.jpg 白トリュフ教の敬虔な信者である迷える子羊・庄イタに秘蹟を授けるべく、聖地アルバ産の聖体白トリュフと典礼聖具スライサーを手に厳かな聖体拝受の儀式を執り行う司祭役の小田マネージャーがカウンター席へと降臨上画像

luce-nord-tartufi3.jpg・4皿目:1年熟成のキタアカリ 半熟卵のせ + アルバ産白トリュフ
     with ヴィエッティ バルバレスコ・マッセリア'89上画像


Tagliolini-porcini-freschi.jpg・5皿目:フレッシュポルチーニのタリオリーニ上画像


 瞑目してVietti Barbaresco '89の余韻に浸っているところに6皿目のリゾットが運ばれてくると、聖体白トリュフと聖具スライサーを携えて小田マネージャーが再降臨下画像

Oda-mng-risotto-tartufi.jpg 
☞ 若々しいガーネットの色合い、グラスの中に幾筋も現れる通称「ワインの涙」がピークを過ぎた枯れたワインでは低下する粘性が今なお高く、ポテンシャルの目安となるアルコール度数の高さも示すGaja Langhe Sperss '96(下右側)。遥か高みの頂は遠い先にある熟成途上にある千両役者がここで加勢。

 「ガヤらしい高い完成度。均整がとれた瑕疵のない異次元のハーモニー。
  す... 素晴らしい!!

 最後の晩餐で十二使徒に対してキリストが発した〝これを受けて飲みなさい。これはわたしの血の杯...〟という有名な一節を小田神父様マネージャー様がここで囁けば、庄イタは6皿目で被昇天したかもしれません。

risotto-tartufissimi.jpg・6皿目:白トリュフが覆いつくすリゾット
      with ヴィエッティ バルバレスコ・マッセリア'89(左)
        ガヤ ランゲ・スペルス'96(右)上画像


 二枚重ねのパスタ生地の間に肉などの詰め物をし、セージバターソースで食するラヴィオリ風のピエモンテ料理「アニョロッティ・ダル・プリン」。ライブ感いっぱいのカウンター席から撮影したオープンキッチンで山中シェフが手で成形する様子をどうぞご覧ください。


 
 またしても白トリュフまみれとなったアニョロッティ。ナイフを入れると、トローリと溢れ出てくる卵黄が白トリュフと鉄板の組み合わせを演出する仕掛け下右画像

agnorottiPesceRosso2018.11.13.jpg agnorottiPesceRossoⅡ2018.11.13.jpg

・7皿目:卵黄のアニョロッティ+ 白トリュフ
     with ヴィエッティ バルバレスコ・マッセリア'89上左画像


Wagyu-borritoBarbaresco.jpg・8皿目:バルバレスコで煮込んだ和牛とタルティーヴォ
     with ガヤ ランゲ・スペルス'96上画像

 ☞「...なんも言えね。」(北島康介風に)


 時が過ぎるのを忘れて満ち足りた時間に身を委ねるとは、まさにこういうひと時を指すのでしょうか。

 庄イタはデザートのモンテビアンコ(モンブラン)に移行する局面でしたが、ドルチェ抜きで〆にグラッパを所望したK氏。

BertaAnniversario70Riserva.jpg ほどなく木箱入りで静々と登場したのが、イタリア国内で初めてバリック熟成を導入した至高のグラッパを造る「Berta ベルタ」が創立70周年を記念し、ファーストヴィンテージの'82年を含む10のヴィンテージを特別ブレンドで仕上げた限定バージョンの「Riserva 70 anni リセルヴァ・セッタンタ・アンニ」。

 存在自体は知っていたこのグラッパ。4名で飲み干したボトル5本の画像を【前編】でご紹介した10月半ばにほぼ同じ顔ぶれで催した豪華ラインナップを取り揃えたワイン会当日、初めて実物を拝ませてもらっていました。その会場となった四天王寺前夕日ヶ丘にあるレストラン併設のワインショップに鎮座していたものの、5万円を超す価格にワナワナとたじろぎ、ため息とともにその前を立ち去ったのでした。

Berta70anni-tartufo-bianco.jpg

 Bertaは、この夜の2本目として開けたヴィエッティを含むAsti アスティ県の造り手が、自社畑で栽培するブドウ品種「Barberaバルベーラ」を互いに持ち寄り、その究極の姿を示そうと取り組んだ「Hastaeハスタエ」の参加メンバー。浪花食い道楽三人衆が集った初回のワイン会における主役は、共同プロジェクトの成果として世に出た「Quorum '99」でしたし、前回「Ai Suma '00」を開けた「Braida ブライダ」もプロジェクトに名を連ねていました。

 そんな縁を感じつつ、庄イタもグラス1杯だけ所望。

montebianco&berta.jpg

・9皿目:モンテビアンコ
     with ベルタ グラッパ・リセルヴァ・セッタンタ・アンニ
       特製白トリュフ風味上画像

 ☞「...(TT)」(前言を絞り出した後、感極まった北島康介風に)

 日本に数本しか入荷しなかったというずっしりと重い1,500mℓ容量マグナムボトルから大ぶりなグラスに注がれた琥珀色の液体には、なんとピエモンテ式に惜しげもなくアルバ産白トリュフがスライスされてゆきます。それは豪奢な白トリュフの饗宴を締めくくるにふさわしい1杯となりました。

wine-bottles.jpg 郷里ピエモンテの秋の恵みに存分に浸った帰路。ピエモンテで言えば、D.O.C.G.ドリアーニで使われるドルチェット種のような濃厚なワインカラーの阪急電車に揺られながらAirpodsで聞いていたのが、白トリュフのWhiteを挟み込んで今回の副題とした英国の偉大なロックバンド「ピンク・フロイド」が1977年に発表したアルバム「Wish You Were Here(邦題:炎~あなたがここにいてほしい)」のオープニングと最後を飾る大曲「Shine on you crazy diamond」。

Pompei-anfiteatro.png 紀元前1世紀前半に造営され、最大2万人を収容したというイタリア・ポンペイ遺跡「Anfiteatro 円形闘技場」上画像で1971年10月に行われた伝説的な無観客ライブ演奏から45年を経た2016年7月、バンドでギタリストだったデイヴ・ギルモアが再びポンペイ遺跡でこの曲を演奏しています。

 庄イタが恋い焦がれる白トリュフ。そのクレイジーなまでのファナティックさは、前世がピエモンテ人ではなく、ピエモンテのトリュフ犬だったからなのかもしれません。

 女性にとって永遠の憧れは光輝くダイヤモンドといわれますが、庄イタにとっての憧れの筆頭格であるアルバ産白トリュフにShine on you crazy diamondを捧げます。 

 思考や記憶を司る大脳皮質と海馬に深く刻まれた白いダイヤモンドの妙なる香りは、庄イタの中で決して色褪せることはありません。

 なぜなら〝ダイヤモンドは永遠の輝き (by "De Beers")〟ですから。

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PESCE ROSSO ペッシェロッソ

・住:大阪市中央区東心斎橋1丁目3-18
・Phone:06-6241-0030
・営:17:00~00:30(22時以降はワインバーとしての利用も可)
・URL: http://pesce-rosso.com/
・アルバ産白トリュフ祭り2018
  15,000円(トリュフ料理2品)18,000円(同3品)20,000円(同4品)
  通常コースに+5,000円で白トリュフ使用の一皿に変更可
 
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2018/12/15

祝・解禁!白いダイヤモンド 【前編】

Shine on you crazy White Diamond [ part.1 ]


 重量あたりの単価が最も高価な食べ物であることから「白いダイヤモンド」とも称されるイタリア・ピエモンテ州クーネオ県アルバ産白トリュフ。妙なる忘れがたい香りが記憶中枢に刻まれた者は、その甘美な誘惑から逃れることなど到底できません。

Lamellata.jpg

 1920年代、未踏峰であったエベレストに挑む理由をニューヨークタイムズ紙の記者に問われた英国の登山家ジョージ・マロリーが〝Because it's there.(そこにエベレストがあるから)〟と答えた逸話はあまりに有名です。

 白トリュフに執着する理由を問われたならば、即座に〝そこに白トリュフがあるから〟と前世ピエモンテ人の庄イタは答えるはず。

tajarin_agnrotti@sammarco.canelli.jpg【Photo】庄イタ史上最も贅沢なランチコース@ピエモンテより。「アルバ産白トリュフまみれのタヤリン(左)とアニョロッティ・ダル・プリン(右)」

 世界各国から美食家が集う「Fiera Internazionale Tartufo Bianco d'Alba(アルバ国際白トリュフ見本市)」が開催される10月初旬から11月末にかけては、トスカーナ州やエミリア・ロマーニャ州などイタリア北部から中部にかけての産地でトリュフ祭りが開催されます。

fiera-tartufo-bianco@alba.jpg【Photo】一部の黒トリュフのように人工栽培法が確立されていない白トリュフは、収穫の多寡や時季などによって相場が変化。昨年は100gあたり€700の値付けがなされ、収穫期に雨が多かった今シーズンは€290で入手できたという。毎年秋にアルバで開催される白トリュフ見本市の会場では、素性が明らかな白トリュフ一個ごと強弱が異なる香りを確認でき、買い手と売り手側のトリュフハンターは丁々発止のやり取りを繰り広げる

 アルバ産白トリュフ(Tuber magnatium pico)は、あらゆるトリュフの頂点に君臨するトップブランド。それなりの出費は伴うのは覚悟の上で、むせ返るような白トリュフの濃密なる洗礼をアルバ近郊で受けられんことを確信をもってお勧めします。

〝こんな驚天動地の物体がこの世には存在していたのか...〟フランス料理で珍重されるペリゴール地方産黒トリュフ(ごとき)を有難がっていた方でも、それまでの価値観がガラガラと音を立てて瓦解。驚愕されること請け合いです。

※ 再生時に音楽が流れます

 白トリュフは訓練された優秀なトリュフ犬が鋭敏な嗅覚で地中深くから掘り出した瞬間から、水分と共に香りが徐々に失われる運命にあります。希少性は言わずもがな、その儚さゆえ、尊さはいやが応にも増すというもの。

 深い霧のヴェールにランゲの森が包まれる季節を迎える頃。具体的には毎年9月21日の解禁日から翌年1月31日までの白トリュフを採取できる期間に「Trifulau(トリュフラウ)」と称されるハンターが人目を忍んで採取したばかりの上物を現地で食するのが理想。なれど、それは自由になる時間と懐具合に余裕がある方に限られます。

Fiera-del-Tartufo2018.jpg

 悲しいかな、どちらをとっても余裕がない大人の事情から、ピエモンテから飛来するコウノトリが運んでくる白トリュフで留飲を下げているここ数年。

 並み居る黒トリュフでは到底太刀打ちできない濃密な魅惑の香りを今年も堪能することができました。

wine-bottles.jpg

 昨年に引き続き、その舞台となったのは、東アジアを中心とするインバウンドで活況を呈する大阪ミナミの喧騒を離れた一角にあるスタイリッシュなイタリアン「Pesche Rosso ペッシェ・ロッソ」。

PesceRosso.jpg【Photo】契約満了で退社するアルバイト社員の慰労会をPesche Rossoで行った某日。店名が意味する金魚が泳ぐ水槽がエントランスに設けられた店の前で同僚に撮影してもらったツーショット

 現地で食するには及ばないまでも入荷したての白トリュフを狙ったため、ペッシェロッソに予約を入れたのは今年のアルバ産白トリュフ祭りの初日である11月13日(火)の宵でした。

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 2度に及んだ訪店でアルドとジャコモのコンテルノ兄弟頂上バローロ対決を演出した昨年と同様、浪花食い道楽三人衆でエントリーした今年も飲み頃を迎えているであろうヴィーノ・ロッソをセラーから物色。コンディションを整えるため、抜栓する10日以上前に店に預けることにしました。

 ご一緒したH氏は泡もの専科で、もうお一人のK氏は庄イタと同じ筋金入りのイタリアワインラヴァー。白トリュフがお題の今回とほぼ同じ顔ぶれで、過剰在庫を減らすためのワイン会を催してきました。

お好みワイン.jpg 初回メンバー.jpg

 大阪情緒溢れる〝粉もん&焼きそばとイタリアワインの相性を知る会@新福島〟では、庄イタが醸造所を訪れた年の「Percarlo ペルカルロ'03」とレア物「Quorumクオラム'99」、K氏はトスカーナ版バタールモンラッシェこと「Batàr バタール'12」、H氏は「BollingerボランジェN.V.」を持ち込み。

 バルベーラの逸品「Ai Sumaアイ・スーマ'00」を持参したK氏のアジトで催した〝ワインショップ直営フレンチとイタリアワイン会@四天王寺前夕日ヶ丘〟。H氏セレクトの「Taittinger Nocturneテタンジェ・ノクターン」でスタート。オーナーソムリエール秘蔵のカリフォルニア・サンタバーバラ地区の造り手オーボンクリマ「Hildegardヒルデガルド'03」を挟んでイタリア全土が空前のグレートヴィンテージに沸いた'97年vin庄イタコレクションから、カベルネ・ソーヴィニョン主体だった「Paleoパレオ'97」と珠玉のデザートワイン「Recinaioレチナイオ'97」の2本をチョイス。

@wassy's.jpg

 かように料理の傾向は定まらずとも〝泡もの+イタリアワインの多様性を味わう〟という軸はいささかもブレません。

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 今回、K氏からはBaroloに醸造所があり、1961年からクリュの概念を取り入れた造り手「Vietti ヴィエッティ」が唯一バローロ域外のネイヴェに所有する畑の収穫時点で樹齢30年ほどだったネッビオーロを仕込んだ「Barbaresco Masseria バルバレスコ・マッセリア'89下左を事前に持ち込む旨のメールを頂いていました。

 1989年は80年代を代表するグレートヴィンテージ。一般にバルバレスコはバローロほどではないにせよ、若いうちは渋味と感じるタンニンが強い傾向にあります。収穫から30年近く熟成を重ねてタンニンが和らぎ、飲み頃に差し掛かっているはず。まさに白トリュフ料理にふさわしい正鵠を射た選択です。定石を踏んだ先手を見極めた上で、後手の庄イタはタイプが異なる1本を供出することにしました。

 数本の候補の中から白羽の矢を立てた造り手は、イタリアワイン界に偉大な足跡を残してきた「Angelo Gaja アンジェロ・ガヤ」。選んだのはピエモンテでは長期熟成型のワインが造られた優良年の「Langhe Sperss ランゲ・スペルス'96下中央

2018.11.13-vini.jpg

 呼称こそイタリアワイン法では2番目の「D.O.C.Langhe ランゲ」ですが、その中身は最上位「D.O.C.G.Barolo バローロ」エリアでも最も傑出したバローロを産出する「Serrarunga d'Alba セッラルンガ・ダルバ」地区で1988年に購入した自社畑Sperssで1996年に収穫された長熟型の高貴品種「Nebbioloネッビオーロ」をバローロの規定に沿って仕込んだ紛れもない偉大なバローロです。

 ネッビオーロから造られる銘酒「Barolo バローロ」と「Barbaresco バルバレスコ」は、ピエモンテが誇る両雄。なかでもガヤは、ピエモンテのみならず、イタリア屈指の壮麗で完成度が高いワイン群を造り続けてきました。

 大きな白抜き文字でGAJAと記されたエチケッタで知られ、凡庸であることが許されないこの名門醸造所は、アルバにほど近いバルバレスコ村の中心部にあります。

cantina_GAJA_2006_10.jpg【Photo】バルバレスコ村にある「Azienda Agricola GAJA」。醸造所ゲート脇の壁面には家名が浮き彫りされたプレートが架かる。畏敬の念を抱く偉大な造り手に対し、手放しで称賛の意を表する庄イタ

 '96年は品質向上のために一切の妥協を排除してきたガヤにとっての一大転機となった年。当時、個性が明確な単一畑(クリュ)がもてはやされ、畑の個性を組み合わせて一つの味に仕上げるD.O.C.G.バルバレスコをともすると軽視する風潮がありました。そこに反旗を翻したのがアンジェロ・ガヤでした。

 高値で取引される「Sori San Lorenzoソリ・サンロレンツォ」や「Sori Tildin ソリ・ティルディン」など、ブルゴーニュのグランクリュに相当するバルバレスコ、そしてD.O.C.G.バローロのエリアに所有するピエモンテ方言でノスタルジーを意味するのだという「Sperss」と「Conteisa コンテイーサ」については「D.O.C.Langhe ランゲ」にすべて格下げ。唯一のD.O.C.G.をバルバレスコ一本としたのです。

Barbaresco- Masseria89sperss96.jpg【Photo】バルバレスコ・マッセリア'89(左)とランゲ・スペルス'96(右)の色合い比較。いずれも高貴品種ネッビオーロでありながら、熟成するに従ってレンガ色へと変化する度合いの違いが見て取れる通りの味わい。綺麗に熟成したバルバレスコのエレガントさが際立つヴィエッティ'89。一方のガヤ'96はタンニンの収斂性は影を潜めるも、まだまだ力強さが漲る。綻びなど微塵も見せずに高い次元でさまざまなニュアンスが調和する

 17世紀にスペイン・カタルーニャ地方から移住した一族で、醸造家としては4代目となる当主アンジェロ・ガヤは、1960年にアルバ国立醸造学校を卒業。翌'61年から父ジョヴァンニのもとで醸造家としての道を歩み始めます。

 近郊の生産者からの買いブドウの併用を止め、全面的な自家栽培への切り替えを断行。質より量の考え方が蔓延していた当時のピエモンテにあって、収量を大幅に抑制します。若いうちは渋味と感じる強靭なタンニンが特徴のネッビオーロのため、イタリアにおける導入の先駆けとなったバリック樽を使用するなど、1960年代に数々の改革を実践してゆきます。

 ブドウの選別や樽材、ボルドー一級シャトーのそれよりも長いコルクに至るまで徹底した品質向上を図る一方、グランクリュにあたる「Costa Russi コスタ・ルッシ」ほか、プルミエクリュ的な「Fasetファセット」を含むD.O.C.G.バルバレスコの一等地14か所の畑を徐々に買い増し。1970年代後半には数々の改革が結果を生み、イタリアのみならず押しも押されぬワイン造りの第一人者となります。

※ 再生時に音声が流れます


 5代目として主に国外市場を担当する長女ガイア、国内を受け持つ次女ロザーナ、そして'16年に大学を卒業した長男ジョヴァンニが稼業を受け継いだ今も、1940年生まれで今年78歳となったアンジェロは第一線で精力的に活動しています。

wine-bottles.jpg 
 こうしてバローロに本拠を置くVietti のバルバレスコ、バルバレスコに本拠を置くGaja のバローロという変化球を仕込んで臨んだ白トリュフの饗宴で供された料理の数々を【後編】では振り返ります。空腹時の閲覧は刺激が強いですが、(前回同様に)乞うご期待 ❣❣


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