あるもの探しの旅

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祝・解禁!白いダイヤモンド 【後編】

Shine on you crazy White Diamond [ part.2 ]
 

 白いダイヤモンドことアルバ産白トリュフに相応しい2本、バローロに本拠を置くViettiD.O.C.G.バルバレスコ'89、バルバレスコに本拠を置くGaja の表記上はD.O.C.でも実体はD.O.C.G.バローロ'96という極上の変化球を仕込んで臨んだ東心斎橋「Pesce Rosso」での一夜を振り返りましょう。

 事前にK氏と庄イタが持ち込んだワインの素性をソムリエの小田浩司マネージャーから聞き出していたH氏は「二人が思いっきりハードルを上げたので」と苦笑い。そりゃそうです。世界で最も高価な食材に釣り合うそれなりのワインを用意したのですから。

Bollinger.R.D.jpg

 遥か高みへと昇り詰めるであろう2本目・3本目に至る流れを考え、H氏がスターターに選んだシャンパーニュは「Bollinger ボランジェ」。「Krug クリュッグ」などと共に英国王室御用達の栄に浴する6軒の造り手の一角を占めます。その特級銘柄にあたる「R.D. 2002 Extra Brut エール・デ '02 エクストラ・ブリュット」で乾杯。

 H氏がお好きな映画「007」の原作者イアン・フレミングが1956年に発表した「Diamonds are Forever(ダイヤモンドは永遠に)」にボランジェの名が初めて登場しています。映画化8作目の「Live and Let Die(死ぬのは奴らだ)」('73年公開)では脇役的な扱いでしたが、シリーズ11作目「Moonraker(ムーンレイカー)」('79年公開)においてボランジェとのプロモーションタイアップ契約が成立。映画冒頭からブランド名入りワインクーラーが映し出されました。
 Moonraker-bollinger.jpg 10作目「The Spy Who Loved Me(私を愛したスパイ)」('77年公開)まではタイアップ先だったドン・ペリニョンばかりを飲んでいたジェームス・ボンド。流した浮名は数知れぬボンドですが、ことシャンパーニュに関してはボランジェ一筋へと宗旨替えしています。

 新作が公開されるごと話題に事欠かない007MI6(英国秘密情報部)秘密兵器開発主任Qがスパイ仕様の特装を施したアストンマーティンDB5などの歴代ボンドカーをはじめ、今や日本円換算で10億円を超すといわれるタイアップ契約と引き換えにボランジェは作中での寡占状況を維持しています。
 007bollinger.jpg【Photo】映画007とボランジェのタイアップ商品例。拳銃のサイレンサーをかたどった専用ケース入りタイアップボトルの「ボランジェ2002BRUT」。ダイヤル式のロックを開錠する番号は「007」。バレバレである(上画像) 現時点でのシリーズ最新作「スペクター」で6代目ボンド、ダニエル・クレイグが着用したオメガ・シーマスター300(下画像
OMEGA_Seamaster_Bond.jpg

 007最新作「Spector スペクター」でジェームス・ボンドが着用したオメガ・シーマスター300 &ストラップを愛用しておいでで、実はMI6の諜報部員かもしれないH氏も購入したという007パッケージのシャンパーニュをリリースするなど、前々回サンドバッグ状態にしたボージョレ・ヌーボーほどではありませんが、商魂たくましい一面もボランジェは持ち合わせているようです。

 話はさらに本筋から脱線しますが、10作目でも殺し屋として登場、公開済みの全24作を通して敵役としては唯一の連続出演を果たしたのが鋼鉄の歯を持つ大男ジョーズです。これ見よがしにラベルを撮影カメラに向けたボランジェR.D.を自慢の光り輝く前歯で抜栓、本来は無重力ゆえ空間に液体が漂うはずの宇宙船内で地球上と何ら変わらぬさまで恋人ドリーとグラスを交わします。

 ジェームス・ボンドのお気に入りという設定はまだしも、ジョーズまでもというオチがブランドイメージ向上に寄与したかどうかは微妙なところかと。

wine-bottles.jpg


 2002年はシャンパーニュ地方の当たり年。ピノ・ノワールをベースに出来が良かったシャルドネを例年より多めの比率で混醸、R.D.は瓶内二次発酵によって生じる澱を取り除く作業を11年もの長きに渡って行わず、出荷直前の2013年9月に澱抜きが行われています。

 R.D.とは、Récemment Dégorgé(=「最近澱抜きした」の意)の略で、良作年'02vinは、イタドリや栗のハチミツ、ドライフルーツのような芳醇な複雑味が特徴。それでいて、オールドヴィンテージシャンパーニュにしてはフレッシュさも持ち合わせています。「うーむ、コレは美味しい。」

 英国生まれで駐日英国大使館発行のパスポートを所持するH氏。フィッシュ&チップスからローストビーフまでドライな泡もので通す英国紳士と相通じるアルコールの嗜好から察するに、ロンドンで授かった産湯はご自宅に常備しておいでだというMoët & Chandonに加え、締めの定番The Macallanと「007カジノ・ロワイヤル」でボンドが注文するカクテル「ヴェスパー・マティーニ」のベースとなるGordon'sというシャンパーニュ&スコッチウイスキー&ジンの3種混合だったはず。

 そんな妄想を巡らしながら、2皿目まではR.D.'02vinで通しました。

prosciutto-cavallo.jpg・1皿目:ピエモンテ産馬肉の生ハム パルミジャーノチーズ
     with ボランジェR.D.2002上画像

 店に預けておいたバルバレスコ'89と実質的にバローロなランゲ・スペルス'96が開くよう、1皿目の登場時点で珠玉のネッビオーロ2本をアイドリング状態に移し、白トリュフの饗宴は幕を開けたのです。
 

hariica-akakabu-beats.jpg・2皿目:紀州産ハリイカと赤カブ ビーツのピューレ上画像

☞ 暑く乾燥した夏から収穫期まで理想的な条件下で傑出したワインが造られてから29年。一口目から血統の良さを示し、本領発揮のVietti Barbaresco Masseria '89が登場下画像

vietti-barbaresco89.jpg「まさにエレガント!! グラスのエッジがレンガ色からオレンジ色に変化していることから察することができる熟成が進んだネッビオーロの上品な深みが素晴らしい。」


gamberorosso&celeriac.jpg・3皿目:赤海老とセロリアック 秋トリュフの香り上画像


pesce_rosso2018.11.13.jpg 白トリュフ教の敬虔な信者である迷える子羊・庄イタに秘蹟を授けるべく、聖地アルバ産の聖体白トリュフと典礼聖具スライサーを手に厳かな聖体拝受の儀式を執り行う司祭役の小田マネージャーがカウンター席へと降臨上画像

luce-nord-tartufi3.jpg・4皿目:1年熟成のキタアカリ 半熟卵のせ + アルバ産白トリュフ
     with ヴィエッティ バルバレスコ・マッセリア'89上画像


Tagliolini-porcini-freschi.jpg・5皿目:フレッシュポルチーニのタリオリーニ上画像


 瞑目してVietti Barbaresco '89の余韻に浸っているところに6皿目のリゾットが運ばれてくると、聖体白トリュフと聖具スライサーを携えて小田マネージャーが再降臨下画像

Oda-mng-risotto-tartufi.jpg 
☞ 若々しいガーネットの色合い、グラスの中に幾筋も現れる通称「ワインの涙」がピークを過ぎた枯れたワインでは低下する粘性が今なお高く、ポテンシャルの目安となるアルコール度数の高さも示すGaja Langhe Sperss '96(下右側)。遥か高みの頂は遠い先にある熟成途上にある千両役者がここで加勢。

 「ガヤらしい高い完成度。均整がとれた瑕疵のない異次元のハーモニー。
  す... 素晴らしい!!

 最後の晩餐で十二使徒に対してキリストが発した〝これを受けて飲みなさい。これはわたしの血の杯...〟という有名な一節を小田神父様マネージャー様がここで囁けば、庄イタは6皿目で被昇天したかもしれません。

risotto-tartufissimi.jpg・6皿目:白トリュフが覆いつくすリゾット
      with ヴィエッティ バルバレスコ・マッセリア'89(左)
        ガヤ ランゲ・スペルス'96(右)上画像


 二枚重ねのパスタ生地の間に肉などの詰め物をし、セージバターソースで食するラヴィオリ風のピエモンテ料理「アニョロッティ・ダル・プリン」。ライブ感いっぱいのカウンター席から撮影したオープンキッチンで山中シェフが手で成形する様子をどうぞご覧ください。


 
 またしても白トリュフまみれとなったアニョロッティ。ナイフを入れると、トローリと溢れ出てくる卵黄が白トリュフと鉄板の組み合わせを演出する仕掛け下右画像

agnorottiPesceRosso2018.11.13.jpg agnorottiPesceRossoⅡ2018.11.13.jpg

・7皿目:卵黄のアニョロッティ+ 白トリュフ
     with ヴィエッティ バルバレスコ・マッセリア'89上左画像


Wagyu-borritoBarbaresco.jpg・8皿目:バルバレスコで煮込んだ和牛とタルティーヴォ
     with ガヤ ランゲ・スペルス'96上画像

 ☞「...なんも言えね。」(北島康介風に)


 時が過ぎるのを忘れて満ち足りた時間に身を委ねるとは、まさにこういうひと時を指すのでしょうか。

 庄イタはデザートのモンテビアンコ(モンブラン)に移行する局面でしたが、ドルチェ抜きで〆にグラッパを所望したK氏。

BertaAnniversario70Riserva.jpg ほどなく木箱入りで静々と登場したのが、イタリア国内で初めてバリック熟成を導入した至高のグラッパを造る「Berta ベルタ」が創立70周年を記念し、ファーストヴィンテージの'82年を含む10のヴィンテージを特別ブレンドで仕上げた限定バージョンの「Riserva 70 anni リセルヴァ・セッタンタ・アンニ」。

 存在自体は知っていたこのグラッパ。4名で飲み干したボトル5本の画像を【前編】でご紹介した10月半ばにほぼ同じ顔ぶれで催した豪華ラインナップを取り揃えたワイン会当日、初めて実物を拝ませてもらっていました。その会場となった四天王寺前夕日ヶ丘にあるレストラン併設のワインショップに鎮座していたものの、5万円を超す価格にワナワナとたじろぎ、ため息とともにその前を立ち去ったのでした。

Berta70anni-tartufo-bianco.jpg

 Bertaは、この夜の2本目として開けたヴィエッティを含むAsti アスティ県の造り手が、自社畑で栽培するブドウ品種「Barberaバルベーラ」を互いに持ち寄り、その究極の姿を示そうと取り組んだ「Hastaeハスタエ」の参加メンバー。浪花食い道楽三人衆が集った初回のワイン会における主役は、共同プロジェクトの成果として世に出た「Quorum '99」でしたし、前回「Ai Suma '00」を開けた「Braida ブライダ」もプロジェクトに名を連ねていました。

 そんな縁を感じつつ、庄イタもグラス1杯だけ所望。

montebianco&berta.jpg

・9皿目:モンテビアンコ
     with ベルタ グラッパ・リセルヴァ・セッタンタ・アンニ
       特製白トリュフ風味上画像

 ☞「...(TT)」(前言を絞り出した後、感極まった北島康介風に)

 日本に数本しか入荷しなかったというずっしりと重い1,500mℓ容量マグナムボトルから大ぶりなグラスに注がれた琥珀色の液体には、なんとピエモンテ式に惜しげもなくアルバ産白トリュフがスライスされてゆきます。それは豪奢な白トリュフの饗宴を締めくくるにふさわしい1杯となりました。

wine-bottles.jpg 郷里ピエモンテの秋の恵みに存分に浸った帰路。ピエモンテで言えば、D.O.C.G.ドリアーニで使われるドルチェット種のような濃厚なワインカラーの阪急電車に揺られながらAirpodsで聞いていたのが、白トリュフのWhiteを挟み込んで今回の副題とした英国の偉大なロックバンド「ピンク・フロイド」が1977年に発表したアルバム「Wish You Were Here(邦題:炎~あなたがここにいてほしい)」のオープニングと最後を飾る大曲「Shine on you crazy diamond」。

Pompei-anfiteatro.png 紀元前1世紀前半に造営され、最大2万人を収容したというイタリア・ポンペイ遺跡「Anfiteatro 円形闘技場」上画像で1971年10月に行われた伝説的な無観客ライブ演奏から45年を経た2016年7月、バンドでギタリストだったデイヴ・ギルモアが再びポンペイ遺跡でこの曲を演奏しています。

 庄イタが恋い焦がれる白トリュフ。そのクレイジーなまでのファナティックさは、前世がピエモンテ人ではなく、ピエモンテのトリュフ犬だったからなのかもしれません。

 女性にとって永遠の憧れは光輝くダイヤモンドといわれますが、庄イタにとっての憧れの筆頭格であるアルバ産白トリュフにShine on you crazy diamondを捧げます。 

 思考や記憶を司る大脳皮質と海馬に深く刻まれた白いダイヤモンドの妙なる香りは、庄イタの中で決して色褪せることはありません。

 なぜなら〝ダイヤモンドは永遠の輝き (by "De Beers")〟ですから。

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PESCE ROSSO ペッシェロッソ

・住:大阪市中央区東心斎橋1丁目3-18
・Phone:06-6241-0030
・営:17:00~00:30(22時以降はワインバーとしての利用も可)
・URL: http://pesce-rosso.com/
・アルバ産白トリュフ祭り2018
  15,000円(トリュフ料理2品)18,000円(同3品)20,000円(同4品)
  通常コースに+5,000円で白トリュフ使用の一皿に変更可
 
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