あるもの探しの旅

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祝・解禁!白いダイヤモンド 【前編】

Shine on you crazy White Diamond [ part.1 ]


 重量あたりの単価が最も高価な食べ物であることから「白いダイヤモンド」とも称されるイタリア・ピエモンテ州クーネオ県アルバ産白トリュフ。妙なる忘れがたい香りが記憶中枢に刻まれた者は、その甘美な誘惑から逃れることなど到底できません。

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 1920年代、未踏峰であったエベレストに挑む理由をニューヨークタイムズ紙の記者に問われた英国の登山家ジョージ・マロリーが〝Because it's there.(そこにエベレストがあるから)〟と答えた逸話はあまりに有名です。

 白トリュフに執着する理由を問われたならば、即座に〝そこに白トリュフがあるから〟と前世ピエモンテ人の庄イタは答えるはず。

tajarin_agnrotti@sammarco.canelli.jpg【Photo】庄イタ史上最も贅沢なランチコース@ピエモンテより。「アルバ産白トリュフまみれのタヤリン(左)とアニョロッティ・ダル・プリン(右)」

 世界各国から美食家が集う「Fiera Internazionale Tartufo Bianco d'Alba(アルバ国際白トリュフ見本市)」が開催される10月初旬から11月末にかけては、トスカーナ州やエミリア・ロマーニャ州などイタリア北部から中部にかけての産地でトリュフ祭りが開催されます。

fiera-tartufo-bianco@alba.jpg【Photo】一部の黒トリュフのように人工栽培法が確立されていない白トリュフは、収穫の多寡や時季などによって相場が変化。昨年は100gあたり€700の値付けがなされ、収穫期に雨が多かった今シーズンは€290で入手できたという。毎年秋にアルバで開催される白トリュフ見本市の会場では、素性が明らかな白トリュフ一個ごと強弱が異なる香りを確認でき、買い手と売り手側のトリュフハンターは丁々発止のやり取りを繰り広げる

 アルバ産白トリュフ(Tuber magnatium pico)は、あらゆるトリュフの頂点に君臨するトップブランド。それなりの出費は伴うのは覚悟の上で、むせ返るような白トリュフの濃密なる洗礼をアルバ近郊で受けられんことを確信をもってお勧めします。

〝こんな驚天動地の物体がこの世には存在していたのか...〟フランス料理で珍重されるペリゴール地方産黒トリュフ(ごとき)を有難がっていた方でも、それまでの価値観がガラガラと音を立てて瓦解。驚愕されること請け合いです。

※ 再生時に音楽が流れます

 白トリュフは訓練された優秀なトリュフ犬が鋭敏な嗅覚で地中深くから掘り出した瞬間から、水分と共に香りが徐々に失われる運命にあります。希少性は言わずもがな、その儚さゆえ、尊さはいやが応にも増すというもの。

 深い霧のヴェールにランゲの森が包まれる季節を迎える頃。具体的には毎年9月21日の解禁日から翌年1月31日までの白トリュフを採取できる期間に「Trifulau(トリュフラウ)」と称されるハンターが人目を忍んで採取したばかりの上物を現地で食するのが理想。なれど、それは自由になる時間と懐具合に余裕がある方に限られます。

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 悲しいかな、どちらをとっても余裕がない大人の事情から、ピエモンテから飛来するコウノトリが運んでくる白トリュフで留飲を下げているここ数年。

 並み居る黒トリュフでは到底太刀打ちできない濃密な魅惑の香りを今年も堪能することができました。

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 昨年に引き続き、その舞台となったのは、東アジアを中心とするインバウンドで活況を呈する大阪ミナミの喧騒を離れた一角にあるスタイリッシュなイタリアン「Pesche Rosso ペッシェ・ロッソ」。

PesceRosso.jpg【Photo】契約満了で退社するアルバイト社員の慰労会をPesche Rossoで行った某日。店名が意味する金魚が泳ぐ水槽がエントランスに設けられた店の前で同僚に撮影してもらったツーショット

 現地で食するには及ばないまでも入荷したての白トリュフを狙ったため、ペッシェロッソに予約を入れたのは今年のアルバ産白トリュフ祭りの初日である11月13日(火)の宵でした。

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 2度に及んだ訪店でアルドとジャコモのコンテルノ兄弟頂上バローロ対決を演出した昨年と同様、浪花食い道楽三人衆でエントリーした今年も飲み頃を迎えているであろうヴィーノ・ロッソをセラーから物色。コンディションを整えるため、抜栓する10日以上前に店に預けることにしました。

 ご一緒したH氏は泡もの専科で、もうお一人のK氏は庄イタと同じ筋金入りのイタリアワインラヴァー。白トリュフがお題の今回とほぼ同じ顔ぶれで、過剰在庫を減らすためのワイン会を催してきました。

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 大阪情緒溢れる〝粉もん&焼きそばとイタリアワインの相性を知る会@新福島〟では、庄イタが醸造所を訪れた年の「Percarlo ペルカルロ'03」とレア物「Quorumクオラム'99」、K氏はトスカーナ版バタールモンラッシェこと「Batàr バタール'12」、H氏は「BollingerボランジェN.V.」を持ち込み。

 バルベーラの逸品「Ai Sumaアイ・スーマ'00」を持参したK氏のアジトで催した〝ワインショップ直営フレンチとイタリアワイン会@四天王寺前夕日ヶ丘〟。H氏セレクトの「Taittinger Nocturneテタンジェ・ノクターン」でスタート。オーナーソムリエール秘蔵のカリフォルニア・サンタバーバラ地区の造り手オーボンクリマ「Hildegardヒルデガルド'03」を挟んでイタリア全土が空前のグレートヴィンテージに沸いた'97年vin庄イタコレクションから、カベルネ・ソーヴィニョン主体だった「Paleoパレオ'97」と珠玉のデザートワイン「Recinaioレチナイオ'97」の2本をチョイス。

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 かように料理の傾向は定まらずとも〝泡もの+イタリアワインの多様性を味わう〟という軸はいささかもブレません。

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 今回、K氏からはBaroloに醸造所があり、1961年からクリュの概念を取り入れた造り手「Vietti ヴィエッティ」が唯一バローロ域外のネイヴェに所有する畑の収穫時点で樹齢30年ほどだったネッビオーロを仕込んだ「Barbaresco Masseria バルバレスコ・マッセリア'89下左を事前に持ち込む旨のメールを頂いていました。

 1989年は80年代を代表するグレートヴィンテージ。一般にバルバレスコはバローロほどではないにせよ、若いうちは渋味と感じるタンニンが強い傾向にあります。収穫から30年近く熟成を重ねてタンニンが和らぎ、飲み頃に差し掛かっているはず。まさに白トリュフ料理にふさわしい正鵠を射た選択です。定石を踏んだ先手を見極めた上で、後手の庄イタはタイプが異なる1本を供出することにしました。

 数本の候補の中から白羽の矢を立てた造り手は、イタリアワイン界に偉大な足跡を残してきた「Angelo Gaja アンジェロ・ガヤ」。選んだのはピエモンテでは長期熟成型のワインが造られた優良年の「Langhe Sperss ランゲ・スペルス'96下中央

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 呼称こそイタリアワイン法では2番目の「D.O.C.Langhe ランゲ」ですが、その中身は最上位「D.O.C.G.Barolo バローロ」エリアでも最も傑出したバローロを産出する「Serrarunga d'Alba セッラルンガ・ダルバ」地区で1988年に購入した自社畑Sperssで1996年に収穫された長熟型の高貴品種「Nebbioloネッビオーロ」をバローロの規定に沿って仕込んだ紛れもない偉大なバローロです。

 ネッビオーロから造られる銘酒「Barolo バローロ」と「Barbaresco バルバレスコ」は、ピエモンテが誇る両雄。なかでもガヤは、ピエモンテのみならず、イタリア屈指の壮麗で完成度が高いワイン群を造り続けてきました。

 大きな白抜き文字でGAJAと記されたエチケッタで知られ、凡庸であることが許されないこの名門醸造所は、アルバにほど近いバルバレスコ村の中心部にあります。

cantina_GAJA_2006_10.jpg【Photo】バルバレスコ村にある「Azienda Agricola GAJA」。醸造所ゲート脇の壁面には家名が浮き彫りされたプレートが架かる。畏敬の念を抱く偉大な造り手に対し、手放しで称賛の意を表する庄イタ

 '96年は品質向上のために一切の妥協を排除してきたガヤにとっての一大転機となった年。当時、個性が明確な単一畑(クリュ)がもてはやされ、畑の個性を組み合わせて一つの味に仕上げるD.O.C.G.バルバレスコをともすると軽視する風潮がありました。そこに反旗を翻したのがアンジェロ・ガヤでした。

 高値で取引される「Sori San Lorenzoソリ・サンロレンツォ」や「Sori Tildin ソリ・ティルディン」など、ブルゴーニュのグランクリュに相当するバルバレスコ、そしてD.O.C.G.バローロのエリアに所有するピエモンテ方言でノスタルジーを意味するのだという「Sperss」と「Conteisa コンテイーサ」については「D.O.C.Langhe ランゲ」にすべて格下げ。唯一のD.O.C.G.をバルバレスコ一本としたのです。

Barbaresco- Masseria89sperss96.jpg【Photo】バルバレスコ・マッセリア'89(左)とランゲ・スペルス'96(右)の色合い比較。いずれも高貴品種ネッビオーロでありながら、熟成するに従ってレンガ色へと変化する度合いの違いが見て取れる通りの味わい。綺麗に熟成したバルバレスコのエレガントさが際立つヴィエッティ'89。一方のガヤ'96はタンニンの収斂性は影を潜めるも、まだまだ力強さが漲る。綻びなど微塵も見せずに高い次元でさまざまなニュアンスが調和する

 17世紀にスペイン・カタルーニャ地方から移住した一族で、醸造家としては4代目となる当主アンジェロ・ガヤは、1960年にアルバ国立醸造学校を卒業。翌'61年から父ジョヴァンニのもとで醸造家としての道を歩み始めます。

 近郊の生産者からの買いブドウの併用を止め、全面的な自家栽培への切り替えを断行。質より量の考え方が蔓延していた当時のピエモンテにあって、収量を大幅に抑制します。若いうちは渋味と感じる強靭なタンニンが特徴のネッビオーロのため、イタリアにおける導入の先駆けとなったバリック樽を使用するなど、1960年代に数々の改革を実践してゆきます。

 ブドウの選別や樽材、ボルドー一級シャトーのそれよりも長いコルクに至るまで徹底した品質向上を図る一方、グランクリュにあたる「Costa Russi コスタ・ルッシ」ほか、プルミエクリュ的な「Fasetファセット」を含むD.O.C.G.バルバレスコの一等地14か所の畑を徐々に買い増し。1970年代後半には数々の改革が結果を生み、イタリアのみならず押しも押されぬワイン造りの第一人者となります。

※ 再生時に音声が流れます


 5代目として主に国外市場を担当する長女ガイア、国内を受け持つ次女ロザーナ、そして'16年に大学を卒業した長男ジョヴァンニが稼業を受け継いだ今も、1940年生まれで今年78歳となったアンジェロは第一線で精力的に活動しています。

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 こうしてバローロに本拠を置くVietti のバルバレスコ、バルバレスコに本拠を置くGaja のバローロという変化球を仕込んで臨んだ白トリュフの饗宴で供された料理の数々を【後編】では振り返ります。空腹時の閲覧は刺激が強いですが、(前回同様に)乞うご期待 ❣❣


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