あるもの探しの旅

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局地風に関する一考察

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 局地風(きょくちふう。地方風とも)と称される風をご存知でしょうか。

 地球の地軸は23.4度傾いているため日射量は緯度ごと季節ごとに変化します。地球規模で常に循環する大気は、地球の自転により、恒常的に一定方向に吹く偏西風や貿易風となります。

 一方、地形的な要因や昼夜の寒暖差などの要因により、狭い地域で発生する風が局地風。

 イタリアからアルプス山脈を越えてスイス・フランス・ドイツ・オーストリアに向けて吹く南風は「フェーン(Foehn またはFöhn)」。山越えの風が高温をもたらすフェーン現象の語源となった局地風です。

piazza-S-pietro-VENTI.jpg【photo】暴徒化したスペイン王カール5世の軍勢によるローマ劫掠(1527)で破壊の限りを尽くされたローマ。これにより盛期ルネサンスが終焉を迎え、バロックの都へとローマが大きな変貌を遂げた記念碑ともいえるサンピエトロ寺院の内装も手掛けた天才ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598-1680)が1656年から20年以上を要して二重の円柱で囲まれた楕円形に改築したサン・ピエトロ広場。石畳には方角別に呼び名が異なる風の石板が埋め込まれている

 その他、北米大陸に猛吹雪をもたらす「ブリザード(Blizzard)」、アフリカ大陸から地中海を越えてイタリア半島に吹く熱風「シロッコ(Scirocco)」などがよく知られるところです。

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 日本に目を転ずれば「六甲おろし」は、おもに西高東低の気圧配置のもとで六甲山系を越えて神戸・芦屋・西宮地域にかけての表六甲地域に吹き降ろしてくる寒風が語源。おろしには「颪」という「下」と「風」を上下に組み合わせた字をあてています。風の性格がよく分かりますね。

 特A地区の三木市加東市など六甲山系の西側にあたる北播磨ほか兵庫県内で全国の8割を産出する酒造好適米が「山田錦」。西宮神社と目と鼻の先に湧出する良質な「宮水」と出合い銘酒が生まれます。

 神戸市東灘区から西宮にかけての灘五郷(なだごごう)地域は、寒造りの時季に吹く乾燥した六甲おろしの恩恵で酒造りに適した条件を備えています。

Dasai_Kato-shi.jpg【photo】1936年(昭和11)兵庫県明石市の県立農事試験場で誕生した酒造好適米「山田錦」。特に品質が良い特A地区の圃場が広がる三木市から加東市にかけての保湿力の高い粘土土壌の圃場には、明治以来の「村米制度」と呼ばれる大関・菊正宗など酒造メーカーとの契約栽培田を示すのぼり旗が林立する

 江戸時代の日本酒は、夏の暑さを挟んで秋風が吹き始める頃には味が落ちたそうです。ところが、水車で精米歩合を高める技法を編み出し、雑菌の繁殖を抑制する乾燥した六甲おろしのもと、宮水で仕込まれた灘酒は例外でした。

 花崗岩土壌で磨かれる六甲山系の伏流水は、神戸に寄港する外国航路の船員たちから赤道を通過しても水が腐らないため重宝されたそうです。西宮湊から海路江戸へと運ばれた灘の酒は評判を呼び、灘五郷地域に繁栄をもたらす一因となりました。

 よって、六甲おろしは地域に恩恵をもたらす局地風であると言えます。最も端的にそれを示すのは、ライトスタンドからレフト方向に吹く浜風が局地風となる甲子園球場でド派手な格好の猛虎ファンで盛り上がる阪神タイガースの応援歌としてかもしれません(笑)。

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 六甲おろしの他に地理的条件が要因となる局地風として庄イタ的になじみ深いのは冒頭に挙げた「シロッコ」と「清川だし」。

 シロッコは、春先と秋にアフリカ大陸からサハラの砂塵とともに地中海を越えてイタリア半島に吹き寄せる湿った南東風。風速40kmにも達する強風となることもあり、海が時化(しけ)るため、船の欠航が出たり、街路樹がなぎ倒されることも。

 シチリアやブーツのつま先からかかとに当たる南イタリア地域を中心に視界不良を引き起こし、アドリア海の海面上昇はヴェネツィアの異常潮位「Acqua altaアックアアルタ」下画像の原因となります。

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 かたや清川だしは、日本海に面した山形県庄内平野と四方を山に囲まれた新庄盆地とに生じる温度差により発生します。岡山県北東部の那岐山麓の「広戸風」、愛媛県四国中央市一帯に四国山地から吹く「やまじ風」と並ぶ〝日本三大悪風〟に数えられます。

 春から秋にかけての雪解けの季節、月山が水源となる立谷沢川と新庄盆地から最上峡を抜けてくる最上川が合流するのが庄内町清川地区。その下流部の狩川地区に向けて吹き抜けてくる冷風は風速20mにも達します。

Wind_Farm_Tachikawa.jpg【photo】清川だしを逆手にとり、風力発電の可能性に着目したのは平成の大合併前。旧余目町と合併して庄内町となった旧立川町は、1991年(平成3)、日本国内の自治体としてはいち早く米国製の100kw大型発電機3基を導入した

 そんな冷害の常襲地帯が深刻な凶作に見舞われた1893年(明治26)9月末、雪解け水を引く取水口近くに植えられる耐冷性がある冷立稲「惣兵衛早生」さえ青立ちする中、3本だけ稲穂を垂れた稲をもらい受けた阿部亀治が4年を要して育種したコメが「亀ノ尾」。

 耐冷性と食味を兼ね備えた亀ノ尾は戦前のコメ作りを支えた基幹品種となります。後世に誕生したコシヒカリ・つや姫・ササニシキなど数々の銘柄米のルーツとなった偉大な品種は、清川だしが吹きすさぶ過酷な環境のもとで誕生したのです。《2008.2拙稿「『亀の尾』の故郷の酒」参照》

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【photo】熊谷神社境内にある「亀之尾発祥乃地」記念碑(庄内町肝煎丑ノ沢)。徳川3代将軍家光の没後、由井正雪が首謀した討幕未遂事件「慶安の変」に参画した熊谷三郎兵衛を祀る。熊谷神社に参詣した阿部亀治が「亀ノ尾」を創出する契機となった3本の稲を発見した由来を記す

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 清川だしにせよ、シロッコにせよ、厄介者の局地風に違いありません。そしてさらに厄介な局地風がアメリカで吹き荒れています。それは世界を混乱の渦に巻き込んでいるトランプ旋風。

 大統領選挙中から支持基盤の保守層受けする極端な自国第一主義を標榜。2020年以降の気候変動対策を定めたパリ協定からの離脱を宣言し、地域経済が停滞する「Rust Beltラストベルト」(「錆びついた地域」の意)と呼ばれる五大湖周辺地域の衰退した製造業や石炭産業の復活を目論み、地球温暖化対策などどこ吹く風です。

 第二次世界大戦後、経済力と軍事力で世界の覇権を握ったアメリカは、台頭する二番手を「モグラたたき」よろしく叩き潰してきました。The nail that sticks up gets hammered down.(☞ 出る杭は打たれる。)

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【photo】1975年(昭和50)、日本のゲームセンターで産声を上げた「モグラ退治」は家庭用ゲーム機にも転用。モグラは国境を越えて海外にも進出。コチラは米国版「Whac-A-Mole」。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主役、マイケル・J・フォックス演じる青年ジョージ・マクフライを恫喝する自己中心的で攻撃的な性格の敵役ビフ・タネンのモデルとされるトランプ大統領なら、モグラを習近平首相の人形に入れ替えるに違いない

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 米国のエズラ・ヴォーゲル博士が1979年に発表した著作「Japan as Number One: Lessons for America(邦題:ジャパン・アズ・ナンバーワン)」は、太平洋戦争後の焦土から復興し、奇跡といわれた日本の高度経済成長の要因を緻密に分析しています。

 それから10年を経た1989年9月、ソニーがコロンビア・ピクチャーズを買収。翌10月には米国の富を象徴するマンハッタン5thアヴェニューの複合商業施設「ロックフェラー・センター」を三菱地所が買収します。このことが鉄鋼・半導体・自動車など1970年代からくすぶり続けた日米貿易摩擦で積もり積もった米国民の怒りの炎に油を注ぐ結果を招きます

 マネーゲームに浮かれて虎の尾を踏んだ格好になった日本は、不動産バブル崩壊によって急失速。1985年9月のプラザ合意による円高誘導を転機とする〝失われた30年〟と言われる平成の時代、デフレと実質所得の下落に見舞われた日本経済は長期低迷の隘路から抜け出せずにいます。

【Movie】国ごとの製品やサービスの生産総計額を指す国内総生産(GDP)。今後2100年までのGDP上位10か国の推定額をグラフ化。米国は2028年に首位の座を中国に明け渡し、少子高齢化が進む日本は2030年にインドに追い抜かれて第4位に後退。2059年に米国はインドに2位の座をも明け渡す。2072年以降は中国・インド・日本・インドネシア・フィリピンといったアジア諸国が世界経済をリードする

 2028年にはGDPが世界No.1に躍り出る可能性が中国への警戒を露わにする米国の対中貿易戦争は大国同士の覇権争いへと発展。両国のつばぜり合いは長期に及ぶことは避けられません。

 ウイグル民族に対する非人道的な抑圧政策に象徴される共産党一党独裁の習近平体制とメキシコ国境に壁を作り移民排斥を掲げるトランプ政権は、ある意味で表裏一体。互いに一歩も譲らぬ姿勢を見せており衝突は不可避です。

【Movie】冷戦構造下の1984年当時、軍拡競争に明け暮れ覇権を争ったアメリカ・レーガン大統領と(ドナルド・トランプ氏に似ている)ソ連のチェルネンコ書記長に扮した両者が取っ組み合いを繰り広げるMVが話題となった英国出身のバンドFrankie Goes to Hollywood 2枚目のシングル「Two Tribes」。〝When two tribes go to war, A point is all you can score.二つの民族が戦争を始めた時、得るものは多くない(中略)Giving you back the good times.良かった時代に戻してやろう〟。トランプ氏が演説で好んで使うMake America Great Again.(アメリカを再び偉大な国にしよう)とこの曲の一節とが妙に符合する

 トランプ旋風はアメリカ国内の局地風に留まらず、地球的スケールで乱気流を巻き起こしています。そのあおりを受け、日本の中国向け輸出に逆風が吹き景況感が急減速。

 景気がマイナス局面に入ったと内閣府が判断した3月の景気動向指数とは違い、輸出減による数字のマジックで今年1~3月期のGDPは0.5%のプラス成長。エッ、ホント~?

 株価は上がれど、諸物価の上昇に賃金が到底追いつかず、内需は冷え込む一方。選挙対策でぶち上げたアベノミクスによる景気回復を庶民は実感できないままです。

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【photo】風を受けて凧あげに興じる子ども。凧に書いてあるのは、米、砂糖、雑穀、酒、紙類、乾物、綿、太物など。そして酒樽や鰻の絵。世直し一揆や打ちこわしが各地で頻発し、政情不安に揺れた幕末期。その背景となった諸物価の値上がりを風刺する錦絵。アベノミクスの経済効果をアピールする政府発表とは裏腹に、実質所得が伸びない一方で値上げラッシュで国内消費が冷え込む現状と重なる。歌川芳虎「子供遊凧あげくらべ」1865年(慶応元年)

 巨額の対中貿易赤字を抱える米国主導のもとで実行された深圳に本拠を置く通信機器大手「ファーウェイ」製品の禁輸措置の発動が波紋を広げています。

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【photo】トランプ流の強権発動で新機種が発売延期に追い込まれたファーウェイ製スマートフォン。現行機種のファーウェイユーザーにオススメしたいスマホケース

 中国政府も認識しているように、これは長期戦となるであろう米中貿易戦争の序章に過ぎないでしょう。

 4年ごとの大統領選で選出される政権運営への有権者の評価を意味する今年11月の中間選挙。2期目を目指すトランプ大統領は、協調による世界秩序の維持には全く関心がないようです。

 その予測困難な言動により、先の読めない世界情勢は混迷の度を深めています。

 そんな中、令和初の国賓としてトランプ大統領が5月25日(土)から日本を訪問します。EU諸国など同盟国にあってすらトランプ政権とは一定の距離を置く首脳が多い中、蜜月ぶりをアピールしてきた安倍首相。これまでの強硬姿勢では進展を見なかった拉致問題の打開を含めて成果が期待されるところです。

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〝令和おじさん〟こと菅義偉官房長官は、20日、野党から内閣不信任案が提出されれば、衆議院を解散する大義となり、衆参同日選挙に打って出る構えを表明しました。

 野党の対立候補一本化態勢が整わない現状を受け、にわかに政権与党から強まってきたのが永田町周辺の局地風といえる「解散風」。秋に消費増税が予定される中、記録的な猛暑となった昨年に続いてこの夏は熱い政治の季節となるかもしれません。

 局地風がテーマだったはずが、気流の乱れが生じて話が二転三転しました。

 ガラリと風向きを変える次回は、局所的にナポリの風が吹く兵庫県明石市のトラットリア・ピッツェリア「Ciro チーロ」について語ります。 

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