あるもの探しの旅

« Giugno 2019 | メイン | Agosto 2019 »

2019/07/28

CiRO a Akashi チーロ @ 明石 〈後編〉

 プロローグ「局地風に関する一考察」、「Strada per CiRO a Akashi チーロ @ 明石への道」では魚の棚で寄り道。〈前編〉〈中編〉と刻んで今回の〈後編〉で「CiRO a Akashi チーロ @ 明石」は完結を見ます。

 唐突ながらゴルフに例えれば、最終ロングホールのドライバーショットを局地風にあおられて深い林に打ち込み、2打目は斜め後方フェアウェーに出すだけ。挽回せんと力んだ3番アイアンをダフって3打目をチョロ、かろうじてグリーンエッジに5オン。オーバーした6打目の返しはカップをなめて3パット。無念のトリプルボギーでホールアウトといったところでしょうか。

 吉幾三の「これが本当のゴルフだ!!」を地で行くこんな珍プレーとは無縁なのが日本プロゴルフ選手権大会。最終日の7月7日、プレーオフにもつれ込んだ激闘の末、石川遼選手は国内メジャーツアー3年ぶりとなる優勝を果たしました。カートにぶつけた1打目がフェアウエーに戻り、4mのイーグルパットを沈めて逆転優勝を決めるや歓喜の雄叫びを上げた石川遼プロのような劇的な幕切れを望むべくもないのがViaggio al Mondo

sign-CiRO.jpg 足を洗って久しいゴルフに熱を上げる訳もなく、観戦そっちのけの場違いな前世イタリア人ギャラリー若干1名。ティーグラウンド脇のCiROなる看板を掲げる茶屋に居座り、2本目のヴィーノ・ビアンコを飲み干しつつ、ピッツァ・ナポレターナと海鮮ナポリ料理、ナポリ菓子と〆のカッフェに舌鼓を打っていたことが明らかになります。

b_ornament_11_0L.jpg
 Trattoria Pizzeria CiROトラットリア・ピッツェリア・チーロを2度目に訪れたのは3月14日(木)。後ろめたさを覚えること無く昼飲みができるのは、その日が4日前の休日出勤の代休だったから。
 
 世界各地で栽培されるシャルドネやカベルネソーヴィニョン、メルローはいわずもがな。3000年に及ぶワイン醸造の歴史を有し、個性豊かな地方固有のブドウ品種が全土に存在するのが多様性の国イタリアです。

 コスパに優れ、日々の食事と合わせやすいイタリアワインの魅力を良く知る〝飲むリエ〟を自負する庄イタでも、今なお発見や驚きに満ちています。好みの一つの傾向として、北イタリア・チロル地方原産「トラミネール・アロマティコ(=ゲヴュルツトラミネール)」のような香りに特徴があるワインを挙げることができます。

fiano-gewurztraminer.jpg

【photo】南北イタリアお薦め香り系白ワイン from 庄イタ's セラー。(左より)アルト・アディジェ州の小規模なブドウ農家300軒余りが加盟する協同組合Tramin トラミン。「Gewürztraminer ゲヴュルツトラミネール2017」とその上級版で15年は熟成を続ける「Nussbaumer ニュスバウマー2006」。心地よいライチの香りを主軸とするスタンダード版のゲヴュルツトラミネールでさえ原産地としての血筋の良さは明瞭。Viticoltori De Conciliis デ・コンチリス「Cilento Fiano Donnaluna チレント・フィアーノD.O.Cドンナルーナ2009」(2018.7拙稿「さくらぐみ @赤穂 そこは紛れもなくナポリだった」参照)、フィアーノなど絶滅の危機に瀕する土着ブドウ品種復活に中心的役割を果たしてきた1878年創業のMastroberardinoマストロベラルディーノが標高550m近辺の自社畑で栽培するフィアーノで醸した1クラス上の「Radici Fiano di Avellinoラディチ・フィーアノ・ディ・アヴェリーノD.O.C.G 2017」、前回ご紹介した1回目のCiRO訪問時に飲んだ「FiaGreフィアーグレ」の作り手Antonio Caggiano アントニオ・カッジャーノの醸造責任者ルイジ・モイオが、2001年に立ち上げた自身の醸造所Quintodecimoクイントデーチモ。バリック樽の嫌みがなく品種の個性が輝く至高の1本「Exultet Fiano di Avellino エクスルテト・フィアーノ・ディ・アヴェリーノD.O.C.G 2017」

 CiROのワインリストの中で、南イタリアの香り系白ワインでは最良の選択肢の一つと言ってよい「Fianoフィアーノ」100%のヴィーノ・ビアンコがあるのに目が留まりました。

 その最適地、カンパーニャ州Avellinoアヴェッリーノでも理想的な栽培条件に恵まれたLapioラピオに畑と醸造所がある「Rocca del Principe ロッカ・デル・プリンチペ下画像

vino-ciro2019.3.jpg

 イタリア国内で最も影響力があるワインの評価ガイド「Vini d'Italia(通称:ガンベロ・ロッソ)」で毎年1軒だけが選出される「Cantina emergente(=卓越した新進気鋭の醸造所)2009」に選出。ここ10年ほどで急速に頭角を表してきた注目の作り手です。

etichetta-fiano2016.jpg

 EU域内で生産される農水産加工品が厳格な規定をクリアしていることを示す最高ランクの品質保証が「D.O.PDenominazione di Origine Protetta デノミナツィオーネ・ディ・オリジネ・プロテッタの略)」保護原産地呼称。その認証を得ていることを示す赤いマークが記されたD.O.C.G.Fiano di Avellino フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ」のバックラベル記載のVendemmiaヴェンデミア(=収穫年)は2016上画像

 山容を劇的に変えるほどの大火砕流でポンペイを噴石と火山灰で埋め尽くした西暦79年以外にも直近では1944年まで幾度となく噴火を繰り返してきたヴェスビオ山。

pompei_casa-centenario-Vesuvio.jpg

【photo】紀元前2世紀に建造され、79年の噴火による噴石と火山灰とで1800年もの間封印され、1879年の発掘後に「Casa del Centenario」と名付けられたポンペイ屈指の裕福な家の壁画(一部)。ブドウの化身となったバッカス神(左)の背景として、山頂部が吹き飛ばされた現在とは異なるヴェスビオ山の姿を伝える

 その火山性土壌が広がる畑の500m~650mという標高の高さに由来する硬質なミネラル感と柔らかくも綺麗な酸味が、トロリとしたテクスチャーの中に蜂蜜や花の心地よい香りと重層的に重なり合い、長い余韻を残します。

 それは匂い立つような美しさが内面からも滲み出る女性とすれ違った時、去来する高揚感に相通じるとでも言いましょうか。(☜ 視線をロックオンしたまま、180°後方に頸椎ねん挫の寸前まで振り返るのが男子たるものの礼儀であるイタリア的表現)

b_ornament_11_0L.jpg

 この日も〝前菜+ピッツァ+パスタ+メイン(肉or魚)〟を組み合わせた「トラットリアコース」(昼夜とも3,850円)で、メインのセコンドピアットは店一番のオススメ「本日の魚料理」(単品1,600円~)。

 前回述べた通り、刺身は小鉢に3~4切れで充分ゆえ、鮮度で勝負!!的な生モノの船盛りにはゲンナリする庄イタ。火を通して調理する前提の大皿から溢れんばかりの真ダイやセイゴ、オマールエビなどを前に胃袋が臨戦態勢に下画像

 コチや地元では〝バケシタ(=化け舌)〟と呼ぶシタビラメといった前回の顔ぶれとは少し入れ替わっている選択肢の中で選んだのが、サワラの若魚サゴシ。

pesci-ciro2019.3.jpg

 明石浦では脂が乗る産卵前の秋口から冬場のサワラを珍重するようですが、フロアスタッフの方と相談の上で窯焼きにしてもらうことに。

 突き出しはメニュー冒頭の店長オススメ季節のナポリ料理から、家人が所望した「播州赤穂産の殻付きカキ窯オーブン焼き」(単品230円/1個)のお裾分け下画像

ostrica-crudo-ciro2019.3.jpg

 兵庫県の瀬戸内側では相生と共にカキの養殖が盛んな赤穂坂越(さこし)。絶妙な火入れ加減により、シーズン最終盤といえど、お約束のミルキーさはしっかりと感じられます。繊細なエキストラヴァージンオイルのフレーバーが加わった焼きガキにレモンを3滴ほど搾り、フィアーノと共にペロリ。この一口&一杯でナポリ湾を望むポジリポの丘やソレントのテラス席を備えたレストランへとワープできそうな妄想に浸れます。

 前菜はグランドメニューから、新鮮なヤリイカ、サルエビ、イワシをカラっと揚げ、レモンを搾って頂く「明石産 海の幸のフリットミスト」(単品2人前940円,追加1名ごと+470円)下画像

antipasto-ciro2019.3.jpg

 その日は平日だったため、ピッツイヨーラの小谷紀三子さんが薪窯の前においででした。前回はマルゲリータとのハーフ&ハーフで頂いた明石ダコとケイパーをトッピングしたマリナーラをフルサイズにバージョンアップ。「マリナーラ・コン・ポリピ」(単品1,790円)下画像

pizza-ciro2019.3.jpg

 ピッツァの縁コルニチョーネは綺麗なキツネ色に焼きが入っており、別嬪さんな仕上がり。香ばしい小麦とタコの甘味は相性が良く、トマトソースの甘酸っぱさをベースにオレガノとケイパーが心地よい香りを添えてくれます。

 焼き上がったばかりの薫り高い生地と具材の調和のとれた味わい、サックリ・モッチリな食感。う~む、コレは旨い。

 この2度目の訪問から4か月後の梅雨明け直前の某日、クルマで赤穂へ向かう道すがら、小谷夫妻がおいでのCiROに立ち寄りました。マリナーラの別アレンジで、シラスをトッピングした「チチニェリ」下画像をオーダー。雨混じりの蒸し暑い日でしたが、この日のピッツァは3月の訪問時と比べ、生地の印象が硬めでした。

CiRO-cicignelli2019.7.jpg

 中心部の生地のモッチリ感と仕上げのオリーブオイルのもう一振りが追加されると、より庄イタ好みだったかもしれません。あくまで個人的な好みではありますが。

 余談ながらその日は昼食はCiRO@明石、7月からお手頃なコースを追加してメニューを刷新した赤穂さくらぐみ、翌日の昼食はミオ・エ・テンプリーナ@赤穂という、さくらぐみファミリーを巡る2日間となったのでした。

 パスタはグランドメニューからナポリ名物のパスタ料理「frutti di mareフルッティ・ディ・マーレ」に該当する「いろんな貝とトマトのスパゲッティ」(単品1,530円)下画像を。ムール貝とアサリを殻付きで火にかけた白ワインと貝の旨味が凝縮したソースが乾燥パスタのニョッキに絡みます。

pasta-ciro2019.3.jpg

 7月のCiRO再訪時、最も印象に残った料理が、仕入れによって手長エビやクルマエビを使い分ける「本日のエビとフレッシュトマトのリングイーネ」(1,680円)でした下画像。背開きした殻の中のふっくらとした身と濃厚なミソも味わえるScampiスカンピ(手長エビ)を丸ごと4尾使用。冷凍で輸入されるスカンピは身がパサパサであることが時にありますが、これは違いました。

CiRO-pasta-gamberi2019.7-001.jpg

 特筆すべきは、口の中で炸裂するスカンピの旨味エキスが滲み出したソースの美味しさ。魚介系ソースによく合うリングイーネとの相性抜群で、病みつきになりそう。パンをお願いしてソースを皿からあらかた絡めとりたい衝動に駆られたのでした。

 ニョッキ・アッラ・フルッティ・ディ・マーレに続いて尾から頭まで40cmサイズの食べ応え充分なサゴシがドーンと登場。

secondo-ciro2019.3.jpg

 ホロホロとした食感は若齢魚のサゴシならでは。春先に回遊してくる瀬戸内ではタイに負けず劣らず美味とされるのも頷ける旨さを堪能すべく、ほのかに甘い身の8割方は添えられたレモンを搾らずに頂きました。機会があれば、秋から冬場にかけて脂が乗ったこの出世魚も食べてみたいものです。

 この時点で物理的に胃袋の許容量を超えていましたが、ドルチェに限らず甘い誘惑には滅法弱いのがイタリア人男性の常。前世由来の〝あまから二刀流〟を標榜する庄イタ。消化器系は別腹が即座に発動するラテン仕様なのです。

baba-ciro2019.3.jpg

 前回訪問時に持ち帰りしたスフォリアテッラと同様、ナポリの定番ドルチェがスポンジ生地にラム酒をたっぷりと染み込ませた「Babà ババ」上画像 。フランス菓子のサバランと形状が異なるだけで基本的な風味は同じです。

 生クリームとイチゴが添えられたババのアレンジはベリー類を多用するナポリスタイルそのもの。

 〆の定番エスプレッソは、ナポリがハプスブルグ帝国支配からスペイン・ブルボン朝統治に移った1733年、ナポリ王カルロ7世を名乗ったカルロス3世に敬意を表した「Borboneボルボーネ」のカッフェ。

caffe-ciro2018.11.jpg

 アラビカ種のみならず力強さをもたらすロブスタ種の豆を適度にブレンド、イタリア半島を北から南下するほど量が少なく濃厚になる傾向が顕著なのがエスプレッソ。ゆえにナポリ以南やシチリアのエスプレッソを味わってこそ、その真髄に触れることができるのです。風味がまとまるコーヒースプーン2杯以上の砂糖を入れて何十回もかき混ぜ、さっと飲み干すのが粋な飲み方。

 ババのカロリーを考慮して砂糖はスプーン1杯半、撹拌の回数はカップの底に砂糖が残る20回程度に留めて食事の仕上げとしました。

b_ornament_11_0L.jpg

 〈前編〉から〈後編〉までのシリーズを通して、CiROが、ナポリピッツァに限らず美味しいナポリを堪能できる店であることは充分にご理解いただけたと思います。

 ただでさえ競争率が高い予約の狭き門のハードルを更に上げることを承知の上で、皆様も是非一度、CiROを訪れることを強くお勧めします。

*****************************************************************

トラットリア・ピッツェリア・チーロ

・住:兵庫県明石市本町1-17-3 ゑびや第2ビル1F
・Phone:078-912-9400
 ※予約は2週間前の9:30から電話で受付け(月曜除く)

・営:昼 11:30~L.O. 14:00
   夜 18:00~L.O. 21:00
   月曜定休(祝日の場合は翌日休)
・Pなし(近隣のコインパーキング利用)・禁煙
・URL: https://www.facebook.com/TrattoriaPizzeriaCiro/
 

baner_decobanner.gifブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 

2019/07/07

CiRO a Akashi チーロ @ 明石 〈中編〉

 Viaggio al Mondo ~あるもん探しの旅」で飲食店を取り上げる場合、最低2回以上は店を訪れることを自らに課していることを前々回の中で述べました。

 2007年のブログ開設以降、墨守し続けているこの掟。対価を支払う客に対する背信行為に他ならないシェフの不在に起因する味のブレがないか、サービスは目配り心配りが行き届いているかを見定め、より確かな内容を皆様にお伝えするためにほかなりません。

 今回ご紹介する食レポは、昨年11月初旬の初回訪問時のランチ。今年3月に再訪した2回分を一挙公開すると当然ボリューミーとなります。皆様のお腹のキャパも考慮して〈中編〉〈後編〉の2回に分けてご紹介します。

 どうぞ心して召されますよう。

b_ornament_11_0L.jpg

 大阪府は自転車が引き起こす人身事故の発生件数が、より人口が多い東京都を抜いて全国一をここ数年独走しています。隣接する兵庫県内の自治体で自転車事故の発生件数が最多なのは、西宮市と大阪市に挟まれた尼崎市です。庄イタが暮らす西宮から勤務地の大阪市中央区北浜までの路上移動は、そんなエリアを通過せねばならないのです。

 ナポリさながらの信号無視をはじめ、一時停止義務不履行・車道の右側逆走・歩行者すれすれの暴走など、道交法で軽車両に位置付けられる自転車に乗る人の意識が低すぎる大阪に転勤して以降、夏の猛暑も手伝って勤務先まで片道20kmのロードバイク通勤+勤務中の足としての活用をやむなく封印してきました。

prima-pagina-d-menu-CiRO.jpg

【photo】明石浦で揚がる旬の魚が月ごとにイラストで紹介される昼夜共通CiRO チーロのグランドメニューの冒頭箇所より。魚料理か肉料理のいずれかを選ぶセコンドピアットでは、淡路産イノブタのサルシッチャ、牛肉の厚切りビステッカや薄切り炭火焼きタリアータ、イタリア版とんかつ・コトレッタなど、グリル系を中心に肉料理も選択可能。されど店とは目と鼻の先で午前11時30分から水揚げされたばかりの魚介を昼ぜりににかける光景を目の当たりにするCiROだけに、庄イタならずとも食指は魚料理にのびてしまうのが人情というもの

 食い倒れの街・大阪に移って2年3か月。アルコール発酵したブドウ果汁の割合が少なくないカロリー摂取量は横ばいでも、ロードバイクによるカロリー消費が激減しているため体重は増加傾向にあります。腰回りの余分なぜい肉を落とすべく腹8分目を心掛けよ、という理性の声は、手渡されたグランドメニューの字面を目で追うに従って心の片隅へと追いやられ、やがてかき消されてゆくのでした。

 つい胃袋の容量を忘れ、あれもこれもとヨダレを流しつつ選択に迷ってしまう。そんな食い道楽冥利に尽きる時間が「Trattoria Pizzaria CiRO トラットリア・ピッツェリア・チーロ」には流れていました。

 これまで訪れた2度とも、オーダーしたのは前菜+ピッツァ+パスタ+魚料理または肉料理の組み合わせで、料理を取り分けて頂く「トラットリアコース(昼夜とも3,850円/1名)」。基本4品をベースに、生ガキやドルチェを追加した内容になっています。

b_ornament_11_0L.jpg

 まずは昨年11月3日(土)文化の日にふさわしく、2017年にユネスコ無形文化遺産に指定された「ナポリピッツァ職人の技術と伝統」の精華、そしてピッツァだけにとどまらない南イタリア・ナポリの食文化に触れたご報告から。

 宮城県塩竃市「Pizzaria La Gita ピッツェリア・ラ・ジータ」佐沢桃子さんのように、今でこそ珍しくなくなった女性ピッツァイヨーラの草分けとなった小谷紀三子さん。小学生を含む3人のお子さんとの時間を大切にしているため、紀三子さんが店においでの平日昼以外、お弟子さんがピッツァを焼いていることは織り込み済みです。

 イタリアの権威ある食とワインに関する評価本「Gambero Rosso ガンベロ・ロッソ」は、2017・2018年と2年連続で西日本エリアNo.1のピッツェリアとしてCiROを選出。〝ピッツァを食べればナポリへと誘われ、活きの良い魚介料理はアマルフィ海岸と張り合う〟と評した店の魅力を探りたい。そんな思いで紀三子さんがたとえ不在であっても、二次発酵したピッツァ生地のごとく期待に胸を膨らませ、JR神戸線明石駅の改札口を出ました。

panetti_pizza-napoletana.jpg【photo】※以下は一般的な仕込みの流れで、画像を含めてCiROの作り方ではありません
生地の材料となる小麦粉・水・塩・酵母を混ぜ合わせた後、静置する一次発酵の所要時間は4時間ほど。正月のお供え餅に見えなくもない180g程度の球形に分割成形上画像後、さらに二次発酵として室温で1時間静置。気温や湿度により、材料の配合割合や時間を変える静置の間は湿らせた布巾などで生地の表面が乾かぬように覆っておく。すると発酵により発生する炭酸ガスの気泡を含んで生地が膨張し、含まれる水分が表面に出てきて照りが生じてくればスタンバイOK。ピッツァイオーロが生地を手で伸ばして成型する際、気泡は中心部から縁に向けて集められ、加熱によって縁が膨張したコルニチョーネが具材の壁の役割も果たす

 イタリア人が好む硬めなパスタの茹で加減〝al dente アル・デンテ〟を理解しようとはせず、フランス的価値観を振りかざす上から目線が鼻につく「Micheli● (ミシュラ●)」ごときより、自国(より正確に言えば郷里)の食に対する思い入れが強すぎるイタリア人が選定するガンベロ・ロッソこそが、庄イタにとっては共感でき、かつ信頼に値する評価なのです。

uontana.2018.11.3.15.08.jpg【photo】ランチタイムに明石駅から徒歩でCiROまで向かうなら、浜の旬を知る予習または食後の復習で立ち寄りたい商店街が「魚の棚(うぉんたな)」。すぐ近くで昼競りが11時30分から行われる明石漁港直送の鮮度抜群な旬の魚介が店頭に並ぶ。この日CiROで調理されて出てきたハリイカやガシラ(アカメバル)が超お手頃価格で店先にズラリ

 昼網で揚がったばかりの鮮魚が並ぶ「魚の棚(うぉんたな)商店街」を抜け、明石漁港に向かって徒歩3分。2週間前の9時半に電話予約が可能となる席の予約を幾度か試みるも玉砕が続き、やっとの思いで2回転目の席を予約できた13時少し前に店に到着。休日の昼時とあって席は先客で埋め尽くされていました。

 店内ではテーブル席の間をフロアスタッフが行き交い、薪窯の前や厨房には対応能力の高さを物語るスタッフ5,6名ほどの姿が見て取れ、活気あふれるナポリ下町のトラットリアそのままの雰囲気です。

trattoria_pizzeria.CiRO.2018.11.3.jpg

 魚の棚を移動中には9割方、さらにCiROでメニューを手にした時点で120%〝今日は魚の日!!!〟と気持ちが固まっていました。゛♪さかな、さかな、さかな~、魚を食べると、あたま、あたま、あたま~、頭が良くなる...(中略)... 魚がボクらを 待っている〟のでした。

 もとよりピッツァだけで済ませるつもりは毛頭ないため、良き相伴となるのはヴィーノ・イタリアーノ。ワインリストから選ぶ基準は゛地の料理には地のワイン〟という鉄則です。イタリアワイン法で最高位となるD.O.C.G.に南イタリアで最初に選定された長熟型のヴィーノ・ロッソ「Taurasiタウラージ」の申し分ない作り手が「Antonio Caggiano アントニオ・カッジャーノ」。

 料理との相性を考慮し、標高400mの粘土と石灰岩が混じる畑で育ったブドウを主体とする白ワイン「FiaGre フィアーグレ2014」下画像に白羽の矢を立てました。

AntonioCaggiano-FiaGre.jpg

 ローマ・ミラノに次ぐイタリア国内で3番目となる95.5万(2018年)の人口を擁するナポリを州都とするカンパーニャ州を代表するワイン産地が、海岸部のサレルノから30kmほど離れたアペニン山脈南麓に位置する冷涼な「Avellino アヴェリーノ」から北の「Benevento ベネヴェント」にかけての内陸部。

 どちらもギリシャ人が持ち込んだ歴史の古いブドウで、19世紀中庸にヨーロッパ全域のブドウ栽培に壊滅的被害をもたらしたフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)禍で一時は姿を消すも見事な復活を遂げた「Fiano フィアーノ」、温暖な南伊らしからぬ酸と厳格さを持ち合わせた「Greco グレコ」を7:3の割合で混醸した白ワインです。

 フィアーノの特徴となるハチミツや花の心地よい香りがグラスから立ち上がりますが、飲み口はあくまで辛口。グレコ特有の硬質な酸味が引き締めるアフターにかすかな苦味を伴います。

b_ornament_11_0L.jpg

 セコンドピアットは店一番のオススメという「本日の魚料理」(1,600円~)に。ほどなくスタッフがオマールエビ以外は明石浦の昼網で揚がった7種類の魚をテーブルに持参下画像。スタッフと客が調理法を相談して決めるという素敵なシステムなのです。

pesci-CiRO2018.11.jpg

 もはや生モノは食傷気味ゆえ、刺身の船盛りが登場するとゲンナリする庄イタ。「いかようにも調理しますよ」と言いつつ、こんなモノを目の前に持ってこられた日にはたまったもんじゃありません。ヒトの食欲を抑制する働きがある血中アドレナリンの濃度が測定下限値を下回り、食欲のリミッターを外すドーパミンが止めどなく脳内で駆け巡ってゆくのでした。

 アンティパストはこの日のお薦めで、積み重ねてきた食遍歴の経験則からほぼ味の想像がつく「明石産ハモのパン粉オーブン焼きレモン風味」「カツオとマヨネーズ、赤タマネギのブルスケッタ」「チーズ・サラミ・卵をタルト生地で焼いたナポリのキッシュ、ピッツァルスティカ」とは異なり、未知なる組み合わせの妙に期待感が高まった「明石産ハリイカとイタリア栗の柔らか煮込み」を下画像

 秋から冬場の柔らかく甘さが乗ったハリイカとイタリア栗のマロンペーストが出合った優しい味つけに一皿目から癒されます。

Antipasto-ciro2018.11.jpg

 初見参の店では、トマトソース+オレガノ+ニンニクのシンプルな組合せの「マリナーラ」を食べるのを常とする庄イタ。なれどここはマダコで名高い明石。そこで選んだのが、マリナーラに明石ダコをトッピングした「Marinara con Polipi マリナーラ・コン・ポリピ」。家人が希望したマルゲリータと1枚ずつではお腹のキャパシティを越えること必至ゆえ、注文はMetà e Metà ないしは Mezzo e Mezzo(ハーフ&ハーフ)。庄イタの定番ルールでナポリ同様のノーカットを指定。下画像

 窯から出されたばかりの熱々で運ばれてきたピッツァはナイフとフォークでその都度食べやすい大きさの放射状にカットします。こうすればあらかじめ8等分する15秒程度をロスしている切れ目の入った生地より冷めにくく、右利きなら順繰り皿を時計回りに、左利きなら逆に回し、内側からコルニチョーネ側に生地を巻くように食べれば、スピーディに完食できます。手づかみのように手が汚れませんので是非お試しを。

Pizza-Ciro2018.11.jpg

 グランドメニューに記載された心惹かれる30種類ものパスタ・リゾットからプリモピアットを絞り込むのは至難の業。そこでメニュー冒頭「本日の店長オススメ・季節のナポリ料理」にあった3品「手長エビとイカ・ポルチーニ茸のスーゴ風味のパッケリ」、「自家製サルシッチャとレンズ豆の手打ちチカテッリ」、「明石産生シラスのレモン風味スパゲッティ」の三択に。

 3種盛りを1人前の分量で注文できればベストでしたが、そんな虫のいい話は無理そうなので〝一番お腹に優しそう〟という理由から、生シラスのレモン風味スパゲッティに下画像。 

pasta-ciro2018.11.jpg

 セコンドの魚は10月~12月が旬であり、何より選択肢の中で〝最も小ぶりである〟というプリモを選んだのと似たような理由からガシラ(アカメバル)を指名。大皿盛りで目の前に持ってこられたガシラは刺身でも十分イケる鮮度でしたが、地元では塩焼き、煮付け、唐揚げとオールマイティーな食べ方をするようです。

 アクアパッツァやシンプルなローストなど、お勧め頂いた調理法から、ハーブ焼をお願いしました下画像。パリッと火入れされた香ばしい皮、締まった上品な白身にはローズマリーやイタリアンパセリの香りがよく合います。

secondo-ciro2018.11.jpg

 この時点で胃袋の許容量は105%まで達していましたが、ドルチェまで至らずにカッフェで〆るのは前世イタリア人としては悔いが残ります。店の入口脇にある冷蔵ケースを覗きに行くと、庄イタが大好きなナポリ菓子「スフォリアテッラ」が残っているではありませんか。そちらは持ち帰り用に確保して「モンテビアンコ(モンブラン)」をエスプレッソと共に店で頂くことに下画像

dolce-ciro2018.11.jpg dolce-ciro2.2018.11.jpg

 翌日、家で食べたのが、定番の貝殻型「Sfogliatella Ricciaスフォリアテッラ・リッチャ」ではなく、その原型とされる半円形の「Sfogliatella Frollaスフォリアテッラ・フロッラ」下画像。リコッタチーズ+αのフィリング(餡)にレモンピールがアクセントとなるアマルフィの修道女が編み出したといわれる美味極まりない焼き菓子です。

Sfogliatella-ciro1.jpg Sfogliatella-ciro-akashi.jpg

 2皿目のドルチェまで一気呵成に駆け抜けた〈中編〉はここまで。

 もうお腹いっぱいと顔に書いてあるそこのアナタ。まだ完食してはおりませんぞ。同じ分量のフルコース料理と〆のカッフェまで〈後編〉のネタを発酵中のピッツァ生地よろしく寝かせてご用意しております。

 後編もTanto mangiare! 

*****************************************************************

トラットリア・ピッツェリア・チーロ

・住:兵庫県明石市本町1-17-3 ゑびや第2ビル1F
・Phone:078-912-9400
 ※予約は2週間前の9:30から電話で受付け(月曜除く)

・営:昼 11:30~L.O. 14:00
   夜 18:00~L.O. 21:00
   月曜定休(祝日の場合は翌日休)
・Pなし(近隣のコインパーキング利用)・禁煙
・URL: https://www.facebook.com/TrattoriaPizzeriaCiro/
 

baner_decobanner.gifブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 

Agosto 2019
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

archive.gif

Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.