あるもの探しの旅

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CiRO a Akashi チーロ @ 明石 〈中編〉

 Viaggio al Mondo ~あるもん探しの旅」で飲食店を取り上げる場合、最低2回以上は店を訪れることを自らに課していることを前々回の中で述べました。

 2007年のブログ開設以降、墨守し続けているこの掟。対価を支払う客に対する背信行為に他ならないシェフの不在に起因する味のブレがないか、サービスは目配り心配りが行き届いているかを見定め、より確かな内容を皆様にお伝えするためにほかなりません。

 今回ご紹介する食レポは、昨年11月初旬の初回訪問時のランチ。今年3月に再訪した2回分を一挙公開すると当然ボリューミーとなります。皆様のお腹のキャパも考慮して〈中編〉〈後編〉の2回に分けてご紹介します。

 どうぞ心して召されますよう。

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 大阪府は自転車が引き起こす人身事故の発生件数が、より人口が多い東京都を抜いて全国一をここ数年独走しています。隣接する兵庫県内の自治体で自転車事故の発生件数が最多なのは、西宮市と大阪市に挟まれた尼崎市です。庄イタが暮らす西宮から勤務地の大阪市中央区北浜までの路上移動は、そんなエリアを通過せねばならないのです。

 ナポリさながらの信号無視をはじめ、一時停止義務不履行・車道の右側逆走・歩行者すれすれの暴走など、道交法で軽車両に位置付けられる自転車に乗る人の意識が低すぎる大阪に転勤して以降、夏の猛暑も手伝って勤務先まで片道20kmのロードバイク通勤+勤務中の足としての活用をやむなく封印してきました。

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【photo】明石浦で揚がる旬の魚が月ごとにイラストで紹介される昼夜共通CiRO チーロのグランドメニューの冒頭箇所より。魚料理か肉料理のいずれかを選ぶセコンドピアットでは、淡路産イノブタのサルシッチャ、牛肉の厚切りビステッカや薄切り炭火焼きタリアータ、イタリア版とんかつ・コトレッタなど、グリル系を中心に肉料理も選択可能。されど店とは目と鼻の先で午前11時30分から水揚げされたばかりの魚介を昼ぜりににかける光景を目の当たりにするCiROだけに、庄イタならずとも食指は魚料理にのびてしまうのが人情というもの

 食い倒れの街・大阪に移って2年3か月。アルコール発酵したブドウ果汁の割合が少なくないカロリー摂取量は横ばいでも、ロードバイクによるカロリー消費が激減しているため体重は増加傾向にあります。腰回りの余分なぜい肉を落とすべく腹8分目を心掛けよ、という理性の声は、手渡されたグランドメニューの字面を目で追うに従って心の片隅へと追いやられ、やがてかき消されてゆくのでした。

 つい胃袋の容量を忘れ、あれもこれもとヨダレを流しつつ選択に迷ってしまう。そんな食い道楽冥利に尽きる時間が「Trattoria Pizzaria CiRO トラットリア・ピッツェリア・チーロ」には流れていました。

 これまで訪れた2度とも、オーダーしたのは前菜+ピッツァ+パスタ+魚料理または肉料理の組み合わせで、料理を取り分けて頂く「トラットリアコース(昼夜とも3,850円/1名)」。基本4品をベースに、生ガキやドルチェを追加した内容になっています。

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 まずは昨年11月3日(土)文化の日にふさわしく、2017年にユネスコ無形文化遺産に指定された「ナポリピッツァ職人の技術と伝統」の精華、そしてピッツァだけにとどまらない南イタリア・ナポリの食文化に触れたご報告から。

 宮城県塩竃市「Pizzaria La Gita ピッツェリア・ラ・ジータ」佐沢桃子さんのように、今でこそ珍しくなくなった女性ピッツァイヨーラの草分けとなった小谷紀三子さん。小学生を含む3人のお子さんとの時間を大切にしているため、紀三子さんが店においでの平日昼以外、お弟子さんがピッツァを焼いていることは織り込み済みです。

 イタリアの権威ある食とワインに関する評価本「Gambero Rosso ガンベロ・ロッソ」は、2017・2018年と2年連続で西日本エリアNo.1のピッツェリアとしてCiROを選出。〝ピッツァを食べればナポリへと誘われ、活きの良い魚介料理はアマルフィ海岸と張り合う〟と評した店の魅力を探りたい。そんな思いで紀三子さんがたとえ不在であっても、二次発酵したピッツァ生地のごとく期待に胸を膨らませ、JR神戸線明石駅の改札口を出ました。

panetti_pizza-napoletana.jpg【photo】※以下は一般的な仕込みの流れで、画像を含めてCiROの作り方ではありません
生地の材料となる小麦粉・水・塩・酵母を混ぜ合わせた後、静置する一次発酵の所要時間は4時間ほど。正月のお供え餅に見えなくもない180g程度の球形に分割成形上画像後、さらに二次発酵として室温で1時間静置。気温や湿度により、材料の配合割合や時間を変える静置の間は湿らせた布巾などで生地の表面が乾かぬように覆っておく。すると発酵により発生する炭酸ガスの気泡を含んで生地が膨張し、含まれる水分が表面に出てきて照りが生じてくればスタンバイOK。ピッツァイオーロが生地を手で伸ばして成型する際、気泡は中心部から縁に向けて集められ、加熱によって縁が膨張したコルニチョーネが具材の壁の役割も果たす

 イタリア人が好む硬めなパスタの茹で加減〝al dente アル・デンテ〟を理解しようとはせず、フランス的価値観を振りかざす上から目線が鼻につく「Micheli● (ミシュラ●)」ごときより、自国(より正確に言えば郷里)の食に対する思い入れが強すぎるイタリア人が選定するガンベロ・ロッソこそが、庄イタにとっては共感でき、かつ信頼に値する評価なのです。

uontana.2018.11.3.15.08.jpg【photo】ランチタイムに明石駅から徒歩でCiROまで向かうなら、浜の旬を知る予習または食後の復習で立ち寄りたい商店街が「魚の棚(うぉんたな)」。すぐ近くで昼競りが11時30分から行われる明石漁港直送の鮮度抜群な旬の魚介が店頭に並ぶ。この日CiROで調理されて出てきたハリイカやガシラ(アカメバル)が超お手頃価格で店先にズラリ

 昼網で揚がったばかりの鮮魚が並ぶ「魚の棚(うぉんたな)商店街」を抜け、明石漁港に向かって徒歩3分。2週間前の9時半に電話予約が可能となる席の予約を幾度か試みるも玉砕が続き、やっとの思いで2回転目の席を予約できた13時少し前に店に到着。休日の昼時とあって席は先客で埋め尽くされていました。

 店内ではテーブル席の間をフロアスタッフが行き交い、薪窯の前や厨房には対応能力の高さを物語るスタッフ5,6名ほどの姿が見て取れ、活気あふれるナポリ下町のトラットリアそのままの雰囲気です。

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 魚の棚を移動中には9割方、さらにCiROでメニューを手にした時点で120%〝今日は魚の日!!!〟と気持ちが固まっていました。゛♪さかな、さかな、さかな~、魚を食べると、あたま、あたま、あたま~、頭が良くなる...(中略)... 魚がボクらを 待っている〟のでした。

 もとよりピッツァだけで済ませるつもりは毛頭ないため、良き相伴となるのはヴィーノ・イタリアーノ。ワインリストから選ぶ基準は゛地の料理には地のワイン〟という鉄則です。イタリアワイン法で最高位となるD.O.C.G.に南イタリアで最初に選定された長熟型のヴィーノ・ロッソ「Taurasiタウラージ」の申し分ない作り手が「Antonio Caggiano アントニオ・カッジャーノ」。

 料理との相性を考慮し、標高400mの粘土と石灰岩が混じる畑で育ったブドウを主体とする白ワイン「FiaGre フィアーグレ2014」下画像に白羽の矢を立てました。

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 ローマ・ミラノに次ぐイタリア国内で3番目となる95.5万(2018年)の人口を擁するナポリを州都とするカンパーニャ州を代表するワイン産地が、海岸部のサレルノから30kmほど離れたアペニン山脈南麓に位置する冷涼な「Avellino アヴェリーノ」から北の「Benevento ベネヴェント」にかけての内陸部。

 どちらもギリシャ人が持ち込んだ歴史の古いブドウで、19世紀中庸にヨーロッパ全域のブドウ栽培に壊滅的被害をもたらしたフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)禍で一時は姿を消すも見事な復活を遂げた「Fiano フィアーノ」、温暖な南伊らしからぬ酸と厳格さを持ち合わせた「Greco グレコ」を7:3の割合で混醸した白ワインです。

 フィアーノの特徴となるハチミツや花の心地よい香りがグラスから立ち上がりますが、飲み口はあくまで辛口。グレコ特有の硬質な酸味が引き締めるアフターにかすかな苦味を伴います。

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 セコンドピアットは店一番のオススメという「本日の魚料理」(1,600円~)に。ほどなくスタッフがオマールエビ以外は明石浦の昼網で揚がった7種類の魚をテーブルに持参下画像。スタッフと客が調理法を相談して決めるという素敵なシステムなのです。

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 もはや生モノは食傷気味ゆえ、刺身の船盛りが登場するとゲンナリする庄イタ。「いかようにも調理しますよ」と言いつつ、こんなモノを目の前に持ってこられた日にはたまったもんじゃありません。ヒトの食欲を抑制する働きがある血中アドレナリンの濃度が測定下限値を下回り、食欲のリミッターを外すドーパミンが止めどなく脳内で駆け巡ってゆくのでした。

 アンティパストはこの日のお薦めで、積み重ねてきた食遍歴の経験則からほぼ味の想像がつく「明石産ハモのパン粉オーブン焼きレモン風味」「カツオとマヨネーズ、赤タマネギのブルスケッタ」「チーズ・サラミ・卵をタルト生地で焼いたナポリのキッシュ、ピッツァルスティカ」とは異なり、未知なる組み合わせの妙に期待感が高まった「明石産ハリイカとイタリア栗の柔らか煮込み」を下画像

 秋から冬場の柔らかく甘さが乗ったハリイカとイタリア栗のマロンペーストが出合った優しい味つけに一皿目から癒されます。

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 初見参の店では、トマトソース+オレガノ+ニンニクのシンプルな組合せの「マリナーラ」を食べるのを常とする庄イタ。なれどここはマダコで名高い明石。そこで選んだのが、マリナーラに明石ダコをトッピングした「Marinara con Polipi マリナーラ・コン・ポリピ」。家人が希望したマルゲリータと1枚ずつではお腹のキャパシティを越えること必至ゆえ、注文はMetà e Metà ないしは Mezzo e Mezzo(ハーフ&ハーフ)。庄イタの定番ルールでナポリ同様のノーカットを指定。下画像

 窯から出されたばかりの熱々で運ばれてきたピッツァはナイフとフォークでその都度食べやすい大きさの放射状にカットします。こうすればあらかじめ8等分する15秒程度をロスしている切れ目の入った生地より冷めにくく、右利きなら順繰り皿を時計回りに、左利きなら逆に回し、内側からコルニチョーネ側に生地を巻くように食べれば、スピーディに完食できます。手づかみのように手が汚れませんので是非お試しを。

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 グランドメニューに記載された心惹かれる30種類ものパスタ・リゾットからプリモピアットを絞り込むのは至難の業。そこでメニュー冒頭「本日の店長オススメ・季節のナポリ料理」にあった3品「手長エビとイカ・ポルチーニ茸のスーゴ風味のパッケリ」、「自家製サルシッチャとレンズ豆の手打ちチカテッリ」、「明石産生シラスのレモン風味スパゲッティ」の三択に。

 3種盛りを1人前の分量で注文できればベストでしたが、そんな虫のいい話は無理そうなので〝一番お腹に優しそう〟という理由から、生シラスのレモン風味スパゲッティに下画像。 

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 セコンドの魚は10月~12月が旬であり、何より選択肢の中で〝最も小ぶりである〟というプリモを選んだのと似たような理由からガシラ(アカメバル)を指名。大皿盛りで目の前に持ってこられたガシラは刺身でも十分イケる鮮度でしたが、地元では塩焼き、煮付け、唐揚げとオールマイティーな食べ方をするようです。

 アクアパッツァやシンプルなローストなど、お勧め頂いた調理法から、ハーブ焼をお願いしました下画像。パリッと火入れされた香ばしい皮、締まった上品な白身にはローズマリーやイタリアンパセリの香りがよく合います。

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 この時点で胃袋の許容量は105%まで達していましたが、ドルチェまで至らずにカッフェで〆るのは前世イタリア人としては悔いが残ります。店の入口脇にある冷蔵ケースを覗きに行くと、庄イタが大好きなナポリ菓子「スフォリアテッラ」が残っているではありませんか。そちらは持ち帰り用に確保して「モンテビアンコ(モンブラン)」をエスプレッソと共に店で頂くことに下画像

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 翌日、家で食べたのが、定番の貝殻型「Sfogliatella Ricciaスフォリアテッラ・リッチャ」ではなく、その原型とされる半円形の「Sfogliatella Frollaスフォリアテッラ・フロッラ」下画像。リコッタチーズ+αのフィリング(餡)にレモンピールがアクセントとなるアマルフィの修道女が編み出したといわれる美味極まりない焼き菓子です。

Sfogliatella-ciro1.jpg Sfogliatella-ciro-akashi.jpg

 2皿目のドルチェまで一気呵成に駆け抜けた〈中編〉はここまで。

 もうお腹いっぱいと顔に書いてあるそこのアナタ。まだ完食してはおりませんぞ。同じ分量のフルコース料理と〆のカッフェまで〈後編〉のネタを発酵中のピッツァ生地よろしく寝かせてご用意しております。

 後編もTanto mangiare! 

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トラットリア・ピッツェリア・チーロ

・住:兵庫県明石市本町1-17-3 ゑびや第2ビル1F
・Phone:078-912-9400
 ※予約は2週間前の9:30から電話で受付け(月曜除く)

・営:昼 11:30~L.O. 14:00
   夜 18:00~L.O. 21:00
   月曜定休(祝日の場合は翌日休)
・Pなし(近隣のコインパーキング利用)・禁煙
・URL: https://www.facebook.com/TrattoriaPizzeriaCiro/
 

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