あるもの探しの旅

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CiRO a Akashi チーロ @ 明石 〈後編〉

 プロローグ「局地風に関する一考察」、「Strada per CiRO a Akashi チーロ @ 明石への道」では魚の棚で寄り道。〈前編〉〈中編〉と刻んで今回の〈後編〉で「CiRO a Akashi チーロ @ 明石」は完結を見ます。

 唐突ながらゴルフに例えれば、最終ロングホールのドライバーショットを局地風にあおられて深い林に打ち込み、2打目は斜め後方フェアウェーに出すだけ。挽回せんと力んだ3番アイアンをダフって3打目をチョロ、かろうじてグリーンエッジに5オン。オーバーした6打目の返しはカップをなめて3パット。無念のトリプルボギーでホールアウトといったところでしょうか。

 吉幾三の「これが本当のゴルフだ!!」を地で行くこんな珍プレーとは無縁なのが日本プロゴルフ選手権大会。最終日の7月7日、プレーオフにもつれ込んだ激闘の末、石川遼選手は国内メジャーツアー3年ぶりとなる優勝を果たしました。カートにぶつけた1打目がフェアウエーに戻り、4mのイーグルパットを沈めて逆転優勝を決めるや歓喜の雄叫びを上げた石川遼プロのような劇的な幕切れを望むべくもないのがViaggio al Mondo

sign-CiRO.jpg 足を洗って久しいゴルフに熱を上げる訳もなく、観戦そっちのけの場違いな前世イタリア人ギャラリー若干1名。ティーグラウンド脇のCiROなる看板を掲げる茶屋に居座り、2本目のヴィーノ・ビアンコを飲み干しつつ、ピッツァ・ナポレターナと海鮮ナポリ料理、ナポリ菓子と〆のカッフェに舌鼓を打っていたことが明らかになります。

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 Trattoria Pizzeria CiROトラットリア・ピッツェリア・チーロを2度目に訪れたのは3月14日(木)。後ろめたさを覚えること無く昼飲みができるのは、その日が4日前の休日出勤の代休だったから。
 
 世界各地で栽培されるシャルドネやカベルネソーヴィニョン、メルローはいわずもがな。3000年に及ぶワイン醸造の歴史を有し、個性豊かな地方固有のブドウ品種が全土に存在するのが多様性の国イタリアです。

 コスパに優れ、日々の食事と合わせやすいイタリアワインの魅力を良く知る〝飲むリエ〟を自負する庄イタでも、今なお発見や驚きに満ちています。好みの一つの傾向として、北イタリア・チロル地方原産「トラミネール・アロマティコ(=ゲヴュルツトラミネール)」のような香りに特徴があるワインを挙げることができます。

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【photo】南北イタリアお薦め香り系白ワイン from 庄イタ's セラー。(左より)アルト・アディジェ州の小規模なブドウ農家300軒余りが加盟する協同組合Tramin トラミン。「Gewürztraminer ゲヴュルツトラミネール2017」とその上級版で15年は熟成を続ける「Nussbaumer ニュスバウマー2006」。心地よいライチの香りを主軸とするスタンダード版のゲヴュルツトラミネールでさえ原産地としての血筋の良さは明瞭。Viticoltori De Conciliis デ・コンチリス「Cilento Fiano Donnaluna チレント・フィアーノD.O.Cドンナルーナ2009」(2018.7拙稿「さくらぐみ @赤穂 そこは紛れもなくナポリだった」参照)、フィアーノなど絶滅の危機に瀕する土着ブドウ品種復活に中心的役割を果たしてきた1878年創業のMastroberardinoマストロベラルディーノが標高550m近辺の自社畑で栽培するフィアーノで醸した1クラス上の「Radici Fiano di Avellinoラディチ・フィーアノ・ディ・アヴェリーノD.O.C.G 2017」、前回ご紹介した1回目のCiRO訪問時に飲んだ「FiaGreフィアーグレ」の作り手Antonio Caggiano アントニオ・カッジャーノの醸造責任者ルイジ・モイオが、2001年に立ち上げた自身の醸造所Quintodecimoクイントデーチモ。バリック樽の嫌みがなく品種の個性が輝く至高の1本「Exultet Fiano di Avellino エクスルテト・フィアーノ・ディ・アヴェリーノD.O.C.G 2017」

 CiROのワインリストの中で、南イタリアの香り系白ワインでは最良の選択肢の一つと言ってよい「Fianoフィアーノ」100%のヴィーノ・ビアンコがあるのに目が留まりました。

 その最適地、カンパーニャ州Avellinoアヴェッリーノでも理想的な栽培条件に恵まれたLapioラピオに畑と醸造所がある「Rocca del Principe ロッカ・デル・プリンチペ下画像

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 イタリア国内で最も影響力があるワインの評価ガイド「Vini d'Italia(通称:ガンベロ・ロッソ)」で毎年1軒だけが選出される「Cantina emergente(=卓越した新進気鋭の醸造所)2009」に選出。ここ10年ほどで急速に頭角を表してきた注目の作り手です。

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 EU域内で生産される農水産加工品が厳格な規定をクリアしていることを示す最高ランクの品質保証が「D.O.PDenominazione di Origine Protetta デノミナツィオーネ・ディ・オリジネ・プロテッタの略)」保護原産地呼称。その認証を得ていることを示す赤いマークが記されたD.O.C.G.Fiano di Avellino フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ」のバックラベル記載のVendemmiaヴェンデミア(=収穫年)は2016上画像

 山容を劇的に変えるほどの大火砕流でポンペイを噴石と火山灰で埋め尽くした西暦79年以外にも直近では1944年まで幾度となく噴火を繰り返してきたヴェスビオ山。

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【photo】紀元前2世紀に建造され、79年の噴火による噴石と火山灰とで1800年もの間封印され、1879年の発掘後に「Casa del Centenario」と名付けられたポンペイ屈指の裕福な家の壁画(一部)。ブドウの化身となったバッカス神(左)の背景として、山頂部が吹き飛ばされた現在とは異なるヴェスビオ山の姿を伝える

 その火山性土壌が広がる畑の500m~650mという標高の高さに由来する硬質なミネラル感と柔らかくも綺麗な酸味が、トロリとしたテクスチャーの中に蜂蜜や花の心地よい香りと重層的に重なり合い、長い余韻を残します。

 それは匂い立つような美しさが内面からも滲み出る女性とすれ違った時、去来する高揚感に相通じるとでも言いましょうか。(☜ 視線をロックオンしたまま、180°後方に頸椎ねん挫の寸前まで振り返るのが男子たるものの礼儀であるイタリア的表現)

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 この日も〝前菜+ピッツァ+パスタ+メイン(肉or魚)〟を組み合わせた「トラットリアコース」(昼夜とも3,850円)で、メインのセコンドピアットは店一番のオススメ「本日の魚料理」(単品1,600円~)。

 前回述べた通り、刺身は小鉢に3~4切れで充分ゆえ、鮮度で勝負!!的な生モノの船盛りにはゲンナリする庄イタ。火を通して調理する前提の大皿から溢れんばかりの真ダイやセイゴ、オマールエビなどを前に胃袋が臨戦態勢に下画像

 コチや地元では〝バケシタ(=化け舌)〟と呼ぶシタビラメといった前回の顔ぶれとは少し入れ替わっている選択肢の中で選んだのが、サワラの若魚サゴシ。

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 明石浦では脂が乗る産卵前の秋口から冬場のサワラを珍重するようですが、フロアスタッフの方と相談の上で窯焼きにしてもらうことに。

 突き出しはメニュー冒頭の店長オススメ季節のナポリ料理から、家人が所望した「播州赤穂産の殻付きカキ窯オーブン焼き」(単品230円/1個)のお裾分け下画像

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 兵庫県の瀬戸内側では相生と共にカキの養殖が盛んな赤穂坂越(さこし)。絶妙な火入れ加減により、シーズン最終盤といえど、お約束のミルキーさはしっかりと感じられます。繊細なエキストラヴァージンオイルのフレーバーが加わった焼きガキにレモンを3滴ほど搾り、フィアーノと共にペロリ。この一口&一杯でナポリ湾を望むポジリポの丘やソレントのテラス席を備えたレストランへとワープできそうな妄想に浸れます。

 前菜はグランドメニューから、新鮮なヤリイカ、サルエビ、イワシをカラっと揚げ、レモンを搾って頂く「明石産 海の幸のフリットミスト」(単品2人前940円,追加1名ごと+470円)下画像

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 その日は平日だったため、ピッツイヨーラの小谷紀三子さんが薪窯の前においででした。前回はマルゲリータとのハーフ&ハーフで頂いた明石ダコとケイパーをトッピングしたマリナーラをフルサイズにバージョンアップ。「マリナーラ・コン・ポリピ」(単品1,790円)下画像

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 ピッツァの縁コルニチョーネは綺麗なキツネ色に焼きが入っており、別嬪さんな仕上がり。香ばしい小麦とタコの甘味は相性が良く、トマトソースの甘酸っぱさをベースにオレガノとケイパーが心地よい香りを添えてくれます。

 焼き上がったばかりの薫り高い生地と具材の調和のとれた味わい、サックリ・モッチリな食感。う~む、コレは旨い。

 この2度目の訪問から4か月後の梅雨明け直前の某日、クルマで赤穂へ向かう道すがら、小谷夫妻がおいでのCiROに立ち寄りました。マリナーラの別アレンジで、シラスをトッピングした「チチニェリ」下画像をオーダー。雨混じりの蒸し暑い日でしたが、この日のピッツァは3月の訪問時と比べ、生地の印象が硬めでした。

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 中心部の生地のモッチリ感と仕上げのオリーブオイルのもう一振りが追加されると、より庄イタ好みだったかもしれません。あくまで個人的な好みではありますが。

 余談ながらその日は昼食はCiRO@明石、7月からお手頃なコースを追加してメニューを刷新した赤穂さくらぐみ、翌日の昼食はミオ・エ・テンプリーナ@赤穂という、さくらぐみファミリーを巡る2日間となったのでした。

 パスタはグランドメニューからナポリ名物のパスタ料理「frutti di mareフルッティ・ディ・マーレ」に該当する「いろんな貝とトマトのスパゲッティ」(単品1,530円)下画像を。ムール貝とアサリを殻付きで火にかけた白ワインと貝の旨味が凝縮したソースが乾燥パスタのニョッキに絡みます。

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 7月のCiRO再訪時、最も印象に残った料理が、仕入れによって手長エビやクルマエビを使い分ける「本日のエビとフレッシュトマトのリングイーネ」(1,680円)でした下画像。背開きした殻の中のふっくらとした身と濃厚なミソも味わえるScampiスカンピ(手長エビ)を丸ごと4尾使用。冷凍で輸入されるスカンピは身がパサパサであることが時にありますが、これは違いました。

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 特筆すべきは、口の中で炸裂するスカンピの旨味エキスが滲み出したソースの美味しさ。魚介系ソースによく合うリングイーネとの相性抜群で、病みつきになりそう。パンをお願いしてソースを皿からあらかた絡めとりたい衝動に駆られたのでした。

 ニョッキ・アッラ・フルッティ・ディ・マーレに続いて尾から頭まで40cmサイズの食べ応え充分なサゴシがドーンと登場。

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 ホロホロとした食感は若齢魚のサゴシならでは。春先に回遊してくる瀬戸内ではタイに負けず劣らず美味とされるのも頷ける旨さを堪能すべく、ほのかに甘い身の8割方は添えられたレモンを搾らずに頂きました。機会があれば、秋から冬場にかけて脂が乗ったこの出世魚も食べてみたいものです。

 この時点で物理的に胃袋の許容量を超えていましたが、ドルチェに限らず甘い誘惑には滅法弱いのがイタリア人男性の常。前世由来の〝あまから二刀流〟を標榜する庄イタ。消化器系は別腹が即座に発動するラテン仕様なのです。

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 前回訪問時に持ち帰りしたスフォリアテッラと同様、ナポリの定番ドルチェがスポンジ生地にラム酒をたっぷりと染み込ませた「Babà ババ」上画像 。フランス菓子のサバランと形状が異なるだけで基本的な風味は同じです。

 生クリームとイチゴが添えられたババのアレンジはベリー類を多用するナポリスタイルそのもの。

 〆の定番エスプレッソは、ナポリがハプスブルグ帝国支配からスペイン・ブルボン朝統治に移った1733年、ナポリ王カルロ7世を名乗ったカルロス3世に敬意を表した「Borboneボルボーネ」のカッフェ。

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 アラビカ種のみならず力強さをもたらすロブスタ種の豆を適度にブレンド、イタリア半島を北から南下するほど量が少なく濃厚になる傾向が顕著なのがエスプレッソ。ゆえにナポリ以南やシチリアのエスプレッソを味わってこそ、その真髄に触れることができるのです。風味がまとまるコーヒースプーン2杯以上の砂糖を入れて何十回もかき混ぜ、さっと飲み干すのが粋な飲み方。

 ババのカロリーを考慮して砂糖はスプーン1杯半、撹拌の回数はカップの底に砂糖が残る20回程度に留めて食事の仕上げとしました。

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 〈前編〉から〈後編〉までのシリーズを通して、CiROが、ナポリピッツァに限らず美味しいナポリを堪能できる店であることは充分にご理解いただけたと思います。

 ただでさえ競争率が高い予約の狭き門のハードルを更に上げることを承知の上で、皆様も是非一度、CiROを訪れることを強くお勧めします。

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トラットリア・ピッツェリア・チーロ

・住:兵庫県明石市本町1-17-3 ゑびや第2ビル1F
・Phone:078-912-9400
 ※予約は2週間前の9:30から電話で受付け(月曜除く)

・営:昼 11:30~L.O. 14:00
   夜 18:00~L.O. 21:00
   月曜定休(祝日の場合は翌日休)
・Pなし(近隣のコインパーキング利用)・禁煙
・URL: https://www.facebook.com/TrattoriaPizzeriaCiro/
 

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