あるもの探しの旅

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2015/06/28

Il dolce e l'amaro スウィート & ビター 〈後編〉

GELATO Artigianale e Caffè IzzoGELATI BRIO

Il dolce e l'amaro スウィート & ビター〈前編〉
GELATO Artigianale @ GELATI BRIO より続き


1-1435249079793.jpg 東北北部も梅雨入り。蒸し暑さを感じる日が増えるこれからの季節。美味しいクールダウンの選択肢として、押えておきたいのが、仙台中央通りに3年前の春フランチャイズストアが進出したSegafredo Zanetti Espressoのイタリア版かき氷「Granitaグラニータ」。

 そして庄イタ的には絶対に外せないのが、古今東西、性別年齢を問わず人を笑顔にする稀有な食べ物「Gelatoジェラート」。アイスクリームは乳脂肪分8%以上。対してジェラートは味付けにもよりますが5%前後。「体型維持を心掛けていても、クリーミーな誘惑には弱くて...」と仰る方にとってもビタミン類やたんぱく質などの栄養価が高いジェラートはヘルシーな心強い味方です。

【Photo】エスプレッソ・グラニータ(¥430)は、エスプレッソ&ミルクにクラッシュアイスを加えたイタリア夏の定番フローズンドリンク。セガフレード・ザネッティ・エスプレッソ仙台中央通り店では、エスプレッソにチョコレートを加えたメッツォメッツォ(¥430)、ブラッドオレンジ(¥440)ほか、期間限定のグラニータも

 18,000年前の旧石器時代、スペイン北部のアルタミラや15,000年前のフランス・ラスコーで洞窟に壁画として描かれた野牛は、あくまでも狩猟の対象でした。10,000年前のメソポタミアで初めて人は山羊の乳を飲んだと考えられています。牛を農耕用の家畜としたのが8,500年前のトルコから西アジア地域。

latte-nakahora.jpg 紀元前400年前後と推定されるブッダの臨終後、弟子が師の教えを古代インド語で記した大般涅槃経には、現代のヨーグルトやチーズと考えられる乳製品の存在を窺わせる以下の記述があります。

〝牛から乳を出し 乳より酪を出し 酪より生蘇を出し 生蘇より熟酥を出し 熟酥より醍醐を出す 醍醐は最上なり〟「醍醐味(だいごみ)」の語源となった牛乳を得ることで、人類の栄養状態は向上し、今日の繁栄を築く要因となりました。

【Photo】牛乳の醍醐味を知るならばコレ。中洞牧場牛乳(次回詳報)

 旧約聖書「出エジプト記」では、預言者モーゼは約束の地である理想郷カナンを〝乳と蜜が流れる地〟と表現しています。これは家畜の乳と蜂蜜が、エジプトで迫害を受けるユダヤの民をパレスチナへと駆り立てるだけの当時から非常に価値あるものであったということ。

AltamiraBison.jpg 【Photo】世界文化遺産スペイン・アルタミラ洞窟壁画(部分)。旧石器時代に野を駆けていた野牛を巧みな筆致で描いたのは、パブロ・ピカソの遥か遠い祖先

 紀元前4世紀にマケドニアを建国したアレクサンドロス大王(BC356-BC323)や、葡萄酒は嗜まなかったといわれるユリウス・カエサル(BC100‐44)も、氷雪に乳や蜂蜜や果物を加えて食することを好んだといいます。

 唐(618-907)の時代に、現在もモンゴルなど中央アジアで親しまれるKumis(馬乳酒)を凍らせた菓子の製法を東方見聞録の中で伝えたのがマルコ・ポーロ(1254‐1324)。このようにアイスクリームやジェラートの起源には諸説あります。

1-giolitti_roma_2003.jpg【Photo】カエサルが礎を築いた永遠の都ローマで屈指の人気を誇るジェラテリアが、1900年創業の「Giolitti ジオリッティ」。年中客足が途絶えることがなく、全体でこの3倍以上はあるショーケースには、選択に困るほど多種多様なジェラートがズラ~リ。2つの味が選べるPiccolo(S)で2.5エウロ。cassa(レジ)で先払いし、カウンターでレシートを提示し、coppa(カップ)かcono(コーン)を選択してフレーバーを選ぶシステム。生クリームのトッピングが無料なので、con panna(コン・パンナ)と告げる。〝Veni,vidi,vici(来た、見た、勝った)など、明瞭簡潔な表現を好んだ名文家カエサルが、この店を訪れたなら、こう言ったに違いない。「Veni,vidi, .........emi. ⇒来た、見た、(うーん......... さんざん迷った末に)買った」

 パドヴァ大学で教鞭を執っていたマルクアントニオ・ズィマーラ(1475-1535)が、火薬の原料となる硝石を加えて水を冷却する方法を発見したのが16世紀初め。

 サンタ・トリニタ聖堂のファサードやボーボリ庭園を設計したほか、フィレンツェを拠点に自然科学の分野で多才ぶりを発揮したベルナルド・ブォンタレンティ(1531-1608)は、美食家でもありました。ブォンタレンティは、セミフレッド(=半冷凍)に仕立てたズコットをメディチ家の求めに応じて創作したと伝わります。

getato_kisetsu.jpg 1533年、オルレアン公(後のアンリ2世)との婚礼に臨むカテリーナ・デ・メディチに随行した菓子職人ルッジェーリが、席上アーモンド風味のソルベ(=シャーベット)を披露。それまでは手づかみで料理を食べていた当時のフランス王族は、洗練されたその味に魅了され、上流階級の間で氷菓子が広まります。

 もともと政略結婚だったため、アンリ2世はカテリーナに対しては冷淡で、関係は氷のように冷え切っていました。世界に冠たる中華思想の持ち主であるフランス人から嫉妬されたルッジェーリは、奸計を巡らされ、やがてフィレンツェへと追いやられます。スウィート&ビターな人生の栄華は、シャーベットが溶けゆくように儚いもの。

【Photo】中洞牧場牛乳が次回番外編のテーマゆえ、比較のためにパティスリー・グラス・キセツでオーダーした「蔵王ミルク」&「生姜レモン」〈上写真〉、前編のGELATI BRIOでは辛口プロセッコと共に味わった「アルフォンソマンゴー」&ずんだ味の「枝豆」〈下写真〉。各ダブル(¥390)

gelato-kisetsu2.jpg さて、ジェラート発祥の国イタリアには、現在およそ35,000軒のジェラテリアが存在するのだといいます。OEMの既製品を仕入れたり、濃縮果汁や製菓用ペーストを使用するケースも存在しますが、味にうるさい地元っ子の支持が高いのは、旬の果物や新鮮な牛乳から毎朝手作りされるジェラートを提供するGelateria artigianaleジェラテリア・アルティジャナーレ

 そんなジェラートを提供するジェラテリアが、昨夏相次いで仙台に登場しました。

 仙台第二合同庁舎並びの本町定禅寺通り沿いに昨年7月オープンした「Pâtisseries Glaces Kisetsuパティスリー・グラス・キセツ」。

 パティスリーと看板にある通り、フランス発祥のエクレール(エクレア)に加え、ジェラート(こちらの店ではアイスクリームを指すフランス語「グラス」を標榜)も自家製で提供する、といったほうが正確かもしれません。

 日替わりで6種類が店頭に並ぶジェラートのうち、これまで庄イタが食したゲランドの塩、蔵王ミルク、生姜レモン、枝豆などは香味があっさりした印象。シングル360円・ダブル390円・トリプル420円という価格設定からして、こちらは複数の味を試すのが得策かと。

(エクレアに関しては、40年以上にわたって愛される「とびばいさ甘座」のモカエクレアをおいて他に経験則を持ち合わせておりません。よって今回は華麗にスルー。(^^)ゞ)

gelatibrio2.jpg そしてもう一軒。サンモール一番町から南町通りを越え、東北大学片平キャンパス方向に南下した一角に昨年8月登場したのが「GELATI BRIOジェラーティ・ブリオ」(上写真)です。

 こちらのジェラートは、KIDS(12歳以下限定)200円・シングル380円・ダブル450円・トリプル520円という価格帯。存在感のあるレバーマシンで淹れるナポリスタイルの本格エスプレッソ・ダブル「Caffè Doppio」(¥400)やアイスカフェラッテ「Caffè Lattefreddo)」(¥450)などの一部カッフェには、以下の通りジェラートとのセット料金が適用されます。(シングル600円・ダブル680円・トリプル740円。エスプレッソ・シングルの場合-100円)
 gelati-brio4.jpg【Photo】GELATI BRIO のショーケースは7連×2列。下写真のような果物を丸ごと練り込むジェラート・アッラ・フルッタやミルク系など、最大で14フレーバーの色とりどりなジェラートが味わえる。まったりとキメ細やかで目が詰まった滑らかな食感は、生地の絶妙な空気含有量に由来するもの

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 福島市で育ち、仙台で10年ほど暮らしたオーナーの磯部智広さん。日本初のイタリアンスタイル・バール・ジェラテリアとして玉川高島屋S・C内に1986年に開業した「アンティカ」で、ジェラタイオ(=ジェラート職人)やバリスタとしての腕を磨きました。

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【Photo】「マスカルポーネ」がおまけでトッピングされたValrhonaのクーベルチュールを使った「Choco」が、スペイン・バレンシア地方アルマンサ産の赤ワインの香りと混然一体となって溶けあう(左)  グリーンキウイとバナナのフレーバー「キバナ」。アルゼンチン・パタゴニア地方でイタリア系移民が世界最南端のブドウ栽培地域に1909年に設立した国内最古のワイナリーHumberto Canale。伝統的なブドウ品種トロンテスのアフターに苦味を伴う特徴的な蜂蜜のような芳香が漂う(右)

 ジェラートとの相性を想定し、知人のソムリエにセレクトを依頼して取り揃えているのが、肩肘を張らずに楽しめるグラスワイン各種(泡・赤・白¥500~)。グラスワインを傾けつつ味わうジェラート。これがまた目からウロコの新境地!!この夏、庄イタの新たなマイブームを呼びそうな予感が。ビールはMessina(¥600)とNastro Azzuro(¥700)の2種類を用意。イタリアには少なくないバール・ジェラテリアのスタイルを踏襲しています。

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【Photo】親しい間柄同士なら好みのフレーバーを分けあうのも楽しい。赤肉のレノンメロン「Melone」(+50円)とダークチェリー「Amarena」(左)、ド定番「ピスタチオ」(+100円)&実山椒「Pepe Giapponese」のダブルに、ワンスプーンお味見で酸っぱい杏「Albicocche」がおまけ(右)

 香りの良い稀少なシチリア産を店内でローストする「ピスタチオ」、トリノ伝統のヘーゼルナッツ風味チョコレート「ジャンドゥーヤ」、美食の街ボローニャ発のFABBRI で知られるダークチェリーをシロップに漬けこんだ「アマレナ」などは、ジェラートが国民食ともいえるイタリアの定番フレーバー。

gerati-brio1.jpg インドの最高級品種「アルフォンソマンゴー」や季節ごとのフルーツを練り込んだ各種ジェラーティ・アッラ・フルッタ、栗カボチャとルッコラ「ズッコラ」、新タマネギ「Cipolla」などのスペチャリテも加わります。

 仙台味噌とチョコレートが出合った「Choco&Miso」ほか、(今季は商品化に至らなかったものの)仙台せりのようなご当地フレーバーにも挑戦。鶴岡の生産者と繋がっただだちゃ豆がこの夏登場予定とのこと。これは期待できそうですね。

【Photo】屋外のテラス席ほか店内はカウンターのみ。ジェラートはカップが基本。庄内砂丘産のアンデスメロンを使用した「Melone」と「マスカルポーネ」のダブル(¥450)

 そして是非ともお試し頂きたいのが、たったひと匙で夢見心地へと誘ってくれる岩手「中洞(なかほら)牧場」のジャージー乳「ミルク」(+100円)。哺乳類のDNAを根源からくすぐってやまない良質なクリームの香りに魅了されます。

 仙台では藤崎の地下2F生鮮コーナーで、2013年のご当地牛乳グランプリで最高金賞を受賞した中洞牧場牛乳(720mℓ1,180円 500mℓ 810円 130mℓ 270円)を先月から取り扱い始めました。素材そのものを味わうのも結構ですが、類い稀なミルクの風味を凝縮させたジェラートをお召し上がりになれば、中洞ジャージー牛乳の格の違いを実感できるはず。

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【Photo】「アフォガート」(¥550)のカップリングは、誰が何と言っても中洞ミルク+Izzoのカッフェ(左)。セルフの後掛けゆえ、それぞれを少し味わってからお好みによりグラニュー糖を加えたエスプレッソをタラ~リするか、苦さの中に甘味を秘めたカッフェ・ナポレターノと組み合わせるかはお好みで

 そしてミルキーなジェラートに熱いエスプレッソを注ぐスウィート&ビターなイタリアンドルチェ「Affogato al caffèアッフォガート(・アル・カッフェ)」はいかがでしょう。GELATI BRIOでは、中洞ジャージーミルクと極めつけのカッフェとの共演による甘くほろ苦い大人の味との出逢いが待っています。イタリア語のaffogatoは溺れた状況を指す形容詞。底なし沼のごとき大人だけの悦楽に溺れてみるのも悪くないかと。

gelatibrio3.jpg【Photo】焙煎したコーヒー豆の雑味を封じ、旨味だけを引き出す最適な抽出圧が得られるよう設計された専用レバー式エスプレッソマシンを操作する磯部智広さん。或る時はジェラタイオ、また或る時はバリスタ。バールのバンコ(立ち飲み)感覚で頂くカッフェは、いずれも庄イタ納得の味(上・下写真)

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 コーヒー市場を席巻するスターバックスなどシアトル系の上陸すら許さないイタリア。エスプレッソの本場ナポリのバールを彷彿とさせる厚くキメ細かい褐色のクレマに覆われた「Izzoイッツォ」のエスプレッソをベースに少量のフォームドミルクを加えたマッキアート(¥350)、氷と砂糖を加えてシェークする夏の定番シェケラート(¥500)など、エスプレッソベースのドリンク類も秀逸な出来栄えです。
 
Shakerato-brio.jpg Izzo Caffè は1979年にポンペイ近郊で創業。同じくナポリ発祥の「Passalacquaパッサルアックア」(1948年創業)や「KIMBOキンボ」(1963年創業)と比べて歴史は浅いものの、創業者のヴィンチェンツォ・イッツォ氏はコーヒー好きが高じ、焙煎所を立ち上げるだけでは飽き足らず、自社のコーヒー豆に最適な抽出を可能にするレバー式エスプレッソマシンまで自作してしまったマニアックな人物。

【Photo】フルボディのエスプレッソ・ドッピオにたっぷり目のグラニュー糖。個人的な好みでミルクを少々追加。ロックアイスを加えてシェーク10秒。ひんやり冷たいフローズン・エスプレッソ「Caffè shakeratoカッフェ・シェケラート」の出来上がり

 昨年10月、ポンペイ遺跡の近くにあった本社工場が、放火とみられる火災で全焼する不幸な出来事がありました。現在はナポリとローマを結ぶ高速A1アウトストラーダ・デル・ソル沿いのローマから1時間ほどの町で事業を再開。カンパーニャ州からラツィオ州へと拠点を移しましたが、カッフェのスタイルはエスプレッソの聖地であるナポリの王道から、いささかもブレてはいません。

1-DSC_0724.jpg【Photo】エスプレッソとフォームドミルクの二層からなる「Caffè macchiatoカッフェ・マッキアート」。温めたミルクをエスプレッソに加えるカフェラッテより豆の持ち味が感じられる。イタリア人がするようにスプーン1.5杯程度グラニュー糖を加えると、より美味に

 時流に流されない普遍的なエスプレッソ&バール文化を確立している南イタリアのエスプレッソに顕著なのは、強靭なボディと長い余韻を残す深煎り豆の甘い香り。そこに欠かせないのがロブスタ種。世界のコーヒー生産の2/3を占めるアラビカ種は、多様な個性が際立つスペシャルティコーヒーのように、ウイスキーに例えればシングルモルトのような存在。


caffe-brio.jpg かたや主演を演じる華やかさはなくても、エスプレッソ・ナポレターノの名脇役がロブスタ種。アラビカ種をベースに、深いコクと香りを閉じ込める豊かな泡立ちを生み出すロブスタ種を加えた9種類の豆が、心地よい和音を響かせるブレンデッドウイスキーのように調和するIzzoのカッフェ。

 たとえミルクが加わっても、いささかも魅力が色褪せないのは、分厚い褐色の微細なクレマに覆われたエスプレッソがあってこそ。レバー式マシンが創造する深遠なるカッフェ・ナポレターノの真髄をご体験あれ。

【Photo】このクオリティと味わいにして、その価格はイタリア本国とさして変わらぬ1杯200円。Bravissimo!!

 売り切れ必至のミルクジェラート@GELATI BRIO。並み外れた美味しさは、早朝から仕込みを始める磯部さんの誠実な仕事あってこそは言わずもがな。いまだ解き明かされぬもう一つの鍵、素材となるジャージー牛乳が、いかなるものかを探るため、延長戦突入の次回は、岩手県岩泉町の中洞牧場を訪れます。 

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logo_brio.jpgGELATI BRIO ジェラーティ・ブリオ

・住:仙台市青葉区一番町1-6-23 shuon 358 ビル1F
・Phone:022-302-5669
・営:(火~木) 11:00~20:00  (金) 11:00~21:00
   (土) 10:00~21:00  (日) 10:00~20:00  月曜定休
    禁煙 バンコ・カウンター6席 テラス4卓12席   Pなし
・URL:https://www.facebook.com/GELATI.BRIO

ジェラーティ ブリオジェラート / あおば通駅広瀬通駅仙台駅

●夜総合点★★★★ 4.5 ●昼総合点★★★★ 4.0

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2014/04/27

Arriva a Napoli !?

白日夢 @ Caffè Passalacqua
庄イタ流 避寒術 vol.3

 もはや避寒術など必要のないうららかな陽気に恵まれたGW前半の日本列島。
今回は、この春、白日夢のごとく儚くついえた1軒のカフェについて語ります。

caffe2-passalacqua.jpg【Photo】Arriva a Napoli!? =ナポリに到着!?)のタイトルとは裏腹に、この連休に訪れたわけではない世界三大美港に数えられるナポリ湾。サンタ・ルチア地区から突き出たCastel dell'Ovo(卵城)とヴェスヴィオ火山〈cick to enlarge〉。悲しいかなこんな風に垣間見えるこの美景のロケ地はナポリにあらず...

 庄イタ流 避寒術vol.1,vol.2で登場したピッツェリアでも使用しているナポリのコーヒーロースター、「Passalacquaパッサラックア」日本初のカフェが東京にオープンしたという情報をキャッチしたのが昨年秋。いささか話が遡りますが、雪に不慣れな東京を2度にわたって混乱に陥れた寒気団が居座る2月上旬、店を訪れました。

cafe-passalacqua2.jpg【Photo】混沌としたナポリの下町チックな新宿・歌舞伎町一番街に突如として出現した「Caffè Passalacqua」日本第1号店。再訪を誓ったはずが...。

 キモとなるロケーションが、なんとも泣かせる新宿・歌舞伎町。そう、青山でも銀座でも代官山でもなく、胡散臭さ漂う歌舞伎町のど真ん中。喧騒に満ちたナポリと雰囲気が似ていなくもありません。

 開店には少し早く着いたので、付近を散策したのがイケマセンでした。区条例で禁止されている呼び込み数人に声を掛けられること数度。「・・・キャバクラ、*☭▼$♂・・・」と執拗にまとわりついてくる荒川良々似のお兄さんからは、コンビニに退避して難を逃れました。コチラがよほど物欲しげな目つきをしていたのかも...(///△///)

caffe4-passalacqua.jpg 開店直後の店には、庄イタ以外の客はおらず、宮崎と長崎の出身だという二人の女性スタッフに話を伺いました。親会社の栄進物産株式会社(本社:五反田)が日本第1号店をオープンしたのが昨年夏。「博多で研修を受けたラテアートは、まだ練習中なんです」と語る女性バリスタに、カプチーノを所望しました。

 エスプレッソマシンはSegafredoセガフレード傘下の「La San Marco S.p.A.ラ・サンマルコ」製セミオートマチックタイプ「100 TOUCH」を使用している本格派。謙遜する彼女の言葉とは裏腹に、ロブスタ種とアラビカ種をブレンドしたmehariメハリで淹れたカプチーノは、ナポリ市内に数店あるPassalacqua直営のバール「LA MEXICOラ・メキコ」を思い起こさせます。

 店内を見渡して気になったのが、冒頭に登場したリアルなナポリ湾の美景。他愛のない話をあれこれするうち、お代わりは外せないエスプレッソ。無論のこと店頭に置いてあったアラビカ豆100%のMoana,ボディのあるmehari,バランスの良いCremadorといった全ての種類のコーヒー豆を買い求めました。

mehari-moana-cremador.jpg【Photo】ナポリで1948年に創業して以来、愛されてきたパッサラクア。伝統の深煎りアラビカ種とロブスタ種の絶妙な配合による豊かなボディと深いコク。熟練のバリスタが業務用マシンでサーヴするバールの味とはいかずとも、ナポレターナマキネッタでも本場の雰囲気の片鱗を堪能できる

 「また来て下さいね~♡」と愛想の良いお姉さんに別れを告げて後にした店が、開店から1年も経たないにもかかわらず、3月9日をもって移転のためクローズするとの衝撃的な情報をキャッチしたではありませんか!!

 移り変わりの目まぐるしい東京砂漠に蜃気楼のごとく突如現れ、そして忽然と消えていったCaffè Passalacqua。正統派ナポリスタイルと目されるブランドは、やることまでナポリ流だった恰好。

caffe6-passalacqua.jpg【Photo】この西日に浮かぶナポリ湾の美景もまた、思いもよらぬ店のクローズによって儚い夢と散った〈cick to enlarge

 移転リニューアルを期待しつつも、現在のところ店の再開に関する情報は未確認。「あれは白日夢だったのでは??」と、歌舞伎町で買い求めた豆で淹れたカッフェを飲みながらも、キツネにつままれたような気がしている庄イタなのです。

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2011/12/30

Attenzione, questo non è espresso.

A turisti italiani イタリア人旅行者の皆様へ
ご注意ください、 これはエスプレッソではありません

冒頭から言い訳をしておきます。何かと気ぜわしい年の瀬ということもあり、今回は事象を掘り下げる時間が無く、いつになく他愛のないネタですが、ご容赦のほど。

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 エスプレッソ好きには奇異に思える商品が今年相次いで登場しました。まずは紅茶飲料のトップブランド、キリンビバレッジ「午後の紅茶」シリーズの新商品「午後の紅茶 エスプレッソティー」。エスプレッソといえばコーヒーと相場が決まっているものと思っていた前世イタリア人にとって、これは驚天動地の商品でした。

 なぜに紅茶をしてエスプレッソたらしめるのかというと、紅茶葉のブレンド比率を見直し、高温・高圧のエスプレッソ抽出により紅茶葉の良質な苦味をアップさせたのだといいます。紅茶葉のしっかりとした香り・味わいと、すっきりとしたキレのある後味が特徴だとか。う~む...。

 カッフェを愛する前世イタリア人として、エスプレッソを名乗る紅茶がいかなるものか気になりました。ただし、缶からそのまま飲んだのでは、よほどのことがない限りは手を出さない缶コーヒー飲料を口にするのと気持ち的に変わりません。さて、どうしたものか...。

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 バリスタがマシンで抽出するエスプレッソには、表面にクレマと呼ばれる細かな泡が浮かんでいます。いささか強引ですが、まずは缶を数回シェイク。無理やり泡立たせ、エスプレッソ用のデミカップに注いで気分を盛り上げてから飲むことにしました。(; _ _)彡U

 先行して春に発売された「リプトン EXTRA SHOT 深煎ストロング紅茶」同様、茶葉の風味をまず感じます。強めに抽出した紅茶は、ともするとタンニン由来のいがらっぽい渋みが残るもの。このエスプレッソティーは、缶コーヒーのような後を引く重苦しさはなく、ミルクの風味がふんわりと残ります。

te3_espresso.jpg【Photo】缶を数回シェイクして強引に泡立てたものの、高性能のエスプレッソマシンが作りだすキメ細やかなクレマの足元に及ぶはずもなく...(,,-_-)。 少しでも気分を出すため、ジノリのデミカップに移して味見した「午後の紅茶 エスプレッソティー」(写真左上)と「午後の紅茶 エスプレッソティー・冬のほろにがラテ」(写真右下)

 10月をもって製造を終了した「午後の紅茶 エスプレッソティー・アイスラテ」と交代で「冬のほろにがラテ」なる派生商品も登場。ミルク成分がより多いこちらのほうがよりマイルドで、商品名にある通り「カフェラッテ(シアトル系ではカフェラテ)」的な位置づけなのでしょう。

 3年前の春、料理研究家の栗原はるみ氏プロデュースという鳴り物入りで東京恵比寿に登場した「tea espresso HATEA ティーエスプレッソ ハッティー」は、紅茶用にチューニングしたエスプレッソマシンで渋みを抑えたコクのあるエスプレッソティーを出す紅茶専門店でしたが、あえなく2年あまりで閉店しました。

ocha_espresso.jpg コーヒーの飲み方としてニッポンでもすっかり市民権を得たエスプレッソではありますが、英国人やインド人が聞いたなら、さぞ驚くであろう紅茶のエスプレッソという大胆な発想が受け入れられるのかどうか、私には正直??です。

 そこに現れた紅茶のエスプレッソを凌駕する驚愕の第2弾は日本茶のエスプレッソ。寛政2年創業の老舗「京都 福寿園」が監修したサントリー「伊右衛門」シリーズの意欲作、その名も「Green ESPRESSO(グリーンエスプレッソ)」。

 茶摘みする1週間ほど前に覆いをかけてから収穫された渋みが少なく甘みのある「かぶせ茶」を高温短時間で抽出、石臼挽き抹茶をブレンドすることで、深いコクと長い余韻が楽しめるのだといいます。茶せんで豊かに泡立つように点(た)てる裏千家のお抹茶は、モノクロームにすればエスプレッソを連想させなくもありません。

ocha2_espresso.jpg サントリーGreen ESPRESSOは、ほかの伊右衛門シリーズとは違って、ペットボトル入りは存在せず、400g容量のボトル缶のみ。これにはちゃんと理由があるのでした。

 豊かな抹茶の香りを連想させるデザインのスクリューキャップには「上下に5回振ってから開けてください」との注意書きが。静置すると抹茶成分が底に沈殿するため、それを全体に混ぜるためと、表面に泡を立たせるためと推察。指示通りに5回シェイクした後にカップに注いでまず驚くのは、中身が見えるペットボトル入りでは恐らく誰も手を出さないと思われるビミョーなその色合い(笑)。

ocha3_espresso.jpg エスプレッソを名乗る以上、エスプレッソのようなトロリと濃厚で甘さすら感じる緑茶の風味を優先し、お茶自体の見た目にはこだわらなかったのでしょう。実際、香り高いお茶のうま味は十分に感じられます。パッケージングはマットな艶消しのブラックと鮮やかなグリーンを基調とする高級感あるデザインでまとめられており、なかなかのセンスを感じさせます。

 今回は、Espressoという商品名に飛びつかないよう、日本を訪れるイタリア人観光客に注意喚起する内容でした。「tè verde テ・ヴェルデ」とイタリアでは呼ばれる緑茶は、イタリアのみならず海外では多くの場合、砂糖を加えて飲まれます。少量のミルクを加える場合もあるようですので、紅茶や緑茶のエスプレッソを作ってしまう日本とて、エスプレッソの本場イタリアからすれば"お互いさま"といったところかもしれません。茶道を確立した千利休も「これは切腹ものじゃ」と苦笑いしていることでしょう。


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2011/09/11

2011年・世界チャンプバリスタが来仙

念力で呼ばれてしまいました(笑)
 @ La Casa del Caffe Bal Musette

 スペシャルティコーヒーの持ち味を存分に、かつ手軽に味わうことができる唯一のツール「Aeropress エアロプレス《Link to backnumber 》」を昨年10月に入手した「La Casa del Caffe Bal Musette ラ・カーサ・デル・カッフェ・バル・ミュゼット」を訪れた今日の午後。仙台市の北部郊外に店があるため、平日は行く機会に恵まれない店の赤い扉を開いたのは久しぶりのことでした。

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 オーナーの川口バリスタには内緒ですが、ほんの5分前までは水を汲みに行くつもりで泉IC付近のR4を北に向かって走行中だったのです。それが何故か突如として気が変わり、隠し味の塩が味の幅を広げるバニラアイスにエスプレッソを加えたアッフォガート・サーレを注文していました。

 「こちらからご連絡しようと思っていたところに、先ほどお見えになったので、驚いてしまいました」と川口さん。マカロンに限らず最近続いている言霊現象が逆の形で表れたのでしょう。エスプレッソマシンの使い手として超一流の川口さん。最近はテレパシーの遣い手としても修行を積んでいるのかも。

 念力を使って川口さんが私に伝えたかった内容は下記を参照願います。
 http://balmusette.exblog.jp/14516734/

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 今年6月、南米コロンビアの首都ボゴタで開催されたワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(以下WBCと略)で優勝したのは、中米エル・サルバドル出身のアレハンドロ・メンデス氏(当時23歳)。2000年の第1回モナコ大会以降、コーヒー生産国で初開催されたWBCで初めて消費国以外から優勝者が出たのです。

 通常、WBCの優勝者を招くには高額なギャランティが必要となります。アレハンドロは2001年にエル・サルバドルで死者1,149名・負傷者8,000名、150万人以上が被災した大地震が2度に渡って起きた際、日本から被災地に対して救援活動が行われた恩返しをする意味で、現在の勤務先である故国のカフェ「Viva Espresso」 の理解を得て報酬を求めずに来日するのだといいます。

 川口さんが念力で私だけではなく、世界チャンプまでも呼んだのかもしれない今回のチャリティイベントには、「コーヒー好きは皆友だち」を合言葉に集ったコーヒーショップの従業員、カフェオーナーから一般のコーヒー好きのメンバーが、東日本大震災の被災地に温かいコーヒーを届ける活動を展開した団体「Coffee Amigos (コーヒー・アミーゴス)」もサポートにあたります。

 Coffee Amigos にも参加し、大手コーヒー会社勤務時代に世界のコーヒー生産地を巡り、独立後の2008年には「Grand Cru Cafe グラン・クリュ・カフェ」なる新たなコンセプトの優れたコーヒー豆を発掘し続けるコーヒーハンター、Jose(ホセ)こと川島 良彰氏のセミナーも同日開催。WBCバリスタ世界チャンプの技とパフォーマンスにライブで触れることができるまたとないチャンス。プロフェッショナルのみならず、コーヒーを愛する方ならどなたでも歓迎とのこと。 Don't miss it!!
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アレハンドロ&ホセ川島ジャムセッション
日時:2011年9月27日(火)17:00~
会場:仙台コミュニケーションアート専門学校 第2校舎
    仙台市宮城野区榴ヶ岡4-11-20《JR仙台駅 東口より徒歩15分》
会費:5,000円 (収益はあしなが育英会の東北レインボーハウス建設資金に役立てられます)
定員:先着100名

◆お問合わせ・申し込みは
 musette@bal-musette.com に空メールを送信。送られてくるエントリーシートに必要事項を記入、再度返信でエントリー完了
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2011/05/07

La felicità di una tazza di caffè (コップ一杯の幸せ)

おいしさが溢れ出すカフェ・ラッテ。
えっ? 200円なの!?  @Cafe de Ryuban

 3.11東日本大震災では、暮らしに欠かせないライフラインが軒並み大きな打撃を受けました。仙台圏の都市ガスもその例外ではありません。地元最大のガス事業者である官営の「仙台市ガス局」だけで対応するには、余りに甚大な被害ゆえ、その復旧には、旭川から宮崎まで全国51のガス事業者で編成された延べ8万人に及ぶ復旧応援隊が、昼夜を問わず作業にあたりました。
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【Photo】店頭のケースにはシングルオリジン(=単一農園)やブレンドの厳選ビーンズ〈clicca qui〉がズラリ。装いを新たにしたCafe de Ryuban

 インフラが停止した地震直後の数日に及んだ急場をしのぐ間は、苦労して確保したカセットコンロや比較的復旧が早かった電気を熱源としたため、火力が強いガスの炎で調理した料理など望むべくもありませんでした。仙台では周辺部から復旧作業が行われたため、中心部にガスの火が戻るまでには、ほぼ1ヵ月を要したのです。流出した家屋を除く復旧対象の約32万9千軒について、5月4日までに開栓作業が完了しました。駆けつけて下さった復旧隊の皆さん、本当にお世話になりました。

 到底3月とは思えぬ寒さが続き、電気も戻らぬロウソクのもとで、口にできたにしても、せいぜいおにぎりやカップラーメンだった震災発生から一週間を経た当時、営業を再開した飲食店で頂く温かい食事が、どれほど疲弊したココロを癒してくれたかしれません。ガスの停止によって、通常営業ができないまでも、一杯の香り豊かなカッフェで、ささやかな憩いのひと時を提供してくれたのが、昨年11月に「秋のカプチーノ」でご紹介した「Cafe de Ryuban カフェ・ドゥ・リュウバン」です。

ryuban_marzocco.jpg【photo】カフェ・ドゥ・リュウバンでは、ドリップコーヒー以外のエスプレッソ系ドリンクは、プロフェッショナルユースの最高峰マシン、イタリア製の「La Marzocco GB-5」で抽出する

 コーヒー豆の焙煎に使われる焙煎機(ロースター)の熱源はガスが主力です。そのため、自家焙煎を行うカフェでは、新鮮な自前のコーヒー豆がほとんど提供できなくなりました。私がコーヒー豆の調達をしているショップのひとつカフェ・ドゥ・リュウバンでも、通電後は電動のエスプレッソマシンLa Marzoccoが健在でしたが、ガスの炎が消えた間は、ショップ自ら焙煎したビーンズが提供ができない状態となりました。

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【photo】震災発生以降、紙コップで提供されるようになったカフェ・ドゥ・リュウバンのカフェ・ラッテ。ベースのエスプレッソはLa Marzoccoで抽出したスペシャルティなブレンデッド・ビーンズ、ミルクのクレマには若芽をかたどったラテアート。200円という低価格がにわかに信じ難いハイクオリティな一杯。こりゃ参りました(右写真)

 「(あらかじめ挽いたコーヒー豆がパック詰めされた)カフェポッドなど、カッフェ好きにとっては邪道のツールだっ!!」と10年以上使っているDe'Longhi の普及版エスプレッソマシン「Bar14」と共に、今や自宅カッフェのメインツールとなった「AeroPress エアロプレス《Link to back number 》」用の豆を購入するため、Cafe de Ryuban に伺ったのが3月末。

blackburn_tanzania.jpg【Photo】タンザニア・ブラックバーン農園のシングルオリジン(深煎り)1,260円/200g

 そこではスペシャルティコーヒーの我が国における草分けで、國井 竜士オーナーの師匠・堀口 俊英氏が代表を務める「珈琲工房HORIGUCHI 〈Link to website〉」で焙煎した豆を販売していました。以前は店内でコーヒーを頂けるテーブル席があったのですが、かつてのカフェスペースは豆の選別や発送などを行う作業場に。店頭はコーヒー豆とテイクアウトで提供するドリンク類(日替わりドリップコーヒー、ウインナー・コーヒー、エスプレッソ、カフェ・ラッテ)の販売カウンターというスタイルに変わっていました。

 通常はネット通販でしか入手できないホリグチコーヒーのビーンズが入手できるというので、深煎りのフレンチロースト(1,115円/200g)を購入。豆の持ち味が存分に味わえるAeroPressで淹れたカッフェの期待に違わぬ美味しさはモチロンですが、私が驚いたのがテイクアウト限定で提供されるドリンク類のコストパフォーマンスです。

 紙コップで提供される「カフェ・ラッテ」と生クリーム入り「ウインナー・コーヒー」は200円、日替わりドリップコーヒー「本日のコーヒー」とデミタスサイズの「エスプレッソ」、エスプレッソをお湯で薄めた「エスプレッソ・アメリカーノ」に至っては、缶コーヒーより安い100円という超・お手軽価格。私の定番だったふんわりとしたフォームドミルクを加えたイタリアンスタイルのカプチーノはメニューから消えていましたが、同じエスプレッソベースにミルクを加えたカフェ・ラッテをオーダーしました。

cuore_ryuban.jpg【photo】ココロなごむハート形のラテアート。ちょっと幸せになれる土曜朝のカフェ・ラッテ

 ガスが復旧した4月13日以降は、無事クオリティの高い自家焙煎に戻り、ベースとなるエスプレッソは、4年来使って扱いを熟知した2連式のエスプレッソマシン「La Marzocco GB-5」で淹れた一級品。しかもラテアートまで施されています。滑らかな陶器製カップで味わう本来のスタイルではないにせよ、豆のケース脇にはスツールも置いてあるので、イタリアの「Barバール」感覚で淹れたてを店内で頂くことも可能です。13年ぶりといわれるコーヒー生豆価格の高騰が続く中、たった1コインないし2コインで贅沢な気持ちに浸れます。 

 昨日、國井さんのブログでリリースされましたが、Open以来10年続けてきたカフェをやめ、今後はコーヒー豆のローストと小売をメインにしてゆくとのこと。しかしながら震災発生以降導入したドリンクのテイクアウトは続けるそうなので、まずはひと安心。豆のクオリティからすれば、恐らくは仙台のみならず、日本屈指のコストパフォーマンスのコーヒーを味わえるショップへと変貌したCafe de Ryuban。 決して損はさせません。お試しあれ。

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Cafe de Ryuban カフェ・ドゥ・リュウバン
住所:仙台市青葉区広瀬町4‐27‐102
Phone:022-264-4339
URL:http://www.cafederyuban.com 
営:10:00-19:00 年末年始・お盆を除き無休
ブログ:Ryubanの日記
     http://blog.livedoor.jp/cafederyuban/

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2010/11/06

秋のカプチーノ

アプリコットが香る秋の一杯 @ カフェ・ドゥ・リュウバン

ryuji_kunii.jpg 毎年オーナーの國井 竜士さん(39歳)が生産地を訪れ、自分の目と舌で選んだコーヒーを提供する「Cafe de Ryuban カフェ・ドゥ・リュウバン」(仙台市青葉区)。山形県寒河江市出身の國井さんが20代の頃、当時はまだ日本でほとんど流通していなかったスペシャルティコーヒーの魅力と出合ったのが、コーヒーに関するさまざまな業務を手掛ける東京の「珈琲工房HORIGUCHI」〈Link to website 〉でのこと。

【photo】ソフトな語り口の國井 竜士さん。言葉の端々からコーヒーにかける熱い情熱がうかがえる

 カフェ・ドゥ・リュウバンでは、生産者、精製加工方法、船積み時期など履歴がしっかりした世界最高水準の生豆を、ワインで用いられるのと同じ低温管理可能なReefer コンテナで輸送し、自家焙煎したスペシャルティコーヒーを味わうことができます。これはスペシャルティコーヒーの我が国におけるパイオニア、堀口 俊英氏(珈琲工房HORIGUCHI代表取締役)のもとから巣立った人々が加盟する Leading Coffee Family の頭文字をとった団体「LCF」が中間業者を通さず直接買い付けたもの。ともすると生産者が弱い立場に置かれがちなコーヒーの生産現場が存続可能な取引条件で信頼関係を築いているといいます。

crops_st.catalina.jpg【photo】空調管理されたカフェ・ドゥ・リュウバンの貯蔵室には、世界中から船便で届く麻袋に入ったさまざまな生豆が山積みされる。國井さんが加盟するLCF向けのロットであることを示すマークの入ったサンタ・カタリーナ農園産コーヒー(写真右)

 例えば、タンザニアのブラックバーン農園。アフリカ最高峰キリマンジャロ(5,895m)山麓、標高1,600m以上の高地ゆえ、昼夜の寒暖差が柑橘系の酸と豊かなコクを生みます。そして農園内に古い礼拝堂が建つ中米グアテマラのサンタ・カタリーナ農園。その芳醇な香り+酸+コクのバランスは、火山灰土壌と1,600m~2,000mという高地性気候がもたらします。さらに南太平洋に浮かぶ赤道直下のパプア・ニューギニア西部山岳州のシグリ農園。熱帯性の潤沢な降雨量と昼夜で15℃ほどもある大きな寒暖差は、コーヒー栽培に理想的な環境です。そこで栽培され、手摘みされた顆粒は、丹念に洗浄されてから天日干しされ、特徴的な甘味のあるコーヒーが生産されます。
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【photo】9 年前の開店以来、愛用している焙煎機。廃熱効率を高めるファンを排煙部に加えるなど、独自に細部の改良・チューニングを加えてある

 こうした世界最高水準のシングルオリジンは、豆の香味をそのまま楽しむならストレートでどうぞ。個性を掛け合わせることで新たなキャラクターを生み出すブレンドは、焙煎の強い順に「イタリアン」「フレンチ」「シティロースト」といった5種類の定番ほか、春には「そよ風」冬の「こもれ日」など季節ごとにバリエーションで登場。豆の個性をストレートに表現する特徴的な円錐形をしたKONO 式ドリッパーで提供されます。ご自身はショップ奥に設置された焙煎機の前でローストやブレンド作業に割く時間が多く、仕切りのガラス越しに姿をお見かけすることのほうが多いかもしれません。堀口門下生として、師匠同様にコーヒーの楽しみを一般向けに伝授するセミナー「おいしい珈琲教室」も定期的に開催しています。

capucino_ryuban.jpg【photo】私の定番、キメ細やかなフォームドミルクを加えたカプチーノ(500円)。猫舌の方でもOKな王道のイタリアンスタイル

 コーヒーに関しては、(「も、」と言ったほうが正確か?) 完全にイタリア人的嗜好ゆえ、國井さんの店ではエスプレッソかカプチーノを頂くことにしています。その香味あふれる一杯は、仙台では数少ないフィレンツェ製業務用エスプレッソマシン、La Marzocco ラ・マルゾッコで抽出したもの。カプチーノには美しい文様を描くラテアートが施されます。その豆はミルクに負けない強さを持ったタンザニア・コロンビア・ブラジル・ケニアなどからなる味わい深いエスプレッソ・ブレンドです。

 品質低下を招かぬよう、温度・湿度を管理した保管庫でストックされた生豆は、こまめに焙煎し、新鮮な状態で店頭に並びます。カフェ・ドゥ・リュウバンでは、定番の豆やドリンクに加え、季節限定のメニューを提供しています。9月末から11月末までは「秋のカプチーノ」なるアレンジコーヒーを頂くことができます。

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【photo】ココアパウダーのモミジが秋の深まりを感じさせる秋のカプチーノ(600円)。カップの底にはたっぷりのアプリコットが沈殿している。意外な組み合わせだが、これがまたクセになる

 これは、カプチーノにアプリコットジャムとチョコレートシロップを加えた國井さん考案のオリジナル。焙煎機のかたわらにあるデスク上には、國井さんが豆の配合や味のイメージなどのアイデアを書きとめたさまざまなメモが置かれています。それはあたかも舞い降りたインスピレーションを描いた画家のデッサン画のようでありました。12月からは昨年好評を得た「ユズのカプチーノ」が登場するとのこと。こうして飲み物で季節の移ろいを実感するのもいいですね。

◆ YouTube に流出した映像を秘匿した某国政府とは違って、快く情報開示された秋のカプチーノ・オリジナルレシピは以下の通り

 1:コーヒーカップにアプリコットジャム15 g とチョコレートシロップ3~5 g を入れる
   ※相性を試した結果、ジャムはST.DALFOURが最適。チョコレートシロップはHERSHEY'S
 2:エスプレッソ(シングル・25cc~30cc)を淹れ、カップに注ぐ
 3:泡立てたフォームドミルク120ccを加える
 4:お好みでカルダモンを加える
 
Picture of Reefer by Danny Cornelissen from the portpictures.nl

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Cafe de Ryuban カフェ・ドゥ・リュウバン

住所:仙台市青葉区広瀬町4‐27‐102
Phone:022-264-4339
URL:http://www.cafederyuban.com 
営:10:00- 20:00 第2水曜定休
ブログ:Ryubanの日記
     http://blog.livedoor.jp/cafederyuban/
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2010/10/10

期待度高し、AeroPress

Not Clover, but Clever. it's AeroPress.
スペシャルティ・コーヒーの醍醐味を手軽に味わう新世代ツール
「AeroPress エアロプレス」

What is AeroPress ? より続き 

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 ヨーロピアンスタイルの深煎り豆は表面が黒光りしていますが、あの光沢を生み出すのがコーヒーの香りと旨味が溶け込んだコーヒーオイルです。コーヒーの抽出法で最も普及しているペーパーフィルターでは、コーヒーオイルまで漉し去ってしまいます。そもそもペーパーフィルターではエスプレッソのように蒸気の圧力で一気に抽出する豆の持ち味を存分に味わう凝縮感を出せません。挽きたての新鮮な豆でもペーパーの匂いがコーヒーに移るリスクも出てきます。

【photo】 4分の抽出時間を要するフレンチプレスは、余分な雑味を生むリスクを伴う

 高品質のスペシャルティコーヒーに適した抽出器具として推奨されてきたフレンチプレスは、19世紀半ばには存在したという原型にもとに1929年にミラノ出身のアッティリオ・カリマーニとジュリオ・モネッタが特許を取得したものです。フレンチプレスと呼ばれるようになったのは、1958年にイタリア人実業家ファリエッロ・ボンダニーニによって改良型が発売され、それが1960年代にフランス家庭で広く普及したことによります。

aeropress_00.jpg 【photo】 これがAeropress の主要パーツ。川口バリスタが推奨するのは、取扱説明書とは上下逆のこのセッティング

 家庭ではBialetti に代表されるマキネッタ(モカポット)《Link to backnumber 》 やカフェ・ナポレターナ 《Link to backnumber 》で、バールではプロ仕様のマシンで香り豊かなエスプレッソを楽しむ国イタリアでではなく、フランスで普及したがためにイタリアンプレスとはならなかったのですね。イタリアでは空港にあるカフェでもレベルの高いエスプレッソを飲むことができますが、パリのシャルル・ド・ゴール空港でマシン抽出されたエスプレッソの水っぽさには、ほとほと閉口しました。

aeropress_01.jpg【photo】上写真と同じ天地逆セッティングで抽出準備に入る川口バリスタ

 エスプレッソマシン、モカポット、フレンチプレスはいずれも細かい穴やメッシュ状の金属フィルターを通してコーヒーを抽出するため、極細挽きの豆ではコーヒーに粉っぽさが出ます。蒸らしを含めて4 分程度の抽出時間を要するフレンチプレスは、不快な苦味や酸味が入り混じった雑味が感じられることもあります。ゆえにアメリカンに代表される浅煎り豆を荒挽きしたあっさりとした仕上がりを好む方は慣れ親しんだペーパーフィルター派が多いようです。


aeropress_02.jpg 【photo】まずは挽いたコーヒー豆15g(一人分)をいれ

 真空状態のシリンダー内でコーヒー抽出を行う独自のバキュームプレスによって、アフターの重ったるさが無く、スペシャルティコーヒーの持ち味をくっきりと描き出してみせるプロ向けマシン、Clover 1s は、2008年に Starbucks が製造元のClover Equipment 社を買収した今となっては、1台$1,100 という価格もあって、プロのバリスタに普及する可能性が摘まれてしまいました《Link to backnumber 》。そこに登場した救世主が、2005年に米国の発明家アラン・アドラー氏によって開発されたコーヒープレス器具「AeroPress エアロプレス」です。

aeropress_03.jpg【photo】 煮沸後80℃まで湯冷まししたお湯を200cc注ぐ

 1984年にアドラー氏が開発したドーナツ型のフライング・リング「Aerobie® Pro Ring」は、406mという飛行距離の世界記録を樹立しています。スタンフォード大学工学部で Aero dynamics (=空気力学)の講師を務めるアドラー氏が、AEROBIE 社を設立後の2005年に開発したのがAeroPressでした。空力の専門家がなぜにコーヒー抽出の分野に進出したかは謎ですが、開発当初は、フライング・リングと同じアウトドア用品を扱うショップで売り出されました。それがスペシャルティコーヒーの世界で認知が遅れる原因となりました。

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 畑違いの発明家が編み出したシンプルな構造の道具にいち早く注目した人こそ、「What is AeroPress ?」でご紹介したノルウェー・オスロのカフェ「Tim Wendelboe 」のオーナーバリスタ、ティム・ウエンデルボーでした。2004年の世界バリスタチャンピオンシップで優勝したトップバリスタは、空気力学の専門家が生み出した抽出ツールにコーヒーの新たな可能性を見出したのです。

【photo】コーヒーにお湯を行き渡らせるイメージで、静かにお湯全体をかき混ぜる

 今年6月、エアロプレスの抽出技術を競う世界大会が開催されたロンドンに乗り込み、世界最高峰の技を見てきたカフェ・バルミュゼットの川口 千秋バリスタ。その言葉を借りれば、最も Easy に、Quick に、Cheap に Clover 1s のクリアな味を再現できるのが、AeroPress なのだといいます。バルミュゼットでの販売価格が4,000円そこそこという比較的手頃な価格、簡単な抽出法、後処理も楽チンと、三拍子揃ったそれは、確かに魅力的なツールに映ります。川口さんが淹れたカップの味を確認、これを逃してはClever (=賢い)な選択ではあるまいと購入を即断したのでした。
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【photo】 円形のペーパーフィルターを装填したスクリューキャップを装着した状態

 六角形のパッケージに収まった本体を構成するパーツは、口径60 mm ほどの透明な樹脂製シリンダー2 種とペーパーフィルターを装填するスクリュー式フィルターキャップだけと、極めてシンプル。付属品はお湯を注いでコーヒーを撹拌する専用棒、メジャースプーン、円形のペーパーフィルターなど数点のみ。英文の取扱説明書では、シリンダーのパーツをChamber (=外筒・空洞) と Plungner (=ピストン状の突き棒)と表現しており、その構造は注射器と似ています。エアロプレスというだけに、手押しの自転車用空気入れと基本構造は同じです。Chamber の先端に装着する黒いスクリューキャップには、3 mm 大の穴が97個空いており、側面には等間隔で17 の四角い穴が穿たれています。

aeropress_06.jpg 【photo】 本体をひっくり返してカップにセット、Plungner 部分に手で圧力をかけて中に押し込む。この際、横から見ると、熱可塑性エラストマ製の黒いゴム状の先端部分とお湯の間にある空気層が液面を押し込むのが分かる〈clicca qui

 開発当初のモデルにはポリカーボネートが本体素材として使われていました。ポリカーボネートには、FDA 米国食品医薬品局が生態系や健康への影響を指摘する内分泌かく乱化学物質ビスフェノールA(略称:BPA)が含まれており、それが高温のお湯に溶解することが知られています。そのため、世界各国の安全基準に準拠させるため、2009年8月以降の現行モデルには、安全性が確認されているコポリエステル樹脂が使われるようになりました。Plungner 先端部分の素材は、ゴムのような弾性を備えた熱可塑性エラストマ、フィルターキャップなどの黒いパーツはポリプロピレン製となります。(注:バルミュゼットで取り扱うのは後者)

【photo】抽出を終えたらキャップを外し、ペーパーフィルターとコーヒーをダストボックスへ。キャップの側面に穿たれた17の四角い空気穴〈clicca qui 〉から逃げ出す空気と共に、旨味と香気成分が溶け込んだコーヒーオイルがカップの中に漏れ出すのでは? というのが、川口バリスタの見解

 近未来に予測される日本での本格デビューに備え、取扱説明書をもとに川口氏が推奨する抽出法をご紹介します。空気の圧力をもってしてコーヒーを抽出するその段取りは、至って単純明快なものです。


How to AeroPress≫ 
● コーヒー豆: 一人分15g (ペーパードリップと同等か、わずかに細か目に挽く)  
● お湯: 80℃のお湯を200cc (本体には1~4 カップまでの湯量を示すマーキングが施されていますが、後述する注意点2の理由により、メジャーカップ使用がベター。苦味や酸味の抽出が強くなるため、沸騰したお湯は不可)
● 所要時間: 1 分 (本体をカップにセットし、お湯をゆっくりと注ぎ、あらかじめ入れておいたコーヒー豆を10秒ほど蒸らしてから、20秒~30秒でプレスし終わるまで)
● 抽出を終えたら、スクリューキャップをはずし、ペーパーと粉をワンタッチでポイ。キャップとシリンダー内をさっと水洗い。 以上。

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注意点1 : 川口氏の横顔が写る前回紹介した動画に登場する英国「Has Bean Coffee」社のスティーブ・レイトン氏は、せっせと粉の撹拌を行っていますが、これはNG。お湯を粉全体に行き渡らせるイメージで、あくまでgentleに 

注意点2 : スティーブ・レイトン氏は取扱説明書通りに、ペーパーフィルターを装填したキャップを下にしてお湯を注ぎます。カップのクオリティを追求する川口バリスタが推奨するのは、器具を上下逆にセットし、挽いた豆を入れてからお湯を注ぐ方法。これによって、蒸らしが不十分なために濃度不足のコーヒーがカップに自然落下することが防げます。

【photo】 今日バルミュゼットで味わったAeroPress で抽出したシングルオリジンは、中米エルサルバドルのサンタ・リタ農園産のアラビカ豆100%の一杯。原種のティピカ種から突然変異で生まれたこのブルボン種は隔年収穫のため、産出量が限られる稀少な豆。強すぎない自家焙煎によって、豆本来のピーチなどのフルーティさ、フローラルな持ち味が際立つ。
 フカフカのクリーミーなキッシュとパニーニサンド〈clicca qui 〉を食べているところに「ところで新たな面白い話がありましてね」と言いながら、にじり寄ってきた川口バリスタ。昨日お目見えしたという新たなツールの説明を興味津々で聞くワタシ。次々と入荷するネタに、「Caffè カッフェ」だけではなく、いっそ「caffè Bal Musette」 カテゴリーを設けようかしらん、という思いが去来するのだった

 ひと足早く火がついた欧州と米国での需要が逼迫しているためか、AeroPress はAmazon.co.jp ですら品切れで、日本では入手困難な状況にあります。私が知る限り、今のところ国内で唯一、この最新にして最強のツールを扱うのはバルミュゼットのみ。ペーパーフィルターが350枚セットされたパッケージは4,380円。補充用のペーパーフィルターは680円で入手できます。当面の在庫確保は問題なしとのこと。 善は急げっ!! 

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la casa del caffè Bal Musette カフェ バル ミュゼット
住 所 : 仙台市泉区桂4-5-2
Phone / Fax : 022-371-7888
営 : 11:00~22:00 (日祝~19:00) 木曜休
URL :http://www.bal-musette.com  
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2010/09/05

What is AeroPress ?

欧州を席巻する新発想のコーヒー抽出器具
AeroPress エアロプレス

 低価格が売りのチェーン店とシアトル系コーヒーショップの台頭で、昔ながらのサイフォンやネルドリップの"珈琲"を飲ませる喫茶店は今や絶滅危惧種となりました。シアトル系コーヒーショップがエスプレッソと共に日本に概念を持ち込んだのが、スペシャルティーコーヒーと呼ばれる産地の個性が現れた高品質なコーヒーです。ウイスキーにおけるブレンドvsシングルモルトの構図と同様、複数の産地の豆をブレンドするのではなく、産地や農場ごとの個性を表現した単一産地のシングルオリジンと呼ばれるコーヒーが注目を集めています。世界で流通する生豆の中で、スペシャルティーコーヒーとしてランク付けされるのは5%にも満たないため、稀少性が高い豆です。

bal_mesette_kenya.jpg 【photo】 ケニア最良のコーヒー産地、ケニア山南麓のエンブ高原地域にあるGakundu Farmers Cooperative Society ガクンドゥ農協〈Link to website〉産のシングルオリジンコーヒー。仙台市泉区桂のカフェBal Musette にて

 昔ながらの喫茶店のカウンターで客がマスターと語らう光景は、もはや過去のものとなりつつあります。物事の移ろいが目まぐるしく人間関係が希薄になる一方の日本とは違って、人同士の結びつきが強いイタリア社会にあって、いかなる時代にあっても情報交換や絆を確認する場として滅びることがないBar バールについては、かつて不変の存在意義について語りました 《Link to back number》。

 バールの店主やカッフェをサービスする従業員「Barman バールマン」を指すイタリア語「Barista バリスタ」という言葉はある程度日本に浸透したように思えます。これはStarbucksやTully's など、エスプレッソベースのコーヒーで日本に進出したシアトル系コーヒーショップがこの言葉を使用したことによるものでしょう。呼称は同じでもテイクアウトが主流のシアトル系チェーン店と、店内である程度の時間を過ごす常連客へのきめ細やかな接客が求められるイタリアのプロフェッショナルなバリスタとでは、求められる職能要件が大きく異なるように思われます。

WCC-2006_Berne.jpg【photo】2006年、スイスのベルンで開催されたカップテイスターズ・チャンピオンシップ。8分の制限時間内に、3つのカップの中で異なるコーヒーを言い当てる正確さと速さを競う競技を8セット行う。競技者は大体5秒以内にはカップごとのテイスティングを済ませなければならず、その表情は真剣そのもの © Luca Siermann, Stuttgart/Germany 2006

 米国と欧州のスペシャルティコーヒー協会がバリスタの技能向上を目的に2000年から毎年開催しているのが、エスプレッソやカプチーノの抽出技能とスマートな所作を競うワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(以下、WBCと略)〈Link to website〉と、味利き能力を競うカップテイスターズ・チャンピオンシップ〈Link to website〉、カプチーノの芸術性を競うラテアート・チャンピオンシップ〈Link to website〉などの各種競技会です。変貌著しい世界のコーヒーシーンの最先端が垣間見れるこれら競技会においては、エスプレッソ発祥の地イタリアよりもデンマーク、ノルウェーといった北欧諸国や紅茶のイメージが強い英国の台頭が目に付きます。

2008-WLC-CP-5865.jpg【photo】2008年、デンマークのコペンハーゲンで開催されたラテアート・チャンピオンシップより。8分の制限時間内にカプチーノのミルクフォームやカフェラッテの上にさまざまな模様を描き出し、味と技能、独自性などを競う。ロンドンで開催された今年の大会には世界各国から33名のバリスタが出場、日本代表の村山 春奈さんが、日本人初となる優勝の栄誉に浴した© Luca Siermann, Stuttgart/Germany 2008

 WBCでは、フィレンツェのLa Marzocco 社製のエスプレッソマシンを使用します。バリスタに支持される高い機能性と安定性を兼ね備えたこのマシンは、ハンドメイドされるがゆえにエスプレッソマシンのRolls-Royceと呼ばれるのだそう。(もう一方のイタリアの雄、La Cimbali のエスプレッソマシンの例えに用いられるFerrari はそちらに譲るとして、華のあるそのフォルムからすれば、重厚な英国車ではなく、妖艶な色気が漂う Maserati がよりふさわしい、と私は思う)こうした競技会の一角に2008年から新たに加わったのが、World Aeropress Championships です。この競技会の特徴は使用するコーヒーの抽出器具にあります。

 スペシャルティコーヒー協会主催の各競技会が行われた今年の6月23日・24日の2日間、ロンドンで24名の競技者が参加した World Aeropress Championships が開催されました。大会を主催したのはノルウェーのカフェTim Wendelboe〈Link to website〉。首都オスロの住宅地の一角にあるこの小さなカフェは、過去10回のWBCで多くの入賞者を輩出しています。審査にあたったのは2004年のWBCで優勝、翌年にはカップテイスターズaeropress.jpg・チャンピオンシップの覇者となったティム・ウエンデルボー、ロンドンのSquare Mile Coffee Roasters からは、2009年のWBCで優勝したグィリム・デービスを育て、カップテイスターズ・チャンピオンシップで2007年に優勝したアネット・モルドヴァら、スペシャルティ・コーヒーの世界ではいずれ名の知れた8名の面々。

【photo】「これまで所有した中で最良のコーヒーメーカー」「人生で味わった最高のコーヒー」「フレンチプレスより早く、より美味しく、信じられないほどスムーズなコーヒー。後片付けも簡単」・・・。いささか大げさではないかというユーザーの賛辞がいくつも列記された「AeroPress エアロプレス」のパッケージ。さて、真偽のほどは?

 今年で3回目となる競技会場に仙台市泉区から乗り込んだのが、競技会の模様を伝える下記動画の画面左下にチラリと横顔が見えるカフェ「Bal Musette バル ミュゼット」のオーナーバリスタ、川口 千秋氏です。先日バル ミュゼットを訪れた際、六角形のパッケージに入った「それ」を目にしました。「日本で今コレを扱っているのはウチだけかも...」という所有欲を激しく突き動かすマダム・明子さんの一言に加え、川口バリスタが目の前で使い方を実演してみせた「AeroPress エアロプレス」で淹れたシングルオリジンコーヒー、ガクンドゥ農協産ケニアの持ち味と個性をくっきりと描き出すポテンシャルの高さに購入の意思を固めた次第。

  

 上記動画では今年のWorld Aeropress Championships におけるAeroPressを使用してのコーヒー抽出の模様が記録されています(仕上げに炭酸水製造具SodaStreamで作った炭酸水を少量加える演出がなされる)。飛行距離の世界記録を持つフライングディスクAerobie を設計した米国人発明家アラン・アドラー氏が開発し、欧州のバリスタたちが熱い視線を注ぐこの新発想のコーヒープレスツールについて、次回さらに迫ってみます。
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2010/06/27

食べるコーヒー「エスプレッソ・ドライ」

エルブジ × ラヴァッツァの新食感を仙台で
 @ バル・ミュゼット

 華麗なカフェ文化が息付くトリノを代表するコーヒー会社と、世界で最も予約が取れないといわれるレストランがコラボした史上初の食べるエスプレッソ「Espesso エスペッソ」にインスパイアされた新メニュー「エスプレッソ・ドライ」が、仙台市泉区桂のカフェ「Bal Musette カフェ・バル・ミュゼット」に登場しました。直訳すれば乾燥したエスプレッソといったところでしょうが、フリーズドライのインスタントコーヒーなどでは決してありません。

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 変化してやまないコーヒーの最先端を求めてオーナーバリスタの川口 千秋さんが昨年トリノを訪れた際、国内で半数近くのシェアを占めるイタリア最大のコーヒー会社「Lavazzaラヴァッツァ」がプロデュースする「San Tommaso 10 サン・トンマーゾ・ディエチ【Link to web site】」に立ち寄りました。1895年に創業した地番をそのまま店名にしたそのカフェレストランで出合ったのが、2012年から2年間完全休業することを今年1月に宣言し、波紋を呼んだスペイン北部カタルーニャ州「El Bulli エル・ブジ」のオーナーシェフ、フェラン・アドリアとLavazza が2002年に共同作業で創作したムース状の食べるコーヒー、Espesso エスペッソです。

【photo】イタリア・スペインの合作による史上初の食べるコーヒー「èspesso エスペッソ」。エスペッソ・カップチーノ(上写真)とエスペッソ・マッキアート(下写真)。この通りどちらもカップを倒そうと、上下逆さまにしようとも大丈夫

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 Espresso エスプレッソとイタリア語で「濃厚な」を意味する言葉 spesso スペッソを掛け合わせたEspesso は、亜酸化窒素入り専用ボンベに封入したエスプレッソに独自の調合を施し、ムース状にしたもの。さまざまな食材をムース状に加工する技術Espuma エスプーマは、奇才フェラン・アドリアが開発した調理法として知られます。Lavazza 直営のSan Tommaso 10 では、穴のあいた専用のスプーンと共にèspesso cappuccino エスペッソ・カップチーノ、èspesso macciato エスペッソ・マッキアート、èspesso alle spume aromatizzate エスペッソ・アッレ・スプーメ・アロマティザーテという3種類の味付けで楽しむことができます。

espresso_dry.jpg Bal Musette では、Lavazza の èspesso cappuccino を再現したスペイン語で「泡」を意味するEspuma 状の生クリームとエスプレッソをハーフ&ハーフにして「エスプレッソ・ドライ」という名前で提供しています。取っ手が三日月のような曲線を描く特徴的なフォルムのグラス製オリジナルカップは、五感でスペシャルティ・コーヒーの世界を楽しんでほしいと願う川口さんが、仙台市青葉区定禅寺通にショップを構えるガラス工房スガハラに発注して誕生したハンドメードのBal's table バルズテーブルと呼ばれるラインです。

【photo】ガトーショコラ(350円)のディップとしてもピッタリなエスプレッソ・ドライ(写真奥)

 川口さんによればコーヒーの味を凝縮した濃厚なエスプレッソにふわっとした食感とクリーミーさが加わったエスプレッソ・ドライは、エスプレッソが苦手だという方にも好評を博しているといいます。カッフェ同様に並外れて美味しいキッシュやフォカッチャが頂けるランチ(ドリンク付 980円)のドルチェとして、またはガトーショコラ(=トルタ・ディ・チョコラータ)のディップソース代わりとしてのみ、今のところは提供しています。今後は単品メニューとしてエスプレッソ・ドライを独立させることも検討しているそうです。

freddo_shakerato.jpg 【photo】バル ミュゼットのフレッド・シェケラート(650円)

 世界最高のレストランとの呼び声が高いエルブジのエッセンスを取り入れた独創的な固形カッフェと共に、これからの暑い季節にオススメしたいバル ミュゼットの新メニューが、イタリア伝統のCaffè freddo カッフェ・フレッド(=冷たいエスプレッソ)のひとつ「Freddo Shakerato フレッド・シェケラート」。イタリア式にほろ苦さと同時に甘さをしっかりと表現するため、エスプレッソにグラニュー糖を加え、氷と共にシェーカーに入れて10秒ほどshakerare(=シェーク)したものです。

 二粒のコーヒー豆を浮かべた細やかで分厚いクレマに覆われたフレッド・シェケラートは、自ら産地に出向いて最高品質の豆を直接買い付け、焙煎・ブレンドまで一貫して行う稀少な店、青葉区広瀬町の「Cafe de Ryuban カフェ・ドゥ・リュウバン」のカプチーノと並ぶ私の愛飲アイテムになってくれそう。ゆっくりと喉を潤しながら落ちてゆく感覚と濃厚なカッフェの豊かなアロマが、けだるい夏の日盛りを甘美な至福の時にきっと変えてくれることでしょう。

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la casa del caffè Bal Musette カフェ バル ミュゼット
住所:仙台市泉区桂4-5-2
TEL / FAX:022-371-7888
営 : 11:00~22:00 (日祝~19:00) 木曜休
URL http://www.bal-musette.com

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2008/04/27

長いものには・・・

StarbucksがClover®を買収

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【Photo】日本のカフェでは第一号の「Clover 1s」を操作する「Bal Musette カフェ バル ミュゼット」の川口バリスタ 

 資本の論理はスゴイ。そんな出来事が最近ありました。2004年に二人の男性が米国シアトルで起業したベンチャー企業「Clover Equipment クローバー・イクイップメント社」が、コーヒーショップを世界規模で展開する大手チェーン「Starbucks スターバックス」に買収されたのです。「え? 何のこと?? 」と、仰る方もおいででしょう。そんな方はまずこちらのバックナンバーをチェック願います。米国シアトルに本拠を置くスターバックス社がこの企業買収に関して発表したのは先月19日のこと。私が仙台市泉区桂にある「la casa del caffè Bal Musette カフェ バル ミュゼット」でクローバー社製のマシン「Clover 1s」で淹れたコーヒーと出合ったのが昨年11月。どうやらその未体験のコーヒーの味に魅せられたのは、私だけではなくスターバックス社の会長兼CEO(最高経営責任者)ハワード・シュルツ氏も同様だったようです(笑)。
《参考資料》 2008年3月19日付 Starbucks Coffee Company のニュースリリース(英語)

 変貌著しいコーヒーの世界の最先端を仙台に居ながらにして体験できるというので、皆さんにもぜひ味わって頂こうと、そのコーヒーの美味しさを当「あるもん探しの旅」でご紹介したのが、バックナンバーの通り昨年11月30日のことです。"コーヒー抽出法の革命"と世のバリスタ達が注目するClover 1sは、バル ミュゼット以外には、当時は焙煎業者に2台しか日本に上陸していませんでした。その後日本に2台ほどが導入されましたが、スターバックス社の発表によると、同社が独占的にClover 1sを国内外の店舗に供給してゆくようです。スターバックスでは、シアトルとボストンの数店舗にClover 1sが導入されたとのこと。すでに導入済みのバル ミュゼットほか一部の例外を除いて、日本でも同社のチェーン店でClover®社のマシンで淹れたコーヒーが遠くない将来、飲めるようになるかもしれません。

bal_musette_nicalagua.jpg【Photo】 川口バリスタがオススメの「ニカラグア・リンダ・ビスタ」をClover 1sで淹れた一杯

 記者発表の場に同席したクローバー・イクイップメント社の創業者の一人ザンダー・ノスラー氏は「Coffee is as complex, rich and distinctive as fine wines.(コーヒーは素晴らしいワインのように複雑で豊かで特別なもの)」と語っています。この点に関しては激しく同意しますが、世界最大手のコーヒーチェーンの傘下に加わる決断が、ノスラー氏に幸福のクローバーをもたらすかどうか、厳しい豆の選択眼と卓越した技能を備えたバル ミュゼットの川口バリスタが丁寧にサーブするコーヒーを飲みながら、ふと思った休日の午後でした。

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2008/03/06

うまさにひっくり返る「カッフェ・ナポレターナ」

先週月曜日に自宅のパソコンが故障したため、更新が滞ってしまいました。ハードディスクを交換して処理が早くなったPCの作動のように、ブログの更新もサクサクと行きたいところですが、さて??

薫り高きナポリ式コーヒーポット「Napoletana」

ALESSI_Napoletana.jpg
【PHOTO】南イタリア出身の建築家Riccardo Dalisi の見事な造型感覚が発揮されたALESSI のナポレターナ

 仕事を始める朝と、3 時のブレイクタイムにカッフェを注入しないと何か物足りない・・・。イタリア在住だった前世の記憶がそう思わせるのに相違ありません。そこで欠かせないのがナポリ式コーヒーポット「Napoletana ナポレターナ」です。ナポリ発祥とされるこのカフェティエッラはドリップによってカッフェを淹れるもので、蒸気圧を利用する「マキネッタ」とはカッフェの抽出法が異なります。このナポレターナ、器具の構造は至ってシンプル。その形状といい、抽出の所作といい、なかなか味わい深いものがあります。加えてナポレターナで淹れたカッフェもまた味わい深く、薫り高いものとなります。

 前回この「Caffè カッフェ」のコーナーでご紹介した著名なイタリアンキッチン用品ブランド ALESSI アレッシからナポレターナが発売されたのが1987年。イタリア南部バジリカータ州Potenza ポテンツァ生まれの建築家 Riccardo Dalisi リッカルド・ダリージは、このカフェティエッラの設計開発に9年もの歳月をかけました。ALESSI の豊富なラインナップの中でも、これは最長の期間だといいます。ALESSI 唯一のナポレターナとなるこの製品は、本体が鏡面仕上げを施された18-10ステンレス、取っ手にはクルミ材が用いられています。イタリア本国でも6カップ用が €274( €1=156円換算で42,700円)、日本国内価格が54,000円(税別)という価格にすっかり怖気付いた私が愛用しているのは、ピエモンテ州トリノの北9kmにある Collegnoコッレーニョという人口5万人ほどの町で 1946年に創業したILSA社製のクラシックなナポレターナです。

iLSA-diamante.jpg現在でこそ広くイタリアの家庭で使われるマキネッタが登場する1950年代までは、このナポレターナが一般的でした。同社が初めて製品として売り出したのも、ナポレターナだったのです。

【PHOTO】私の初代ILSA社製ナポレターナ「Diamante」1-2カップ用(右)。上下同じ形状をしていたベークライトの取っ手は、ボイラー部の一部を焦がして焼失。さらに本体との接合部からの水漏れが顕著になり、現役引退を決意。会社で使用している「Liscia」1-2カップ用と同型3カップ用(下)は自宅で使用する3代目

 1-2カップ用から、3・6・9・12カップ用の各サイズが揃う中で、会社で愛用していたのは表面に凹凸の装飾が施された「Diamante ディアマンテ」ラインの1-2カップ用。約10年使い込んだこの初代ナポレターナは、酷使がたたって変形・変色が著しく、モデル名が意味するダイヤモンドのような輝きはとうに褪せています。本体と取っ手の接合部から水漏れするようになったため(→こんなところもイタリア製らしい? )、代替品を探していた'06年に実現したトリノ訪問。Terra Madre と Salone del Gusto の取材が主目的だったため、公式行事やワークショップへの参加に時間を割かれ、市内観光やショッピングがほとんど出来ないことが予想されました。

 そのため、4代目となる同社のナポレターナを前もって滞在先のアグリツーリズモRupestr のジョルジョ氏に探してもらいました。Rupestr がある小さなCanelli の町は無理でも、同社お膝元の大都市トリノならば、簡単に入手できるのでは?と考えたからです。

istruzioni_per_uso.jpgところが、危惧した通り北イタリア・ピエモンテ州では、ナポレターナが一般的ではなく、地元調達が出来ないとのこと。たまたまRupestr のWEBサイト管理を手がけるジョルジョの知人がナポリ在住で、そのルートで調達してもらった次第。人の繋がりを駆使して物事を解決する名人ジョルジョに限らず、イタリア人はこうした処世の達人です。

 ジョルジョに調達してもらったプレーンな外観のモデル「Liscia リッシャ(=伊語で「滑らかな」の意)」1-2カップ用は、€15(約2,340円)とぐっとリーズナブル。本体は純度99.5%のアルミニウム製、取っ手が耐熱性・難燃性に優れたベークライト製という基本的な構造やデザインは1946年の初代モデルに細部の改良は加えられたものの、大きな変更はありません。レトロな雰囲気を漂わせるILSAや端正で美しいフォルムのALESSI をご覧になって、どうやってカッフェを淹れるのか想像がつかない方もおいででしょう。

 日本では馴染み薄なナポレターナだけに、それも無理からぬこと。それでは早速、濃厚なナポリスタイルのカッフェを淹れてみましょう。上の図解イラストをもとに手順に従ってご説明すると・・・図でご覧の通り、ナポレターナは最後に用いる蓋(ふた)を除いて4つのパーツから構成されます。

caffettieranapoletano1.jpg【左PHOTO】〈1〉:熱源にかけるパーツ「ボイラー」(図C)に水を入れる。その際、水が上部に穿たれた直径2mmほどの小さな穴を超えないよう

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【右PHOTO】〈2〉:図の向きで「フィルター」(図B)をボイラー部にセット。その際(C)の穴と(B)の縦に刻まれた窪みの向きを合わせるとよい。フィルターに挽いたコーヒー豆を装填。フィルターの目が粗いので、仕上がったカッフェに粉が紛れ込まぬよう、豆は極細挽きよりは細挽き程度がよい

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【左PHOTO】〈3〉:「スクリューキャップ」(図A)でフィルターの装填口をふさぐ

caffettieranapoletano4.jpg【右PHOTO】〈4〉:仕上がったカッフェの注ぎ口と取っ手が付いており、屋外などでデミタスカップがなければ、その代用も務める「ポット」(図の最上部)をボイラーにセット。上下取っ手の向きを合わせると抽出中の姿が美しい。ここだけは、ともするとやることが適当なナポリっ子の真似はせぬこと。ボイラー部を下、ポット部を上にして熱源にかける(下図1)。ガスコンロを用いる場合は弱火~中火。取っ手を焦がすので強火は厳禁。

caffetttieranapoletano6.jpg【上PHOTO】〈5〉:ボイラー内の水が加熱されるとフィルター内のコーヒー粉を蒸らし始める。沸騰した熱湯が、ボイラー部の穴からチョロチョロ出始めたら熱源から外すサイン。素早くボイラーとポットの取っ手を両手でしっかり押さえながら上下逆にひっくり返す(下図2)。ボイラーの穴からお湯がピューッと勢いよく噴き出すが、すぐに止まるので慌てず騒がず。アルミ素材は柔らかく変形しやすいので、時に噛みあわせが緩い場合も。ズレによって熱湯が漏れないよう注意が必要

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〈6〉:耐熱性のある平らな場所にナポレターナを移して待つことしばし。使用する器具の容量にもよるが、2~3分でドリップは完了。その間、ボイラー部には蓋を装着して温めておく(→必ずしも使わなくても可)。ドリップが終わったらボイラーをはずし、ポットに蓋を被せ(省略可)【上PHOTO】 、カップにカッフェを注ぐ。

caffettieranapoletano8.jpg【PHOTO】è pronto!! ハイ、出来上がり!!

 ポット部分の熱が冷めれば、カップがなくてもカッフェを直接ナポレターナから飲むことだって出来ます。この使い方はアウトドアで一人カッフェを飲む場合などに重宝しそう。コーヒーの旨み成分を含む豆の油脂成分をろ過しないため、ナポレターノで淹れたカッフェは、調和が取れた深い味わいが楽しめます。いまやカッフェを淹れる時に使うカフェティエッラの割合は、ナポレターナ 7 に対しマキネッタ 3 と圧倒的にナポレターナが優勢。最初はマキネッタを使っていた仕事先でも、今ではナポレターナ一辺倒になりました。

 会社では電気コンロが置いてある流しでナポレターナを使うのですが、火にかけている間、立ち込める芳香は特筆もの。それを嗅ぎつけて分け前を要求する同僚もいます(笑)。後処理はマキネッタ同様、さっと水洗いでOK。金属製フィルターのため、余分な紙ゴミも出しません。なんというスグレ物!

napoletana_uffizi.jpg【PHOTO】オフィスで愛用している4代目ナポレターナ。普及が進むIHヒーターでは使用できないアルミ製ゆえ、お払い箱になりかかった電熱線ヒーターには懇願調に「捨てないで下さい」と記し、IHヒーターに重ねて使用

 ナポレターナが欲しくなったアナタに大切なポイントをお教えします。ナポレターナの素材は是非「alluminio =アルミニウム」製を選んでください。私の2代目ナポレターナはILSA社のステンレス製でしたが、カッフェが金属と馴染むまでと忍耐強く何度使ってもアルミ製ナポレターナのような深みのある味が出ないのです。苦味が強くでる傾向があり、調教を諦めた私はアルミに回帰、使用期間半年ほどで2代目はお蔵入りとなりました。

 イタリアでも丈夫なステンレス製のナポレターナが造られてはいます。しかしナポリのカッフェ好きの間では、ナポレターナはアルミ製というのが常識なのです。アルミの調理器具を使うとアルツハイマー病になると指摘する向きがあります。それでもアルミ製のマキネッタやナポレターノで淹れた一杯の薫り高いカッフェの誘惑には到底勝てません。その指摘が本当ならば、カッフェ好きのイタリア人たちは皆アルツハイマーになっている筈ですが、そんな話は聞いたことがありませんよね。

 そう自分を納得させて、ナポリスタイルを貫く「Passalacquaパッサラックア」の豆を装填した愛用の4代目ナポレターナを今朝もヒョイッとひっくり返したのでした。


次回、「Arriva a Napoli !? 白日夢 @ Caffè Passalacqua」に続く

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2008/02/19

カフェ・マキネッタ

お気軽エスプレッソの必需品

 最近ではイタリアン・スタイルのCaffè カッフェ、Espresso エスプレッソを自宅で楽しむ方も多いかと思います。以前ここで述べた通り、イタリアでは厚いクレマに覆われたマシンメイドのカッフェは、Bar バールで飲むもの。そんなイタリア人が自宅で手軽にエスプレッソを淹れる Caffettiera カッフェティエッラ(=コーヒーポット)は、直火式エスプレッソメーカー Macchinetta マキネッタです。その代名詞ともいえるのが、天を指差す口ひげを蓄えた山高帽の紳士でお馴染みの Bialetti ビアレッティs-bialetti_logo.jpg のMoka Express モカ・エクスプレスでしょう。1933年にAlfonso Bialetti アルフォンソ・ビアレッティが生み出したこの八角形をしたカッフェティエッラは、模造品を含めるとイタリアの家庭の90%以上で使われているともいわれます。1カップ用から、2・3・4・6・9・12・18カップ用まで、用途ごとにサイズが異なる Moka Express が作られているのは、抽出に必要な適正な蒸気圧を得るため。一気にコーヒーの旨みを抽出するエスプレッソは蒸気圧が命。直火式エスプレッソメーカーの場合、"大は小を兼ねる"は当てはまらないのです。
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【PHOTO】Bialetti のMoka Express

 ボイラー部分(写真左下/ 図A)の安全弁の下までが水の適量。本場の味にこだわりたいなら、細身な淡いブルーのボトルがイタリアらしさを醸し出す「Filette フィレッテ」(硬度198)や、カモメのラベルが目印の「SAN BENEDETTO サン・ベネデット」 (硬度235)、「ACQUA PANNA アックア・パンナ」(硬度108)など、イタリア産のAcqua Minerale(=ミネラルウオーター)をお試しあれ。硬度が高いヨーロッパの水のほうが、コーヒーには向いていると言われますが、私は庄内系ゆえ、庄内各地の美味しい湧水を汲んで来て沸かして飲んでいます。「さんゆう」や「胴腹滝」「神泉の水」「岩清水神社」「竹の露仕込み水」など、とっておきの採水ポイントのご紹介は機会を改めて。

MokaPotCrossSection.png

 水を入れたなら、メッシュ・フィルター(写真右中/ 図B)に細挽き~極細挽きにしたコーヒー豆をお好みの濃さになるよう適量セット。上部サーバー(写真左上/ 図C)をしっかりと閉めて火にかけます。この際、ハンドルを焦がさぬよう火力に注意。マキネッタでは細挽きが、エスプレッソマシンをお持ちの方は極細挽きが向いています。豆のローストは深煎りが良いでしょう。コーヒーは嗜好品ゆえに味の好みはそれぞれですが、深煎りローストが主流のイタリアでは、酸味は少な目の傾向にあります。いずれにせよ、信頼のおけるロースターから豆を買い求め、飲む直前に挽いた方が、香り高いs-Musetti_espresso.jpgカッフェを楽しめます。相談に乗ってくれるお店が見つかればしめたもの。自家焙煎を手掛けるカフェでもよし、専門店ならば選択の幅も広がるはず。意外なところでは、スターバックスが扱うコーヒー豆も悪くない選択です。同社が仕入れる生豆の品質は世界でもトップクラス。「う~ん、エスプレッソの豆がシアトル系じゃ・・・┐(ー。ー;)┌ 」と、イタリア人のようなことを仰る御仁には、真空パックや缶でイタリアから輸入される中でも入手しやすい「illyイリー」や「KIMBO キンボ」「LAVAZZA ラヴァッツァ」「Musetti ムセッティ」を。さらに極めたいならば、「CAFFEN カッフェン」や「TRUCILLO トゥルチッロ」「Passalacqua パッサラックア」などナポリブランドのコーヒー豆を調達してみては? いずれコーヒー豆は「生もの」だけに、焙煎日や賞味期限はしっかりチェックです。

 ボイラー部で加熱されたお湯は、メッシュ・フィルターにセットした豆を蒸らし始めます。やがて沸点に達すると体積が膨張してフィルターを通過し、上部サーバーの中心にある噴出口からカッフェが出てきます。mio_cupola.jpgパンツェッタ・ジローラモ氏の著書「極楽イタリア人になる方法」の中では、最初はサーバーの蓋を開けておき、カフェが出てきたら閉めること。カッフェが出終わったら火を止め、少し待つこと。するとキレイな薄茶色の泡が立ったエスプレッソが楽しめると書かれています。しかし、指示通りにやっても、マシンとは違ってマキネッタではなかなかきれいな泡は立ちません。かつて取材でジローラモ氏にお会いした際、最初は蓋を開けておく理由を尋ねましたが、著書に出てくるカッフェ好きの祖父がそうしていたからという以外、明確な答えは得られませんでした(笑)。

【PHOTO】Aldo Rossi がデザインしたALESSI 「LA CUPOLA」(右写真)。使用歴15年ほどの私のLA CUPOLA のボイラー部分内側には黒い油膜がびっしり(右上写真)

 カッフェを淹れた後の処理で大切なのが、ジローラモ氏も指摘している通り、決して洗剤では洗わないこと。使い込んだマキネッタ内部には、コーヒーの油脂成分が付着して、カッフェをより薫り高くしてくれます。使うたびに加熱消毒するわけですから、さっと水洗いすればOKです。家族で味の好みが分かれる場合は、香りが混じるのを避けるために自分専用のマキネッタを持つのがイタリア人の流儀。

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【PHOTO】Richard Sapper デザインのマキネッタ(左)

 Bialetti 以外には、著名なデザイナーや建築家とのコラボレーションによる造形美溢れるキッチン製品を生み出すALESSI アレッシもオススメです。1979年にドイツ人デザイナーRichard Sapper リチャード・サパーの設計で発売されたマキネッタは、イタリアで最も歴史と権威あるプロダクトデザインに贈られる「Compasso d'Oro コンパッソ・ドーロ賞」を同社に初めてもたらしました。 現在、このモデルはニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されています。

【PHOTO】Aldo Rossi の「LA CONICA」(下)

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 戦災で焼失したジェノバのカルロ・フェリーチェ劇場の再建や北九州の門司港ホテルなどの設計で20世紀の建築史に足跡を残した建築家 Aldo Rossi アルド・ロッシが生み出した ALESSI のラインもヨーロッパの伝統に根ざした建築家らしい造型で知られます。1982年に発表した「円錐」を意味する「LA CONICA」や、ルネッサンス期の教会建築に見られる円蓋ドームを彷彿とさせる1988年発表の「LA CUPOLA」は、いずれもイタリアの風景に溶け込む教会の尖塔を見ているかのよう。このマキネッタが置いてあるだけで、キッチンの空気が変わります。

 二十四節季では、雪が雨に変わる頃とされる「雨水」にあたる今日2月19日。まだまだ今年は寒い日が続きます。そこで次回は、陽光溢れる南イタリアへと誘ってくれる味わい深いカッフェティエッラ、私が愛用しているナポリ生まれの「Napoletana ナポレターナ」が登場します。

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2007/11/30

コーヒーの新たな地平へ

 新たな世界を予感させるコーヒーが仙台で味わえる。今回はそんなお話です。

 世界のトップバリスタたちが熱い視線を向けるマシンが今年日本に上陸しました。コーヒー本来の旨みを理想的な状態で抽出できる「Vacuum-Press バキューム・プレス」という世界初のメカニズムを取り入れたマシン「Clover 1s」。この米国シアトルにある「Clover Equipment クローバー・イクイップメント社」製のコーヒーマシンは、2007年11月現在、日本に3台しかありません。福岡と名古屋にあるコーヒー豆の焙煎業者(ロースター)に続き、仙台市泉区桂にあるカフェ「Bal Musette バル ミュゼット」のオーナーバリスタ・川口 千秋氏が、日本のカフェでは初めてこのマシンを導入しました。

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【PHOTO】全く新しい抽出法を採用した Clover 1s

 川口バリスタによれば、これまで一般ユーザーが家庭でコーヒーを楽しむ場合、最も忠実にコーヒーの持ち味を引き出す抽出法は「フレンチプレス」だったといいます。デンマークの「bodum ボダム」社の製品でお馴染みのフレンチプレスは、コーヒー豆に含まれる油脂成分が抽出時お湯に溶け出してきます。そのため、コーヒー特有のアロマ(香り)や味に深みが生まれるのです。私が愛用するナポリ生まれのCaffettiera (=コーヒーポット)、次回ご紹介する Napoletana ナポレターナも同様の抽出が可能です。かつては主流だったペーパーフィルターやネルドリップの場合、香りを構成する油脂成分がフィルターに漉されてしまうため、そうはいきません。それでも、フレンチプレスの4分前後という抽出時間と、直火にかける間の蒸らし時間が長くなるナポレターナの場合、劣化のリスクから逃れることはできませんでした。

 「理想的なコーヒーマシンが登場した」と川口氏が語るこの新兵器。蒸らしから抽出にわずか25秒~40秒ほどしか要しないため、コーヒー豆が加熱によって受けるダメージや、抽出時間が長引くことによって、雑味が出る危険を極力無くした画期的な設計だといいます。9月末にセッティングをした新世代マシンの実力を確かめに、先日バル ミュゼットを訪れました。

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【PHOTO】マシン上部はお湯でカップを温める機能があるラ・マルゾッコの「GB-5-3」はオールステンレス製。(写真左)背面には La Marzocco のロゴが誇らしげに刻印される(写真右)

 川口氏に促されカウンターの中を覗いて、まず驚いたのがその大きさ。業務用のマシンとして開発されたこの Clover 1s は、設置場所を選ばない幅285mm×奥行き551mm×高さ577mm というコンパクト設計なのです。その向かいで Made in Italy 特有の色気を放って存在を主張するエスプレッソマシン「LA MARZOCCO ラ・マルゾッコ社」の上級機種「GB-5-3 」(幅950mm×奥行き620mm×高さ475mm)と比べると幅の小ささが際立ちます。エスプレッソマシンの最高峰として、0.5℃単位で温度設定が可能なラ・マルゾッコ「GB-5」シリーズ。カプチーノを立て続けにサービスしなければならないハードな状況下でも、温度を一定に保つ独立した加熱装置「ツインボイラー」を備えた同社の製品は、プロフェッショナルなバリスタの愛用者が多いといいます。制限時間内にエスプレッソやカプチーノを提供する実地技能と創作飲料の完成度を競う世界バリスタチャンピオンシップ(WBC)で使用されるのもラ・マルゾッコのマシンです。扱いが難しそうなボタンやレバーがズラリと並ぶフィレンツェ製のこのハンドメイドマシン。アルファロメオのプレミアムコンパクトカー「alfa147 1.6ツインスパーク」【click!】のメーカー希望小売価格(259万円)とほぼ同じ価格設定がされています。

 こちらと比べると、湯温・湯量・抽出時間などを設定するダイヤルとスタートボタンがひとつずつしかない Clover 1s は家庭用の廉価版エスプレッソマシンと見まごうほどのシンプルさ。それでも、川口氏によればラ・マルゾッコほどでないにせよ、この最新鋭マシンもそれなりの価格なのだとか。

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【PHOTO】高地に位置するブラジル・ダテーラ農場のコーヒー・プランテーション

 ロースターとして自家焙煎も手がけるバル ミュゼット。「まずはこの豆から試して下さい」と川口氏がチョイスしたのは、WBC 2006年度の優勝者 Klaus Thomsen クラウス・トムゼン氏(デンマーク)が使用したブラジル Daterra ダテーラ農園の「ブラジル」中煎りでした。酸味と苦味のバランスが取れた豆でマシンの特徴を掴んでほしいというのでしょう。ちなみにこの農場では、加熱や酸化による油脂成分の劣化や水分の散逸を防ぐため、アラビカ種の生豆を真空パックにして低温輸送する細心の配慮をしています。同農場はサンパウロにあるカンピナース農学研究所やイタリアのエスプレッソ・メーカー「illy イリー」などと共同研究により、環境に配慮した生産法をいち早く導入、ISO14001や米国に本部を置くNGO団体「Rainforest Alliance レインフォレスト・アライアンス」の認証(RA認証)を受けています。RA認証は、厳格なガイドラインに則った営農管理(栽培手法、環境保全、労働者の保護)を行う農場にのみ与えられるもの。ほかにも 「IBD (Instituto Biodinâmico Certification Association)ブラジル有機認証協会」の認証など四つの国際機関によって、持続可能な生産体制にあることを認められています。
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【PHOTO】12年以上の研究を経て、non-GMO(非遺伝子操作)でカフェインを1%以下しか含まないアラビカ種のコーヒー豆「Opus 1 Exotic」の開発に成功したというニュースが先月末、ダテーラ農園より伝えられた

【PHOTO】中米 エル・サルバドルのコーヒープランテーションで働く女性

 世界中で飲まれるコーヒーの1/3~1/4を生産するブラジルをはじめ、地球上では、およそ2,500万人がコーヒー栽培に従事しているといわれます。コロンビア・ベトナム・インドネシアといった熱帯地域の途上国では、コーヒーの樹は、熱帯雨林を切り開いて栽培されています。高温多湿な気候ゆえ、病害虫の発生を未然に防ごうと大量の農薬が散布されたり、生産効率を上げようと化学肥料が多用される場合も多いのです。こうした地域では深刻な環境汚染が起きています。コーヒーの生産には、地球温暖化が招いた異常気象による干ばつや大雨などのリスクを伴います。コーヒー豆は、石油に次いで取引額が多い産物。そのため相場変動によるリスクを回避するため、仲買人は末端の買取り価格を恒常的に低く抑えようとします。この構図が、コーヒー生産の現場に貧困を生み出しています。生きてゆくために最低限の対価を得ることなく過酷な単純労働を強いられる人々は、満足な教育の機会もなく、無知ゆえに農薬による自身の健康被害に苦しんでいるケースもあるといいます。最近は日本でも欧州で誕生した「Fairtrade フェアトレード」の考え方に基づくコーヒーや紅茶・バナナ・衣類などを見受けるようになりました。適正価格で継続的に商品を購入することを通じて、立場の弱い第三世界の生産者の支援と自立を目指すこの運動。あなたが口にする一杯のコーヒーから参画できるのです。


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【PHOTO】キメ細かなメッシュ構造になっているマシン上部の投入口にグラインダーで挽いた豆を投入(写真左) 正面上部左のブリューボタンを押すと注湯口からお湯が出てくる。(写真右)

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【PHOTO】湯と粉を攪拌し「蒸らし」を数秒。マシンのコンパクトさがお分かり頂けるかと(写真左) 水分を含んだ豆が膨らんだところでバキューム・プレスによる抽出へと移行(写真右)

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【PHOTO】シリンダー内でコーヒーの粒子内部までお湯が浸透し、余すところなく旨みを抽出する(写真左) メッシュフィルターを通してカップにコーヒーが出てくるまでおよそ50秒(写真右)

 1杯のコーヒーを淹れる川口バリスタの作業は、マシン正面右のダイヤルで抽出時間や湯量を設定してから、スタートボタンを押すだけで、後はマシンがほぼ全てやってくれます。抽出が終わったコーヒーダストを排出口に掻き出して、サッと乾拭きすればOK。その一連の作業は、いかにもあっけないものです。しかし、このマシンがもたらすコーヒの美味しさには舌を巻きました。口に含むとまず甘さとクリーミーな食感が広がり、エグミや雑味は皆無。アフターテイストにも不快な重さが残りません。それでも川口氏は「このマシンはコーヒーを美味しくするものではありません」とそっけないもの。マシン自体はコーヒー豆のポテンシャルを余すところなく引き出す能力を持つだけで、鮮度や焙煎の優劣などの豆の持ち味がコーヒーにストレートに反映されるということでもあるわけです。とどのつまり、変質した油脂に由来するエグミをペーパーフィルターが漉すという副次効果が無いため、高い品質を備えたコーヒー豆を選別するバリスタの見識とその豆の特徴を活かすバリスタの技能が問われるマシンでもあるのですね。

 いずれにせよ、スペシャルティコーヒーの新たな可能性はこのマシンが切り開くのかもしれません。Don't miss it !

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la casa del caffè Bal Musette カフェ バル ミュゼット
住所:仙台市泉区桂4-5-2
TEL / FAX:022-371-7888
営 : 11:00~22:00 (日祝~19:00) 木曜休
URL http://www.bal-musette.com

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2007/11/09

Cafè カフェ文化

       
【photo】パリを代表する老舗カフェ「レ・ドゥ・マゴ」。観光客に占拠されたそこに往時の文化サロンの面影を求めるのは難しい

 イタリア人たちが日常生活でコーヒーを楽しむ情報交換の場として欠かせないのは、気取りのない Bar バールであることはすでにご紹介しました。一方で、かつて芸術家や文化人らが集い芸術論を交わすサロンとして、あるいは人々が天下国家を論じ、政治談議に花を咲かせるジャーナリズム発祥の揺籃としての役割も担っていたカフェが、今も欧州各国に残っています。
 パリ・サンジェルマンの「Les Deux Magots レ・ドゥ・マゴ」(1813年創業)や「Café de Flore カフェ・ド・フロール」(1887年頃創業)など、通りに張り出したテラス席で薄めのエスプレッソをすする観光客と慇懃な態度のギャルソンは、おフランスに憧れたかつての日本人が思い浮かべるカフェのイメージそのものかもしれません。

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【photo】モーツァルトの生家や映画サウンド・オブ・ミュージックが撮影されたミラベル庭園、飾り看板が見事なゲトライデガッセなど、ザルツブルグの旧市街巡りに立ち寄りたい「カフェ・トマッセリ」。店内の時計は、どれほどの時を刻んできたのだろうか

 文献によるとコーヒーを客に提供するコーヒーハウス(英語)・カフェ(仏語)の原型の業態は、1554年にコンスタンチノープル(現イスタンブール)で開業したとか。アドリア海の制海権を手中に収め、東方交易でコンスタンティノープルと関係が深かったイタリア・ヴェネツィアには1645年に、1652年にはロンドンにもカフェが店開きしました。ヨーロッパ最古参といえるこれらの店は、時の流れの中でやがて消えてゆきます。1683年、包囲戦に失敗して引き揚げたオスマントルコが残したコーヒー豆を商売に転用したのがルーツといわれるウイーンのカフェ。地元では Kaffeehaus カフェハウスと呼ばれ、居心地の良い居間のような感覚で新聞を広げて長居する市民の姿を目にします。映画「第三の男」が撮影された現在の「Cafè Mozart モーツァルト」の前身 Café Katzmayr カッツマイヤーは1794年にオープンしています。それに先立つ1705年には、オーストリア・ザルツブルグのアルター・マルクト広場に「Cafè Tomaselli トマセリ」が開業。今も2階テラス席からは、メンヒスベルグ山に築かれたこの美しいこの町のシンボル、ホーエンザルツブルグ城が遠望されます。水が有料である場合が多い他の欧州諸国とは異なり、アルプスの水に恵まれたオーストリアのカフェでは、コーヒーとセットで水が入ったグラスに銀のスプーンが載せられて出てきます。現存するパリ最古のカフェ「Le Procope プロコープ」は、シチリア貴族コルテッリ家出身のフランチェスコ・プロコッピオによって1686年に創業しました。現在の Le Procope は軽食堂を意味するブラッセリー・ビストロとなり、創業当初のカフェとは異なる業態をとっています。

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【photo】暗くなっても人通りが絶えないサン・マルコ広場に面した「カフェ・フローリアン」。入り組んだカッレ(通路)を彷徨った疲れを癒すには、申し分のない場所といえる。しかし、この店が発祥とされるカッフェ・ラッテ(エスプレッソ+ミルク)を味わうには、相応の覚悟が必要。店頭で甘美な旋律を奏でるお抱え楽団のギャラや、華やかな歴史を今に伝える空間の維持費が、この店のカッフェの値段にはしっかり上乗せされているのだから

 かつてゲーテ、ワーグナー、オスカー・ワイルド、バイロン、ルソーなど歴史に名を留める各国の賓客を迎えたクラシックなカフェは、ヨーロッパ文化の源泉となったイタリアにも存在します。有名どころでは、ドゥ・マゴやフロール同様にそれなりの出費を覚悟した上で訪れたいヴェネツィアのサン・マルコ広場にある「Caffé Florian カフェ・フローリアン」(1720年創業)が筆頭格でしょう。このイタリア最古のカフェは、広場を挟んで向かいに位置する「Gran Caffè Quadri グラン・カフェ・クワドリ」 (1775年創業)とともに、ナポレオンが"世界で最も美しい広場"と称えた劇場都市の顔ともいえる空間の演出に一役買っています。ローマのスペイン広場から高級店が建ち並ぶコンドッティ通りに入ってすぐ右手の「Antico Caffé Greco アンティコ・カフェ・グレコ」(1760年創業)も、数多くの芸術家に愛されてきた老舗カフェです。今年の8月、UCC上島珈琲が日本におけるカフェ・グレコの商標権を獲得しました。1860年の創業と若干時代は下りますが、ナポリ最古のカフェ「Gran Caffè Gambrinus グラン・カフェ・ガンブリヌス」は、19世紀の絵画40点以上を収蔵する美術館さながら。町の喧騒から一歩足を踏み入れたそこは、あくまでも格調高く雰囲気も抜群です。今年の秋、東京の某百貨店のイタリアフェアに出店したガンブリヌスは、実物と似ても似つかないものだったと、そこを訪れた友人が語っていました(^^;)
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【photo】精巧な浮き彫りが施されたストゥッコ仕上げの漆喰とエレガントなリバティ様式の装飾。ナポリの「ガンブリヌス」では、濃厚なナポリスタイルのカッフェと共に Sfogliatella スフォリアテッラや Babà ババなどのナポリ菓子も味わいたい

SANCARLOSalone.jpg【photo】バロック様式の内装が見事なトリノの Caffè San Carlo サン・カルロ

 トリノには、歴史的なつながりが深いフランスやオーストリアと相通じるクラシックな香りが漂うカフェ文化が残っています。昨年のTerra Madre テッラ・マードレ会期中に、トリノ市内にある歴史的カフェ巡りツアーがトリノ市の主催でプレス向けに催されました。統一イタリア初代首相 Cavour カヴールが公務の合間を縫って通い詰めたという「Caffè al Bicerin カフェ・アル・ビチェリン」(1763年創業)。そこでカヴール首相のために考案されたのが、秘伝のレシピで作られる自家製チョコレートにエスプレッソを混ぜ、ホイップミルクをのせた二重構造を持つトリノ名物の飲み物「Bicerin ビチェリン」です。今ではトリノにあるカフェの定番となった脚付きのグラス(⇒伊語では Bicchieri ビッキエリ。共通性を感じますね)と銀のスプーンが添えられ、うやうやしく出されます。 【注1】

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【photo】現在のオーナーによって2004年に一部改装されたが、Ferdinando Baratti と Edoardo Milano の二人の菓子店オーナーが合同で創業した当時のエレガントな雰囲気はそのまま。ウインドーから垣間見える Baratti e Milano の店内は道行く人の目を引く

 内装の豪華さではトリノ随一との評価を得ている「Baratti e Milano バラッティ・エ・ミラノ」(1875年創業)や、その名もずばり「Torino トリノ」(1903年創業)は、創業当時流行したリバティ(=アール・ヌーボー)様式の装飾がふんだんに施され、華やかでスノッブな雰囲気が漂います。ホールに下がる大きなヴェネツィアングラスのシャンデリアがまばゆい「Caffè San Carlo サン・カルロ」(1822年創業)は、典型的なバロック様式の内装。「Caffè Mulassano ムラッサーノ」(1907年創業)のまばゆい金装飾が施された内装も見逃せません。いずれのカフェも折り目正しいカメリエーレが気持ちの良いサービスをしてくれます。Bar バール文化が主流のイタリアでは、こうしたカフェは珍しい存在といえます。こうした歴史あるカフェを訪れたならば、ぜひその雰囲気も味わいたいもの。

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【photo】カッフェや美味しいドルチェもさることながら、見事な装飾もご馳走のうち。「バラッティ・エ・ミラノ」(写真左)
トリノ発祥のアレンジカッフェ「ビチェリン」が生まれた店「カフェ・アル・ビチェリン」。小さな店内で売られているチョコレートも美味(写真右)

 プロコプの名を冠した老舗のカフェが仙台にあります。パリにあるその店のように、文化の発信拠点となるカフェたらんとその店「カフェ・プロコプ」が開店したのが1968年。開業当初から仙台でいち早く自家焙煎に取り組み、コーヒーと共に歩んできたマスターの熊谷 徳人さん。オーナー自ら厳しく選別した豆を使った定番のプロコプブレンドやカフェノワール、コハクの女王といったアレンジコーヒーなど、来年で開店40周年を迎えるマスターが淹れる薫り高いコーヒーに親しんだファンは数知れません。

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【photo】ビルの階段を上ると、ドアのガラス越しにカウンターに立つ熊谷さんが迎えてくれる(左写真)歴史を感じさせる店内。一人でも、あるいは大切な人とのとっておきの時間を過ごせる(右写真)

アール・デコ様式のガラス張りの木製ドアの先には、ゆったりとした時間が流れる心地よい空間が広がっています。ほの暗い店内は全てアール・デコで統一され、照明器具やさりげなく置かれた小物類にも趣味のよさが感じられます。
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【photo】照明・小物に至るまでアール・デコで統一された店内(左写真) 生クリームと深煎りのコーヒーが絶妙な調べを奏でる「コハクの女王」500円(写真中) 置物?いえ、現役の電話機です(写真右)

グランドピアノが置かれた店内では、第一線で活躍する長谷川 きよし氏や榊原 光裕氏らのライブ演奏会が不定期で催されてきました。そして今、そうしたミュージシャンと触れ合えるプロコプを遊び場として育ったという熊谷さんのご長男・和徳さんが、タップダンサーとして世界を舞台に活躍しています。プロコプを文化発信の拠点にしたいという40年前に熊谷さんが抱いた夢は、こうして実現しつつあるのです。

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カフェ・プロコプ
住所:仙台市青葉区一番町4丁目5-2 
TEL:022-227-2045 
営)平日:11:00-19:30 土日祝12:00-19:00 不定休

bicherin.jpg【注1】仙台でトリノ名物のビチェリンを飲ませてくれるお店がある。仙台市太白区のイタリアン「Al Fiore アル・フィオーレ」では、本場より若干甘みをおさえたビチェリン(600円)を提供してくれる。ここの存在感たっぷりなエスプレッソマシンは、フィレンツェの La Victoia 社製のレバー式。レバーの微妙な加減で抽出具合が変わってくるので、バリスタの個性が出るマシン。

Al Fiore アル・フィオーレ 仙台市太白区向山2丁目2-1-1F
TEL:022-263-7835 営)12:00-14:00 (土日月火のみ)18:00-23:30 水曜休


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2007/09/02

Bar バール

「Bar バー」じゃないのよ「Bar バール」は

 わが国のコーヒー消費量は'80年代に緑茶を追い抜き、現在も増加を続けています。一方でオーナーの個性を反映した個人経営の喫茶店は、'81年をピークに徐々に姿を消してゆきました。これは低価格のコーヒーを提供する全国チェーンが増えていった時期と符合します。

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【Photo】イタリアの街角に溶け込むBARの看板

 米国シアトルで'71年に創業以来、北米以外では初の海外進出を果たしたスターバックスが、東京銀座に日本一号店を開店したのが'96年。以降、通称「スタバ」は瞬く間に日本中に広まり、昨年日本国内の店舗数が600軒を突破しました。スターバックスの急成長は、現会長兼最高国際戦略責任者のハワード・シュルツ氏が、出張先のミラノで立ち寄った Bar バールがヒントになっています。そこで出されたエスプレッソに代表されるイタリアのコーヒー文化に感銘を受けたシュルツ氏は、'84年にバールスタイルを取り入れた店舗をシアトルに開業させています。

ipa_tazza.jpg【Photo】Milano の陶器メーカー「ipa」がスタバとコラボしたイタリアの都市シリーズのデミタスカップ ROMA AMOR(=イタリア語の回文でローマ・愛 の意。ローマは愛の街だった?)とVENEZIA。【clicca qui】。肉厚で重みがあり、家庭用のエスプレッソ・マシーンでカッフェを抽出する際に重宝する

 スターバックスが米国で産声を上げた年、同じく北米大陸以外への初展開となった一号店を東京銀座にオープンさせたのが、マクドナルドです。世界を席巻するマクドナルドとスターバックスが最初に海外への足がかりとしたのが日本だったことは象徴的です。農業大国でもあるアメリカ食産業のグローバル戦略を、日本は積極的に受け入れてきたのです。増殖著しいスターバックスですが、手本とした本家本元のイタリアには、いまだ上陸を果たしていません。日本同様にアメリカ文化に対しては比較的寛容なイタリア人ですが、自国の食文化については非常に保守的。節操のない日本とは好対照に映ります。

 いまなおスターバックスが進出していないイタリアのコーヒー文化は、Barバールを抜きには語れません。イタリア全土のバールはおよそ16万軒といわれます。そこかしこにある"Bar"の看板を見て「なーんだ、飲み屋ばっかりじゃないか」なんて思っちゃいけません。スペルは同じでも、イタリアのそれは日本で言うところのBar=バーとは全く趣を異にします。そこは甘いパンとカップチーノのイタリア式朝食の場として、仕事の息抜きの場として、イタリア人が大好きなおしゃべりに興じる情報交換の場として、馴染みのバールはイタリア人の一日に欠かせない存在です。

signromabar.jpg【Photo】イタリア人の生活にBARは欠かせない存在

 旅行者にとっては、トイレを借りたり、ミネラルウォーターをテイクアウトする際にもバールは重宝します。レストランの形態同様、一口にバールといってもさまざま。パニーニなどの軽食を出す店もあれば、しっかりとした食事(⇒作り置き惣菜の場合が多い)を取れる店、Gelateria ジェラテリア(=ジェラート店)や Pasticceria パスティチェリア(=ケーキ店)を兼ねるバールもあります。日中に出される飲み物がコーヒー類だけでも、夕方以降はアルコールも扱うケースが多いようです。皮肉なことに日本ではスターバックスの出店によってその名が認知されつつある「バリスタ」とは、バールでエスプレッソマシンを操作する店員 「Barista 」から名付けられたものです。本家筋のイタリアでは、カクテルなどのアルコールを扱える職能も上記の理由でバリスタに求められます。

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 イタリア人に言わせると、カラメルを加えたりするアレンジカフェを得意とするシアトル系カフェのエスプレッソは、まがい物となります。日本にいながらイタリアに近い雰囲気やメニューをお望みなら、美食の街ボローニャで誕生した「Segafredo Zanetti セガフレード・ザネッティ【clicca qui】」はいかがでしょう。同社は本国イタリアをはじめ、ヨーロッパ諸国・北米・南米各国のほか東京周辺でコーヒーショップを展開中です。トリノに本社を構えるイタリア最大のシェアを持つコーヒーブランド「LAVAZZA ラヴァッツァ」や「illy イリー」も東京には進出しているので、シアトル系カフェとの違いを確かめるのも一興。しかし、それらもBanco バンコ(=カウンター)で立ち飲みするのが主流のイタリアのバールとは雰囲気が違うことも確かです。

 エスプレッソとは似て非なるコーヒーの氾濫に危機感を募らせたイタリア国内のコーヒー豆や関連機材の製造業者・組合らが、イタリアで飲まれているスタイルのエスプレッソの保護と啓蒙を目的として「Istituto Nazionale Espresso Italiano イタリア・エスプレッソ協会」を1998年に設立しました。協会では一定の技能を備えたバリスタの認証制度や国内外での講習会などを実施しています。こうした自国の伝統を墨守しようというイタリア人の気概が世界に冠たるイタリアの食文化を支えているのです。エスプレッソ同様に世界中に広まったピッツァ発祥の地ナポリで1984年に発足した「Associazione Verace Pizza Napoletana 真のナポリピッツァ協会」しかり。ローマのスぺイン広場にマクドナルドのイタリア第一号店がオープンしようとした1986年、イタリア上陸を阻止しようとピエモンテ州 Bra ブラで発足したスローフード協会誕生の経緯もまたしかり。どうやらスターバックスのイタリア上陸作戦は容易ではなさそうです。

barista-doro.jpg【Photo】Cassaで支払いを済ませた客が持ってくるレシートをさっと一瞥、湯煎したカップに鮮やかなマシン操作でカッフェを淹れる Tazza d'Oro のクールなバリスタ

 オーナーのオヤジさんやお姉さんが一切を切り盛りしているバールもありますが、大きな町のバールでは、まず Cassa (=レジ)で注文・先払いするのがイタリア式。レシートをBanco に持って行くと、バリスタが手際よくコーヒーを淹れてくれます。イタリアでは単に「カッフェ」とバリスタにオーダーすれば、エスプレッソが出てきます。」 【注1】都市部のバールでは、立ち飲みが普通。テーブル席があるバールもありますが、大方の場合、値段は立ち飲みよりも高く設定されています。ただし地方のバールでは必ずしもそうとは限りません。

 多様性の国イタリアでは、バールで飲むエスプレッソの味にも地域性が表れます。北部では豆の焙煎が南部に比べると浅く、4~5口で飲み干せる量。それが南へ向かうにつれて量が少なくなり、ナポリ以南では厚めのカップの底に申し訳程度に入っているかのよう。焙煎がぐっと深くなる上、凝縮度も増してゆくのがわかります。少なくともスプーン2杯は砂糖を加えてカッフェを攪拌し、ちびちびとではなくクイッと飲み干すのがイタリア式の粋な飲み方。私も本格的なエスプレッソには必ず砂糖を入れるようにしています。そのほうが苦味に柔らかさが加わり、美味しくカッフェを飲むことができます。

【Photo】Pantheon パンテオン(写真奥)がある Piazza della Rotonda ロトンダ広場から少し陰に入ったところにあるTazza d'Oroタッツァ・ドーロ

pantheonecaffe.jpg  私がイタリアで飲んだ数あるカッフェの中で最も感動したのは、ローマのパンテオン近くにあるバール「Tazza d'Oro タッツァ・ドーロ」のエスプレッソとカプチーノでした。 【注2】天才画家ラファエロや初代イタリア国王ヴィットリオ・エマヌエレ二世の墓所でもあるパンテオン。建築史の奇蹟といわれるローマ時代の遺構そのままのクーポラに穿たれた天窓から光射す静謐な空間を味わうため、観光客でごった返す前を狙って早朝に訪れたパンテオンの扉は未だ閉ざされたまま。係員に確認した入場開始時刻の8 時半まで時間を過ごすために立ち寄ったのが Tazza d'Oro でした。8 時前というのに、すでにBanco では常連と思しき数名が、カッフェを飲みながら思い思いの時間を過ごしています。

caffetazzadoro.jpg  湯煎したデミタスカップで出されたエスプレッソは、表面を厚い褐色のクレマ(泡)で覆われ、キメの細かなクレマの上にグラニュー糖を加えても一向に沈む気配を見せません。おぉ、さすがはローマ一との呼び声高い店のカッフェ。芳醇なエスプレッソの香りを閉じ込める見事なバリスタの技です。深煎り豆特有の甘味と雑味のない苦さの絶妙なマッチングが華やかなアロマとあいまって、口腔から鼻を豊かに満たしてゆきます。そのあまりの美味しさに、パンテオンを訪れた後、再びカプチーノを飲みに立ち寄った次第。

cappucino-doro.jpg 「また来たのか」と顔に書いてあるバリスタが鮮やかな手つきでいれたふんわりとしたフォームドミルクと絶品エスプレッソが織り成すカプチーノには再びやられました。ここはオススメです。パンテオンの目の前という場所柄、私のような観光客も見かけますが、地元ローマっ子がふらっと立ち寄り、新聞を読みながらさっと一杯引っかけて店を後にしてゆきます。自家焙煎のコーヒー豆にも定評があり、自宅で楽しむために豆を買い求める客も多い名店です。私も土産用に豆を買い求めたのは申すまでもありません。

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Tazza d'Oro タッツァ・ドーロ
  Via degli Orfani, 84 (Pantheon) - 00186 Roma
  http://www.tazzadorocoffeeshop.com/

【注1】カプチーノは朝しか飲まない。食後の一杯はエスプレッソに限る。これがイタリア人の常識。観光客が多い大都市ではそうでもないが、小さな町のトラットリアやバールで食後や昼時間帯以降にカップチーノを頼むとカメリエーレやバリスタに変な顔をされるかも?

【注2】Tazza d'Oro のカッフェに感銘を受け、バリスタを志したというのが仙台市泉区桂にあるカフェ兼自家焙煎コーヒー豆店「Bal Musette バル ミュゼット」のオーナー川口千秋氏。Tazza d'Oro と 同じ "La Casa del Caffé"(=カッフェの館)を名乗る川口氏の店。エスプレッソとカップチーノ用スチームに専用の加熱機能を備えた"ダブルボイラー方式"を採用するフィレンツェ製の至高のエスプレッソ・マシン「La Marzocco ラ・マルゾッコ」を操作して、とろけるようなフォームドミルクで覆われたコクのあるカップチーノ(テーブル着席料金¥500 /Banco立ち飲み料金¥320)を飲ませてくれる
       sig.kawaguchi.jpg tazzart.jpg
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Bal Musette バル ミュゼット
  仙台市泉区桂 4-5-2 TEL&FAX 022(371)7888
  11:00~22:00(日祝~19:00)木曜定休
  URL:http://www.bal-musette.com/index.html

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