あるもの探しの旅

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2017/03/12

当選スマすたー

善因善果 あるいは 因果応報

 前触れもなく届いた小包の発送元は青森県観光国際戦略局誘客交流課。読んで字の通り、青森県庁でインバウンドを含む観光に関する業務を担当する部署のよう。観光情報サイトアプティネットにもその部署名が出ています。

 送り状の品名欄には「目指せ東北6県制覇!スマホスタンプラリー プレゼント」と記載してあります(下画像)

 その下に「青森県特産品詰め合わせセット」とプレゼント内容が明記されたスタンプラリーのタイトルには心当たりがありました。

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 昨年7月15日から2017年1月9日まで、東北各県とNEXCO東日本は、初の共同主催による「高速道路でつないで集めるスマートフォンスタンプラリー」を実施しました。

 これは東北の観光スポット・道の駅・高速道路のSA・PAなど各地に設定されたラリー対象地点で、スマホの専用サイトにアクセスすると、自動的にスタンプがもらえる仕組み。東北各県の観光スポット5カ所+高速道路SA・PA1カ所で合計6カ所のスタンプをゲットすると、県単位の制覇賞に応募でき、各県の特産品が抽選で当たるという内容です。

 東北をフィールドに駆ける庄イタは、紅葉シーズンを迎える頃には青森から福島まで6県全てを制覇していました。

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 応募から時間が経過していたため、キャンペーンの存在すら忘れかけていた今日この頃。届いた小包を開封すると、「プレゼント当選のお知らせ」と記された挨拶状が入っています(上画像)

 みごと当選したのは、合計360名に当たる「1県制覇賞」。地元宮城や隣接する4県に先駆け、東北6県の中では最初にコンプリートした青森の特産品セットなのでした。

 思い起こせば、このキャンペーンに応募したのは昨年8月初旬。本州最北の青森を目指して自宅を出発したのは草木も眠る丑三つ時を過ぎた頃。仙台から東北自動車道を北進。休憩を挟みながら八戸には早朝に到着し、三沢から十和田・青森、黒石・弘前・五所川原を経て深浦まで4日をかけて青森各地を巡りました。

tori-iwakisan.jpg【Photo】本州最北の最高峰が岩木山(標高1,625m)。奈良時代後期の780年(宝亀11)まで起源が遡る山頂付近に鎮座する奥宮と本殿(国重文)に向かって参道が続く岩木山神社。古事記に登場する初代神武天皇の即位から数えて2,600年目にあたるとされ、国主導により、さまざまな記念行事が催された1940(昭和15)に創建されたことを示す「奉献 紀元二千六百年八月一日」の銘が入った一之鳥居越しに象形文字のような形状の岩木山が、頂きをのぞかせる

romon-iwakisan-jinjya.jpg【Photo】1589年(天正17)の岩木山噴火で焼失後、徳川3代将軍家光の治世下だった1628年(寛永5)に再建された楼門(国重文)。丹(に)塗り一色に染められた二層の入母屋造り。上層までの通し円柱に渡された梁の幅を指す桁行(けたゆき)17.7m、高さは17.85m

comainu-iwaki-destra.jpg comainu-iwaki-sinistra.jpg【Photo】楼門を囲む玉垣の標柱と一体化した極めて特徴的な狛犬。楼門に向かって右側の阿形(あぎょう)は柱で爪を研ぐネコさながら。逆立ちしている左側の吽形(うんぎょう)に至っては、これまたポールダンスに興じるネコさながら

chozu^iwakisan.jpg【Photo】ギリシャ神話が起源で、映画ハリーポッターと賢者の石に登場する地獄の番犬ケルベロスや、ゴジラのライバル・キングギドラを思わせる三つ頭の龍から滔々と流れ出る岩木山神社の手水。岩木山を源流としており、お清めだけでなく、極めてパワフルな印象の水。京都・清水寺「音羽の滝」と同じような柄の長い柄杓から手に取ってご神水をゴクリ。内と外から穢れを落として体内浄化したのが、今回プレゼント当選の決め手となったかも

 その詳細は、仙台でアムさんメロンとの奇蹟的な遭遇を果たした一件を記した「フェロモンメロン 奇蹟の遭遇@道の駅フェスタ in 仙台」に続く五回シリーズの長編で既報の通りです。〈2016.8拙稿「Breakfast at Mutsuminato 陸奥湊で朝食を」~2016.10拙稿「カレー + 味噌 + 牛乳 +バター 青森発。華麗なる四位一体ラーメン」参照〉

wespa_tsubakiyama2016.8.jpg【Photo】種差海岸から日本海側まで青森を横断、JR五能線の駅がある西津軽郡深浦町の宿泊施設「WeSPa椿山」で迎えた朝。グループやファミリーで楽しめる施設内に湧出する天然温泉「鍋石温泉」は、日本海に面したドーム型露天風呂で、泉質はナトリウム塩化物強塩泉 (高張性中性高温泉)。4月~10月までの天候が良い日は、ドームが解放され、眼下に広がる日本海の素晴らしい眺望と、肌触りの良いかけ流しの温泉を満喫できる。コテージの宿泊客以外にも500円で日帰り入浴可

 二度目となる八戸三社大祭では、奇想天外な山車のスペクタクルと時代行列や法霊神楽を堪能。涼を呼ぶ奥入瀬から硫黄の香り漂う混浴の千人風呂で名高い酸ヶ湯温泉に浸かろうと八甲田を越えて青森市入り。熱気渦巻く青森ねぶたの余韻冷めやらぬ翌日は、田舎館村で芸術的な田んぼアートに接し、五所川原では立佞武多(たちねぷた)のド迫力に圧倒されました。

carpaccio-casa-del-cibo2016.jpg【Photo】瞬間燻製した朝獲れ八戸前沖サバのカルパッチョ仕立て ハーブと茄子のピューレ。昨年8月、八戸市湊高台「カーサ・デル・チーボ」プリフィックスのCコース(2,950円)で5つの選択肢から選んだアンティパスト。海水温が低い北緯40度近辺の八戸近海で、不飽和脂肪酸を含む脂肪を組成の3割近くまで蓄える「八戸前沖サバ」。朝に水揚げされたサバを燻製仕立てにした一品。一昨年11月、同市六日町「サバの駅」で食したジューシーで香ばしい脂を堪能できる「銀サバ串焼き」(下画像)や「船上活〆(じめ)陸凍サバ」とはまた違った八戸前沖サバの魅力を再認識

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 ヒラメ漬け丼@陸奥湊「みなと食堂」、八戸前沖サバ炙り焼きの朝ごはん@市営魚菜小売市場、八戸イタリアン@「カーサ・デル・チーボ」、マリナーラ&ラニチキン@三沢「Pizzeria Massimo」、青森イタリアン@「Al Centro アル・チェントロ」などは、7月から8月にかけて2度の青森遠征で再訪。

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【Photo】八戸で迎えた2日目の朝。腹ごしらえをしようと向かった先は、JR陸奥湊駅前の昭和感が色濃く漂う市営魚菜小売市場。半身を平らげるとお腹がいっぱいになるサイズの八戸前沖サバの炙り焼きをメインディッシュに、小川原湖産しじみの味噌汁、長芋の千切りなど、南部地域の味が揃ったオリジナル朝ごはん

 新機軸としては、味噌カレー牛乳ラーメン@青森「札幌館」、同「味の札幌 大西」を挙げなくてはなりません。しじみラーメンを目当てに津軽半島十三湖まで遠征するも、お気に入りだった民宿岩亮は知らぬ間に廃業。代役に訪れたのが正解だった「しじみ亭奈良屋」のしじみづくしなど、ご紹介しきれないほどの美味との出合いを青森で果たしました。

shijimi-zukushi-naraya.jpg【Photo】(右手前より順に)しじみチャウダー・しじみラーメン・しじみ汁・しじみバター炒め・豆腐のしじみ南蛮漬のせ・漬物・津軽りんごコンポート・しじみ味噌と佃煮・しじみ釜飯。産卵を控えて身が肥えた十三湖特産の大和しじみを一度に味わえた北津軽郡中泊町しじみ亭奈良屋「しじみづくし」(1,836円)。

 イタリアと庄内への偏向ぶりが著しいViaggio al Mondoとしては珍しく、ほぼ青森一色だった昨夏。〝狭くディープに〟のコンセプトはそのままに宗旨替えをした格好となりました。

 それゆえ5回シリーズの青森紀行レポートを通し、微力ながら青森の交流人口の押し上げに寄与できたかもしれません。青森遠征の折に参詣した八戸・蕪島神社、青森・善知鳥(うとう)神社、弘前・岩木山神社の神々が、庄イタの行いをご覧になっていたのでしょう。

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 香川がうどん県なら、りんご県と呼びたいのが青森。小包には津軽産のリンゴ加工品が3種類、同封されていました。1品目は上北農産加工農業協同組合の焼肉用たれ「スタミナ源」(下画像)

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 発売から半世紀年以上を経たロングセラー商品で、県内シェアは7割と圧倒的。仙台でも目にする機会が少なくありません。

 青森県産の醤油をベースに、生産量日本一のリンゴやニンニクなどの野菜類、隠し味にリンゴ酢などを加えたまろやかな風味。焼肉だけでなく、万能タレとして愛されています。

 長さ10mほどの陳列棚の両サイドをスルメなどの乾き物系が埋め尽くし、呑ん兵衛な県民性が垣間見えるなど、ディープな青森の魅力を凝縮した食品スーパー「カブセンター」で購入していたのが、同組合のピリ辛風味焼肉用たれ「辛味家(画像右)でした。

 こうして頂き物をするだけではなく、ここ数年、夏に欠かせない「アムさんメロン」の食味コンテスト出品作を大人買いしたことは言うに及ばず、イタリア国旗と同じ配色の看板が庄イタには極めて好印象な地元資本のカブセンターで、当選の祝杯となったキリン一番搾り「青森づくり」や青森産リンゴ果汁100%のシャイニーアップルジュース「赤のねぶた」をケース買いするなど、あまたの青森県産品を購入していました。

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【Photo】当選の祝杯は、カブセンター八戸長苗代店で購入したキリンビール北海道千歳工場製の「一番搾り青森づくり」。2杯目が青森紀行の流れで訪れた秋田市で入手した「秋田づくり」。コチラは副原料に「あきたこまち」を使用。3杯目は同じく酒田で購入した「山形づくり」。いずれも同社仙台工場製。「●●づくり」というネーミングに横槍を入れた某同業者のように固いことは言わず、まずは乾杯!! \(●^^●

 東日本大震災が起きた2011年の秋、「どうぞ召し上がって下さい」と収穫したリンゴを庄イタの拙宅に送って下さったのが、弘前市でリンゴを栽培する一戸清隆さん。一戸さんへの感謝の気持ちを忘れず、クリスタルのようにキラキラした透明度が高い味わいのみずみずしい蜜入りリンゴを、購入時期をずらして毎年2回購入してもいます。

 そんな律儀な庄イタを当選とするとは、青森県観光国際戦略局誘客交流課の皆さん、お目が高い

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 2品目と3品目は「青森りんごキャンディ」と「まるごとりんごパイ 気になるリンゴ」。自社のリンゴ園を弘前市郊外に所有する菓子メーカーラグノオささきの製品です。とりわけ同社の「パティシェのりんごスティック」は、仙台でも目にする機会が多く、弘前を代表する菓子メーカーとしての地位を築いています。

 青森りんごキャンディを一粒ほおばると、中にはトロ~リとした濃縮リンゴ果汁が詰まっています。爽やかな風味のキャンディに、甘酸っぱい青春の思い出が蘇ります。

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 津軽を訪れると、リンゴ畑が地の果てまで続く風景を目にします。国内生産のおよそ6割を占めるリンゴ王国・青森の主力品種が「ふじ」。

 ふじは青森県南津軽郡藤崎町で育成され、完熟の証である蜜入りが良く食味の良さから海外でも人気が高い品種。

 まるごとりんごパイ 気になるリンゴは、ふじをまるごと1個シロップ漬けにし、芯抜きした部分にはジューシーなスポンジがぎっしり。全体をパイ生地で覆って焼き上げたスイーツです。

 サックリ&しっとりしたパイ生地の中身に隠れているふじは、収穫後間もない蜜入りリンゴのシャキッとした食感が残っており、なかなかに美味。

 スタンプラリー事務局の皆様、どうもご馳走さまでした。

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 善き行いが善き結果に結び付いた善因善果なこの一件。このように青森で訪れた蕪嶋神社・善知鳥神社・岩木山神社の神々による霊力のほか、もう一つだけ、心当たりとなる要因があります。

 2度目の青森遠征の折、日本海側の深浦を朝に発って秋田を縦断、庄内まで南下していました。秋田竿灯まつり最終日と重なったその日。秋田市青柳町にある本格ナポリピッツァの店「COSI COSI コジコジ秋田山王店」を再訪するも臨時休業。代打の「オステリア ムーリベッキ」は特筆すべき収穫が無いまま初訪店を終了。

 口直しは、6月に続いて訪れた甘味処「広栄堂」で。伏流水を冷却した氷柱を丹念に手回しして削り出したパウダースノーのごときフワフワの食感が素晴らしい61種類が揃う当店のかき氷。看板メニューは、とぐろを巻いたソフトクリームがトッピングされたかき氷、生グレープフルーツソフト。通称「生グソ」(笑)。

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【Photo】店頭に「生グソ始めました」の貼り紙がある秋田市民が愛してやまない甘味処「広栄堂」にて。生グレープフルーツソフト(通称「生グソ」/手前・500円)と生イチゴソフト(奥・520円)。綿菓子のようにふわっふわの氷の中に果肉がふんだんに入っており、着色シロップ風味の一般的なかき氷の追従を許さない美味しさもてんこ盛り

iwagaki2016.jpg 秋田市の最高気温が31度を超す暑さだったこの日。激混みの店内で頂いた生グソで勢いづき、日本海沿岸東北自動車道を山形県境まで南下しました。

 見慣れた庄内側とは左右が逆の姿で鳥海山が「お帰り~」と出迎えてくれた秋田県にかほ市で、お盆前には必ず立ち寄る道の駅象潟「ねむの丘」へ。その目的は天然岩ガキです。

 産卵期を迎え、ぷっくりと膨らんだ大ぶりな乳白色の天然岩ガキは、酷暑を乗り切る滋養豊富な夏が旬の海の幸。昨夏食べ比べた中で最も身入りが良かったのが、新潟・笹川流れ産でした。その味をたとえるなら♪ ミルキーはママの味

 生グソと生岩ガキでロングドライブの疲れも吹き飛び、酒田花火ショーと重なった酒田に滞在した翌日は鶴岡まで南下。秋田で食べ損ねたナポリピッツァを「穂波街道 緑のイスキア」で食した昼過ぎには36度を超える猛暑の中、海の守り神・龍神信仰の寺で、かつて人面魚で一世を風靡した善寶寺にも詣でていました。

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【Photo】善寶寺境内(部分)。(手前より)釈迦三尊と十大弟子、羅漢様など個性豊かな表情の木像500体を配した五百羅漢堂は、1855年(安政2)に落慶法要が執り行われた。1867年(慶応3)に上棟した山門は、見事な透かし彫りが施された二層造り。魚の供養を願って創建された五重塔は、1893年(明治26)に完成。すべて登録有形文化財。zenpoji_omamori.jpg

 開祖妙達上人の生誕1150年に当たった昨年。7月中旬から10月末までの期間限定で、奥の院龍王殿所蔵の龍道大龍王と戒道大龍女のご尊体が開山以来初めて一般公開されていたのです。

【Photo】善寶寺参拝の折に頂戴した龍神様の守護札(右)が当選の手助けとなった。...のかも

 庄内系を名乗る以上、千載一遇の機会を逃すはずもありません。拝観後に足を運んだ善寶寺を守護する二体の龍神が棲むという貝喰(かいばみ)の池では、なかなか遭遇できないという人面魚が出迎えてくれたのでした(下画像)

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 こうしてプチ幸運が重なった挙句の今回のプレゼント当選で、終わりよければすべてよしとなった格好。

 めでたしめでたし。

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2016/10/16

カレー + 味噌 + 牛乳 +バター

青森発。華麗なる四位一体ラーメン

 イタリアンへの偏食傾向が著しい食生活をベースとする当Viaggio al Mondo ~あるもん探しの旅 ~。初めてメインテーマとして、日本の国民食として確固とした地位を確立しているラーメンを取り上げます。

 皆さまにとっては、取るに足らぬ些細な事ですが、庄イタにとって、これはちょっとした事件です(笑)。

 これまでラーメンが脇役としてでもViaggio al Mondoに登場したのは、わずか2回だけであることに今更ながら気が付きました。

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【Photo】青森市内で味噌カレー牛乳ラーメンを提供する5つのラーメン店が加盟する協同組合「青森味噌カレー牛乳ラーメン普及会」が監修し、青森県平川市の「高砂食品」が製造する半生めんタイプの「味噌カレー牛乳らぁめん」(2食入り・税込864円)

 一度目は、浜辺で鳥海山の水循環を目撃できる釜磯海水浴場をご紹介した際、追記で取り上げた「サンセット十六羅漢」。アオサノリがトッピングされる「夕日ラーメン」は、トビウオ出汁の魚介系スープ+酒田ラーメンの流れをくむ自家製細ちぢれ麺。日本海に沈む夕陽の光景までがご馳走となります。〈2007.8 拙稿「海に湧く山の水~大自然の水循環を目撃する海辺@遊佐町釜磯」参照〉

 二度目が、ネパール料理とカレーの店「Yetiイエティ」@気仙沼を取り上げた折のこと。〝どーせドライブインでしょ?〟などと侮るなかれ、濃厚系とは一線を画す野菜の旨味たっぷりな味噌スープと細目のちぢれ麺とが、絶妙な組み合わせとなる「南三陸ドライブイン ひかど食堂」の名品「味噌ラーメン」。〈2012.9拙稿「Yeti イエティ @気仙沼」参照〉

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【Photo】創始者の義弟・小田島敏也氏が味を受け継ぐ「札幌館」を訪れ、食事がてら購入した箱入り「味噌カレー牛乳らぁめん」。レンゲ一杯分の温めた牛乳とバター10gをトッピング。イタリア本国と同様にショートパスタとブロードの組み合わせによるPasta in zuppa(スープパスタ)が食卓にしばしば上るTaverna Carloにて本場の味の再現を試みる之図

 リゾット感覚で頂けるコメ状のパスタ「Seme di cicoria セメチコリア」や星状の「Stelline ステリーネ」などのショートパスタ+ブロードの組み合わせによるスープパスタならば、食す機会が少なくはない庄イタ。ブログ開設以来、9年を経た今回、初めて主役として登場するラーメンが、この夏に青森で出合った「味噌カレー牛乳ラーメン」です。

 青森市は中華麺の年間購入額が全国の県庁所在地の中では第2位(総務省2007年統計)。インスタント麺の購入数量が9年連続全国一(総務省2015年統計)という土地柄。

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【Photo】青森味噌カレー牛乳らーめん普及会の監修により、青森県内で限定販売されるカップ麺、東洋水産「青森味噌カレーミルクラーメン」(税別240円)

 仕事やプライベートで青森各地に足を運ぶ機会はこれまで幾度もあり、未食の津軽煮干しラーメンのほか、味噌カレー牛乳ラーメンの存在自体は知っていました。

 本州最北までの遠征を厭(いと)わせない魅力的なイタリア料理店が、南部・津軽両地域に揃う青森。ゆえに例えば三沢では必ずナポリピッツアを食するのが常となります。<2013.8拙稿「庄内系イタリア人的青森・前編」参照>

 そんな嗜好の結果、(青森に限らず)庄イタがラーメンを口にする機会は、おのずと限られるのです。今年7月中旬に開催されたあおもりマルシェで、アムさんメロンの秀品をゲットすべく、マルシェ前日に青森市入りしました。

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【Photo】東洋水産「青森味噌カレーミルクラーメン」。粉ミルクを使用し、バター風味のキューブをトッピング。専門店の味に迫ろうとしている

 直前まで週末のスケジュール調整がつかなかったため、今回も予約ができずご無沙汰している弘前市の某イタリアンではなく、東日本大震災の前日に出張した青森市長島で出逢って以来、贔屓にしている「Al Centro アル・チェントロ」〈2012.5拙稿「1年ぶりの青森美味巡礼-花の命は短くて...。2012春」参照〉を夜に予約済みだったその日。

 毛色の違った昼食にしようと訪れたのが「札幌館(下画像)。こちらは一見アクロバティックな組み合わせによる味噌カレー牛乳ラーメンを考案した故・佐藤清氏の義弟が営む店です。

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 1975年(昭和50)当時、青森市の中高生の間では、ゲーム感覚でマヨネーズやコーラなど、さまざまな食材を組み合わせてラーメンを食するトッピングミックスなる現象が流行したのだといいます。

 そんな好奇心旺盛な中高生の求めに応じ、札幌・ススキノのラーメン横丁で研鑽を積んだ佐藤氏が1968年(昭和43)に独立して開いた「味の札幌」の裏メニューとして考案したのが、味噌カレー牛乳ラーメンでした。

 意外な組み合わせの美味しさは口コミで広がります。インパクト十分な組み合わせが奏功、現在では青森市のB級グルメとして名声を得るに至りました。

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〝味噌ベーススープ+カレー+牛乳+バター+中華麺〟という前衛的な組み合わせがもたらす味は、どうにも頭では想像がつきません。百聞は一食に如かず。まずは体感しないことには謎の実態は解明されないのでした。

 意外とハマった「生姜味噌風味おでん」同様、冬が厳しい青森の風土が育んだ珍味(?)の誘惑には勝てません。
 
 こうして訪れた札幌館で、期待と不安が入り混じる庄イタの前に湯気を立てて登場した味噌カレー牛乳ラーメン(上・下画像・700円)。

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 カレー粉が香る合わせ味噌ベースのスープには、相性が良いケースが多い発酵食品同士の組み合わせとなるバターの風味が加わります。バターがコクをもたらし、その原料となる牛乳が調和とまろやかさを生み出します。

 意表を突いた組み合わせの妙を確認し、探求心のスイッチが入った庄イタ。次なる青森訪問の機会となった今年の青森ねぶた祭りの折、味の札幌創業時から佐藤清氏の片腕として味を支えた大西文雄氏の店「味の札幌 大西」を訪れました。

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 青森駅のほか、のっけ丼で知られる古川市場、地階が魅力的なアウガなどからほど近い好立地にある味の札幌 大西。開店して間もないにもかかわらず、すぐ満席になった店内には若い女性観光客の姿もちらほら。

 注文したのが、一番人気だという「味噌カレー牛乳ラーメン(バター入り / 830円)」(下画像)。本家筋としての札幌館、暖簾分けを許された味の札幌 大西の食べ比べが、こうして実現しました。

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 トッピングされる具にワカメの有る無しが最大の違いですが、まろやかでスパイシーな味噌味のスープと相性が良い太目でのど越しの良い縮れ麺は、両店とも相通じるものがあります。

 実食した感想としては、意表を突いたこの組み合わせ。大いに゛アリ〟です。訪れた両店の繁盛ぶりが、話題性を越えた独自の味が秘めた普遍性を物語ります。

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 お好みの付け合わせには、札幌館がおろしニンニク、 味の札幌 大西には梅干しが用意されます。 〝そこにしかない味〟という点では、折り紙付きの個性的な味噌カレー牛乳ラーメン。

 底冷えするこれからの季節、まだ訪れていない普及会の会員店「味の札幌分店 浅利」「札幌ラーメン蔵」「かわら」のいずれかで味わってみたいものです。

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札幌館
 住:青森市石江字岡部56-3
 Phone:017-782-1765
 営:11:00~21:20 不定休

味の札幌 大西
 住:青森市古川一丁目15-6
 Phone:017-723-1036
 営:11:00~21:30 年末年始休

 
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2016/09/17

躍動、縦横無尽。

青森ねぶた祭&五所川原立佞武多(たちねぷた)の偉容

◆青森ねぶた祭 編◆
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Feeding The Planet, Energy For Life.(地球に食料を、生命にエネルギーを)〟をテーマに昨年5月1日から10月31日までイタリア・ミラノで開催された「 Expo Milano 2015 (ミラノ国際博覧会)」には、140を超える国と国際機関がパビリオンを出展。184日間の会期中、2,150万人が訪れました。

 岩手県産のカラマツを木組み工法で組み上げた外観の日本館はとりわけ好評を博し、連日入館待ちの長蛇の列。入館者の9割が規則に縛られることを嫌うイタリア人だったにもかかわらず、最長で9時間も(!!)並んだことが、驚きをもって地元メディアで紹介されました。

Expo2015Milano.jpg【Photo】ミラノ万博には、2001年に大英博物館に出品したねぶたが世界最高のペーパークラフトと評され、2012年に第6代ねぶた名人の称号を授与されたねぶた師・北村隆氏が太陽と地球を表現した「日天・水天」が、八戸港からジェノヴァまで海を渡って凱旋した

 7月11日の「ジャパンデー」には「東北復興祭りパレード」が行われ、東日本大震災で寄せられた支援への感謝を込めて東北6県の夏祭りが披露されました。福島わらじまつり仙台七夕秋田竿灯まつりなどとともに、青森ねぶた「日天・水天」(上画像 / 幅6m・高さ4.5m・奥行き4.5mも出陣。

【Movie】2015年7月11日にミラノ万博ジャパンデーの目玉として催された「東北復興祭りパレード」

 毎年8月2日~7日に開催される青森ねぶた祭に繰り出す大勢の囃子・跳人(はねと)に先導された赤・青・黒などの原色を配した大型ねぶた(幅9m・高さ5m・奥行き7mが宵闇に鮮やかに浮かび上がる大迫力を再現できたかは、正直微妙なところ。

 欲を言えば青森ねぶたの運行は、あっけらかんとひたすら明るい真夏のイタリアの太陽のもとではなく、熱い情念が解き放たれる夜間であってほしかったのですが...。

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画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会

 短い北東北の夏に燃え立つ燎原(りょうげん)の火のごとく、青森県内各地で催されるねぶた(ねぷた)祭。好天に恵まれた今年は、東北三大夏祭りでは最多となる276万人を集めた青森ねぶた祭、武者絵などが描かれた大小80台の扇型山車が「ヤーヤドー」の掛け声で繰り出す弘前ねぷたまつり、後述する五所川原立佞武多(たちねぷた)などは、実物に触れてこそ、溢れんばかりの熱気やスケールが体感できます。

 このところ、めっきり日が暮れるのが早くなりました。ここにご紹介するのは、お囃子と「ラッセラー、ラッセラー」の掛け声とともに真夏の夜を熱く焦がした熱気渦巻く青森ねぶた祭に出陣した大型ねぶた22台の中から選ばれた入賞作。今更ではありますが、どうぞご覧ください。

nebuta2016taisho.jpg青森ねぶた「ねぶた大賞」:蝦夷ケ島夷酋(えぞがしまいしゅう)と九郎義経

竹浪比呂央氏 作(JRねぶた実行プロジェクト)

nebuta2016chijisho.jpg青森ねぶた「県知事賞」:俵藤太(たわらのとうた)と竜神
北村 隆氏 作(ヤマト運輸ねぶた実行委員会)

shichou.jpg青森ねぶた「市長賞」:箭根森八幡(やのねもりはちまん)
竹浪比呂央氏 作(青森菱友会)
画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会

aomorinebuta-shimin.jpg青森ねぶた「商工会議所会頭賞」:陰陽師(おんみょうじ)、妖怪退治
北村麻子氏 作(あおもり市民ねぶた実行委員会)

 唯一の女性ねぶた師・北村麻子氏は、昨年秋に長女を出産したばかり。大型ねぶた5作目「陰陽師、妖怪退治」は、背面の「送り」もサービスショットでご紹介します(下画像)

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 化け猫の顔にいたずら書きをする子、化け猫のヒゲを引っ張る子、大泣きする子。母親となった北村氏が、子育てと仕事を両立させながら取り組んだ新作ならではのディテールではないでしょうか。

nebuta-hitachi.jpg青森ねぶた「観光コンベンション協会会長賞」:忠臣蔵

北村蓮明氏 作(日立連合ねぶた委員会)

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◆五所川原 立佞武多 編◆  
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 青森ねぶたの熱気と余韻を残したまま迎えた翌日。既報の田舎館村・田んぼアート会場〈2016.9拙稿「シン・ゴジラ出現!@田舎館村」参照〉・弘前「岩木山神社」や、出回り始めていた「嶽きみ」〈2013.9拙稿「キミだけを想ってる 」参照〉の確保に訪れた嶽地区など岩木山麓を経て、五所川原市に庄イタは出没しておりました。

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【Photo】年間を通して大型立佞武多を展示する「立佞武多の館」から姿を現した「忠孝太鼓」。全高17m・重さ18t。二層重ねの大太鼓は、直径2.4mで、迫力の重低音を響かせる

 今年7月中旬、「アムさんメロン」〈2013.8拙稿「庄内系イタリア人的青森〈後編〉」参照〉が出品される青森マルシェを昨年に続いて訪れた足で、五所川原「立佞武多(たちねぷた)の館」を訪れていました。

 そこで安土桃山時代に歌舞伎の源流となる「かぶき踊り」を編み出した出雲阿国を題材に、今年の立佞武多に初お目見えする「歌舞伎創生 出雲阿国(いずものおくに)」を担当した立佞武多師・齊藤忠大(ただひろ)さんの躍動感あふれる下絵(下画像)を目にしていたのです。

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 青森ねぶたにしろ、弘前ねぷたにしろ、歌舞伎や神話などに題材をとった男性的な〝ますらをぶり〟な作例が多いかと思います。そんな中で、2006年(平成18)に五所川原市観光物産課副主幹(当時)三上敦行氏が手掛け、鬼子母神が題材となった「絆」に続き、女性を題材とした今年の新作立佞武多は、完成形を是非とも見たいと思ったのです。

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【Photo】かぶき踊りを舞う出雲阿国を題材とする新作「歌舞伎創生 出雲阿国」の大きく跳ね上げた左足を真下から。アンクレット風の朱数珠 & ペディキュア風の赤い爪紅(つまべに)で女子力アゲアゲ。着物の裾からのぞく生おみ足に萌え~ 之図

 組み上げると高さ23m・幅8mに達する巨大な立佞武多。「ヤッテマレ、ヤッテマレ」の掛け声や勇壮な太鼓やお囃子とともに、あでやかに舞う出雲阿国が市街地を練り歩く姿を想像しながら、期待を胸に五所川原入りしました。

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【Photo】立佞武多の館から姿を現した2014年製作「国性爺合戦 和籐内(こくせんやがっせん わとうない)(前方)、2015年製作「津軽十三浦伝説 白髭水と夫婦梵鐘(しらひげみずとめおとぼんしょう)(後方)

 8月4日~8日までの祭り初日に登場する五所川原が生んだ大スター吉幾三さんの生歌唱パレードと並ぶ(?)見ものの一つは、巨大な大型立佞武多が立佞武多の館から出陣する場面。

 地上6階建て(高さ38m)の建物に設けられた可動式のゲートから、二層建ての八尺(直径約2.42m)太鼓の上にねぷた飾り「三日月祈願 山中鹿之介」を据え付けた「忠孝太鼓」に先導され、ここ3年で製作された大型立佞武多3台が、開口部に接触せぬよう、スローモーションのようにゆっくりと姿を現すさまは圧巻です。

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【Photo】大勢の引き手に導かれて立佞武多の館を出陣し、通りへと繰り出す2016年新作「歌舞伎創生 出雲阿国」(上画像6点)。女性の体重を明らかにするのは無粋なれど、総重量は19t。五所川原市街地中心部を巡回するスタート地点で「忠孝太鼓」と「歌舞伎創生 出雲阿国」が相まみえるさまは、特撮映画ゴジラ対キングギドラさながら(下画像)

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 市街地と沿道の観客を見下ろしながら練り歩く大型立佞武多。それはフルCGで製作されたシン・ゴジラの虚構世界が、あたかも目の前で現実となったかのよう。

2014watonai.jpg【Photo】立佞武多の館では3年ごとに常設展示する大型立佞武多の入れ替えを行う。今年が最後の出番となった2014年製作「国性爺合戦 和籐内」(鶴谷昭法氏作)は、来年の新作立佞武多の完成を待って解体される。勿体ないので、どなたかご自宅の改築またはビル新築を前提に引き取りませんか?

 3Dメガネをかけずとも、VFXを駆使したインディペンデンス・デイ:リサージェンスを凌ぐド迫力を味わえた五所川原立佞武多を、とくとご覧ください。

2015shirahigemizu.jpg【Photo】2015年製作「津軽十三浦伝説 白髭水と夫婦梵鐘」(福士裕朗氏作)

  2016年の〝たをやめぶり〟な新作「歌舞伎創生 出雲阿国」のあでやかな舞いを正面より見上げる之図。(下画像)

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 迫力に気おされ、番傘を差した阿国の後ろ姿を見送る之図。奥は立佞武多の館に帰還せんとする国性爺合戦 和籐内。(下画像)

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 八戸・青森・五所川原と青森県を横断し、ド派手で奇想天外な山車や勇壮なねぶた、そして規格外の大きさの立佞武多を間近にして、物体の大きさを捉える感覚に微妙な狂いが生じていたような気がします。

 そのダメ押しとなったのが、五所川原から鰺ヶ沢・深浦を経由して日本海沿いを花火大会が開催される酒田を目指して南下した途中・秋田県能代市でのこと。

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【Photo】2013年(平成25)、1世紀ぶりに復活した能代七夕を彩るどこかポップな極彩色の大型行燈。手前の「嘉六(かろく)」は高さ17.6m、奥に控える「愛季(ちかすえ)」は高さ24.1m

 R7を南下中に通りかかった能代市役所の裏手には、8月3日・4日に開催される能代七夕「天空の不夜城」に繰り出す大型燈籠2基(上画像)が展示されており、横浜中華街の牌楼(パイロウ)的な存在感を示していました。

 度肝を抜かれたのが、立佞武多より高く、燈籠としては日本一の高さだという24.1mの「愛季(ちかすえ)」。

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 明かりが灯った状況(上画像)とは違い、いわゆる〝昼行燈(ひるあんどん)〟でしたが、Beijing opera(ペキン・オペラ)こと京劇を思わせるビビッドな配色とキッチュな造型、そして型破りの大きさに目を丸くしました。

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 中秋の名月を過ぎ、もはや真夏の夜の夢にも思える五所川原立佞武多、青森ねぶた祭、八戸三社大祭と、青森を巡った3つの夏祭りをシリーズで回顧してきました。

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 こうして北東北のスペクタクルを体感した挙句、巨大な異形の人形が多数繰り出すイタリア・トスカーナ州のビーチリゾートViareggio ヴィアレッジョで開催される「Carnevale di Viareggio ヴィアレッジョのカーニバル」(上画像)が、妙に思い起こされるオチがついた夏でした。

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2016/09/10

巨大スケール 縦横無尽

「殿、利息でござる!」「ティファニーで朝食を」「シン・ゴジラ」と映画に関連づけた話題が続いたこの夏。その最後を締めくくるのは、桁外れの大きさの宇宙船で来襲し、地球を植民地化しようとする地球外生命体に結束して立ち向かう人類の闘いを描いた作品です。

迫力の3Dで迫り来る侵略者もタジタジのピッツァ
& 棟方志功に見る青森ねぶたの色彩


cooking-kingdom2016.6.jpg 「TOHOシネマズ仙台」がキーテナントで6~9Fを占める仙台PARCO2の1F飲食フロアには「サルヴァトーレ クオモ& バール」が東北初出店(下画像)

 7月1日(金)のグランドオープン前日に行われたプレス内覧会には、日本にナポリピッツアを広めた功労者でナポリ出身のサルヴァトーレ・クオモ氏も駆けつけ華を添えていました。

 そうして期せずしてトートバッグに忍ばせていた料理王国6月号の表紙(右画像)をちらつかせながら、落合務シェフと並んで写るクオモ氏とご対面。

©CUISINE KINGDOM

 2003年にナポリで開催されたピッツァ職人の技能を競う世界最高峰の大会「Pizzafest」において、イタリア人以外で初の最優秀賞に輝いた大西 誠氏も、生地づくりや薪窯の技術指導のため、数日間は仙台にいらっしゃる予定であることを店の方から聞き出しました。

 上杉「ピッツエリア・パドリーノ・デル・ショーザン」、楽天コボスタ内「穂波街道 赤のイスキア」、塩竃「ラ・ジータ」、定禅寺「ダ・ジェンナーロ」、台原「イル・ピッツァイオーロ」といった庄イタをうならせる本場ナポリの味を仙台に居ながらにして味わえるピッツェリアが増えつつある仙台圏。

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 一方で、東京・中目黒「ダ・イーサ」で、山本尚徳さん(下画像)の手になるサックリ&モチモチの食感が素晴らしいピッツア生地が、何故に世界一なのかを体感するなど、日々の鍛錬も怠りません。

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 マルゲリータ・レッジーナ協会主催「Trofeo città di Napoli ナポリ・ピッツア選手権」において、2007年と2008年に世界一に輝いたのが、当時、南青山の名店「Napule」のピッツイオーロだった山本さんでした。

marinala-daisa.jpg【Photo】異次元の食感で魅了する生地の旨さは特筆もの。Pizzera e Trattoria da Isa ダ・イーサのマリナーラ(1,500円)

 2003年世界チャンプ・大西氏のマルゲリータS.T.G.を新潟で食して以来の願ってもない機会ゆえ〈2013.10拙稿「すわ119番」参照〉、開店初日のランチに再訪した折には、ピッツアが冷めかねない通常メニューのランチビュッフェには目もくれず、大西さんが焼き上げたマリナーラ(下画像・S1,300円・M1,500円)を所望したのです。

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 内覧会の翌週末、再びPARCO2に足を運んだ一つの理由は、多店舗展開による個々の質の劣化という飲食店が陥りがちな悪弊に関して、サルヴァトーレ クオモ&バールが、その例外であるかどうかを見極めんがため。

 注文したカルボナーラが、熱々を食したいピッツアと同時に運ばれてくるなど、現場のオペレーション面ではオープンして間もないハンデを差し引かねばなりません。今後に期待しましょう。

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 ピッツアに換算したなら数億食分はあろうかという大きさの宇宙船(下画像)が地球に来襲するIMAX®3D版の「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」を鑑賞するのが、もう一つの仙台PARCO2を訪れた目的でした。

resergence-mothership.jpg【Photo】前作では直径24kmの設定だったエイリアンの宇宙船。新作では格段にスケールアップした母船が登場。映画「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」より ©2016 Twentieth Century Fox Film Corporation

 20年前に人類が結束して撃退したエイリアンが、遥かにスケールアップして再び地球を襲う「インディペンデンス・デイ:リサージェンス」。

 北米大陸を覆いつくすほどの巨大な宇宙船(下画像)の大きさのみならず、製作費についても1億6千5百万ドル(約165億円)の巨額を投じたSF超大作です。

indipendenceday-1.jpg【Photo】地球の重力を操作する技術を備えたエイリアンは、世界の主要都市を破滅に追い込む。映画「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」より ©2016 Twentieth Century Fox Film Corporation

 20年前に公開された第一作「インデペンデンス・デイ」では、ベトナム戦争の退役軍人ラッセル・ケイスが、ミサイルを装填した戦闘機ごと体当たりして母船を破壊。地球制服を目論むエイリアンと人類との死闘の末に地球を救いました。

 前作では湾岸戦争でパイロットとしての従軍経験がある設定だった米国大統領ホイットモアが、前作のラッセルと同じく自らの命と引き換えに人類を救う元大統領役を新作で演じます。

indipendenceday2.jpg【Photo】地球制服を目論む巨大で強力な侵略者に対し、人類はいかに立ち向かうのか。映画「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」より ©2016 Twentieth Century Fox Film Corporation

 前作より遥かに巨大化したエイリアン母船に対し、武力による徹底抗戦を挑むアメリカ。新作でもアメリカ独立記念日の7月4日が人類が勝利を収める日という設定がなされています。英雄の登場を待望し、世界の盟主たらんとする米国らしさが炸裂するこの作品。

 トランプ候補に拍手喝采するアメリカ市民のメンタリティと共通する〝善〟対〝悪〟の単眼的な図式化は、イスラム原理主義やテロとの戦いを主導する第二次世界大戦の戦勝国・米英仏の根底に流れる発想と相通じるように感じます。

IndependenceDay-queen.jpg【Photo】巨大なエイリアンの女王と繰り広げる死闘の結末やいかに。映画「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」より ©2016 Twentieth Century Fox Film Corporation

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 IMAX®デジタルシアターの巨大スクリーンに投影される空を覆いつくす巨大な宇宙船や、体長118.5mに巨大化したシン・ゴジラが引き起こした大きさの感覚に関する麻痺に追い打ちをかけたのが、既報の八戸三社大祭に加え、青森ねぶた、そして五所川原立佞武多と続いた夏祭りのハシゴでした。

oirase2016.8.jpg【Photo】鬱蒼とした樹間からこぼれる木洩れ日と、十和田湖から流れ出る豊かな水流とが、多彩な緑のコントラストを描き出す奥入瀬渓流「石ヶ戸の瀬」

 八戸から青森市への移動ルートに選んだのは、山岳コースのR103。寄り道した緑したたる樹間を変化に富んだ渓流美が続く「奥入瀬渓流」のハイライトとなる「石ヶ戸」~「銚子大滝」間、約8kmでマイナスイオンをたっぷりと浴び、まずはココロの洗濯。

choshi_otaki.jpg【Photo】雪解け水で水かさが増える春先は最大幅20mにもなり、落差7mの高さを水しぶきをあげて流れ落ちる「銚子大滝」は、奥入瀬渓流の本流では唯一の滝。轟音を響かせる滝を前に思い起こしたのが、5年前の9月、羽黒山伏修行の折に湯殿山での瀧行だった〈2011.12拙稿「修験道体験@出羽三山」参照〉

 広葉樹林帯からブナの森を縫うように走るR103。次第に標高が上がると、八甲田山が北限となるアオモリトドマツの森へと植生が変わってきます。標高890mのいで湯「酸ヶ湯温泉旅館」の名物、総ヒバ造りの「千人風呂」で身を清めてから青森市に到着しました。

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 大型ねぶたの運航が開始される19時10分までは時間の余裕がありました。そこで訪れたのが、世界的な板画家・棟方志功(むなかたしこう・1903~1975)の業績を展示する「棟方志功記念館(上画像)

munakatashiko-saku_konin.jpg 青森市で鍛冶屋の三男として生まれた棟方志功は、18歳で文芸誌「白樺」の表紙に描かれていたゴッホの「ひまわり」と出合い衝撃を受けます。「わだばゴッホになる」と画家の道を志します。1939年に発表した代表作「二菩薩釈迦十大弟子」で国内における名声を確立。1956年のヴェネツィア・ビエンナーレ版画部門で日本人初の国際版画大賞を受賞するなど、ここで改めてご紹介するまでもなく、海外でも広く認められた偉大な芸術家です。

【Photo】モノトーンの板画に裏側から色を滲ませる裏彩板画の作例。1962年(昭和37)「弘仁の柵」

 ねぶた祭を愛した志功は、郷里を離れた後も、跳人(はねと)として祭りに参加したそうです。志功が生命の象徴として好んで取り上げた丸顔で豊満な女性像に見られる裏彩板画の色合いは、躍動感に溢れるねぶたの配色を彷彿とさせます。

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【Photo】開幕を告げる打ち上げ花火に続き、血沸き肉踊る青森ねぶた祭の主役・大型ねぶたの先陣を切って出世大太鼓の勇壮な響きが近づいてくる

haneto2016.jpg【Photo】扇子持の合図で動くねぶたの曳き手、跳人と囃子が一体となって青森の夏の夜を焦がす

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画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会

 黄昏時に聞かれる虫の鳴き声が、ヒグラシからスズムシへと変わり、過ぎ去った夏の感傷に浸るビデオクリップが秀逸なドン・ヘンリーの名曲「The Boys of Summer」が似つかわしい季節となりました。

 次回、「躍動、縦横無尽。青森ねぶた祭&五所川原立佞武多(たちねぷた)の偉容」で、笛・太鼓・手振り鉦が奏でるお囃子と、通りを練り歩くねぶたが宵闇を熱くする青森・津軽の短い夏を回顧します。

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2016/09/03

シン・ゴジラ出現@田舎館村

 前回「陸奥湊で朝食を」冒頭で登場した名作「ティファニーで朝食を」に続き、今回はこの夏公開され話題となった超・巨大な相手に立ち向かう人間の奮闘を描いた映画最新作にちなんだ話題を3回シリーズでお届けします。

最新VFXを越える田んぼアートのリアリティ

 VFXVisual Effects ビジュアル・エフェクツ)や3Dを駆使したデジタル視覚効果技術と、音響を含めた劇場設備の進歩により、映画の虚構世界をリアルに体感することが可能となりました。

 7月1日にオープンした仙台PARCO2には、床面から天井・正面の壁すべてが大きなスクリーンとなる最新鋭のIMAX®デジタルシアターを含む9つのスクリーンを備えたシネマコンプレックス「TOHOシネマズ仙台」が6~9Fにキーテナントとして入居しています。

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©2016 Toho co.,ltd.      

 まず俎上に乗せるのは、〝現実(ニッポン) 対 虚構(ゴジラ)〟をキャッチフレーズとする東宝作品「シン・ゴジラ」IMAX®版。

 羽田沖に突如出現し、大田区へと上陸した謎の巨大不明生物(ゴジラ)。予想だにしない緊急事態に右往左往し、機能不全に陥り被害を拡大させる日本政府。東日本大震災と原発事故の折の対応を想起させる政権中枢の優柔不断ぶりが、シニカルかつリアルに描かれます。

godilla_1.jpg【Photo】鎌倉に出現したゴジラは、シリーズ29作目にして過去最大の大きさに巨大化。映画「シン・ゴジラ」より ©2016 Toho co.,ltd.

 体内での核融合がエネルギー源となる巨大不明生物は、血流による体の冷却では追い付かず、突如として東京湾の海中へと姿を消します。鎌倉への再上陸時には、118.5 mまで体長が巨大化。

 ゴジラは横浜・川崎を移動して北上を続けます。戦後初の防衛出動を決断した内閣総理大臣の指示で、一斉攻撃に臨む自衛隊。しかし日本が保有する通常兵器では全く歯が立たず、ゴジラは防衛線を楽々と突破。東京都心へと移動します。

godzilla_2.jpg【Photo】首都防衛の生命線となる多摩川付近で、自衛隊は陸と空からの一斉攻撃に臨むが...。映画「シン・ゴジラ」より ©2016 Toho co.,ltd.

 日米安保条約に基づく出動要請を受けた米軍の地中貫通爆弾による攻撃で、致命傷を負ったかに思えたゴジラは、状況に応じて驚異的な進化を遂げる究極の生命体へと進化していました。国連安保理は中露が主導し、自国への被害拡大が懸念されるゴジラ殲滅(せんめつ)のため、東京での核兵器使用を決議します。

 各省庁の異端児たちの混成チームを主導する内閣官房副長官・矢口蘭堂は、日本に対する3度目の核兵器使用を回避すべく、血液凝固剤の経口投与によるゴジラの活動停止を画策。チームワークで立ち向かいます。

【Movie】映画「シン・ゴジラ」予告編 ©2016 Toho co.,ltd.

 次回取り上げるローランド・エメリッヒ監督最新作「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」でも共通して描かれるのが、絶体絶命の事態打開に向けたプロセス。日米それぞれの国情や国民性の違いが如実に表れているように感じました。

 もはやこれ以上のタネ明かしは野暮というもの。正確な金額は非公表ながら、東宝としては異例の総額20億円以上といわれる製作費を投じた超大作の結末は、どうぞ劇場で見届けて下さい。

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 この夏、最新VFXを駆使した映画の虚構世界を凌駕する現実と出合ったのが、夏祭り期間に訪れた青森でのこと。

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【Photo】田んぼアート発祥の地・青森県南津軽郡田舎館村の「道の駅いなかだて『弥生の里』」。360°の視界が開ける第2会場展望所からは、津軽平野と岩木山が一望のもと

 今回ご紹介するのは、1993年(平成5)から回を重ね、今年で24年目を迎えた田んぼアート開催真っ最中の青森県南津軽郡田舎館村(いなかだてむら)

 各地で同様の取り組みがなされる田んぼアート発祥の地・田舎館で庄イタが訪れたのは、NHK大河ドラマ「真田丸」をテーマとする第1会場ではなく、色の異なる7色9種類の水稲でシン・ゴジラを表現した第2会場でした。

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【Photo】田舎館村田んぼアート第2会場。背中から放射状に光線を発しながら国会議事堂を襲撃せんとする巨大スケールのシン・ゴジラは今にも動き出しそう。左右分割でのご紹介となったのは、18-55mmズームレンズではフレームアウトしてしまうゆえ、ご容赦のほど

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 道の駅いなかだて「弥生の里」に隣接する田んぼ約1ヘクタールの奥行き70m×幅150mが、田んぼアートのカンバスです。これは庄イタが映画シン・ゴジラを鑑賞したTOHOシネマズ仙台では最大となるシアター6(横31列・全366席)「IMAX®デジタルシアター」を遥かに超えるスケール。

 桁外れの大きさの田んぼアートを鑑賞するためには、道の駅いなかだてに4年前に造られた高さ21mの「弥生の里展望所」(入館料:中学生以上300円・小学生100円)から、鳥の視線を得て眺める必要があります。

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【Photo】自衛隊の火器による攻撃ではビクともしない分厚く強固なゴジラの外皮は、ニガウリ(ゴーヤ)をイメージしたという。風に吹かれてサワサワと揺れる稲が、あたかもゴジラが動いているかのような錯覚を生み、迫真のリアリティをもたらす

 感嘆すべきはその完成度の高さ。測量技術を用い、パースペクティブを考慮して展望所から眺めた際に形状の歪みが出ないよう下絵を基に設計図を作成します。

 今年の新作シン・ゴジラに関しては、田んぼに1万2千か所のポイントをプロットし、地元の方たちが、食用米「つがるロマン」・ 葉が白い観賞用品種「ゆきあそび」・古代米の「黄大国」や「紫大黒」など、色の異なる稲の苗を手植えしたのだといいます。

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【Photo】正しい日本語では「食べられる名作」とあるべきキャッチフレーズ。官製〝ら抜き言葉〟が気になる田舎館村作成による今年の田んぼアートのフライヤー(部分)。表面に採用された図柄は、昨年の第一会場「風と共に去りぬ」

 2013年(平成25)7月、弘前市と黒石市とを結ぶ弘南鉄道弘南線に「田んぼアート駅」が設置され、人口8,000人の村を年間35万人近くが訪れる観光集客の目玉となっています。交流人口増による地域おこしにも寄与した田んぼアートは、年を追って芸術性のレベルが向上。国内外から高い評価を受けています。

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 昨年からは巨大な「石のアート」にも新たに挑戦。〝不器用ですから〟のセリフが記憶に残る高倉健をモノトーンで器用に表現した前年作(上画像)に続く今年の新作は、昭和の大スター石原裕次郎(下画像)。苦み走った裕ちゃんは、きっとこう言っているのでしょう。「♪ 俺は待ってるぜ

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 村では例年9月末に刈り取り体験ツアーを実施します。ご興味があおりの方は、田舎館村企画観光課商工観光係(Phone:0172-58-2111 / 内線242・243)まで。

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 そもそも田舎館村が全国に先駆けて田んぼアートを始める契機となったのが、1981年(昭和56)にR102のバイパス化工事で、弥生時代中期にあたる2,000年前の水田跡が発見された垂柳(たれやなぎ)遺跡の存在でした。

 国内最大級の縄文集落跡「三内丸山遺跡」や、呪術で使われたと推測される異星人のような姿の遮光器土偶が出土した「亀ヶ岡遺跡」など、豊かな縄文文化が本州最北の地で花開いた青森。

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【Photo】田舎館村埋蔵文化財センターは、垂柳遺跡で発見された細かく仕切られた2,000年前の水田跡に建っており、 遺構露出展示室では遺構を間近に見学できる。手前の窪みは水路跡

 稲作を暮らしの基盤とする弥生文化が本州最北部に定着していたことを示す656枚(約8,000平方メートル)の水田跡は、北東北には弥生は存在しなかったというそれまでの定説を覆す発見だったのです。

 洪水により埋没し、打ち捨てられたと推定される小さく区割りされた弥生時代の水田跡で見つかったのが、当時そこで暮らしていた人々の数万にも及ぶ足跡でした。

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【Photo】田舎館村埋蔵文化財センターの入口ホール。年齢が特定された男女数名が遺した足跡をガラス越しに見ることができる

 その大きさと凹みの深さから、おおよその年齢や性別を推定。家族と推定される子どもを含む男女が揃って農作業を行っていたことが分かっています。

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 道の駅いなかだて「弥生の里」と通りを挟んで隣接する垂柳遺跡には、博物館と埋蔵文化財センター(共通入館料:大人300円・中高生200円・小学生100円)が建っています。

 田んぼアートの里を訪れた際は、稲作が北東北に定着し、弥生時代中期の人々の暮らしを支えていた田んぼの遺構もお見逃しなきよう。

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2016/08/20

Breakfast at Mutsuminato ~陸奥湊で朝食を~

三位一体の黄金比。キミよ知るや「ヒラメの漬け丼」
旨さどっぷり@八戸

 米国の小説家トルーマン・カポーティ原作による1961年公開の映画「ティファニーで朝食を(原題:Breakfast at Tiffany's )」は、早朝の人通りがないニューヨーク5thアヴェニューの高級宝飾店ティファニー前に1台のタクシーが停車するシーンで始まります。

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 タクシーから降り立ったのは、名前のないネコとの自由奔放な一人暮らしをNYのアパートで謳歌するホリー・ゴライトリー(オードリー・ヘップバーン)。

 原作の設定ではコールガール役ゆえ、仕事明けなのか、あるいは夜通し遊んで帰宅の途中なのかもしれません。長い髪をアップにまとめ、前髪にティアラをあしらったホリーは、ジバンシィの黒いカクテルドレスに身を包み、5連の模造パールネックレスで装い、レイバンのサングラスをかけています。

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 そんなドレッシーな装いにもかかわらず、ホリーはショーウインドーを覗きこみながら、紙コップのコーヒーを手に紙袋から取り出したデニッシュ・ペストリーをパクリと立ち食い。(上画像)

 パンとコーヒーだけの朝食というと、ヨーロッパが渡航先のパッケージツアーに組み込まれるホテルの定番「コンチネンタル・ブレックファースト」でご経験の方もおいでかと。

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 飲み食いが生きがいである欧州のラテン民族は、往々にして深夜まで家族や友人とアルコールと共に動物性蛋白質が中心の夕食をふんだんに摂取します。そのため、反動としての簡単な朝食スタイルが定着しています。

 肉食系のヨーロッパから見れば、総じて草食系と言って差し支えない日本人。前夜によほどハメを外して深酒をしない限り、パンとコーヒーだけの朝食では物足りないと感じるのでは?

 イカと並んで青森県八戸(はちのへ)港が水揚げ日本一のとある白身魚の美点を最大限に引き出したほっぺが落ちそうになる絶品朝ごはんを頂くため、夜半に仙台を発った8月某日。途中で休憩をとりながら東北自動車道を北上すること300km。早朝に八戸入りしました。

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 時刻は7時15分。およそマンハッタンとは雰囲気が異なるJR八戸線・陸奥湊駅前通り(上画像)を散策しながら、庄イタが思い起こしたのは、街並みとシチュエーションが似ているようで似ていないこの映画の冒頭シーンでした。

 陸奥湊駅前通りから500mほど離れた館鼻(たてはな)岸壁で日曜朝に開催される「館鼻岸壁朝市」に規模では譲りますが、1953年(昭和28)開設当時の猥雑な雰囲気が色濃い「八戸市営魚菜小売市場(下画像)をはじめ、時間が遡ったかのような錯覚を覚える陸奥湊駅前通りは、ディープな魅力に溢れています。

 駅を挟んで陸奥湊駅前通りの東西300 mほどの区間では、日曜を除く早朝3:00から正午まで「陸奥湊駅前朝市」が開かれます。

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 苦味が特徴の地キュウリ「糠塚キュウリ」が目を引く露天市や、養殖物とは明らかに異なる突起が目立つ形状と、のるかそるかの特有のクセがないため、宮城の養殖ホヤが正直苦手な庄イタでもOKな天然マボヤなどが店頭に並ぶ魚市場。そこで働くお母さんを指す南部弁「イサバのカッチャ」たちが居並びます。(上・下画像)

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 良質な脂が乗り切った「八戸前沖サバ」を食した2014年夏の訪問レポートでは、市営魚菜小売市場の朝ごはんをご紹介しました〈2014.11拙稿「発進! みちのく潮風トレイル」参照〉が、今回の目的地は違います。

 JR陸奥湊駅北口にあるイサバのカッチャ像の前をウミネコの繁殖地として知られる鮫町の蕪島(かぶしま)方面に右折、目指すは活気ある陸奥湊駅前通り沿いにあって、朝8時を回る頃には店の前に行列が出来始める「みなと食堂(下画像)で一番人気の「ヒラメの漬け丼」(税込1,000円)。

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 よしもと芸人とにかく明るい吉村が会長を務め、こよなく丼ものを愛する全国津々浦々の人々で組織する一般社団法人 全国丼連盟が、2014年(平成26)秋に実施した第1回全国丼グランプリには、日本各地から1,262種類の丼ものがエントリー。

 全11ジャンルのうち、海鮮丼部門で金賞に輝いた7点の一つが、2011年(平成23)に登場し、口コミで美味しさが全国に伝わり、今では八戸みなと食堂の看板メニューとなったヒラメの漬け丼です。

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 ブサかわ犬「わさお」ともども、日本海に面した鰺ヶ沢で見逃せない夏の風物詩イカカーテンで知られる肉厚のイカ、津軽海峡のクロマグロ、脂の乗りが尋常ではない八戸前沖サバ、陸奥湾の養殖ホタテなど、三方を海に囲まれた青森の名だたる海産物を差し置き、青森の県魚はヒラメなのです。

 昨年6月、テレビ朝日の番組「いきなり!黄金伝説。」2時間スペシャル「他県からなぜかお客が集まる大人気ローカル食堂」で、みなと食堂が取り上げられました。それに喰いついた家族の強い求めに応じ、みなと食堂を初めて訪れたのが昨年11月。〝寒平目〟ならではの上質な脂と引き締まった歯応えが堪能できるヒラメの旬を迎えた時季でした。

minato-shokudo-counter.jpg【Photo】店内はカウンター8席と4人掛けテーブル1卓。「本日の四合わせ丼(ホタテ・マグロ・イクラ・甘エビ)1,300円」「ヒラメ漬け+エンガワ半々丼1,300円」など品書きは、マジックペンで手書きした無造作な張り紙というのも漁師町ならでは(上画像)。飾らない店のしつらえとは対照的に、ヒラメの漬け丼は、店主の繊細かつ緻密な仕事のなせるものに相違ない

 みなと食堂をご夫婦で切り盛りする店主の守 正三(もりしょうぞう)さん。遠洋漁業や鮮魚店での従事経験を通して魚の目利きを培いました。

 陸奥湊駅前通りの一角に、空き倉庫を改装したみなと食堂がオープンしたのが、2001年(平成13)。翌年12月に東北新幹線が盛岡から八戸まで延伸し、観光資源の掘り起こしが求められていた時期と符合します。

hirame-zuke01.jpg【Photo】特製ダレに漬けたヒラメの切り身がびっしりと敷き詰められ、地鶏の卵黄がトッピングされた「ヒラメの漬け丼」(味噌汁・小鉢付き1,000円)。守さんの丁寧な仕事が光る八戸ならではの朝ごはん。上画像は昨年11月に食したヒラメの漬け丼・せんべい汁セット(小鉢付き1,350円)。ご当地の味で地域おこしをしようと、八戸の市民ボランティア団体「八戸せんべい汁研究所」(通称「汁゛研(じるけん)」)が企画したのが「B1グランプリ」。2006年2月に八戸で第一回が開催された

 10年目の節目を迎えた2011年(平成23)、店を一躍スターダムの座に押し上げたが、ヒラメの漬け丼でした。稚魚を放流しているため、ヒラメは年間を通して八戸近海で水揚げされます。昔の漁師料理をもとに、独自の工夫を加えてメニュー化したのだといいます。

hirame-zuke02.jpg【Photo】漬けヒラメ・地鶏の卵黄・漬けタレが染みた温かなご飯。具材はこれだけ。シンプルなれど奥が深い三位一体のアンサンブルが至福の朝へと導く

 水揚げされてから2日間低温熟成させ、うま味成分が増したヒラメの白身は、透明感を保ちつつ飴色がかってきます。注文を受けてから特製の漬けダレに切り身を漬け込みますが、その時間が長すぎても素材の甘味を損なうため、3分程度に留めます。

 そうして素材が最も美味しいタイミングを見極め、暖かいご飯が盛られた丼に、ねっとりした食感の熟成ヒラメの漬け切り身を重ね合わせながら埋め尽くすよう並べてゆきます。

 昨年11月に初めてヒラメの漬け丼を口にして思ったのが、「これは最強のカルパッチョ+リゾット発祥のイタリアにとって、青天の霹靂(へきれき)な創作料理として逆輸出できるぞ」ということ。

hirame-zuke03.jpg【Photo】ヒラメの漬けダレは、青森県三戸郡田子町(たっこまち)特産のニンニク「福地ホワイト」+本みりん+「陸奥八仙」で知られる地元八戸酒造の「陸奥男山」からなる合わせ醤油の卵かけご飯 × 熟成漬けヒラメの豪華版。これが旨くないはずがなかろうというもの

 ヴェネト州産の辛口スパークリングワインProsecco プロセッコに白桃のピューレを加えたカクテル「ベリーニ」や、牛の生肉を使った料理「カルパッチョ」発祥の店といえば、ヴェネツィアの超有名店「HARRY'S BAR(ハリーズ・バー)」。

 イタリアでも現在ではポピュラーとなったのが生魚を使ったカルパッチョ。日本から逆輸出された魚のカルパッチョを考案したのは、銀座の有名店「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務オーナーシェフ。

 つなぎのソース役を箸で潰した卵黄が果たすニンニク醤油ベースのリゾット+かもめ食堂式漬けヒラメのカルパッチョというド鉄板な組み合わせは、イタリア人・日本人だけでなく国籍を問わず人気を博すことでしょう。守さん、いかがでしょ?

hirame-zuche2016.8.jpg【Photo】「卵かけご飯が嫌い」と仰る方でなければ、日本人のDNAに訴えてやまないリピート必至のヒラメの漬け丼。三社大祭の期間中で、街のあちらこちらからお囃子の笛の音が聞こえてくる2016年盛夏ver. 。2度目にして改めて実感「いい仕事してますねぇ~」

 すんなり入れた店内には、守さん夫妻以外まだ誰もいません。カウンター席の奥に陣取り、そんな妄想を巡らしつつ、高まる期待を胸に丼が運ばれてくるのを待つことしばし。庄イタに限らず、ほとんどの客が注文するのはヒラメの漬け丼であることがわかります(笑)。

 それも無理はありません。ほっかほかの卵黄かけご飯に、これでもか!!とばかりに旨さを極めた熟成ヒラメの漬けがたっぷりと加わるのですから。漬けヒラメ・卵黄・しょうゆダレご飯が織り成す絶妙な三位一体の黄金比率には、誰しもが魅了されるに違いありません。

 ぜひっ!

♪へ(^Σ^)へ ♪へ(^Σ^)へ ♪ へ(^Σ^)へ ♪ へ(^Σ^)へ ♪ へ(^Σ^)へ ♪ へ(^Σ^)へ ♪ へ(^Σ^)へ

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 伝説や歌舞伎に題材をとった極彩色の奇想天外な27台の大型山車(上・下画像)や、獅子頭による統一がとれた権現舞一斉歯打ちが見事な法霊神楽(下動画)、頭を噛まれると子どもが聡明になるとされる虎舞など、古式ゆかしい時代行列が繰り広げる圧巻のスペクタクル「八戸三社大祭」。

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 起源を295年前の享保年間まで遡る八戸三社大祭は、国指定重要無形民俗文化財に指定される全国各地の「山・鉾・屋台行事」32件の一つとして今年の秋にユネスコ無形文化遺産への登録が見込まれています。その3日目「お還り」と重なったその日。

 八戸ステイ2日目の朝は、八戸前沖サバを食そうと心に決めていました。みなと食堂から市営魚菜小売市場に事前確認に立ち寄ってから庄イタが向かった先は、JR八戸線鮫駅からほど近い蕪島(下画像)

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 昨年11月22日のみなと食堂への初訪問時は、蕪島の中心に建つ弁財天を祀る蕪嶋神社に立ち入ることができませんでした。それは不幸にも同年11月5日未明に発生した火災で蕪嶋神社の社殿がご神体ともども全焼してしまったがため。

kabushima2015.11.jpg【Photo】2015年11月22日に八戸を訪れた際の蕪島。同月5日未明に発生した火災で焼け落ちた蕪嶋神社の社殿が残る

 現在、社殿が建っていた場所は更地になっています(下画像)。八戸市民の篤い信仰を集める神社ゆえ、2年後の再建を目指し、官民を挙げた取り組みが行われています。海鳥の一大繁殖地を間近で目にすることができるのは極めて珍しいため、蕪島は天然記念物に指定されています。

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 繁殖期のピークには3万羽以上のウミネコが乱舞する蕪島も、雛鳥たちの巣立ちの季節を迎え、大多数が南へ移動したウミネコは数えるほどが留まる状況でした。そこで目撃したのが、ウミネコ親子の朝ごはん。

kabushima_2012.6.15.jpg【Photo】2012年6月。火災発生前の蕪嶋神社境内。抱卵中のウミネコで足の踏み場に注意を要する状態。孵化(うか)して間もない雛(下画像右側)は保護色の羽毛に覆われている

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 子育て中のウミネコにあっては、エサの横取りは日常茶飯事。縄張り意識が強いため、境界を越えた場合、相手がたとえ小さな雛鳥だろうと、長く鋭利な嘴(くちばし)で容赦なく攻撃します。厳しい生存競争を生き抜いて巣立つのは、孵化した雛の1/3程度なのだそう。

 蕪島からほど近く、イカの水揚げも多い鮫浦港から運んだのでしょうか。一匹のヤリイカをくわえた親鳥が、成鳥とさして変わらぬ大きさに育った茶褐色の羽毛に覆われた雛鳥がいる自らの縄張りに舞い戻ったところでした。高級品のヤリイカを狙うとは、さすがイカの町八戸のウミネコは口が肥えてるなぁ。と妙な感心をした庄イタ。

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 春先から初夏にかけてのピーク時と比べ、生存競争のライバルが少なくなったためか、口移しではなく地面にイカを差し出しました(上画像)。成長期の雛鳥は大食漢でもあります。待ってましたとばかりに雛鳥がイカにありつくのかと思いきや・・・。

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 雛の目の前でイカをたちまちにして一飲みにしたのは親鳥のほうでした(上画像)。意表を突かれた雛鳥は、鳴き声を上げながらエサをねだるかのように親鳥のもとにすり寄ってずっと離れませんが、目を合わせない親鳥はそれに応じる素振りを見せません(下画像)

 これは紛れもないウミネコが子別れの時期を迎えた証拠。甲斐甲斐しくエサを運び続けた親鳥は、巣立ちが近くなると雛にエサを与えなくなります。そうして突き放すことで我が子の独り立ちを促すのです。

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 成人年齢を18歳に変更する民法の改正案が来年の通常国会に提出される運びとなったこの夏、18歳に選挙権が引き下げられた初の参院選が実施されました。

 厳しい野生の掟を目の当たりにして、「立派な大人になるんだよ」と、親離れ間近となった雛鳥にエールを送ったのでした。

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みなと食堂
 住:青森県八戸市大字湊町字久保45-1
 Phone:0178-35-2295 *予約不可
 営:6:00~15:00 日曜定休 P有り

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2016/07/19

この味、摘果されてこそ

辛味がすがすがしいメロン子の辛子漬け @ 庄内


 あすは檜(ヒノキ)になろう、あすは檜になろうと一生懸命考えている木よ。でも、永久に檜にはなれないんだってそれであすなろうと言うのよ。

井上靖「あすなろ物語」(新潮文庫)より

 作家・井上靖の半自伝的小説「あすなろ物語」。第一章「深い深い雪の中で」には、親元を離れて血縁関係がない祖母・りょうと二人で中伊豆・天城の土蔵の中で暮らす13歳の少年・鮎太と、りょうの姪で19歳の冴子とのこんなやり取りが描かれます。

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【Photo】下北半島と津軽半島には、青森ヒバの約8割が密生する。霊場恐山へと向かう道すがらの冷水(ひやみず)峠。5月初旬でも山肌に残る雪と鬱蒼としたヒバの自然林が周囲に広がる冷水峠に湧き出す「恐山冷水」。862年(貞観4)の慈覚大師による開山以来、霊界との境界へと入る手水として、そして険しい道のりを越えて霊場詣でをする人々の喉を潤してきた

「翌檜(アスナロ)」はヒノキ科の常緑樹。「青森ヒバ」の別名で知られる北方系の変種「ヒノキアスナロ」は、下北半島や津軽半島に広く分布しており、青森県の県木となっています。

 あすなろ物語において、天城温泉に逗留していた東京の大学生・加島との叶わぬ恋を精算するため、心中して果てた冴子が鮎太に語るのは、抗うことができない人の運命の悲哀。

 森羅万象、物事に始まりがあれば、いつか訪れる終わりは不可避なもの。生きとし生けるものには、すべからく遅かれ早かれ逃れることができない生命の終焉が待ち受けています。

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【Photo】「アムさんメロン」〈2016.6拙稿「フェロモンメロン」参照〉が先陣を切る「つがりあんメロン」5品種のうち、7月末からお盆前が出荷の最盛期となる主力ネット系品種「アーバンデリシャス」(奥)。トンネルの外まで伸びたツタの先端部に遅咲きした花のため摘まれる運命にあるメロンの幼果(手前)・ロケ地:青森県つがる市木造町出来島メロンロード

 それは動物だけでなく、植物とて同じ。芽が出て花が咲き、受粉して実を結び、やがて種が母なる大地と結ばれることで、次なる世代へといのちの循環が繋がってゆきます。

 そうした起承転結、いわば生命の摂理を全うできない存在が、ヒトが美味しく口にするために摘まれる果実や野菜です。

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【Photo】庄内砂丘メロンの緑肉系代表品種が「アンデスメロン」・ロケ地:山形県酒田市浜中(上画像)。直径10cmにも満たない幼果の段階で摘まれたアンデスメロンのメロン子(下画像)。熟すと表皮を覆う網目(ネット)が入っておらず、最近ではあまり見かけなくなった「プリンスメロン」のような外見。

 受粉前の蕾や花のまま人の手で摘まれるのが、リンゴ、梨、柿、桃など。〈2008.6拙稿「♪ リンゴの花びらが~ リンゴの花びらドルチェは、はじらう乙女 francesca の味」,2009.4拙稿「『芽出し』と『芽摘み』の春」参照〉

 そして幼果のうちに間引きされるのが、剪定されてから摘房されるブドウ、青ミカンとして流通する柑橘、そして今回取り上げる摘果メロン「小メロン」です。

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 風味を良くするため、メロン1株に多くても4玉以上を残さない庄内では、ただ廃棄するのではなく漬物加工用となる摘果したメロンを「メロン子」と呼びます。作物に対する愛情を感じる呼称ですよね。

 トロ~リ、ジューシーな果肉の完熟メロンとは異なり、メロン子の魅力は、すがすがしい青いウリの風味とパリっとした食感。

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【Photo】庄内砂丘メロンの主産地、酒田市浜中。庄内空港と日本海沿岸東北自動車道のすぐ近く。冬の強烈な季節風による飛び砂被害を防ぐクロマツの人工防砂林に守られるように露地トンネル栽培される砂丘メロンの畑

 夏季にオホーツク海高気圧の勢力が増すと、東北地方の太平洋側に長雨と冷涼な夏の元凶となる北東の季節風「東風(やませ)」が吹き付けます。その影響を受けない日本海側の豊富な日照量と、昼夜の寒暖差が大きく水はけのよい庄内砂丘は、メロン栽培にうってつけ。

 さらに庄内きっての酒どころ鶴岡市大山〈2012.2拙稿「大山新酒・酒蔵まつりpart.1 および part.2」参照〉が南隣にあり、赤川河口の北には銘酒「初孫」蔵元「東北銘醸」があることからも分かるように、砂丘一帯は灌漑設備を必要としないほどの良質な地下水脈に恵まれています。南北35kmに及ぶ庄内砂丘の規模は日本最大。全国で4番目の生産量を支えるメロンの一大産地です。

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【Photo】庄内空港ビルを出て日本海沿岸道方向に右折してすぐに出迎えてくれる砂丘メロンのオブジェ。多彩な食材に恵まれた食の都庄内には、このほか庄内柿・あつみ豚・刈屋梨・温海蕪といった産物の巨大オブジェがロードサイド各所に設置されている

 庄内・津軽・茨城などメロンの主要産地以外では馴染みが薄いかもしれない摘果メロンには、ネット系品種に見られる登熟過程で果皮を覆ってゆく網目がありません。

 摘果されたメロンは、そのまま廃棄されるだけでなく、庄内地方では漬物用として出荷されるケースも少なくありません。主な食べ方は、試験前に庄イタが得意だった一夜漬け(^^; 、皆さまが暑さのあまりそうならぬことをお祈りするビール漬けや、冷酒にピッタリの「竹の露」や「上喜元」など地元の酒粕で漬け込んだ粕漬けなど。

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【Photo】国内消費のほぼ全量をカナダからの輸入に依存しているオリエンタルマスタード(和がらし)。その原料となるのがカラシ菜。独自に編み出した輪作体系による資源低投入型有機農業を実践する鶴岡市三和「月山パイロットファーム」では、漬物の加工用に自家採種によるカラシ菜の栽培を行っている。5月半ば。残雪の月山を背景に人の背丈よりも高いカラシ菜の花が咲き揃う <画像提供:東海林 晴哉 氏>

 摘果メロンのほか、キュウリや丸ナスなどに関して庄内ならではの食べ方が「辛子漬け」です。それに欠かせないのが、山形県東田川郡庄内町跡(あと)地区や鶴岡市「月山パイロットファーム」で自家採種による栽培が行われているアブラナ科の「カラシ菜」。

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【Photo】月山パイロットファームでは最も手が掛かる和がらしの収穫~加工までを全て人の手で行う。6月末。蒸し暑さと土埃との闘いでもある刈り取り・実落とし作業をしたカラシ菜の種子は、大きさ1mm~2mmほど。種子を脱穀した後、梅雨の晴れ間を見計らって天日干しを行うことで、祖先から受け継いだ和がらし本来の風味を味わうことができる <画像提供:東海林 晴哉 氏>

 その種子を脱穀後に天日干しして作られるのが「和がらし」(下画像)です。ピリっとした和辛子の風味が爽やかな「メロン子の辛子漬け」は、ご飯や冷たい麺類は勿論、ビールや冷酒との相性も抜群。

 仙台朝市・今庄青果本店でも6月~7月にかけては入手可能な庄内産のメロン子を使った辛子漬けの代表的なレシピをご紹介しましょう。

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【材料】
 メロン子 1kg
 塩 50g
 砂糖 100g
 和がらし粉 50g
 酒または焼酎 100cc

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【作り方】

・メロン子を縦に4~8等分にカットする(小さいうちは種子部分はそのままでもOK)

・あらかじめよく混ぜ合わせた塩・砂糖・和がらし粉をメロン子にからませ、日本酒または焼酎を加える

・ビニール袋に入れて2日ほど冷蔵庫に置くと美味しい漬物の完成。

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 それではボナペティ~ト♥
 
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2016/06/19

フェロモンメロン

奇蹟の遭遇@道の駅フェスタ in 仙台


 どこで区切るのか紛らわしい今回のタイトルですが、フェロモン+メロンと読み解いて下さい。

 それは仙台市役所で行われた会議を終え、同僚と共にタクシーで勤務先に戻ろうとした6月16日(木)のことです。

 市役所前の勾当台市民広場で開催されていた「東北6県『道の駅』まるごとフェスタ」が、ふと気になり、広場を素通りできませんでした。

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 今回が初開催となるこの催しは、NPO法人東北みち会議が主体となり、各駅長らで組織した実行委が主催したもの。東北6県から39の道の駅が集結。各地自慢の産品を販売したほか、熊本県産品の委託販売も行われました。

 「ちょっと覗いてみていい?」と同僚に声を掛け、3年前、立佞武多(たちねぷた)の折に訪れた〈2013.8拙稿「庄内系イタリア人的青森〈後編〉燃え立つ夏2013@青森:津軽編」参照〉青森県北津軽郡鶴田町の道の駅「鶴の里あるじゃ」のブース前で、ごく淡い期待を胸に足を止めました。

 昨年、激しい戦いの末、タレントのモト冬樹さんが準優勝した「吸盤綱引き全国大会」が開催される鶴田町特産のブドウ「スチューベン」果汁100%ジュースは置いていましたが、アルコール発酵したブドウ果汁や、並外れた美味しさの路地ものメロン「優香(ゆうか)」は残念ながら見当たりません。

amu-san@kotodai-001.jpg ブースにいらした係の方と「優香メロンが出回るのは7月中旬からですよねー」と恨めし気に言葉を交わし、すぐ左隣のブースに移動すると...。

 そこに黄色味がかった淡い緑のマスクメロン(右)が鎮座していたのです。
 
 何が起きているのか、事態の展開が飲み込めないまま、ある確信をもって看板を見ると「青森・道の駅 ひろさき」とあります。

 間違いありません。オレンジ色のラベルが貼られたそのメロンは、ここ何年か庄イタが夏に恋してやまない「アムさんメロン」なのでした。

 夏場の豊富な日照、昼夜の寒暖差、水はけのよい砂丘地帯といった津軽の風土、そしてハウス栽培による徹底した品質管理のもとで生産され、弘前中央青果が商標を有する「アムさんメロン」(品種名:優香(ゆうか))。

 果皮ぎりぎりまで食すことができる緑色系のキメ細やかな果肉のみずみずしさ、時に糖度18度に達する食味と香りの良さは、一度体験したら忘れられません(北海道産の有名ブランド高級メロンは、最高級の特秀で糖度13 %以上)

 よもや勾当台市民広場で遭遇しようとは、予想だにしないアムさんメロンを前に、庄イタが興奮冷めやらぬのには理由がありました。

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 梅雨の晴れ間が広がったその日。今年の春先に発見したアルデンテな平成進化形ナポリタンを食した足で、すぐ近くの「GELATI BRIO ジェラーティ・ブリオ〈2015.6拙稿「Il dolce e l'amaro スウィート & ビター 〈後編〉」参照〉で、店主の磯部智広さんとアムさんメロンの噂話をしていました。

 過去2年連続で品評会出品メロンを入手している「青森マルシェ」の今年度第1回目が、7月17日(日)に青森市で開催されることから、「出荷の最盛期を迎える来月、青森に行けたらサンプルを買ってくるよ」という話の流れになっていたのです。

 古来、言葉には不思議な霊力が宿ることがあると申します。勾当台公園にあったアムさんメロンを、言霊(ことだま)メロンと呼ばずして何と呼べばよいでしょう。
 
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【Photo】週末に食べ頃を迎えた2016年の初物アムさんメロン。まだ旬の走りの初物にして、期待を裏切らない素晴らしい食味に魅了された

 青森以外にはまず出回らないアムさんメロンと勾当台公園で遭遇するとは、まさに渡りに船。川で洗濯中にモモではなくメロンが流れてきた上、葱ではなくメロンを背負ったカモまでが飛来したに等しい展開なのでした。
 
 しかも、催し最終日の閉幕時刻間近とあって、定価2,000円のところ2個以上購入で1個あたり1,000円という好条件が提示されていました。そこで3個は自家消費用に、1個はサンプル用に購入し、帰り足で店に届けました。

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 メロンは俗にいう下のお尻部分を押して弾力が出てきたら食べ頃。この週末に食した1個目は、庄イタのアナログ式バイオ官能糖度計(⇒ 伊語:lingua, 英語:tongue, 日本語:舌)の計測では、優に推定糖度17度を超える高貴な甘さを有しており、昨年に続いて今年の作柄にも期待が持てそうです。

 今、こうしている間にも、追熟中のアムさんメロンからは、えもいわれぬ芳香が漂ってきます(上画像)。敢えてリビングルームに置くことで、天然成分100%の心地よいアロマで部屋は満たされてゆきます。

 アムさんが発する「完熟してからワタシを食べて~♥」フェロモンに、ここ数日魅了されまくっていたところ、冴えわたる超能力の成せる業としか解釈のしようがない言霊フルーツ第二弾が待ち受けていました。

to be continued...

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2014/11/16

発進! みちのく潮風トレイル

新たな地平を求め、歩く速さで旅しよう。

 旅を愛する者として、移動手段のスピード化がもたらす恩恵を否定はしません。仙台-函館間をおよそ2時間半で結ぶ北海道新幹線新函館開業は、確かに楽しみではあります。ですが、移動速度が増すほど、旅の印象は、希薄にならざるを得ない側面があることもまた否めません。

mutsuminato-stn2014.jpg【Photo】八戸市街から蕪島・種差海岸方面への道すがら、早起きしてでも訪れたいのが、「イサバのカッチャ(=市場のお母さん)」像が出迎えるJR陸奥湊駅前の朝市(上写真)

isaba-kaccha.jpg【Photo】日曜以外の早朝3:00~正午まで、水揚げされたばかりのピッチピチの魚介や惣菜などを扱う市が並ぶ「陸奥湊駅前朝市」には、大型の物販・飲食施設「八食センター」とは違った魅力が充満。今年7月中旬の訪問時は、店頭でウニの殻を剥くカッチャと馴染み客との南部弁を駆使したほとんど意味不明な会話や、爽やかな苦味のある八戸の伝統作物「糠塚キュウリ」とも出合えた

ichiba-gohan2014.jpg その土地の光や風を肌身で感じ、街並みや人々の暮らしぶりに触れることで、旅先の印象はずっと濃密になります。歩く速度で旅することで、あっという間に風景が切り替わってゆく車窓越しでは決して得られない出合いや感動が待っているはず。

【Photo】昭和の雰囲気漂う陸奥湊駅前通りや、入口に惹かれた市場の地階を一巡。店の下見をした上で、朝ご飯を食したのが朝市の一角、八戸市営魚菜小売市場にある「朝めし処」。活きの良い魚介とカッチャが居並ぶ市場で買った刺身や、脂乗りが良い大振りな八戸前沖サバの塩焼き(350円)など、店頭に並ぶ八戸の味を温かいご飯(100円)とともに早朝5時から10時まで頂ける(毎週日曜・第二土曜日・年始休)

 このほど青森県八戸市蕪島から岩手・宮城を経て福島県相馬市松川浦までの南北700kmを結ぶ新たな道、「みちのく潮風トレイル」が設定されました。これは東日本大震災からの復興に資する「グリーン復興プロジェクト」を推進する環境省による取り組みの一環です。

 山の頂きを目指す欧州発祥のアルピニズムとは違い、じっくりと時間をかけて里山を移動しながら自然と触れ合うことを目的とするロングトレイル。北米で1960年代に誕生し、総延長3,500kmに及ぶアパラチアントレイルをはじめ、米国では広く普及しています。
 
kosode-gyoko2014.jpg【Photo】放送終了から2年が過ぎた今も多くの「あまロス症候群」の観光客が訪れる久慈市小袖漁港。有村架純がブレイクした当たり役、若き日の天野春子の逃避場所であり、能年玲奈演じる主人公天野アキが海中にダイブした灯台はドラマそのまま。なれど昨年まで残っていた春子がマジックでなぐり書きした「 東京 原宿 表参道 海死ね ウニ死ね・・・」の文字は、もはやかすれて判読できないという

 信州・信越地域や北海道、九州など、日本には10箇所以上のロングトレイルが存在します(参考)。東北では初となるみちのく潮風トレイルは、社会現象化したNHK朝ドラ「あまちゃん」の舞台となった久慈市小袖と、八戸市でヒッチコックの名作「鳥」を実体験できる海鳥の一大繁殖地・蕪島の間が、昨年11月に先行開通しています。

kosode2-gyoko2014.jpg【Photo】天野アキが海女クラブの面々に素潜り漁を叩き込まれた小袖漁港。透明度が高い入江では、7~9月の間、観光客向けに海女による素潜りによるウニ漁の実演が披露される 

 北限の海女で一躍有名になった小袖を思い立って訪れたのは今年7月。まめぶ汁を味わい、能年玲奈演じる天野アキが劇中で海に飛び込んだ灯台、夏ばっぱや美寿々さん、安部ちゃんら海女クラブの先輩に素潜り漁を教わった「袖が浜漁港」こと小袖漁港など、ロケ地を訪れるうち、あまロス症候群がむしろ重症化した庄イタ。

mamebu-jiru.jpg【Photo】久慈市山形町にある「道の駅白樺の里やまがた」(ふるさと物産センター)食事処「食楽」のまめぶ汁(500円)。特産の山形村短角牛を使用した焼肉定食やハンバーグ定食(1,000円)といったメニューも見逃せない

 来訪客がどこから訪れたかをシールを貼って自己申告するボードは、国内用と海外用の2枚が用意されていました。いまだ衰えないあまちゃん人気を裏付けるように、くまなく日本全国にシールが貼られています。そこで庄イタはまだ空欄だったITALYに緑色のシールを貼り、北三陸に確かな足跡を残してきました。\('jjj')/

 青森・岩手に遅れること1年近くを経た10月9日にルートが開通したのが福島県相馬市松川浦と新地町区間。宮城で整備が遅れていた理由は、3年8カ月前に発生した東日本大震災で最多の犠牲者・行方不明者を出し、復興はおろか復旧すらままならない被災地の現状があります。

kesenuma_2014.7.16.jpg【Photo】被災前は事業所や店舗が並んでいた旧JR南気仙沼駅方向を、気仙沼市仲町の旧河北新報気仙沼総局ビルから見た今年7月の光景。これが震災から3年半を過ぎた被災地の現実〈click to open another cut

 五輪開催のために街並みが一変したという50年前を彷彿とさせる莫大な社会資本が、半世紀を経た今、再び東京に集中投入されています。建築資材高騰と人手不足が、人々の記憶の片隅に追いやられた感すらある被災地復興の重い足かせとなっている現状には、東北の視点から疑問を呈さざるを得ません。

 輝きを増す光と深い影とが交差し、複雑な想いが去来する中で、700億もの国費を投じて解散総選挙が行われようとしています。〝誰がやっても同じ〟という、よく耳にする諦めの連鎖からは決して潮目の変化は生まれません。来るべき師走選挙では、納税者の権利はしっかりと行使しようではありませんか。

frier-michinoku_trail.jpg 暦の上ではノヴェンバ―となった11月1日(土)、宮城でのキックオフイベント「みちのく潮風トレイルフェスティバル! in 石巻・女川」が、石巻市の中瀬公園で開催されました。次回「駅弁? 空弁? いいえ、道弁です」では、その模様をご報告します。

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2014/07/27

メロンまつり 好評開催中~ ♪

青森・津軽代表 つがる市 木造産 アムさんメロン
                               &
山形・庄内代表 酒田市 浜中産 アンデスメロン

 まだ気象庁は梅雨明けを宣言していませんが、夏本番を思わせる酷暑が東北でも続いています。ここは熱中症予防のためにも、こまめな水分補給を怠ってはなりません。とはいえ、ミネラルウオーターやスポーツドリンクばかり続いては、どこか味気ない。そこで積極的に摂取したいのが、ジューシーなフルーツです。

amu-san2014.jpg【Photo】これは7月12日に弘前で開催された品評会に出品された「アムさんメロン」。置いておくだけで、えもいわれぬ強い芳香が漂う。天候に恵まれた今年は6月5日の初競りで、秀2Lサイズ1箱(8kg入)が、過去最高となる20万円のご祝儀相場を付けた。品評会に出品されるアムさんメロンは糖度16度以上

 6月上旬~8月上旬にかけての旬を心待ちにしていたのが、時に18度を超える驚異の糖度に達する「アムさんメロン(品種名:ゆうかメロン)」。

 甘い香りに吸い寄せられるように出合った黄色味を帯びた少し風変わりな名前のメロンが放つ香りに「これは只者ではない」と直感。青森市内で購入して以来、見事にハマってしまいました。

 正直に言います。「アムさん、私はもうアナタの虜です」 ^_^;

amu2-san2014.jpg【Photo】黄色味を帯びた外皮ギリギリまで食べることができるのは完熟の証し。薄緑色のアムさんメロンの果肉は、あくまで香り高く、あくまで甘く、あくまでジューシー。その味と香りは、メロン好きには堪らないはず

 初出荷から1ヵ月あまりを経た7月10日前後に出荷のピークを迎え、そこから1週間程度の梅雨明け前が品質的には最も優れているというハウス栽培のアムさんメロン。

 五所川原の立佞武多(たちねぷた)を目当てに青森を訪れた昨年は、アムさんメロンのシーズン最終盤。そのためか、五所川原市内の某大手商業施設で購入したメロンの味には今一つ納得がゆきませんでした。

 このままで夏を終わらせるわけにはいかない!と7月中盤以降から出回るトンネル栽培の「ゆうかメロン」で溜飲を下げた経緯は、「ゆうかメロン」でリベンジマッチ(2013.9)で詳述しています。

2014-0713-a+marche.jpg【Photo】県が主催する「あおもり立志挑戦塾」と「若手農業トップランナー塾」の卒塾生が運営する産直市、あおもりマルシェ。青森の魅力発信と地産地消を通して、もっと青森が好きになる場所づくりを目指している

 弘前市で青果市場を運営する弘果弘前中央青果の統一商標「つがりあんメロン」の先陣を切るアムさんメロン。庄イタにとって絶好のリベンジマッチの機会に今年は恵まれました。それは7月13日(日)にJR新青森駅前で開催する「あおもりマルシェ」に、つがりあんメロン品評会に出品された秀品が販売されるという耳寄りな情報を、前日入りした青森市で偶然ラジオでキャッチしたからです。

a-marcato2014.7.jpg【Photo】品評会出品のアムさんメロンを目当てに午前9時のスタート時刻前に会場到着。多くの人出で賑わった9回目となる「あおもりマルシェ」会場

 「青森オリジナルメロン生産連絡協議会」で次世代育成事業を担当する同会青年部が主催する品評会。今年は22件の出品があり、荷姿(玉揃い)・形状・ネット張り・糖度・食味の5つの観点から50点満点で採点が行われました。今回で9回目の開催となるあおもりマルシェには、最優秀の金賞ほか銀賞・銅賞に輝いたアムさんメロンなど、入賞作や品評会に出品されたメロンが販売されるというではありませんか。これを見逃す手はありません。

a-marcato2014.7-1.jpg【Photo】前日に行われた品評会で、金・銀・銅の各賞や入賞を果たしたアムさんメロン(上写真)はじめ、品評会出品作(下写真)まで、いずれ劣らぬアムさんメロンが揃った第9回あおもりマルシェ

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 旧木造町(きづくりまち)出身の同僚からは、本場でメロンを購入するなら、つがる市木造近郊の生産者がメロンを持ち寄るJA直売所を薦めてもらっており、当初はそのつもりでいました。なれど品評会出品作が購入できるとあれば、予定変更です。

a-mercato2014.7-3.jpg【Photo】品評会で金賞に輝いたアムさんメロン(右写真)

 マルシェは9時開場でしたが、ラジオ放送されたこともあり、定刻前に会場入り。目指すアムさんメロンのブースでは、誇らしげに「金賞」「銀賞」・・・のタグの付いた化粧箱入りアムさんメロンが並んでいました。

 温度と水に関する徹底した品質管理のもと、1株4玉まで制限し15度以上まで糖度を高めるつがりあんメロンでも、アムさんメロンは完熟で出荷されるため日持ちせず、県外にはまず出回りません。仙台でも「アーバンデリシャス」や「ハニーゴールデン」といったつがりあんメロンは稀に見かけるものの、アムさんメロンは見たことがありません。

 割高なネット通販はさておき、味をしめた一昨年以降、地元の小売店を数軒回って相場をチェックしてありました。青森オリジナルメロン生産連絡協議会青年部の方にあれこれ質問しながら、カットされたカップメロンを味見。まだ雪が残る3月初旬に定植、5月の開花期・肥育期も安定した天候に恵まれた今年の作柄は大変良いとのこと。出品作はいずれも糖度16度以上の個体を揃えたといいます。

a-mercato2014.7-4.jpg【Photo】青森オリジナルメロン生産連絡協議会青年部の方のアドバイスを参考に、庄イタが購入した3個の跡がぽっかりと空いた青森マルシェのアムさんメロン販売ブース

 ディスプレーされたメロンは黄色味の強いものもあれば、グリーンの割合が若干強いもの、表面を覆うネットの目が細かく滑らかなもの、幾分目が浮き立ったものなど、微妙な違いがあります。登熟期間の違いによってこうした差が出るそうで、それぞれの違いによって糖度や日持ちが異なることなど、専門の立場から購入に際してのアドバイスを頂きました。

melone-amu&andes.jpg【Photo】期せずして東北のメロン産地の両雄が揃った津軽産アムさんメロン(写真右)と庄内産マスクメロン(写真左)

 9時の開場前に呼び物となる最優秀の金賞ほか入賞作を購入しては、アンフェアな抜け駆けの謗(そし)りを受けかねません。会場で購入したのは、色味の異なる出品作(1個1,000円)を3個。そして辛子漬けにすると美味な「メロン子」こと、摘果されたタカミメロン(6個入り100円)と十三湖特産の大和シジミすくい取り(1回400円)。こうして願ってもない秀品のアムさんメロンを入手したマルシェ会場では、ほかに津軽産リンゴ、サクランボ、田子ニンニクなどの青果品ほか、黒石つゆ焼きそばの飲食コーナーなど、多彩なブースが揃っていました。

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 3年目を迎え、知名度が向上したことも手伝って、主催者発表によれば物産市が開かれていた5時間で、10,000人が訪れたという今回の青森マルシェ。今年度は5回の開催を予定しており、今後は8月10日(日)・9月21日(日)・10月12日(日)13日(月・祝)に、今回と同じJR新青森駅前(無料P有)が会場となります。

【Photo】庄内砂丘産のアンデスメロンは庄イタにとって長年親しんだ味。食べる1時間前に冷蔵庫に入れ、冷え過ぎないところでパルマ産プロシュットと合わせる鉄板の組み合わせ

 果たせるかな、翌週末まで追熟期間を置いて食したアムさんメロンは、これまでの中ではピカイチの美味しさ。「糖度が高いのは概して色合いが緑がかってネットが盛り上がったアムさんですよ」と、教えて頂いたアドバイス通り。女性に接するのと同様、外見に惑わされないようにせねば、と認識を新たにしたのでした。

sweetruby&andes.jpg【Photo】今年で作付4年目となり、つがりあんメロンでは最も新しい品種、本日現在まだ追熟中の「スウィートルビー」(写真左)を購入したその日に、鶴岡在住の知人から贈られてきた庄内砂丘産アンデスメロン(写真右)

 青森オリジナルメロン生産連絡協議会の方が、アムさんメロン以外で特にお薦めのつがりあんメロンとして挙げた赤肉品種の「スウィートルビー」を、仙台で見つけて購入した先週日曜の夕刻、インターフォンで「宅急便で~す」の声が響きました。

 それは鶴岡在住の知人から贈られてきた庄内砂丘メロンではありませんか。産地は日本一の大地主といわれた酒田・本間家3代目本間光丘らが、私財を投じ、沿岸の砂が冬の強風で飛散するのを防ごうとクロマツを植林したことに端を発する見事な松林が広がる酒田市浜中。

hamanakaM_melon2007.7.jpg【Photo】海・里・山の豊富な食材が四季折々に揃う「食の都・庄内」にあって、マスクメロンの産地がここ庄内砂丘。鶴岡・湯野浜から酒田・最上川河口域までの海岸沿いの道沿いにクロマツ林とアンデスメロンや鶴姫レッドなどのメロンを栽培するハウスやトンネルが点在。クロマツ林の彼方に夕陽が沈む酒田市浜中「庄内夕日の丘オートキャンプ場」にて(上写真)、夏場の浜中では荷台いっぱいにメロンを積んだこんな軽トラと遭遇することも珍しくない(下写真)

melon_carry.jpg つがりあんメロンの一大産地である津軽半島南部の沿岸と同様、昼夜の寒暖差が大きく水はけの良い鶴岡市北部から遊佐町にかけての日本海沿岸の砂地は、土壌に余分な水分が残らないため、味が凝縮したメロンやスイカの栽培に適しています。

 届いたのはマスクメロンのオブジェがロードサイドにある庄内空港からほど近く、庄内夕陽の丘オートキャンプ場から撮影した上の1枚に写っている浜中乙に直売所がある高橋農園のアンデスメロンでした。図らずも、こうして3種類のメロンが我が家に揃い踏みしたのです。間もなく露地物の「ゆうかメロン」がベストシーズンを迎えます。そして桃で一番好きな品種「あかつき」が福島でたわわに実る本格的な夏の訪れを待つばかり。ということで、メロンまつりin SENDAI 2014、絶賛開催中!!!

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2014/03/09

謎の仕出し店@碇ヶ関

 以前から存在には気付いており、ずっと気になっていた店が青森にあります。その名も「ヘッチョ仕出し店」。津軽では「臍(へそ)」をヘッチョといいますが、青森県の中心に位置するゆえ、青森のヘッチョを自任している黒石市ではなく、そこは平川市碇ヶ関(いかりがせき)

heccio.jpg【Photo】風雪に耐えた看板に表記された電話番号は、もはや判読不能。電話して、「ハイ、ヘッチョ仕出し店です」と応じるのかを実際に確かめたい衝動に駆られる。店名の文字が一部が欠落したわけではないようなので、創業時よりこの店名で営業していると思われる

 今回は、この季節限定の温泉熱を利用した特産物(⇒近日公開予定)を大鰐温泉で入手するため、大鰐弘前ICで東北道を下車した途中、R7沿いにある店の前で車を停めて撮影した1枚のみご紹介。

 この日は、弘前で開催されたインポーター「エトリヴァン」の飲み頃イタリアワイン会に参加するため、先を急ぐ移動の途中でのことゆえ、店名の由来を尋ねることなく、そこを立ち去りました。

 モヤモヤを抱えたままR7を進むと、ほどなく「陽気ドライブイン」の看板を掲げるドライブインが出現。さぞラテン系の明るい性格の店主なのだろうと思いつつ、そこも通過。 深いぞ、碇ヶ関。

 謎は深まるばかり・・・。
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2013/09/16

心和む「かかしの里」@鯵ヶ沢

庄内系イタリア人的青森〈番外編〉
かかしの里 @ 鰺ヶ沢町中村

wasao_s2013.9.jpg【Photo】「元気になりました」by わさお (クリックで拡大)

 8月上旬、青森県西津軽郡鯵ヶ沢町を訪れた際、違うワンコがいるのかと思うほどの変貌ぶりに気をもませたブサカワ犬「わさお」。かつてのフサフサの毛並みが元通りに戻った近況にホッと胸をなでおろしている庄イタです。

 わさおが愛嬌を振りまく菊谷商店と並んで、鰺ヶ沢で思わず足を止めたくなるスポットがあります。前編後編の2回に分けてレポートした「庄内系イタリア人的青森」の番外編として、鰺ヶ沢町中村地区に期間限定で出現する「かかしロード」を今回ご紹介します。

kakashi0_nakamura.jpg【Photo】JR五能線と平行して走るR101は、鯵ヶ沢町舞戸で鯵ヶ沢街道と交差する。そこを岩木山方面に2kmほど南下、視界が開けた水田地帯が中村地区(上写真)。8月初旬から9月中旬に出現する「かかしロード」では、カワイイ巨大かかしが仲良く並んでお出迎え(下写真2点)

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 「かかしの里」こと中村地区は、今年ユネスコ世界自然遺産指定20周年を迎えた白神山地北側の山あいに開けた緑豊かな田園地帯。白神の森林地帯が源流となる清流中村川が南北を貫きます。流域の水田では、青森生まれのコメ「つがるロマン」が、頭を垂れ黄金色に色付き始めた稲穂が刈り入れの時を待っていました。8月末に東北の日本海側を襲った豪雨では中村川が警戒水位を越えて避難勧告が出る一幕もありましたが、稔りの季節を迎えた鯵ヶ沢でも稲刈りが始まりました。

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 小兵ならではの軽快な動きで意表をつく技を多彩に繰り出したことから、「平成の牛若丸」の異名をとった元関取・舞の海の出身地が、鯵ヶ沢町舞戸。そこから鰺ヶ沢街道を嶽温泉方向に2kmほど進むと、実は身長170cmに満たなかった舞の海が、3人がかりでやっと肩を並べる大きさ5mもあるジャンボかかしが出迎えてくれます。

 かかしロードの入口と出口それぞれの両端に2体が並んで立っているので、見過ごすことはないでしょう。かかしロードは、地元の地域おこし団体「せせらぎ中村委員会」が、2002年(平成14)に中村地区町内会連合会と共同で始めた取り組みです。かかしを出品できるのは、鰺ヶ沢町在住の個人・団体。

kakashi3_nakamura.jpg【Photo】岩木山(写真奥)方面へと向かう鯵ヶ沢街道の側道沿いにズラリと整列した56体のかかし。手前の「チカン、ダメ ゼッタイ許さないにゃん♡」は鰺ヶ沢町域学連携事業で8月に鯵ケ沢に滞在した麻布大学、「ミス法政」と「ふらっと来たよ鯵ヶ沢・一人ねぶた祭りらっせらー」は法政大学の学生によるもの

 今年は総務省が推進する「域学連携事業」の一環で、高齢化が進む地域に都市部の大学生を招いて交流を図る鰺ヶ沢町域学連携事業(通称:あじがく)で鯵ケ沢に滞在した法政大や麻布大の学生が中村地区の住民から手ほどきを受けて作成したかかしも華を添えました。

kakashi6_nakamura.jpg【Photo】かかしロードのかかしはどれも個性豊か。車が往来する鯵ヶ沢街道ではなく、側道側を向いて立っているので、田んぼに沿ってのんびりと散策しながら鑑賞できる(上写真2点)。今年の出品作から、"アベのミクス"のタスキが秀逸な「安倍首相・林対談 日本を変えるの今でしょ!」(左下)、NHK大河ドラマと朝の連続テレビ小説の顔「八重の桜」、「じぇじぇじぇ!!ウニだべー」(右下)。アキちゃんが手にしたウニのじぇじぇじぇな正体はなんとっ!!(Photoクリックで拡大)

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 この催しは、山形県上山市で9月14日(土)に開幕した「かみのやま温泉全国かかし祭」のように、頂点のグランプリを目指すコンテストを実施して優劣を競うのではありません。8月初旬から稲刈りを控えた9月中旬までの間、地域おこしと五穀豊穣、安全祈願を目的に、町民手作りのかかしが展示されます。過去のかかしロードの模様はコチラ

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【Photo】今年の出品作から、鳥獣の食害抑止効果が最も薄いと思われるかかし2点。お孫さんが生まれた(?)まんじの嫁作「こんにちは赤ちゃん私がバァバァよ」(左上)、昨年かかしとは呼び難い東京スカイツリーを出品したグループホーム百沢ハウスは、今年も関東地方をテーマに船橋市非公認キャラクター「ふなっしー」(右上)を出品(Photoクリックで拡大)

 本来は鳥獣の食害からコメなどの農作物を守る役目のかかしが、安全運転の啓発や地域の話題づくりなど、本来の職責を離れて道沿いなどに立つ例は、全国各地で見られるようです。秋保温泉へと向かう仙台市太白区生出地区のR286沿いでは、9月7日(土)から月内いっぱい交通安全協会の主催で「生出かかしまつり」が開催されています。気仙沼市の内陸部では、赤岩迎前田地区にある産直「いろどり」が住民に呼びかけて50体ほどのかかしを作成、来月半ばまで路肩に立ち続けます。

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【Photo】今年の出品作から、ビジュアル系かかし2点。美輪明宏にうり二つの「美輪明弘」(⇒誰?)は中村婦人学級の作品(左上)。別れた女性を忘れることができない匿名の男性が出品したと思しきベストドレッサーものの「乙女像」(右上)には未練タラタラの切ないポエムが....。(Photoクリックで拡大)

 嶽温泉を発って初めて中村地区を通りかかった時、保母さんに引率された保育所の子どもたちが、お揃いの黄色い帽子姿でユーモアたっぷりのかかしを眺めているところでした。心和むその光景につられ、思わず車を停めました。

 子どもたちは、かかしを前に瞳を輝かせて歓声を上げています。それもそのはず、ずらりと並んだかかしの中には、今年のご当地キャラコンテストで優勝した「ふなっしー」、ゆるキャラグランプリ2011王者「くまモン」、ディズニー映画「モンスターズインク」に登場した一つ目モンスター「マイク・ワゾウスキ」、女性お笑い芸人「キンタロー。」など、子ども受けの良さそうな作品も含まれます。

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【Photo】今年の出品作から、やっぱり外せないNHK朝ドラ「あまちゃん」系かかし2点。「ウニ、とったぞぉ\('jjj')」と手にしたタワシを掲げる「あまりん」は、海女としてはまだまだ甘ちゃん(左上) キョンキョンが社長を務める芸能プロダクション、スリーJプロダクションのマネージャー「水口琢磨」(右上)は、似ているような、似ていないような(Photoクリックで拡大)

 出品されるかかしは、年ごとに時の人や話題のキャラクターをテーマとしており、街道と田んぼの間に伸びる側道沿いに今年は56体が出品されています。かかしは車が往来する鰺ヶ沢街道ではなく、田んぼに向かって側道の方を向いて立っているので、路肩に車を停めて歩きながらじっくりと鑑賞できます。

 500体を越えるかかしが出品され、温泉地を挙げての観光行事として、1971年(昭和46)から市民公園を会場に手入れの行き届いた芝生上で繰り広げられる全国かかし祭。かかしに対してなんと内閣総理大臣賞(!!)まで奮発される一大イベントは、それなりに楽しめるでしょう。しかーし、作り手が楽しみながら作っていることが手に取るように伝わるかかしが、のどかな田園風景に溶け込む中村のかかしロードが醸し出すほのぼのとした雰囲気に、より心惹かれた庄イタなのでした。

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【Photo】今年の出品作から、甲乙つけがたい秀作2点はいずれもデイサービス施設の作品。デイサービスセンターつくし荘制作による「金太郎」(左上)は、足柄山の金太郎ではなく、表情から顔の大きさまで女性お笑い芸人キンタロー。がモデルのはず。 鰺ヶ沢出身で伊勢ヶ濱部屋に所属する十両力士、誉富士がモデルの「どすこい誉富士」(右上)。デイサービスセンター健康倶楽部メンバーによる古典的なかかしの顔立ちと化粧まわしや体の作りこみなど、秀逸な出来栄え(Photoクリックで拡大)

 廃材や着古しの服などを活用した手作り感満載のかかしは、実に個性豊か。12回目を迎えた今年。会期となった8月1日~9月18日までの間、雨ニモ負ケズ風ニモ負マズ、夏ノ暑サニモ負ケズに道行く人の目を楽しませました。吹く風に秋の気配が深まり、稲刈りシーズンとなる最終日。役目を終えるかかし達は出品者が引き取ります。その際に「五穀豊穣かかし供養祭」が執り行われます。それもまた心温まるエピソードですね。

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2013/09/07

キミだけを想ってる

 Ti penso sempre.(=キミだけを想ってる) ...星の数ほどの女性と浮名を流したカサノヴァを生んだ国、イタリアの男が複数の女性に対してパラレルに使う常套句。そのDNAを受け継ぐ庄イタはここ最近、寝ても覚めても明るい黄金色の輝く美肌とクリーミーな甘さで夢見心地へと誘う愛しのキミだけを想ってます。あ、お岩木山育ちの麗しのキミ・・・。

リターンマッチ第2ラウンド
 嶽きみ from 嶽高原

dakekimi_mt.iwaki.jpg 「庄内系イタリア人的青森〈後編〉〈拙稿2013.8参照〉」でレポートしたように、お盆の前週に岩木山麓の嶽温泉を訪れた時は、嶽地区で産出する濃厚な甘さと香味が魅力のトウモロコシ「嶽きみ」はまだ出回る前でした。

 やむなく購入したのが、近接する標高の低い弥生地区産の「きみ」(=トウモロコシの津軽弁)、名付けて「ほぼ嶽きみ」。トウモロコシは収穫後、本来の甘さが日を経るごと半減するといわれます。ゆえに産地で茹でたてを食するのが理想。それだけに朝採りされて店に持ち込まれたほぼ嶽きみは、帰宅後すぐ茹でて食したので美味ではありましたが、それだけで夏を終わらせる庄イタではありません。

【Photo】庄イタが嶽を訪れた8月上旬、すでに営業していた「柳田とうもろこし店」裏手の嶽きみ畑。岩木山南麓の傾斜地にあり、豊富な日照と高地ゆえの昼夜の気温差が高い糖度を生む

 いま一つ納得しかねた「アムさんメロン」のフラストレーションを、素晴らしい香味で魅了する「ゆうかメロン」〈拙稿「ゆうかメロンでリベンジマッチ」2013.9参照〉で晴らした後は、また新たなる野心が頭をもたげていました。・・・ついぞ思いもしなかったその考えは、生まれると同時に、たちまち力を増し、巨きさを増した。むしろ私が玉蜀黍の萌黄色をした外皮に包まれた。その想念とは、こうであった。「嶽きみを喰わねばならぬ」 Special thanks Kinkaku-ji by Yukio Mishima


dakekimi_gmart.jpg そうして前回購入した店から盆明けに満を持して送ってもらったのが、食用で最も普及しているスイートコーンでも、糖度が高く旨味が強い品種「恵味(めぐみ)」です。ギッシリと目が詰まった実を包む粒皮の薄さゆえの食感の良さ、濃厚かつ上品な甘味は、やはり一味違います。

 標高1,625mの山頂から、眼下に広がる津軽平野、そして白神山地と八甲田、さらには日本海まで360度見渡す岩木山。その裾野の嶽では、食味の良さで定評あるこの品種が、更なる味の高みへと達しているかのよう。山そのものがご神体である岩木山ゆえの神がかり的な美味しさとでも言えばよいのでしょうか。

dakekimi_mitsukoshi.jpg【Photo】皮の緑が濃いものが美味とされるトウモロコシは、本数が果粒の数と一致し、果粒が呼吸するこげ茶色の髭が残され、おいしさを保護する皮付きを選びたい(上) 標高450m近辺の寒暖差のある嶽高原で育つ嶽きみ。これは「ゆめのコーン」のように3対1の割合で黄色と白の粒が交ざるバイカラー種ではなく、甘みの強い黄色系品種の「恵味」(左)

 嶽から百沢にかけての「嶽きみロード」の直売店では、サイズにもよりますが、6本~7本で1000円程度。1本あたり160~170円ほどが相場です。ところが仙台市内のとある百貨店では、嶽きみを1本399円(!!)で売っていました。あまりの価格差にとても手を出す気にはなれませんでした。

 来季の再遠征に向け、先だって地元事情通ならではの各種情報をご教示頂いた青森の県紙「東奥日報」仙台支社長Tさんの表現をお借りすれば、「嶽きみがいくら旨くたって、所詮はトウモロコシ」。嶽きみに関して一家言を持つご意見番ジモティの正鵠を射た言葉は、まさに我が意を代弁するものでした。Sì è giusto!(伊)=Yes, that's right!!(英)=んだっきゃ!!!(津軽)=んだのぅ~(庄内)
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【Photo】仙台市青葉区のイタリアン「francescaフランチェスカ」は、仙台朝市で調達する嶽きみのポタージュを期間限定で提供。その浮き実はクルトンではなく、当然のこと、嶽きみ

 10月下旬、B1F食品フロアが全面改装オープンする仙台三越の生鮮ゾーンが先行リニューアルしたのが、8月27日(水)。新聞折込チラシによれば、開店初日から5日間、連日100組限りで嶽きみを3本525円というほぼ現地価格で提供するというではありませんか。リベンジに燃える庄イタが、この耳寄りな情報を看過するわけがありません。


yaki_dakekimi.jpg 気仙沼への出張と重なった食品フロアリニューアル初日。昼過ぎに売り場を訪れた家人の話では、人だかりができていたのはオープニングサービスとして3本210円で提供された北海道産トウモロコシの前(笑)。いささか拍子抜けしつつも、労せずして産地で前日朝に収穫された鮮度の良い嶽きみを入手できたとのこと。そうして、ほぼ嶽きみを上回る嶽で育った嶽きみの期待通りの旨さを実感、売り出し期間中は翌日以降もほぼ連日、嶽きみの旬を満喫しました。

【Photo】焦げた醤油の香りがたまらない焼き嶽きみ。NHKの某番組で紹介された通り、生のまま魚焼きグリルで12分強火で焼く

dakekimi2_gmartSONO2.jpg【Photo】「グリーンマート桂店」で取り扱っていた鮮度の良い嶽きみ。その状態の良さに比してリーズナブルなコストパフォーマンスの良い値付けゆえ、迷わず購入。生鮮食品に他ならないトウモロコシゆえ、状態を見極めて判断したいところ

 それから数日した日曜日、弘前に営業所があり、独自の仕入れルートを持つ総合商社「カメイ」系列の食品スーパー、グリーンマート桂店でも嶽きみを発見。切り口のみずみずしさは収穫されてから時間が経過していない証拠です。しかも髭付き皮付きの理想的な状態で、1本198円(2本380円)で嶽きみを扱っていたため、手に取ってズシリと重さを感じる3本を選んで購入しました。9月一杯が旬となる嶽きみゆえ、夏から秋へと季節が移り変わるあと少しの間、心地よい香りに包まれながら旬の味を楽しめそうです。

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【Photo】郷里の産品をこよなく愛する「francescaフランチェスカ」原田シェフが石臼でポレンタを挽く(下左写真)。店内で1か月以上を要して乾燥させる嶽きみが天井からぶら下がる店のメニューにも青森愛が溢れる(上写真)。実家のリンゴ畑で剪定したリンゴの枝は、燻製用に活用(下右写真)

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 嶽きみのシーズンが終わっても、別の楽しみがあります。仙台市青葉区大町にあるイタリアン「Francesca」原田尚徳シェフは五所川原出身。嶽きみならではのクリーミーな甘さを活かしたポタージュのほか、嶽きみを店で部屋干しし、石臼で挽いた特製ポレンタを使った期間限定スペチャリテ「実家のリンゴの枝で軽くスモークした秋鮭のサルスィッチャとポレンタ」として食することもできます。原田シェフいわく今年の嶽きみは極めて美味とのこと。食べ逃すのは勿体ないですよ。

akisake_polenta_franc.jpg【Photo】francesca原田シェフのスペチャリテ「実家のリンゴの枝で軽くスモークした秋鮭のサルスィッチャ・ディルの香りと嶽きみポレンタ」(1,000円)

 昨年はシェフの好意で嶽きみを石臼引きさせてもらった庄イタ。北イタリアの家庭のようにポレンタを自宅で楽しみました。これがまた結構なお味で。

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2013/09/01

「ゆうかメロン」でリベンジマッチ

絶品メロン fromつがる市木造亀ヶ岡
 「そうそう、この味、この香り!!

 「庄内系イタリア人的青森〈後編〉」で述べたように、立佞武多の期間中に五所川原市内で「アムさんメロン品種名:ゆうかメロン)」を入手するにはしました。前回レポートを熟読された方は、そこでズバ抜けた美味しさを賞賛しているのは、メロンの既成概念を覆した昨年のアムさんメロンだったことをお気づきだったかと思います。

azienda_melone.jpg【Photo】今年2月から本格稼働した風力発電の風車を背景に、見渡す限り露地栽培のメロンやスイカの畑がメロンロード沿いに広がる。つがる市木造亀ヶ岡付近にて

 そう、弘果弘前中央青果が商標登録するこのメロン。感激するほどの風味だった昨年が10点満点だったとすれば、立佞武多が開催される五所川原市中心部へのシャトルバスの発着点となる郊外の複合商業施設にある某大手スーパーで購入したことを、結果的には悔やむこととなる今年のアムさんメロンの得点は、正直に申し上げて合格点には微妙に達しない7.95。

yuka_melon.jpg【Photo】養分を作る葉脈の筋が浮き出し、緑から黄色に変わった外皮を覆う細かいネット状の網目が完熟の証し。ツルの付け根箇所に入る亀裂が収穫適期の目印となる「ゆうかメロン」。箱から取り出して置いておくだけで良い香りが部屋に充満する

 メロンは食べ頃を迎えるまでに購入後の追熟が必要なのですが、完熟状態で出荷されるアムさんメロンは、日持ちがしないため地元消費にほぼ限定されます。流通網が発達した現在では、ネット通販という手段があるにはありますが、こと収穫に至るプロセスが肝要な青鮮品は、極力この目で生産現場を確かめてから入手したいもの。

 なればこそ「Viaggio al Mondo~あるもん探しの旅」では食べ物の背景や作り手の思いをお伝えしてきたのです。

 いまひとつ味に納得がゆかず再チャレンジしようにも、ハウス栽培のアムさんメロンは、お盆を迎える頃にはシーズンを終えます。ましてお盆期間は農家や市場も休み。フットワークの軽さを自負する庄イタといえど、再びメロンハントのために津軽を訪れるわけにもゆきません。これぞ文字通り"覆水盆に返らず"???。盆明けに入手可能な露地物ゆうかメロンにしても、もはやギリギリのタイミングでした。1年間モヤモヤをため込むのは精神衛生上よくありません。リベンジのため原則をまげて取り寄せを決断しました。

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【Photo】今回ゆうかメロンを取り寄せた「農園おさない」のすぐ近くには、その特異な姿から異星人説すらある亀ヶ岡遺跡のシンボル「遮光器土偶」の巨大な石像がある(左) 遮光器土偶の形をしたユニークなJR木造駅(右)。この駅舎には列車だけでなくUFOも飛来するかも

 念のためネット検索したアムさんメロンと、JAごしょつがる認定「つがるブランド」のひとつ「ゆうかメロン」は、産出量全体のわずか1%と希少性が高く、すべからく売り切れ。まさに血眼になってシーズン最終盤のゆうかメロンを探しました。

 桐箱に入った万単位のメロンは、味を凝縮させるため1株1玉で栽培するそうですが、庶民には縁遠い高級品は例外です。通常のネットメロンは1苗に4玉で育てるところを、つがる市木造亀ヶ岡「農園おさない」の小山内昭光さんは贅沢にも2玉に抑えて低農薬・有機栽培で育てるのだといいます。こうした手間を惜しまない生産者のものならばと、最終盤の8月23日発送分ゆうかメロンをどうにか注文できたのです。

yuka_melon2.jpg【Photo】甘~い果汁がしたたる透明感の高い淡いグリーンのジューシーな果肉がもたらす至福の瞬間。「農園おさない」から2個3.980円(送料込)で取り寄せた完熟「ゆうかメロン」

 その産地は、4年前の5月に付近一帯の出土品を展示する「つがる市縄文館」を訪れたことがある縄文遺跡「亀ヶ岡遺跡」にほど近い同市館岡。多産や豊饒のシンボルとされる眼を誇張した特徴的な女性の姿をかたどった遮光器土偶が1886年(明治19)に出土したことで知られるそこは、つい先日通ったメロンロードからすぐの場所。最寄駅はJR五能線の木造駅で、その特徴的な駅舎は一度見たら忘れられない外観です。

 亀ヶ岡遺跡に一部畑がかかり、畑から時おり土器片が出土するという畑で育ったゆうかメロンは、T字のツル付きで届きました。箱を開けたとたんに広がるこのメロン特有の甘い香り。アムさんメロン同様、食べ頃を充分に見極めて出荷されるため、室温で追熟させる必要はありません。冷蔵庫で適度に予冷してから包丁を入れました。

yuka_melon3.jpg【Photo】光が透けるほど皮際ギリギリまで美味しく食べられるのも「ゆうかメロン」の特徴

 頬張った口いっぱいに広がる芳香、果肉から溢れ出るみずみずしい果汁、そしてこの品種ならではの糖度の高さも十二分。
「そうそう、この味、この香り!!

 旬の盛りを過ぎたシーズン終了間際とあって、実際に口にするまで不安もありましたが、それは全くの杞憂でした。 やはり農作物は信頼に足る作り手あってこそ。庄イタにとっては避けては通れない庄内浜から象潟にかけてのミルキーな岩ガキと同様、世にも稀なこのメロンの味を堪能することなしに夏を終わらせるわけにはゆかないのです。
 

 こうして往く夏を惜しむかのように臨んだリベンジマッチ第1ラウンドは、期待に違わぬ納得の結末をみたのでした。次回リターンマッチ第2ラウンドの模様は、岩木山麓の嶽高原からお伝えします。(・・・もはや次回お題は明らか)

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2013/08/24

庄内系イタリア人的青森〈後編〉

燃え立つ夏2013@青森 Part2:津軽編

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【Photo】毎年1基が制作される高さ20mを越す大型の立佞武多を常設展示・保管する施設として2004年(平成16)に竣工した「立佞武多の館」。女性が打ち手となり、重低音を轟かせる直径2.8mの大太鼓を二段重ねにし、高さ8.5mの立佞武多「本能寺の変」を上に据え付けた「忠孝太鼓」(右下)を先導するのは、五所川原が生んだあの大スター!!
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【Movie】五所川原市では最も高い地上7階の施設から引き手によって高さ17m・重量18tの立佞武多が出現するさまは、特撮怪獣映画の世界さながらの迫力
 

 開幕初日に訪れた五所川原の夏の宵を熱く燃え立たせる「立佞武多(たちねぷた)」の興奮さめやらぬ夜は、硫黄の香り漂う弘前の嶽(だけ)温泉の宿「山楽」を予約していました。五所川原から移動すると1時間ほどを要する岩木山麓の湯宿をあえて選んだのには、1年で最も多くの観光客を集める立佞武多初日の五所川原市内では、宿泊施設をリーズナブルに確保することが難しいことが予想されただけでなく、れっきとした理由がありました。

sanraku_rotenM.jpg【Photo】早朝ゆえに極めて残念ながら貸切状態だった(笑)嶽温泉「山楽」の混浴露天風呂〈another image〉。この時の湯量は何故か寝湯のごとき少なさ。ゆえに内湯(→男女別)へすぐ移動した

 まずは今月26日、めでたく開店10周年のアニバーサリーを迎える弘前「オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ」笹森シェフお勧めのこの宿の露天風呂(混浴~♡(〃▽〃)♡)に浸かりたかったこと。そして色気より食い気優先の庄イタの常で、時季が少し早いことを承知で、あわやくば地物にありつきたいと思っていた嶽特産の比類なき濃厚な風味のトウモロコシ「嶽きみ」が狙いだったのです。

azienda_dakekimi.jpg【Photo】岩木山麓南側、標高400m~500mの嶽地区周辺で産出する香り高く甘味の強い嶽きみ。8月のお盆時期前後に迎える旬の真っ盛りには、糖度が18度にまで達し、ブチッとした食感を堪能できる生食も可能。最盛期には岩木山を周回するロードサイド各所に期間限定で嶽きみ直売施設が立ち並び、通称「嶽きみロード」が出現する

 肌触りの良い濁り湯で朝風呂を浴びてから宿を早めに出発し、岩木山を周回する道を反時計回りに進みました。最盛期ほどは多くない出始めの直売所数軒を渡り歩き、さらに観光案内所で嶽きみの作況を尋ねると、嶽地区より標高の低い場所で採れたものが出始めたばかりとのこと。7月下旬まで例年にない寒さで暖房を入れる日すらあったという今年の嶽地区。嶽きみは全体に生育が遅れ気味なのでした。

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【Photo】足湯につかりながら嶽温泉街をそぞろ歩きした早朝、弥生地区で朝採りされた「(ほぼ)嶽きみ」が店に持ち込まれて下処理される(左写真) 店頭で食する分は鍋で茹でる(中写真) 6本1000円で購入した(ほぼ)嶽きみ

 ならばと温泉街に今一度立ち帰り、マタギ飯が名物の「山のホテル」売店「めへやっこ」(→「小さな店」というニュアンスの津軽弁)」へ。ここは9:30開店で、山楽の出立時はまだ閉まっていたのです。めへやっこでのお目当ては、"ここだけ(嶽)にしかない"が売り文句の「元祖嶽きみシェイク」、そして"うまくてゴメンね"のフレーズに思わず喰いついた「期間限定アムさんメロン生シェイク」。

dakekimi_shake.jpg amusan_shake.jpg【Photo】ツブツブ感の高い「元祖嶽きみシェイク」(左) 津軽特産「つがりあんメロン」でも香りの良い品種「アムさんメロン」を使った「期間限定アムさんメロン生シェイク」(右)各400円

 まだ実入りが充分ではないきみ畑の様子から、嶽地区産を入手するのは無理そうだと踏みつつ、庄イタが産地を尋ねると、嶽だと答える店もありましたが、眉唾な店はスルー。正直に事実を明かしてくれたお母さんいわく、信頼のおける嶽地区の農家が、嶽から少しばかり離れた標高がわずかに低い弥生地区の畑で育てているという「ほぼ嶽きみ」を購入することにしました。本物の嶽きみは、後日その「藤喜商店」から送ってもらえば良いのですから。

 嶽温泉から岩木山を時計回りに下り、鰺ヶ沢の夏を彩る風物詩「イカカーテン」で知られる名物のイカ焼き(300円)を購入がてら、立ち寄ったのが「菊谷商店」。炭火で焼いた香ばしいイカ焼きの旨さは相変わらずでしたが、目を疑うほど変わってしまった光景がありました。

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【Photo】鯵ケ沢漁港で水揚げされた肉厚のイカ(右)が日干しされる菊谷商店。3,4年前にTV番組でこの店を志村けんが訪れ「日本一うまい」と言ったとか(左)

 それが1年ぶりに対面したブサカワ犬「わさお」です。飼い主の菊谷節子さんが体調を崩して入院した今年、施設に預けられた挙句に激ヤセが伝えられたわさお君。毛がフサフサだったかつてのメタボな姿恰好とは打って変わり、同じ犬とは思えないほどスリムに。酸素吸引をしつつも店においでだった菊谷さんともども、一日も早く健康体を取り戻してほしいものです。

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【Photo】わさお三態。一躍ブレイクして間もない2010年5月(左) 映画が制作され人気者の常でお疲れ気味の2012年6月(中) 飼い主不在のもとで激ヤセした2013年8月(右)

lago_13.jpg【Photo】大和シジミが特産の津軽半島の汽水湖「十三湖」。時として湖水がシジミ色に見えるのは、平均水深が1~2mという浅さゆえ、湖底のシジミがそうさせる???(上写真) 白いご飯が進む新岡商店の瓶入りしじみ佃煮は極めて美味(下写真)

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 目指すハニーハントのアイテムは二つ。まずはヤマトシジミの一大産地、十三湖畔に並ぶ店で試食用の佃煮をあらかた食した上で、「ここのが一番!!」と庄イタが太鼓判を押す「新岡商店」のお婆ちゃん、新岡てささんが手作りするうま味の塊のような絶品しじみ佃煮(700円)。味付けは醤油・砂糖・水飴だけと至ってシンプルながら、自然な味わい深さ。仕込みには膨大な量のシジミを必要とします。そのため気合を入れないと、てさ婆ちゃんは佃煮を作らず、良い出汁がとれる冬シジミに対して、食して旨い夏シジミの旬だった今回、結論から言うと残念ながら欠品中なのでした。う~ん、これを目当てに十三湖まで足を運んだというのに、返す返すも残念!

ganryo_ramen.jpg 気を取り直し、すぐ向かいにある民宿を兼ねた食堂「岩亮」へ。昨年出張で青森を訪れた時は、同行した後輩の希望で元祖店「ドライブイン和歌山」もハシゴしました。人気ラーメン店のインテリアとして欠かせない有名人の色紙で壁一面を覆い尽くされた店内で、白味噌を和えて少し白濁したスープのしじみラーメン(750円)を食しましたが、家族帯同の今回ハシゴはパス。岩亮では店主の岩本剛亮さん自ら漁に出るという大和シジミと昆布で出汁をとった透明感のあるスープが、細めの縮れ麺となじみます。そんなシジミの風味たっぷりの「しじみラーメン」(700円)で溜飲を下げました。

strada_melone.jpg【Photo】鯵ケ沢から、つがる市までまっすぐの道が延びるメロンロード一帯では、生産量全国6位の青森県産メロンのおよそ8割が産出される。砂地で日本海が近いため夜間は海風が吹き込み、昼夜の寒暖差が大きい。そのためハウス物の「アムさんメロン」ほか、トンネル栽培の露地物ともに統一ブランド「つがりあんメロン」の一大生産拠点となった

 鰺ヶ沢から十三湖方面へと向かうには、津軽半島西側を北へ伸びる全長22kmの通称「メロンロード」を通ります。そこには今回楽しみにしていた素晴らしい芳香を放つメロンがあるのです。糖度15度以上を基準とする津軽ブランドメロン「つがりあんメロン」の中でも、糖度18度まで達する完熟期には、クラクラするほど官能的な香りを漂わせる知る人ぞ知るアムスメロンの改良種「アムさんメロン(品種名:ゆうかメロン)」こそが目指すハントアイテムです。

amu_melon.jpg なれど6月に出荷が始まるアムさんメロンは終盤に差し掛かっており、半円形の雨除けビニールの中は、出荷が始まったアーバンデリシャスやハニーゴールデンといった品種がほとんど。メロンやスイカを扱うロードサイドの直売所でも、運転席からの傍目にも分かりやすい特徴的な色合いのアムさんメロンは数が少なめなのでした。

【Photo】ゆうかメロンをハウス栽培し一定糖度に達した完熟ものだけに許される「アムさんメロン」の称号。追熟する必要がない代わり、ネット通販以外は地元流通にほぼ限られる。箱入りではなく山積みされた完熟アムさんメロンの売り場には心地よい芳香が漂う。画像から香りをお届けできないのが残念

amusan_2012.jpg 昨シーズン、青森市羽白沢田の県民生協はまなす館で遭遇したアムさんメロンとの出合いは衝撃でした。淡い黄色の外皮のネットメロンが山積みされた売り場一帯は、えも言われぬ良い香りが漂っているのです。直観的に「これはウマそうだ」とフェロモンに誘われるように買い求めた完熟アムさん。皮際まで柔らかい透明感のある薄緑色の果肉は、メロンの既成概念を覆すジュルジュルの美味しさ。あれから1年。指折り数えて待ち焦がれた愛しのアムさんとの再会は、十三湖を経て五所川原市内で果たされます。次回は地元事情通が勧める旧木造町の腕利きメロン農家が直接持ち込む期間限定の直売所を目指すとします。

青森滞在3日目は、青森ねぶたも制覇したかったのが本音です。なれど仙台から南部、さらに津軽まで野を越え山を越え700kmを走り続けたため、同行者を含めて気力・体力の限界を感じていました。そのため五所川原から西方の青森市を目指すことなく、断腸の思いで進路は南へ。

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houhai_tsurushi.jpg【Photo】弘前城址から岩木川に架かる富士見橋を渡り、鰺ヶ沢に至る街道を北西へ。同市石渡の辻角にある三浦酒造店でポリタンクに仕込み水を頂く之図(上)。限られた特約店のみに出荷されるため、左党が入手に躍起となる「豊盃」。その頂点「豊盃つるし酒大吟醸」(右)とコスパ抜群の「ん」(左)

 北米原産の黒ブドウ「スチューベン」生産高日本一の鶴田町ではブドウ畑を訪れた後、産直施設でスチューベン果汁100%ジュースを購入。弘前では希少な「豊盃つるし酒大吟醸」と「ん」、つまり三浦酒造店のアッパーエンドとボトムエンドという両極端な2本を幸運にも入手。道すがら三浦酒造店の蔵に立ち寄り、岩木山水系の甘く柔らかい女性的な口当たりの仕込み水もたっぷりと汲ませて頂きました。芳醇な「豊盃」に仕込まれる前でも、冷やさずに常温でも美味しいんですよ、ホントこの水。

 こうして大鰐・弘前ICから青森方面に向かう東北自動車道下り線ではなく、上り線に乗ったのが15時頃。余裕を持って仙台を目指した筈が、そろそろお腹が空いてくる18時過ぎに花巻南ICで下車した理由は、Vaggio al Mondo ‐ あるもん探しの旅をご覧頂いている皆さまなら、とうにお見通しのはず(笑)。

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2013/08/11

庄内系イタリア人的青森〈前編〉

燃え立つ夏2013@青森 Part1:南部編

hachinohe_sanjya2013.jpg 標高2000mのチロリアンアルプスに広がる楽園「アルペ・ディ・シウジ」や、古代ギリシャ・ローマ時代の遺構とグランブルーの海が美しいコントラストを描く南イタリアでのヴァカンツァは今年もお預けの庄イタ。里帰りを封印して目指した本州最北端の青森には、彼の地に生まれ、ねぶたを愛した棟方志功が板画に刻んだ情念のように熱く、生命力に溢れ、そして美味しい夏が待っていました。

【Photo】波をかき分ける千石船の波山車や中南米に見られるウルトラバロックのごとき過剰なまでの装飾を凝らした山車27台と神輿行列、神楽、虎舞などが次々と目抜き通りに繰り出し、一大スペクタクルを繰り広げる「八戸三社大祭」お還(かえ)り。高さ10mにもなる仕掛けが展開すると、沿道からはやんやの歓声click to enlarge

tachinebuta_2012.jpg 訪れたのは、極彩色の仕掛け人形山車と時代行列、厄祓いの一斉歯打ちが見どころの法霊神楽、ユーモラスな虎舞などが繰り出す重要無形民俗文化財「八戸三社大祭」、さらには「ヤッテマレ、ヤッテマレ」の掛け声に乗って、電柱よりはるかに大きい高さ23mの巨大な山車ねぶたが五所川原市街地を巡行する「立佞武多(たちねぷた)」。本州最北の青森各地は、8月の到来とともに熱く激しく燃え盛ります。

【Photo】平安の陰陽師、安倍晴明を題材にした今年の新作「陰陽 梵珠北斗星」よりは、東日本大震災発生前日に「立佞武多の館」で見て以来となった「義経伝説・龍馬渡海」の憤怒の形相や、迫力満点の昨年の新作「復興祈願・鹿嶋大明神と地震鯰」が個人的には好みclick to enlarge

michi_kaiihigashiyama.jpg この八戸と五所川原で開催される二つの夏祭りと、夏の味覚を求め、今月初旬青森を旅しました。今年5月、三陸復興国立公園に指定された種差海岸では、1940年に初めてそこを訪れた若き日の故・東山魁夷が描いたスケッチをもとに1950年に発表した名作「道」のモデルとなった海沿いの場所を訪ねました。波打ち際まで続く天然芝生地や鳴き砂で知られる大須賀浜など、恐らくは70年前とさほど変わらぬ風景がそこにはありました。戦後の復興期にあって人々の共感を呼んだ清々しい夏の早朝の道を描いた作品が生まれた地に、画家と同じ目線で立てたことは望外の幸せであり、心からの感動を覚えたのでした。

【Photo】大須賀浜沿いに延びる道を北へ進むと、見覚えのある風景が眼前に現れる。戦後の日本画壇で一躍注目を浴びる契機となった東山魁夷の出世作「道」の記念標柱が道沿いに立つ。この場所を訪れた新進気鋭の若き画家は、放牧される馬や地平線正面にある鮫角灯台などを省略し、潤いある一筋の道だけを描こうと今も残る大平牧場に泊まりがけで完成させたという。9月1日(日)まで青森県立美術館で開催中の三陸復興国立公園指定記念「種差 よみがえれ浜の記憶」でこの名作と出逢える

 昼食は予約していた八戸のイタリアン「Casa del Cibo カーサ・デル・チーボ」へ。これまで訪れた青森イタリアンは、それぞれに地域性や個性があっていずれもハイレベル。食材の宝庫・東北では最も粒が揃っていると庄イタは思っています。今回お邪魔したこちらの店のオーナーである池見シェフは、惜しまれつつ3年前の12月末をもって閉店した名店「エノテカ・ピンキオーリ銀座店」にも籍を置いたと聞けば、いやが上にも期待が高まるというもの。昼に伺った今回は初訪店ということで、3つのランチコースの中でプリモとセコンドが選べるプリフィックスのBコース(2,800円)をお願いしました。

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【Photo】下北産天然ホタテ、グリーンオリーブとズッキーニのタルターラ、ボッタルガ・ムジーネがけ(左) 八戸産エゾバフンウニとフレッシュトマトの冷製スパゲッティーニ(右)

 5つの選択肢から選べるアンティパスト。「下北産天然ホタテ、グリーンオリーブとズッキーニのタルターラ、ボッタルガ・ムジーネがけ」(+300円)は、半生に仕立てた鮮度抜群の下北半島産天然ホタテの甘味と、クリーミーなペースト状になった夏野菜が見事に調和した一皿。ボラのカラスミが風味に幅を生み、抑制の利いたピンクペッパーが香りの変化を生みます。同行した家族の注文品「活真ダコの厚切り冷しゃぶとテリーナ ドライトマトソース」と「ピオトジーニ社製パルマハム、ルーコラ・セルバティコ、パルミジャーノ・レッジャーノのピアディーナ」ら3品ではピカ一。

casa_cibo5.jpg【Photo】和牛頬肉のグーラッシュ(トマト・パプリカの煮込み)トレンティーノ=アルト・アディジェ風、カネデルリとポレンタ添え

 プリモは夏の人気定番メニューだという「八戸産エゾバフンウニとフレッシュトマトの冷製スパゲッティーニ」(+300円)。八戸周辺の潮汁料理「いちご煮」でも使われる濃厚な味が特徴のエゾバフンウニでも、ロシア産ではなく東北以北の寒流域で育った国内産は高級品です。鮮度の良い地物の生ウニとフレッシュトマトクリームを、細めのスパゲッティーニと和えたスペチャリテ。ひんやり・ツルツル・シコシコの食感はクセになりそう。盛りがお上品なので、すぐ食べ終えてしまうことが玉にキズ(笑)。

 セコンドは「和牛頬肉のグーラッシュ(トマト・パプリカ煮込み)トレンティーノ=アルト・アディジェ風、カネデルリとポレンタ添え」。これぞアルト・アディジェ料理!!と唸らせる深みのある牛肉にハンガリー風のパプリカとトマトの旨味が加わったホッとする優しい味付け。前回アップしたサン・ミケーレ・アッピアーノ講習試飲会で登場したサンクト・ヴァレンティン・カベルネ・ソーヴィニョンと完璧な相性を見せるでしょう。

 付け合せは北イタリアではポピュラーなポレンタとカネデルリ。南ドイツ・バイエルン地方やオーストリアの「Knödelクヌーデル」は、牛レバーのすり身を使う肉団子ですが、イタリア北西部ではパン生地を丸めたニョッキのような「Canederliカネデルリ」と変化します。味付けが重くなりがちなドイツやオーストリアの煮込み料理とは違い、軽やかでもコクのある絶妙のバランスは、味にうるさいイタリアならでは。こうして庄イタ流"また行きたい店リスト"イタリアンカテゴリーで、青森では4番目に新規登録を果たしたカーサ・デル・チーボを後にしました。

1er_renshuki.jpg 八戸から移動した三沢では、青森県立三沢航空科学館を見学しました。そこで2年前に公開された映画「連合艦隊司令長官山本五十六」で実際に使われた零式艦上戦闘機二十二型復元機と共に展示されていたのが、昨年9月、十和田湖の湖底から69年ぶりに引き揚げられた旧日本陸軍「一式双発高等練習機」。能代から八戸までの訓練飛行中、エンジントラブルで十和田湖に不時着したという機体です。乗員4名のうち3名が犠牲となったという色褪せた銀色の機体には、くっきりと日の丸が。

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 軍属230万人・一般市民80万人が尊い命を失った太平洋戦争の終結から68年。今年も8月が巡ってきました。日本全体で8割を占める私たち戦争を知らない世代は、平和な世の中がさも当たり前であるかのように思っています。時の経過による腐食が進みながらも原型を留めた機体は、それが多くの犠牲の上にあるのだという史実を思い起こさせてくれました。

 石窯焼本格ナポリピッツァの店「ピッツェリア・マッシモ」訪問も、必須のミッションです。店が入居する複合施設「スカイプラザミサワ」は、三沢駐留の米軍基地正面ゲート正前にあります。軍払い下げのミリタリーグッズやアメリカンサイズな米国製品などを扱う店が入居する同施設1Fにあるピッツェリア・マッシモは、多くの客で賑わっていました。テーブル席は一杯とのことで通されたカウンター席と背中合わせのテーブルにはネイティブ・アメリカン男女4人連れ。これも基地の町ならではでしょう。

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 赤のタイルモザイクで装飾された石窯は、ナポリの石窯工房Stefano Ferrara ステファーノ・フェッラーラにオーダーメードしたもの。気取らないナポリの下町にありそうな雰囲気の中、庄イタが注文したのは「マリナーラ」(600円)。ナポリピッツァの生命である生地の味を知るには、ナポリ伝統のピッツァであるマリナーラが一番。プロの料理人からの信頼が厚い六戸町にある「大西ハーブ園」の野性味溢れる香り高い「ルッコラ・セルバティコのインサラータ」(450円)も追加です。連れの家人は手堅く「マルゲリータ」(650円)を、肉食系の娘は、「ラニチキン」(半身・700円)と「グリーンサラダ」(280円)を所望。飲み物はジンジャエールで決まりです。

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 炭火焼ラニチキンは、鶏一羽の半身ゆえ、娘1人では持て余す結構なボリュームなのでした。ケージ飼いのブロイラーのごとき体型で山盛りのラニチキン(一羽・1300円)にコーラ片手にかぶりつく共喰いさながらのネイティブの姿にゲンナリしながら、「ええい、ままよ!!」とアメリカンサイズの肉塊を手づかみで助太刀喰いし完食。ハワイ・ホノルル生まれの屋台料理「フリフリチキン(別名:バーベキューチキン)」の味を再現したスパイシーでジューシーな照り焼きチキンは初体験でしたが、ホノルル出身のスリムなオバマ大統領もお好きなのでしょうか?

 翌朝、日本初の近代洋式牧場を三沢の荒野に切り開いた旧会津藩士、廣澤安任(ひろさわやすとう)の功績を軸に斗南藩開墾の歴史を紹介する「斗南藩記念観光村」内の先人記念館で会津の歴史に触れ、八甲田を越えて青森市に移動しました。2泊3日の行程のうち、八戸・三沢の旧南部藩エリアに関するレポートはここまで。次回あるもん探しの旅は津軽編へと続きます。

To be continued ...

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イタリア料理 Casa del Cibo カーサ・デル・チーボ
  住:青森県八戸市湊高台1-19-6
  Phone:0178-20-9646
  営: 11:30-13:30(L.O.) 18:00-20:30(L.O.)
     日曜・毎月第2月曜定休
  URL: http://www.casa-del-cibo.com/index.html

石窯薪焼き本格ナポリピッツァ Pizzeria Massimo ピッツェリア・マッシモ
  住:青森県三沢市中央町2-8-34 スカイプラザミサワ 1F
  Phone:0176-51-7270
  営:月~土/11:00-21:00(14:00-16:00はピッツァお休みのカフェタイム)
     日・祝/11:00-20:00(15:00-16:00はピッツァお休みのカフェタイム)
     火曜定休
  URL: http://beresford.co.jp/pizzeriamassimo/shopinfo.html
      (上記URLに記載のビル名「MGプラザ」は旧名称)


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2012/08/19

甘党も左党も納得

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しっかり田酒なジェラート
by イタリア料理アデッソ@青森市油川

 今年は青森づいている庄イタ。間もなく去ろうとしている夏の発見のひとつが、青森市油川のイタリア料理店「Adesso アデッソ」で出合ったこのジェラート。

 某所で開催された空前絶後のレアもの垂直試飲ワイン会でお会いした田酒で知られる西田酒造店の西田司社長から教えて頂いたイタリアンレストランを翌日訪れ、お持ち帰りしました。

 近所に蔵を構える西田社長御用達だというこの店。青森市街地から西へ向かった郊外にあるアデッソ訪問は、今回が初めてでしたが、アンティパスト2皿・自家製手打ちパスタ料理のプリモピアット、本来は肉料理のところを魚料理にチェンジをお願いしたセコンドピアット、ドルチェ、コーヒー or 紅茶(エキストラチャージでエスプレッソに変更可)からなるCランチ(2,520円)を頂きました。

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【Photo】アデッソのCランチ(2520円)より。陸奥湾のタコ・自家製モルタデッラ・キッシュなどのアンティパストミスト(左上) ミョウガのぺペロンチーノ風味自家製キタッラ(右上) 津軽海峡産マダイのソテー・温野菜添え(左下) イチジクのタルト・ティラミス・キウイのジェラート(右下)

 11時30分から始まるランチタイムの一番乗りを果たした私が通されたのは、手動のパスタマシン「トルキオ」の目の前の席。通行量が多いバイパス沿いではなく旧道の松前海道沿いの町外れにあるにもかかわらず、次々と来店客があり、正午前には満席に。地元の支持が高いことを窺わせますが、不意打ちを狙った(笑)西田社長は残念ながら姿を現しませんでした。

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 「この料理ならまた来てみたい」と思わせてくれるイタリアンと出合えた喜びを増幅させてくれたのが、濃厚なナポリスタイルのエスプレッソ。スプーン2杯の砂糖を加えてカッフェをさっと引っかけ支払いを済ませようと向かったレジ脇にサンプルが置いてあったのが、店の自家製ジェラート。何種類かある中で私がビビッと来たのが、この田酒酒粕ジェラートでした。同じ発酵食品である乳製品と酒粕の相性の良さはすぐに想像がつきました。

【Photo】W氏が推奨する青森市内の某日本酒BARで夢見心地へと誘ってくれた津軽の美酒双璧。今年が豊盃倶楽部最後の蔵出しとなる純米吟醸と田酒 純米吟醸 百四拾

 その前月に出張で青森市を訪れた折には、青森県庁に勤める一方で食道楽の道を驀進するW氏推奨の日本酒BARで「田酒 純米吟醸 百四拾」の上品でふくよかな旨さに悶絶したばかり。この日は青森駅近くの某酒販店で目当ての「豊盃」や「六根」を手に入れましたが、地元とはいえ、田酒については特別純米酒が間もなく出荷されるというそのタイミングでは、高額な贈答用の四合瓶セットがあるだけで手が出ませんでした。

denshu_gelato2.jpg【Photo】カップの蓋を開けると、ほんのり日本酒の芳香が漂う。酒粕だけでなく田酒そのものも少量入っているというものの、アルコール感はゼロ。甘党のみならず左党もまっしぐらな田酒酒粕ジェラート

 仙台でも店によっては田酒の酒粕を置いていますが、ジェラートとの組み合わせは試したことがありません。まして田酒を醸す西田酒造店の地元・油川を訪れて手ぶらで帰ったのでは画竜点睛を欠くというもの。この日は仙台まで車で戻らなければなりませんでしたが、かくなる事態もあろうかと保冷バッグを持参していた上、バラ売りOKとのことで購入を即断しました。

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 容量は120gと食べきりサイズの田酒酒粕ジェラート。スプーンから伝わるシャリ感のある感触は、乳脂肪分少なめのジェラートそのもの。口に含むと、ほのかな日本酒の香りが鼻腔を満たし、それを追いかけるようにしっかりとしたミルキーな風味が幾重にも重なってえも言われぬ幸せな余韻を残します。

 容量の1割を占める酒粕由来の旨味・香りと牛乳のコクのある甘さとが渾然一体となった田酒酒粕ジェラート。これならジェラートの本場イタリアでもOttimo(サイコーッ!!)、Buonissimo(ウマ過ぎ!!)と受けること間違いなし!
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Trattoria Adesso トラットリア・アデッソ
住:青森市油川字大浜1-1
Phone:017-788-0417
E-Mail:info@adesso-k.com
URL:http://www.adesso-k.com/
営: 11:30~14:00(L.O.)  18:00~21:00(L.O.)
定休:日曜日  P有り

お取り寄せはコチラから
http://www.adesso-k.com/SHOP/698287/list.html


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アデッソイタリアン / 油川駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2012/05/27

1年ぶりの青森美味巡礼

花の命は短くて...。2012春

 GW直前までは平年を下回る肌寒い陽気が続いていた東北各地。例年にない雪解けの遅れにより、稲作には平年と比べて2週間程度の遅れが出ています。本州最北の青森で田植えが始まったのは、5月の第2週に入ってから。植え付けの最盛期は、幾分とも水が温み始める3週目となりました。

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【Photo】岩木山と花ざかりの弘前城公園

 東北では2年ぶりの桜といわれた今年。事実、私も昨年は桜の記憶が全く飛んでいます。これは私に限ったことではなく、周囲でも多くの人が口を揃えてそう言います。震災による混乱の渦中にあった昨年は、被災地では誰もがそれどころではありませんでした。長かった冬の終わりを実感し、花鳥風月を愛でる心のゆとりを取り戻すため、2年ぶりの桜を愛でに連休後半は「弘前さくらまつり」開催中の弘前へと向かいました。

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【Photo】ライトアップされた夜桜があでやかに咲き誇る夜の弘前城公園

 桜の盛りに一度は訪れることを強くお勧めしたいのが、49.2haの園内に2,600本もの手入れが行き届いたソメイヨシノを中心に50種類の桜が咲き乱れる弘前城公園です。ニッポンに生まれて良かったと誰もが実感するであろう見事な桜との2年ぶりの再会は、一番の楽しみでした。とはいえ、美味との出合いのためなら野を越え山を越えることを厭わない私が、喰い気をなおざりにして満足するはずはありません。

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 そこで選ぶべきは、いま東北で最も注目に値する青森イタリアンです。その両雄たる「Osteria Enoteca Da Sasinoオステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ)」(弘前市)と、「AL CENTROアル・チェントロ)」(青森市)の2店を桜の時期にあわせて予約したのは、当然の成り行きでした。

 5年前の8月、リンゴの自然栽培に挑んだ木村秋則さんのもとを訪れた日〈拙稿「奇跡のリンゴ」2009.9参照〉に初訪問、翌年5月の再訪で確信を深めた上でViaggio al Mondoでご紹介したオステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ〈拙稿「自給率100%のレストラン」2008.5参照〉。オーナーシェフである笹森通彰さんは、同年7月にオンエアされたTBS系「情熱大陸」や専門誌・一般情報誌など各メディアから注目され、全国から訪れる食通を唸らせています。

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【Photo】1年間封印していた昨年3月10日夜@オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノのアンティパスト2皿 / 真ダラの白子のすり身をふっくら香ばしく焼き上げた「鱈のスフォルマティーノ 菊芋のピューレ」(左) 素材感の組み合わせが活きる「藤崎町産ホワイトアスパラガスのソテー 家飼いウコッケイ半熟卵と自家製フォルマッジョ」(右)
 

 東北新幹線が青森まで延伸した一昨年12月、青森駅近くに開業した複合商業施設「A‐FACTORY」2Fに「Galetteria Da Sasino ガレッテリア・ダ・サスィーノ」をJR東日本の依頼により出店、それに先駆けてジャジー牛乳の自家製モッツァレラを使うナポリピッツァの店「Pizzeria DA SASINOピッツェリア・ダ・サスィーノ」を弘前市内にオープンさせています。

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【Photo】プリモピアット2皿 / 自家菜園のカボチャとお米のトルッテリーニ(左) 大鰐町産青森シャモロックのクレスペッレ(=クレープ)(右)

 店舗を増やし拡大路線に転じた飲食店が、質の低下に陥るお決まりの轍を踏むことなく、業態が異なる新店は、信頼の置けるスタッフに任せる賢明さを持ち合わせていた笹森シェフ。ご自身は以前と変わらずオステリアに身を置き、全てを取り仕切っています。食べ手である客がいてこそ成り立つ飲食店の道義として当然のことながら、いかに名前が売れようと料理人の本分を貫き、いささかのブレもない「じょっぱり」の面目躍如たるサスィーノ再訪は、必須のミッションなのでありました。

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【Photo】セコンドピアット / 七戸健育牛サーロインのビステッカ(左) ドルチェ / ウコッケイ卵のティラミスとレモンのソルベ(右)
  
 そして私の中では昨年最大の発見だったAL CENTRO。翌日起こる事態を知る由もない昨年3月10日、東北新幹線延伸に関連した仕事で青森に出張しました。オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノを夜に予約していたため、昼に初見参したこの店。東通村で暮らす祖母に栽培を任せている野菜など地元の素材を中心に"手間を惜しまず 手を加えすぎない"という葛西 淳オーナーシェフが創意を凝らしたセンスが光る料理は、鮮烈な印象を残しました。

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【Photo】アル・チェントロのランチコース(Pranzo-b 2,800円) 付きだし / 豚肉のさまざまな部位を使う自家製ソプレッサータ、キッシュなどのアンティパスティ・ミスティと呼んで差し支えない内容(左) アンティパスト / 下北産タコのテッリーナと古代小麦ファッロ、ポモドーリセッキ(右)

 「ちゃんと出張先で仕事してんのかよ!!」とのごもっともなツッコミは、どうかなさらぬよう(笑)。14ヵ月ぶりの"じょっぱりイタリアン"を再訪することなくしては、青森を訪れる意義が半減するというもの。笹森シェフへの事前のヒアリングで、桜が見頃を迎えるであろうGW後半で予約を入れました。さらに今回は、本州最北端の地・大間まで足を延ばすことを画策。そう、築地市場経由で銀座の寿司屋で食そうものなら、ウン万円の出費を覚悟せねばならぬマグロ界のエース、世に名高い大間のクロマグロ(ホンマグロ)が目当てです。

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【Photo】プリモピアット / ファッロを練り込んだ自家製パッパルデッレ 春野菜と県産黒豚のラグー(左) 絶妙な火加減がもたらすカリカリの皮とジューシーな白身。陸奥湾の天然ヒラメのクロッカンテ(右)

 ところが、あれもこれもと欲張ったのが災いしたのでしょうか、出発前にギックリ腰をやらかした上、3日間の青森滞在中は、雨続きのあいにくの天候。加えて計算外だったのは、それまでの寒さが一転、GW直前に気温が一気に上昇したこと。これにより、平年より遅れると予想されていたソメイヨシノは4月27日に開花、5月1日には満開が宣言されました。そこに花散らしの雨が連休後半は降り続いたため、3日にAL CENTROで葛西シェフの料理を味わうべく前泊した強風と雨の青森市でも、弘前の桜がいかなる状態であるかが、気がかりでした。

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【Photo】ドルチェ / イタリア版のクレームブリュレ、「クレマコッタ」ないしは「クレマカタラーナ」。サルディーニャでは「クレマ・ブレチャータ」と名前を変える  Bevande / カッフェ

hotokegaura2012.5.4_.jpg【Photo】下北半島の霊場「恐山」ともども、この世のものとは思えない「仏ヶ浦」の奇観。大間まで足を延ばすのであれば、青森市から4.5時間を要するとこを覚悟の上で、車でのアクセスを

 相変わらずの雨模様となった4日朝、具合の思わしくない腰をかばいつつ北緯41度線を越え、奇岩が連なる景勝地・仏ヶ浦を経て訪れたのは、大間漁港すぐ近くの「浜寿司 Link to Website」。大将の伊藤晶人さんは、大間伝統の近海一本釣りで捕えるクロマグロでも、スジ目の少ない150 kg超級の高級品しか扱わないのだといいます。

oma_2012.5.4.jpg【Photo】「こヽ本州最本端の地」と刻まれた石碑が建つ大間崎の先は、クロマグロの漁場である津軽海峡にウミネコが群れ飛ぶ津軽海峡

 産地でとことんクロマグロを堪能しようと、はるばる訪れた大間です。ここは大間鮪丼 特上(1人前3,900円)を奮発。5月は漁期ではないものの、冷凍技術の進歩により、赤身からしてすでに異次元領域へと誘う大間産ホンマグロは期待に違わぬ旨さ。しつこさを感じさせない上質な脂が乗った中トロ、さらにノリノリの大トロに至っては・・・。画像を見てヨダレを垂らしておいでの皆さまご想像通り(笑)。

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【Photo】シャリが見えないほど豪勢に盛られた大間クロマグロの赤身・中トロ・大トロ(右写真)が存分に味わえる浜寿司の「大間鮪丼 特上」(左写真)

 幸福ではなく"口福"と表現したくなるクロマグロの余韻に浸りながら3時間を要して訪れたオステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ。アペリティーヴォ(=食前酒)ともなる1杯目は、自家製ワイン醸造挑戦2年目の「Sasino Bianco 2011」をオーダーしました。自家製ヴィーノの予想以上のバランスの良さに、笹森シェフが食材自給率100%を達成する日が、そう遠くないことを確認できたのは、この日持ち込みした「Brunello di Montalcino Pian delle Vigne1997 / Antinori」の素晴らしい熟成ぶりとともに望外の収穫となりました。

   brunello97_antinori.2012.5.4.jpg sasino_bianco2012.5.4.jpg 

 連休中とあって、満席でフル回転する厨房とフロアの両方を忙しく行き来しながらも、シェフ本人がきちんと手をかけてくれた料理は、いつもながらの完成度の高さ。前回は自家製リモンチェッロ(下右写真)を呑みながら、店が引けた後もシェフと語り合ったのですが、今回は23時までライトアップされる夜桜が、昼間とはまた違った妖艶な姿を見せてくれるはず。締めのカッフェ(下左写真)だけで食後酒を封印、一縷の望みを抱いて弘前城公園へと急ぎました。

caffe_sasino2012.5.4.jpg Limoncello_sasino2011.3.11.jpg

 しかーし、「もはやこれ以上、多くを求めるな」ということなのでしょうか。お濠には、散った桜が浮かぶ「花いかだ」が見られたものの、もはや盛りを過ぎたソメイヨシノは、すでにそのほとんどが枝先にはなく、そぼ降る雨に濡れながら地面を桜色に染めていました。まだ見ごろだったシダレザクラを愛でながら城内を散策して30分ほどで照明が落ち始め、2012桜シーズン@弘前は儚く散ったのでした。

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AL CENTRO アル・チェントロ
住:青森市長島2-15-2
Phone: 017-723-5325
営:‎11:30~14:30(L.O. 14:00)
   18:00~22:00(L.O. 21:00) 日曜定休   
URL:http://www.al-centro.jp/

AL CENTROイタリアン / 青森駅

夜総合点★★★★ 4.0
昼総合点★★★★ 4.0

大間 浜寿司
住:青森県下北郡大間町浜町69-3
Phone:0175-37-2739 不定休
営:17:30~22:00 (※昼は要予約)
URL:http://www4.ocn.ne.jp/~oma/index.html

Osteria Enoteca Da Sasino
オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ

住:弘前市本町56-8 グレイス本町2F
Phone:0172-33-8299
営:11:30-13:30(L.O.) 18:00-21:00(L.O.) 日曜定休
URL: http://www.dasasino.com/

オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノイタリアン / 中央弘前駅弘高下駅

夜総合点★★★★★ 5.0


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2011/05/22

この樹なんの樹 実のなる樹

リンゴの里・津軽に
 日本最古の西洋リンゴ果樹を訪ねて

iwakisan_appleroad.jpg【photo】一面のリンゴ畑が見事なまでに広がる通称「アップルロード」から望む残雪の岩木山
 
 本州を北上した桜前線が、津軽海峡を渡って北海道へと渡る頃、岩木山の裾野は白い花をつけたリンゴの木々で覆いつくされます。日本で生産されるリンゴの半数近くは、津軽平野で作られています。5月半ば、残雪を頂く津軽富士を背景に、可憐な純白の花をつけたリンゴ畑が広がる光景は、北国に遅い春の訪れを告げる風物詩です。

ing_family.jpg【Photo】 4年間の弘前滞在中に弘前教会を創設、東奥義塾で英語や自然科学を教え、リンゴ栽培の普及にも尽力し「Johnny Appleseed」のニックネームで呼ばれたJohn Ing ジョン・イング(左)と家族(1875年)

 平安時代に中国から入ってきた在来の和リンゴは、盆飾りなど仏事に用いられる「リンキ」以外、ほとんど見かけなくなりました。現在栽培されているのは、明治以降に欧米から導入された西洋リンゴが主流です。その苗木は5年ほどで収穫が可能となり、樹齢30年ぐらいまでの成木が収穫適期。収量が落ちる老木となっても、手入れさえ怠らなければ50年は収穫ができますが、樹の寿命は80年がせいぜいだといいます。

 品種改良のサイクルが早まった近年では、20年で植え替えを行うこともあるそうです。にもかかわらず、樹齢130年を越えるリンゴにおける泉 重千代 【注】 のような日本最長寿の西洋リンゴがあるというので、訪れたのが青森県五所川原市に隣接するつがる市。2005年(平成17)の市町村合併前は、西津軽郡柏村と呼ばれていた同市柏桑野木田地区にある「津軽長寿園」で目指す古木は待っていてくれました。

entrance_chojyuen.jpg【photo】「津軽長寿園」は、JAつがる柏リンゴ貯蔵所のすぐ近く。いつの間にか居ついたという数十匹のネコがお出迎え

 殖産興業が国策とされた明治初期。海外からさまざまな野菜や果樹が日本へ輸入されます。栽培の適否や害虫の駆除法の研究などを通して、優れた種子を確保しようと全国各地で試験栽培が行われます。のちの東京農工大学の母体となる旧・内務省勧業寮で試作されたリンゴの苗木のうち3本が、初めて青森県にもたらされたのが1875年(明治8)。人類史上最長寿の122歳まで生きたフランス人女性ジャンヌ・ルイーズ・カルマンが生まれた年です。

 その年の暮れ、私立東奥義塾の創設者である菊池九郎が招聘したアメリカ人宣教師ジョン・イング(1840-1920) が、クリスマスのお祝いでリンゴを塾生ら招待客にご馳走し、これが青森の人々が初めて西洋リンゴの味を知った端緒だとされています。文献によって諸説あるものの、種を入手した九郎が、実弟の三郎に苗木を育てさせたと伝えられています。

tsugaru_chojyu1.jpg【photo】多くの見学者を迎え入れる津軽長寿園ゆえ、根の保護のための柵が設けられた3本のリンゴの古木は、2.5haの園内で育つ若木の中で圧倒的な存在感を示す

 津軽の農家で接木によるリンゴ栽培が始まったばかりの1878年(明治11)、古坂乙吉は菊池三郎から苗木を入手し、20アールほどの広さでリンゴを植え付けます。それから133年。現在は乙吉の曾孫にあたる古坂 徳夫さん(60)がリンゴの世話をしています。幾度かの病害虫の大発生や、大正・昭和・平成と時代が移ろう中で改良された品種へ植え替えが行われ、当時から残るリンゴは3本だけとなりました。

chyojyu_benishibori.jpg【photo】真紅に色付く実の形状から「玉簪(たまかんざし)」を略して「たまかん」とも呼ばれる北米カナダ原産の「紅絞」。導入当時、青森で栽培が推奨された明治7大品種のひとつ。北海道開拓使長官・黒田清隆によって、1871年(明治4)日本へ導入された ※ Photoクリックで拡大

 台湾をはじめとする環太平洋地域に輸出され、海外でも高級品として名声を得るに至った青森リンゴの黎明期から時代の変遷を見届けてきた古木は、現在も樹勢が衰えず、秋には3本あわせて60箱(20kg換算)分の収穫があるといいます。徳夫さんは、老人福祉施設に「長寿りんご」を毎年贈るなど、多大な貢献をしたとして2003年(平成11)に青森県りんご勲章を受章した兄・卓雄さんが4年前に急逝したため、(財)青森県りんご協会に技師として勤務しながら、リンゴの世話をしてきました。

chyojyu_iwai.jpg【photo】「祝」は「大中(だいなか)」の別名を持つ北米原産の青リンゴ。「紅絞」と同様に明治7大品種として普及。地方によってさまざまな呼称だったものを、大正天皇の成婚を祝って翌1900年(明治33)にこの名に統一されたPhotoクリックで拡大

  徳夫さんが職を退いた現在、奥様の俊子さんと朝に夕にと面倒を見るリンゴの古木は、「紅絞(べにしぼり)」2本、「(いわい)」1本。 高さ7m以上、幹の周囲3m、20m四方に太い枝を伸ばして若木を圧倒する存在感を示す3本の古木は、1960年(昭和35)に県指定文化財に登録されています。

fiore_benishibori.jpg【photo】春遅い津軽にも暖かな陽射しが降り注ぐ季節を迎えた5月初旬、133年もの歳月を経てなお膨らみ始めた赤い蕾。数年前の台風で折れてしまったという幹の傷跡が残る「紅絞」が、生命の逞しさ、力強さを物語る

 昨年の猛暑や春先の低温による成育の遅れによって、主力の「ふじ」を中心に開花数が今年は平年より少ないとのこと。宿命ともいえる病害虫との闘いや、厳しい冬の風雪を乗り越えてきた古木は、今から20年前、収穫を控えた津軽のリンゴをことごとく落果させ、倒木・枝折れなど空前の被害をリンゴ農家にもたらした平成3年台風19号の暴風にも耐え抜きました。人それぞれにさまざまな想いが去来する今年の春。再び花開いたリンゴは、訪れる人に静かな感動を呼び起こすことでしょう。

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津軽長寿園
 住 : 青森県つがる市柏桑野木田千年226
 Phone : 0173-25-2057

 【注釈】
 泉 重千代 (いずみしげちよ・1865-1986)・・・鹿児島県奄美群島徳之島生まれの元世界最長寿人物。ギネスブック 認定の120歳という年齢は今もって男性としては世界最長寿の記録。長寿世界一となって以降、インタビューで好きな女性のタイプを聞かれ、「年上の女性」と応じた天然系の秀逸なギャグは、南海の仙人と呼ばれたこの人を語る際に欠かせないエピソード

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2010/05/05

お馬の親子

こどもの日生まれの寒立馬
  in 尻屋崎 @下北半島

shiriya_kandachi1.jpg 【photo】尻屋崎灯台へと向かう道すがら、のんびりと草をはむ寒立馬と出合える。こうした牧歌的な風景は北国に遅い春が訪れる4月末から雪の便りが届く11月までのみ。雪交じりの北西の寒風が吹き抜ける冬季は越冬用の牧草地に移動し、雪の下から下草を自力で掘り出さなくてはならない。これは群れのリーダー格に当たるメス馬たち

 本州最北東端の地で生まれたばかりの「寒立馬かんだちめ」の赤ちゃんと出合ってきました。寒立馬は駿馬の産地として平安時代より知られた南部地方で外国馬との交配から生まれた野放し馬と呼ばれた南部馬の田名部馬を祖とします。フランス・ブルターニュ原産の輓馬Breton ブルトン種と、厳冬期には氷点下40℃もの極寒の地で生きるモンゴル馬の血を引く小柄な馬は、粗食に耐えながらも持久力に優れ、かつては農耕馬や軍用馬として重用されました。

kandachime_2.jpg【photo】厳しい環境を生き抜くたくましさを感じさせる武骨なヒヅメと太い足。全体にがっしりした胴長短足体型の寒立馬。それぞれに飼い主がいる放牧馬であり、純粋な野生種ではない。農耕用・軍用ともに需要が多かった昭和10年ごろが荷役馬としての全盛期で150頭あまりが飼育されていた。食用でもあるこの馬を可愛らしいと見るか、美味しそうと見るかはアナタ次第
 
 農業機械の普及により、農耕馬としての需要が落ち込んだ高度成長期には、わずか9 頭にまで頭数を減らしたこともある寒立馬。行政が保護に乗り出した現在では成馬・仔馬あわせて30頭ほどが東通村尻屋崎周辺で古来より「四季置附(しきおきづけ)」と称する年間を通した放牧がなされています。2002年(平成14)に青森県の天然記念物に指定されて以降は観光資源にもなり、種馬となるオス以外の2歳になったオス馬は食用として出荷されています。

kandachime_3.jpg【photo】津軽海峡と太平洋に面した尻屋崎の海沿いが放牧地となっている。海に面したこの牧草地の南側に越冬放牧地のアタカがある

 寒立馬を管理する尻屋牧野組合の寺道 和廣 組合長の説明によれば、現在4つのグループに分かれて放牧が行われており、通年放牧されるのはメスと仔馬のみ。4月~12月は岬の牧草地を風向きや天候によって場所を移動しながら草をついばみます。寒さが最も厳しい1月~3月は、尻屋漁港北側のアタカ(画像はコチラという牧草地に集められて越冬します。氷点下10度を下回る吹雪の日には、避寒のために母親が仔馬を松林の中に入るよう促すのだといいます。厳しい本州最果ての地で冬を越せるように仔馬をある程度まで成長させるため、自然交配による出産シーズンが4月末から5月上旬となるよう、オスは一定期間群れから引き離されます。ゆえに私が訪れたこの日、オスはまだ群れの中にはまだ居ませんでした。今年は4月26日に初めて仔馬の誕生があったそうです。

shiriyasaki_todai.jpg【photo】本州最北東端にある尻屋崎灯台は東北地方初の様式灯台。1876年(明治9)年に建てられたレンガ造りとしては我が国最大の灯台。上にばかり気を取られていると足元にある寒立馬の落し物(写真手前)を踏みかねない。ご用心ご用心

 尻屋崎灯台へ続く道にはゲートが設けられ、朝7時にならないと車で中に入ることは出来ませんでした。私がそこに着いたのが早朝6時30分。奥の牧草地では5 頭の馬が思い思いに草をはんでいます。ゲートの脇に設けられたビジターセンター前に設けられたケージには、一組の黒毛の親子が寄り添っていました。居合わせた吉 幾三似の管理人・山本 光明さんの話によると、その仔馬は朝方5時40分に生まれたばかり。まだ足が震えている仔馬は、おぼつかない歩みで母馬のまわりを甘えるようにゆっくりと回っていました。母親のおっぱいを探すそぶりを見せますが、上手くゆかないため、母親が優しく後ろ足の付け根にある乳へと仔馬を促します。

kandachime_oyako.jpg【photo】生まれたばかりでやっと立ち上がった仔馬の体をなめる母馬に甘えるようにその周囲をゆっくりと回る仔馬

 群れを探しながら場所を移動すると、黒毛だけでなく淡い栗毛や白い毛の馬の姿も認められます。そこにいたのが、今年最初に生まれ、生後12日を迎えた黒毛の仔馬でした。先ほどの生まれたばかりの仔馬とは違って、おっぱいの吸い方も堂に入ったもの。よほどお腹が空くのでしょう、チューチューと音を立てながら母親のお腹の下に首をもぐりこませていました。そこに毎日バイクで馬たちの様子を見てまわるという自称・吉 幾三の兄こと管理人の山本さん(⇒別名:吉 幾二さん?)が登場、寺道 組合長と話し始めました。淡い栗毛の馬を指してサクラがどうした、若菜がどうしたなどと言っています。どうやら一頭ごとに名前がちゃんと付いているようです。

kandachime_4.jpg【photo】生後12日で体がひと回り大きくなっても、母馬のそばを離れようとしない仔馬

 春爛漫の桜を満喫した弘前城から風の岬ともいわれる竜飛崎へ、さらに下北半島まで青森を周遊した今年のGW。つがる市に残る日本最古とされるリンゴの木や、田舎館村にある弥生時代の水田跡から発見された家族の足跡がある垂柳遺跡など、かねてより訪れたかった地への訪問が叶いました。2年ぶりとなった弘前「ダ・サスィーノ」では、地方で食するイタリアンでは間違いなく頂点にある完成度の高いコース料理を堪能し、旅の終わりに優しい目をした寒立馬の親子に心和んだのでした。

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2009/09/30

奇跡のリンゴ part 1

リンゴ農家・木村 秋則さんの金言
「大事なものは見えない 土も同じだ」

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 化学肥料や農薬に依存しない自然農法で栽培した野菜を我が家に届けてもらっている宮城県村田町の「ボンディファーム」の鹿股国弘さんと、その野菜を使った料理を店で提供する吉田克則シェフが仙台市青葉区で営むイタリアン「Enoteca il circolo エノテカ・イル・チルコロ」Link to backnumberの共催による「畑の真ん中で愛を叫びつつ、バーベキューパーティ」が8月上旬にボンディファームの畑で催されました。

 ボンディファームの顧客を対象とした収穫体験と作業後のバーベキューには、昨年も家族で参加していますLink to backnumber。この催しを主催したご縁の浅からぬ鹿股・吉田のご両人から、私はある特命事項を計画段階から託されていました。それは催しのキモとなる青森県弘前市で自然農法でリンゴを栽培する木村秋則さん(59)をお招きすることでした。昨年5月、木村さんはご不在でしたが、吉田シェフを一度木村さんの畑にご案内していたのです。

【photo】木村さんに頂いたサイン

 2006年(平成18)12月にNHKで放映された「プロフェッショナル-仕事の流儀」で紹介され、翌年1月に初の著作「自然栽培ひとすじに」(創森社刊)で無施肥・無農薬による自然農法に至る足取りと実践を語り、2008年(平成20)7月に、NHKの番組制作班による監修のもとノンフィクションライター石川 拓治氏が著した「奇跡のリンゴ―『絶対不可能』を覆した農家・木村秋則の記録」(幻冬舎刊)はベストセラーとなりました。今回の副題「大事なものは見えない 土も同じだ」はバーベキューパーティに持参した石川氏の著書に木村さんから頂いた直筆のサインに記してあった言葉です。

zuppa_yamazaki-akinori.jpg【photo】
木村 秋則さん(写真左)のリンゴにいち早く注目した地元弘前のフランス料理店「レストラン山崎」の山崎 隆シェフ(写真右)。冷製仕立てのクリームスープは店の看板メニュー


 メディアを通して紹介された現在に至る苦難の道のりと、飾らないお人柄から、にわかに時の人となった勢いは一向に衰えていません。所詮は自然の一部に過ぎない人間は、自然の摂理に逆らうことができないのだから、謙虚であるべきと説いた「リンゴが教えてくれたこと」(日本経済新聞出版社刊)と、UFOに拉致された驚愕の体験などをまとめた「すべては宇宙の采配」(東邦出版刊)を立て続けに上梓。畑の見学や自然農法についての講演依頼が後を絶たず、最近では国内各地は言うに及ばず、韓国やドイツなど海外からも農業指導の依頼が殺到、本業の畑仕事がちゃんと出来ているのかな、と心配になるほど多忙な毎日を送っておられます。

succo_melo.jpg【photo】古い洋館とフランス料理店が多い弘前を代表するフランス料理店「レストラン山崎」にて。木村さんのリンゴを使った冷製スープは夏場はなくなるものの、ジュース(写真中央)なら季節を問わず味わうことができる

 そもそも私が初めて木村さんを知ったのは、たまたま見ていたNHKの番組(プロフェッショナル~)を通してです。訥々(とつとつ)とした津軽弁でキャスターの脳科学者・茂木健一郎と住吉美紀アナに笑顔で語りかけるその人は、日本で初めて本格的にリンゴを無農薬・無施肥栽培することに成功したという弘前の農家でした。改めて確認した新聞のTV欄には「りんごは愛で育てる」という番組のタイトルが載っていました。

 温暖で多湿な日本では、病害虫に犯されやすい果樹栽培には、さまざまな農薬が使用されます。ことにバラ科のリンゴには一般的に幾度も散布が行われます。効能が異なる農薬の種類ごとに農協が散布時期を定めた防除暦では、年間で約10回の農薬散布が推奨されます。野生の原種をもとに近代になって品種開発された果樹は、草取りに明け暮れていた農家の労力を軽減する目的で開発された除草剤、病害虫の被害を防ぐための殺菌剤や殺虫剤、落果防止のためのホルモン剤などを使用することを前提にしていると言っても過言ではないかもしれません。果樹ではありませんが、私の自宅の庭で育つバラも、春先から夏にかけて、さまざまな病害虫に襲われるゆえ、リンゴを無農薬で育てることの困難さは容易に察しがつきました。それゆえ番組を見て「さすがはリンゴの里、津軽には並外れた生産者がいたもんだ」と感心することしきりでした。

akinori@azienda.jpg【photo】岩木山を背景とする南向きの傾斜地にある木村さんのリンゴ畑には、木村さんが「樹の実」と呼ぶリンゴにとって、自然にあるがままの理想的な生育環境が整っている。9年間の艱難辛苦の果てに理想とする自然栽培に至る軌跡について語る木村さん。笑いあり涙ありの話は2時間に及んだが、時が経つのを忘れた


 そんな私が弘前に木村さんの畑を初めて訪ねたのは、番組が放映されて8ヵ月後の2007年(平成19)8月のこと。その年の4月に弘前のフレンチ「レストラン山崎」の山崎 隆シェフがオリジナルレシピで作られた木村さんのリンゴを使用した冷製スープを頂いたのがきっかけです。かつては絶対不可能といわれた自然農法で栽培されたリンゴの皮と種を除いてスライスし、弱火でコトコト煮込んで作ったという冷製クリームスープは、TV番組で得た若干の予備知識も手伝ってか、生き生きとしたリンゴの風味に、生クリームのまろやかさとカルヴァドスの柔らかな香りが加わり、私を感動させて止みませんでした。人を感動させる料理との出逢いって、そう頻繁にあるものじゃありませんよね。"百聞は一にしかず"と言うではありませんか(?)。ここは是非ともリンゴを作った木村さんにお会いしたいと思ったのです。

fuji_akinori.jpg【photo】初秋の青空に一層映える"奇跡のリンゴ"。「自分は樹が実を結ぶのをお手伝いしているだけ」と木村さんご自身は語る

 8月にレストラン山崎を訪れた時は、リンゴの収穫前であったため、スープはありませんでしたが、木村さんのリンゴで作ったジュースは頂くことができました。食後に席にご挨拶にお見えになった山崎 隆シェフに、木村さんとの橋渡しをお願いしました。地元の素晴らしい素材を取り入れた弘前ならではのフランス料理を心掛けるという山崎シェフは、快く木村さんの携帯番号と畑の所在地の略図を書いたメモを渡して下さいました。事前にご自身が木村さんに電話を入れておくので、畑の場所がもし判らなければ、木村さんに直接電話してみてとも。ただ「携帯に電話しても、ほとんど出ないんだよね」と苦笑されました。その理由は、三回目の弘前訪問の折にご自宅に隣接した作業場にお邪魔して判明します。ご自宅の母屋脇にある作業場でリンゴの箱詰めと発送作業に追われる木村さんご夫妻の傍らには、注文を受けるFAX機能付き電話があります。お二人とも全く電話を取ろうとしないため、ひっきりなしにかかってくる電話は決して鳴り止むことがないのでした(笑)。

akinori_okusama.jpg 【photo】作業場に鳴り響く電話のコール音など意に介さず、仲睦まじく箱詰め作業にあたる木村ご夫妻。美千子さん(左)、秋則さん(右)

 弘前市中心部から鯵ヶ沢街道を岩木山の麓へと向かうと、次第にリンゴの樹が目立ってきます。通称アップルロードを右折し、目印とされた神社はすぐに判ったものの、周囲に広がるリンゴ畑のどこが木村さんものか皆目見当がつきません。神社に戻って木村さんの携帯をコールすると、山崎シェフの懸念が嘘のようにすぐに電話に出た大きな声の主は紛れもなく番組で耳にした木村さんその人でした。間もなく迎えに来て頂いた木村さんと簡単にご挨拶を済ませ、軽トラックで先導されて着いたリンゴ畑は、周囲の畑とは明らかに異質なものでした。下草がきれいに刈り込まれた他の畑とは対照的に、木村さんのリンゴ畑には一面の雑草が生い茂っています。その畑に腰をおろして45分弱に編集されたTV番組では語られることのなかったご自身の来歴やリンゴ畑で起きている奇跡に関するお話を2時間に渡ってじっくりと伺いました。

apple_road.jpg【photo】木村さんのリンゴ畑(下写真)は旺盛な雑草に覆われる一方、慣行栽培の畑(上写真)は丁寧に下草が刈り込まれ違いは歴然。自然の摂理通りに秋に紅葉する自分の畑のリンゴとは違い、農薬を散布したリンゴは雪が降っても紅葉することがなく葉が青いままという。そんなリンゴを不気味だと木村さんは言うakinori_hatake.jpg

 出版された3冊の本すべてで紹介されているので、ここでは詳しく繰り返しませんが、1978年(昭和53)、28歳になった木村さんが完全無農薬でリンゴを育てようとしたのは、当時は人体への悪影響について論議されることすらほとんどなかった農薬を散布するたびにしばらく寝込んでしまうほど化学物質に対して過敏な体質であった奥様、美千子さんのためでした。若い頃から大好きだった車のエンジン改造に関する本を探して入った書店でひょんな偶然から手にした福岡正信の著作「自然農法」に感銘を受けた木村さんが慣行栽培をやめた結果、病害虫にすっかり犯されたリンゴの樹は軒並み落葉し、秋に狂い咲きの花を付けた樹は翌年以降結実することをやめてしまいます。

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【photo】色付き始めたリンゴを慈しむように見つめる木村さんのまなざしはあくまでも優しげだ

 リンゴ農家としての収入が完全に途絶えても、なお無農薬栽培を諦めずに花すら咲かない病害虫の猛威に晒されたリンゴの樹と向き合った9年間の苦闘は筆舌に語り尽くせないものでした。当初800本あったリンゴの樹は葉を落として活力を失ってゆく8年の間に半数近くが枯れ果てたといいます。私が初めて伺った当時は幻冬舎から奇跡のリンゴが出版される前でしたから、40代にして木村さんが歯をほとんど失った理由は全くの初耳。日がな一日リンゴの樹の下で横になってシャクトリムシが葉を食べる様子を凝視し、害虫の生態を知るなどの徹底した自然観察や、酢やワサビなど思いつく限りの効果がありそうな食品の希釈液の散布をもってして、いかに手を尽くしても無農薬栽培法の答えを見出せなかったという木村さんの苦労話に引き込まれてゆきました。

 津軽弁で破産者を意味する「竈消し(かまどけし)」。婿入りした木村さんにとってはさぞ辛かったであろう不名誉な陰口を叩かれ、道で会っても挨拶すらされなくなり、家族を極貧に追い込んだという自責の念に駆られた木村さんは、無農薬栽培を試みて6年目の満月の夏の夜、もはや万策尽きたと死を決意します。畑の物置がわりに使われていた軽ワゴン車(昨年撤去された)を指差し、「ここから取り出したロープを手に、月明かりの中を山に入って首を吊って死のうとしたんだよ」と語りました。死に場所を求めてさまよい歩いた山中で、木村さんは一本のリンゴの樹を目にします。農薬や肥料を与えないのに青々とした葉を茂らせているように映ったその樹は、リンゴではなくドングリなのでした。まさに命を絶とうという極限状態で、その根元を支えていた柔らかく湿気を帯びた山の土にこそ、リンゴを自然栽培で育てる答えがあると直感したという木村さんの話を伺い、人間が持って生まれた宿命や天命の存在を信じずにはいられませんでした。

akinori_zassou.jpg【photo】大事なものは見えない。土も同じ

 土の重要さに気付いて以降、雑草を刈らなくなった木村さんの畑では多種多様な微生物・昆虫・ミミズ・野ネズミなどが生息する生態系が形作られてゆきます。マメ科植物の窒素固定作用や、耕土層の下にある岩盤層のミネラルをリンゴの根が吸収しやすいよう、雑草や地中深くに根を張る作物を活用し、本来の土の力を取り戻していきます。一匹ずつ手で駆除していたハマキムシなどの害虫の発生を抑えるため、バケツを活用した蛾の殺虫法やハチなどの益虫による駆除を取り入れるうちに、リンゴの自然栽培に理想的な局所環境を次第に作り出してゆきます。

 1988年(昭和63)、一本のリンゴの樹に7輪の可憐な花が咲き、秋に2つの飛び切り甘いリンゴが実ります(その樹の根は20m以上も地中で伸びていることが後に判明する)。翌春、木村さんの畑一面にリンゴが白い花を咲かせているのを発見した隣の畑の持ち主が、わざわざ木村さんに知らせてくれたのだそう。はやる気持ちを抑えて畑にバイクで駆けつけた木村さんは、9年ぶりに目にする光景を前に、奥様と手を取り合いながら涙が止まらなかったそうです。その時の感激を昨日のことのように語る木村さんの言葉に、私も我が事のように熱いものがこみ上げてくるのでした。

2008.5azienda-akinori.jpg【photo】岩木山の雪が解けやらぬ昨年5月中旬、エノテカ・イル・チルコロの吉田シェフご一家をお連れした木村さんの畑には、北国の遅い春の訪れを祝うかのように、白いリンゴの花々が一斉に咲いていた。21年前の春、木村さんご夫妻はどのような思いで豊かな秋の実りを約束するこの光景を見つめたのだろう

 昨年12月に東北6県のTV朝日系列の放送局で放送されたTV番組「るくなす」に登場した木村さんは、24年ぶりに山中で再会を果たしたドングリの樹に手をかけ、何度も「ありがとう、ありがとう」と万感の思いを込めて語りかけていました。自らの命を救い、答えに導いてくれたドングリに語りかける木村さんの言葉には、いささかの誇張や作為も感じられませんでした。木村さんは「自分はバカだから、リンゴが可愛そうに思って実を結んでくれたんだ」と笑います。人生の奈落をかつて経験した木村さんは、本当にカラカラとよく笑う方です。それでいてまっすぐな生き方を貫く津軽の「じょっぱり」を地でゆくような木村さんは、いかなる困難な状況にあっても己が信念を曲げませんでした。木村さんの芯が通った生き方は、閉塞感にとらわれがちな今の時代に生きる人々の強い共感を得ています。

 恐らく日本一有名なリンゴ農家となった現在では、残念ながら極めて入手が難しいのですが、大地の力を存分に取り込んで実を結ぶ木村さんのリンゴは、お人柄そのままの邪気のない味がします。akinori_smile.jpg放置しても腐敗しないというそのリンゴ果汁100%からなるジュースなら、仙台でも入手できる店があります。生涯忘れることがないであろう時を過ごした木村さんの畑で果たした出会いから、あまり時間を経過しないうちに、木村さんについて書こうと実は思っていました。しかし、その生きざまを直接伺うに及んで、若輩の私が軽々に木村さんについて語ることを躊躇するようになり、時間ばかりが無為に経過してしまいました。今回こうして、2年前の体験をまとめることができ、少し肩の荷が下りた思いです。

 【photo】畑からの去り際、カメラを向けると律儀に帽子を脱いだ上で満面の笑みで見送って下さった木村秋則さん

 木村さん人気(...言うまでもなく私のコトではない)で昨年に比べて倍以上の130人あまりが参集した先月のバーベキューパーティについては、奇跡のリンゴ part2 リンゴ農家・木村 秋則さんの金言 「奥歯見せて笑える一生」にて。

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2008/06/06

♪ リンゴの花びらが~

リンゴの花びらドルチェは、はじらう乙女 francesca の味


azienda_mela.jpg【PHOTO】例年よりも雪解けが早かった今年の5月、岩木山の麓で完全無農薬で自然農法のリンゴを栽培する木村 秋則さんの畑を訪れた。周辺の畑でも可憐なリンゴの花が見渡す限りに咲き揃い、受粉用のミツバチの巣箱が置かれていた


 リンゴの花をご覧になったことがおありですか?

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 全国のリンゴ生産高の55%を占める青森県、なかでも最も栽培が盛んな弘前では、GWの頃に見ごろを迎える弘前城公園のソメイヨシノと入れ替わるように、周辺のリンゴ畑では191万本にも及ぶリンゴの樹々の花がほころび始めます。楚々とした美しさをたたえたその白い花は、サクラよりも幾分大ぶりで、青森県の県花にもなっています。ようやく訪れた北国の春を謳歌するかのように一斉に葉を芽吹き花開くリンゴの樹々と、残雪を頂いた岩木山は、5月の爽やかな空のもとに青緑と白の見事なコントラストを描き出します。

【PHOTO】五月晴れの青空に映えるリンゴの花

 枝先には紅を差したかのように赤くかわいらしい丸い蕾(つぼみ)が5~6個付きます。品種によって花の色や大きさに違いはありますが、赤い蕾から咲く花も桃の花のように赤いのかと思いきや、開花したての花びらには白地に赤やピンクが混じるものの、花弁は次第に白さを増してゆきます。

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【PHOTO】「ふじ」の蕾と花。可愛らしい蕾はまもなく摘まれる運命にある

 「花の命は短くて・・・」とは作家 林 芙美子の言葉ですが、果実の数を減らして味を凝縮させるため、リンゴは房の中心に咲いた花だけを残して、ほかの蕾や花はすべて摘み取られてしまうのです。だからリンゴの花言葉は「選ばれた恋」。リンゴは実にも「誘惑」という、もうひとつの花言葉があります。旧約聖書の記述では、ありとあらゆる果実がなるエデンの園で蛇にそそのかされたイブは、神の言いつけに背いて禁断の「知恵の果実」を口にします。イブに勧められるまま果実を口にしたアダム。BrancacciEden.jpg楽園を追放されたアダムとイブの子孫である人類は、それ以降、男には食料を得るための耕作の苦役を、女には出産の苦痛が課せられるようになりました。花開く前に蕾のまま摘まれてしまうリンゴのことを思うと、可愛らしい赤いリンゴの実がいとおしくなりますが、神の逆鱗に触れたアダムとイブが楽園から追放される原因となった「禁断の果実」もまたリンゴだったといわれています。うーん、フ・ク・ザ・ツ。

【PHOTO】初期ルネッサンス・フィレンツェ派の画家 マザッチョの筆になる名高い「楽園追放」 や「貢の銭」、この写真右上のマゾリーノ作「アダムとイブの誘惑」など見事な連作フレスコ画がある「ブランカッチ礼拝堂」。フィレンツェを流れるアルノ川の南、オルトアルノ地区の「サンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂」の内部にある

 昨日、昼食を食べたのが、仙台市青葉区のイタリアン「francesca フランチェスカ」。Donna Italiana ドンナ・イタリアーナ (=イタリア女性)の名前を持つこの店でオーダーしたのは「おすすめランチ」(1,500円)でした。どんな( ̄ロ ̄;)コースだったかといえば、「アスパラのズッパ」、「ルッコラのインサラータとシチリア産モスカート種デザートワイン風味のフォアグラテリーヌのブルスケッタ」が出た後の「蔵王地鶏とドライトマトの軽めのラグーソース風味のパッパルデッレ」がメイン。目の前のパスタマシンで作ったパッパルデッレに舌鼓を打った後、カッフェと共に2種類のドルチェが登場しました。新作だという「さくらんぼのコンポスタ、さくらんぼのムースのコッパ」(写真奥)、そして今回のお題である「実家のリンゴとリンゴの花のジェラート、リンゴのクロッカンテとイチゴ添え」(写真手前)です。
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【PHOTO】「実家のリンゴとリンゴの花のジェラート、リンゴのクロッカンテとイチゴ添え」

 五所川原出身の原田シェフの実家はリンゴ農家を営んでいます。「ふじ」、「紅玉」、「つがる」、「サンジョナゴールド」などを栽培しており、5月上旬に帰省を兼ねて原田シェフや鳥山オーナーらが五所川原を訪れたのだそう。その時、「♪ リンゴの花びらが、風に散ったよな~」と、美空ひばりが唄った「リンゴ追分」を口ずさみながらだったかどうかは知る由もありませんが(笑)、畑からリンゴの花びらを皆で持ち帰ったそうです。その花びらと晩秋から冬にかけて送られてきた旬のリンゴの果肉をジェラートに混ぜ込んでありました。甘酸っぱいリンゴがミルクの風味で優しい表情に変わり、決して派手ではないものの繊細極まりないリンゴの花の香りと、主張しすぎないシナモンの香りが、渾然となって広がります。瞑目してデリケートな香りを堪能していると、先月訪れた津軽のリンゴ畑の風景までが目に浮かんでくるではありませんか。
Bu.Bu.Bu...Buonissimo!! ・・・ブ.ブ.ブ...ブオニッシモ!! (→ここでは、イタリア観光のガイドブックに記載されているように「頬に人差し指を当ててグリグリ」は必要ありません。念のため)

 それは、蜜の入った熟した果実を実らせる前、あたかも蕾からまさに花開こうとしているリンゴの花弁のように、ぽっと頬を赤らめた乙女の姿を彷彿とさせるような、せつな~い味なのでした。
 残念ながら、今シーズンのリンゴは在庫切れ寸前だとかで、無くなり次第終了につき、売り切れ御免。今週末が食べ収めかも、とのこと。急げっ! (・・・そんなに煽らなくても...)


francesca フランチェスカ
仙台市青葉区大町2丁目5-3 コーポラティブハウス大町202号
PHONE/FAX: 022-223-8216
URL:http://www.francca.jp/
営) 11:30~14:00(L.O.)
    17:30~21:30(L.O.) 月曜定休

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2008/05/19

食料自給率100%のレストラン

行くべし弘前!! 「ダ・サスィーノ」

Cellar2007.8.jpgAntipastimisti2007_10.jpg【photo】クオリティの高いイタリアワインが揃うダ・サスィーノの「ワインセラー」兼「自家製食肉加工品熟成庫」兼「自家製チーズ熟成庫」兼「その他もろもろ実験室!?」

 味を追求し安全で美味しい素材の調達のために信頼の置ける農家と契約するだけではなく、自身で畑を持つ料理人が最近では珍しくなくなってきました。私が「食WEB研究所」の「飲食店ブログ」にお招きした仙台市太白区向山にあるイタリアン「AL FIORE アル・フィオーレ」の目黒シェフのように、自ら畑に足を運んで無農薬自然栽培や有機栽培で育てる野菜類だけでなく、生ハムなどの食肉加工品まで自作してしまう料理人も登場しています。

【photo】ベストマッチな自家製イチジクとともに味わう自家製ハム類7種(右写真)

 しかしながら"餅は餅屋"と言うとおり、畑仕事は作物と常に向き合う農家の野菜や果物にいささか分がありそうなのもまた事実。日本在来の野菜は別にして、西洋野菜や生ハム類を気候風土が異なる日本で作ると、どうしても本場とは風味が異なる仕上がりになりがちです。特に、20ヶ月前後の熟成期間を要する生ハムのような食肉加工品を湿度が高い日本で自家製造するには、雑菌の繁殖を抑える細心の注意と加工技術が必要となります。

FormaggiSasamori2007_10.jpg

【Photo】自家製チーズを切り分ける笹森シェフ

 地方にある飲食店が進む一つの指針を示してくれる1軒のレストランが青森県弘前市にあります。イタリアンレストラン「Osteria Enoteca Da Sasino オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ」。オーナーシェフの笹森 通彰(みちあき)さんは、1973年(昭和48)岩木町(現弘前市)生まれ。仙台・東京・イタリアでの数年間の修行を経て、郷里の弘前に戻ったのが2003年(平成15)。弘前大付属病院前の路地を入ってすぐの場所に現在の店を開いたのが同年8月。スタート当初は、笹森さんが修行中に口にした本場イタリアの輸入食材を使った本格イタリアンを志向しましたが、弘前ならではの特色を打ち出せずにいたそうです。その頃、かつて笹森さんが修行した仙台のイタリアン「Vino il Salotto」(当時)のオーナー鳥山さんから、「ウチにいたヤツが祖父母がやっている畑のある郷里で店を出したから、行ってみて」 と誘い水をかけられていました。その年の夏といえば、今でこそ「食の都 庄内」と呼ばれるものの、当時はその価値が全く認知されていなかった彼の地の凄さに開眼した頃。Formaggi2007_10.JPG当時はまだ無名ながら無類の輝きを放っていた鶴岡「アル・ケッチァーノ」と、店を支える珠玉の素材を提供する生産者の取材のため、仙台から足が向くのは月山の先ばかり。昨年の夏まで弘前へは、ついぞ向かわずじまいでした。

【photo】白カビ系から黒カビ系・青カビ系、セミハードタイプとさまざまな自家製チーズと付け合せの自家製モスタルダ

 そんな私がダ・サスィーノ初見参を果たしたのは2007年(平成19)8月のこと。TBS系全国ネットの某TV番組放映後、それまで毎月複数回のハイペースで訪れていたアル・ケッチァーノが迷走し、私の足がそこから遠のいていた時期でした。ランチを"フレンチの街 弘前"が誇る名店「レストラン山崎」で頂き、その足で向かったのが、病害虫に弱いリンゴを「奇跡」といわれる自然農法で栽培する弘前のリンゴ農家、木村 秋則さんのもとでした。このとき畑で2時間じっくりと伺った木村さんの今日に至る波乱万丈な逸話は機会を改めて〈Link to back number〉。

 その夜に出合ったダ・サスィーノ 笹森シェフの自給自足への取り組みと、運ばれてくる料理が私に与えた驚きは予想をはるかに超えるものでした。以降、木村さんのリンゴがたわわな実を結んだ10月と、冬を挟んで可憐なリンゴの花が咲き揃った今年5月にも畑の様子を確かめながら、ダ・サスィーノに通いつめるまでに。アルファ・ブレラを駆って片道310kmの移動を厭わせない理由とは・・・。

Antipastimisti2007_8.jpg【photo】2007年8月、初めて店を訪れた際に「イタリア本国で食べるプロシュット類と変わらぬ美味さでこりゃイケル!」と舌を巻いたフィノッキオーナやソプレッサータ、コッパ、バルバリー鴨の生ハム、プロシュット・クルードといった全て自家製によるハム各種とお約束の組み合わせのマスクメロンもまた自家製。いやはや恐れ入りました(左写真)


prosciuto_Sasamori.jpg

【photo】ピエモンテ州の優良カンティーナ「Braida ブライダ」のオーナー、ラファエッラ・ボローニャ女史から開店記念に贈られたという同醸造所のフラッグシップ・ワイン「Bricco dell'Uccellone ブリッコ・デルッチェローネ」の3 リットルボトルの木箱に納まる自家製プロシュット・クルードはこのとき熟成22ヶ月目。こうしてブロックが客の前でスライスされる(右写真)

 笹森さんの転機となったのは、食肉加工技術が高度に発展したイタリアで習得した技術を遺憾なく発揮して作るProsciutto プロシュット(=生ハム)などのハム作りでした。フェンネルの芳香が心地よいキアンティ地方のサラミ「Finocchiona フィノッキオーナ」や、甘味のある豚の首肉を使う「Coppa コッパ」、塩とハーブで下処理した豚モモをスモークする北イタリアのアルト・アディジェ地方発祥の「Speck スペック」、頭の部位を使い、コリコリした食感が楽しめる「Sopressata ソプレッサータ」などの材料には、地場産の黒豚や隣町の鯵ヶ沢「岩木山麓いのしし牧場」で飼育される絶品のイノシシ、青森産のバルバリー鴨などを使います。それらの素材を加工して作る非加熱のプロシュット・クルードや Lardo ラルド(=脂身を加工・熟成させたもの)は、いまや本場モノと見まごう完成度であることは、口にすればお分かり頂けるはず。アンティパストでブロックから切り立てで提供されるそれら鮮度抜群の自家製ハムやラルドは、スライスしてから時間が経過した輸入物のパック詰め生ハムなどとは比較にならない風味のよさ。地場産シャモロックのレバーをTerrina(=テリーヌ)にして、陰干しブドウで造られるイタリアの極甘口ワイン「Vin santo ヴィン・サント」で風味付けした甘美な一品に至っては、悶絶すること請け合い。
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【photo】大鰐産シャモロックレバーのパスティッチョ・ヴィンサント風味

 地元で飼育されるジャージー種の牛乳を使って仕込むゴルゴンゾーラやカマンベールなどのチーズ類は、凝固剤をイタリアやフランスから取り寄せて作ります。相当のヴィーノ好きであることが伺えるイタリアワインのセレクションが眠る店内のワインセラーで熟成されるこれらのチーズも、熟成が進んで食べ頃を迎えたものが提供されます。弘前市街を望む岩木山の裾野にある実家の畑で育てる野菜や果実はおろか、イタリアの代表的なワイン醸造用ブドウであるネッビオーロやサンジョヴェーゼほか数種のブドウも栽培。自宅で飼育するウコッケイの卵や蜂蜜、アンチョビに至るまで、店で使う素材は自家調達のほか、青森原産の優れた食味をもつ地鶏「シャモロック」や、近海で揚がる魚介類を含めて地元産がほとんど。味に妥協を許さない笹森さんは、地元産の素材のほかに脂と赤身の食味が良い島豚「アグー種」を沖縄から取り寄せたり、日本中のグランシェフがこぞって使う山形・庄内町にある「スパール」の山澤 清さんが日本で唯一飼育するピジョン鳩なども使用しています。

tortellini2007_8.jpg

【photo】カボチャのトルテリーニ・セージとケシの実ソース ズッキーニの花フリット添え

 詰め物をした「Tortellini トルテリーニ」や太めの平麺「Pappardelle パッパルデッレ」、トスカーナ州シエナのパスタで、うどんのような食感が面白い「Pici ピィチ」などの手打ちパスタ類がラインナップされ、充実したプリモピアットも楽しみのひとつ。徹底した自給自足への取り組みは、店の背景となる広い畑と、発酵食品類なら何でも手作りしてしまう店内のワインセラー兼熟成庫を舞台に発揮される飽くなき探究心があって初めてできること。なかば本気で素材の自給率100%を目指すと決意を語ります。自宅の周りにある畑と店内の熟成庫でおおかたの素材を調達してしまうゆえ、恐らくはフードマイレージazienda_sasamori.jpgが日本一低いであろうダ・サスィーノ。最近ではユニークな笹森さんの仕事ぶりがメディアに取り上げられることが増えてきました。そんな状況下にあって、こうしてご紹介するのをちょっと躊躇しましたが、地方ならではのアプローチで頑張っている姿にエールを送りたいと思います。

【photo】畑の一角ではサンジョヴェーゼなどのイタリア品種をメインにブドウの木が育つ。ワイン醸造免許取得のための準備も怠りない。左奥のハウス内では、オリーブやLimone(レモン)Calciofi(アーティチョーク)なども栽培する

 今回も満ちたりた時間をくれたダ・サスィーノを振り返ると、外壁に掛かるテラコッタ製のバッカスが笑顔で見送ってくれました。

Entorata2008.5.jpg
 
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Osteria Enoteca Da Sasino
オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ

弘前市本町56-8 グレイス本町2F
PHONE:0172-33-8299
URL: http://www.dasasino.com/
日曜定休 / 営 11:30-13:30(L.O.) 18:00-21:00(L.O.) 

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