河北新報

« 多メディア時代の震災報道 | メイン | ブロゴス アワード 受賞は逃したけれど »

2011年11月30日

【ソーシャル, 新聞&ネット】

情報ボランティアプロジェクト

mirain.jpg 3月11日の東日本大震災以来、河北新報社のネット部門では、ソーシャルメディアを使った取り組みが急速に進んでいます。その一つが東北学院大と始めた「情報ボランティア育成プロジェクト」です。河北新報社メディア局の記者たちが、情報ボランティアの学生たちをサポートしながら被災地で取材します。その結果を河北新報社の地域SNS「ふらっと」やFacebook(フェースブック)などのソーシャルメディアを使って発信する試みです。

 記者たちが学生ボランティアをサポートし、ソーシャルメディアを活用するスタイルは、マスメディア的な振る舞いを得意としてきた新聞社にとっては、エネルギーを要する力技です。大震災では、従来からのニュースサイトに加え、ブログ、SNS、ツイッターなどのソーシャルメディアを通じて河北新報社にアクセスする人々が爆発的に増えました。ソーシャルメディアを活用する人々を無視するわけにはいかなくなっています。

 地域に由来する地方新聞社の場合、もともと地域に寄り添いながら報道し、営業することを得意としてきました。課題があるとすれば、新聞社員が地域の構成員として振る舞ったり、メディア分野の知識や経験を有する立場で振る舞ったりすることのバランスをうまくとれるかどうかです。

 記者の仕事の仕方で言えば、取材する立場と、ソーシャルメディアを使って、地域の多様なコミュニティーに参加する立場-の双方を身につける必要があります。マスメディアの担い手としての振る舞いとはかなり異質な面もありますが、情報ボランティア育成プロジェクトにかかわっているチームの様子を見るかぎり、新聞もネットも使う方向に頭を切り替え、特にソーシャルメディアを活用する基本的なノウハウさえ覚えれば、実践面の工夫はいくらでも可能なようです。

 情報ボランティア育成プロジェクトでは10人が活動しています。東北学院大以外の大学にも広がり、最近では、地元の企業集団が仙台市から受託した被災者向けの情報提供サービス事業に協力する役割が加わりました。情報ボランティアとしてのノウハウを生かし、仙台市内の仮設住宅や民間の借り上げ住宅の入居者など8000人に月1回、「かわら版 みらいん」=写真=を届ける役割です。東北学院大の岩崎真実さんと嘉藤梨奈さんが河北新報の記者と一緒に取材し「かわら版」を製作している様子が、先日、テレビのFNNスーパーニュース「被災地からのメッセージ 第10弾」で紹介されました。


 岩崎さんと嘉藤さんはともに仙台市内在住です。大震災を実際に経験し、情報ボランティアとしてソーシャルメディアを使った活動に取り組んできました。番組では、二人が仮設住宅で活動するボランティアや被災者にインタビューし、河北新報の記者とともに「かわら版」を製作、配達する様子が映し出されていました。

 二人が届ける「かわら版」は、住み慣れた地域を離れて仮設住宅で暮らす人々の絆づくりを目指しています。被災地で活躍するボランティアを取材し、紹介することで、仮設住宅に住む人々との間をつなぐこともできそうです。河北新報社は取材、編集、配達の一部をお手伝いするほか、「かわら版」のコンテンツを地域SNS「ふらっと」やFacebookで発信しています。被災地の現状を詳細かつ少しでも広く報道するためです。「情報ボランティア」「ソーシャルメディア」「プロの取材・編集スキル」が一つになって初めて可能になる「ハイパーローカルジャーナリズム」への入口でもあると考えています。

 情報ボランティアプロジェクトにかかわる学生や記者、取材される被災者の様子を見ていると、ソーシャルメディアの場合は、情報の受け渡しの際に、互いの気持ちを込めやすいようです。ソーシャルメディアが1対1の関係で情報をつないでいくのが得意なためです。うまく使えばマスメディア的なスタイルだけではなく、心を通い合わせるメディアをニーズに合わせて開発することも可能です。

 インターネットに関する議論では、とかくマスメディアとソーシャルメディアの違いばかりが強調されますが、必要な情報を必要な人たちにしっかり届けるという意味では、どちらが欠けても具合が悪いと思います。

 地域に由来する新聞社も「多メディア社会」を生き抜くためには、なるべく多様な情報伝達手段を持ち、地域社会の人々や組織と連携する中で、新しい形の情報流通のプレイヤーになることを努めて意識する必要があります。ビジネスモデルの開発や事業採算性の議論を同時進行で進めるのは当然のことですが、前提条件を意識するあまり、メディアとしての柔軟な発想や試行錯誤を過度に抑制する空気が生まれるとしたら、それはかなり危険な兆候です。

投稿者 yoyu : 2011年11月30日 11:56