河北新報

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2012年3月 4日

【ソーシャル, 新聞&ネット】

新たなジャーナリスト像をつくる現場

journalism_jcej.jpg 2012年3月3日、神奈川県平塚市にある東海大学湘南キャンパスで開かれた「ジャーナリスト・エデュケーション・フォーラム2012」に参加しました。「JCEJ(Japan Center of Education for Journalist)」(藤代裕之代表運営委員) の主催です。多様に設定されたテーマは「ジャーナリスト」「ジャーナリズム」を考えるための多角的な切り口を与えてくれました。受講者90人は職業や世代を超えて集まり、マスメディア中心に組み立てられてきた従来型のジャーナリズムを超えたところに、多くの人々の関心、視線が集まっているように思えました。

 午前中の総括的な講演に続き受講者は「データジャーナリズム」「コミュニケーションデザイン」「イノベーション」のテーマに分かれて議論しました。欧米中心に動きが見られる「データジャーナリズム」に関するセッションが興味深かったです。駿河台大学専任講師の八田真行さんと前ネットレイティングス社社長で、トランスコスモス社理事エグゼクティブリサーチャーの萩原雅之さんの報告を聞きました。

 データジャーナリズムは、政府や行政、企業などが有する大量の公開情報を迅速かつ専門的に解析し、問題の所在を浮き彫りにします。オンラインの特徴を生かし、無味乾燥なデータをビジュアルに表現するのが特色です。これまでの初歩的な取材では、米国の場合、いわゆるマルチメディアジャーナリスト教育のカリキュラムとして、公開情報をビジュアルに見せるための理論や技術が重視されています。また、政府やNPOが所有する大量のデータを専門会社が処理し、報道機関に提供するような「メディアの分業」の形もあるようです。

 日本では情報の公開自体がまだ不十分な側面がありますが、欧米では、政府・行政が所有する情報の公開を求める大きな流れが背景にあります。より大量のデータを、より迅速かつ効果的に処理できるデジタル技術が発達したことも、新しい形の報道の形をもたらしつつあります。

 萩原さんの報告では「寿命×所得×人口でみる200カ国の200年を4分間」で見ることのできるデータジャーナリズムの事例が圧巻でした。英国BBCの報道番組の事例で、スウェーデンの公衆衛生学者、ハンス・ロスリングさんの研究成果を紹介しています。(BBCのサイトの「CLIPS」をご覧ください)
 200カ国の200年間にわたる寿命、所得、人口のデータを解析し、大きな戦争があった年は人口が減少するといった、200年間の社会事象との関係も理解できるようになっています。統計情報を単独で評価するだけなく、重層的に組み合わせ、分析することによって、まったく新しい意味が浮き彫りになります。データジャーナリズムの可能性をうかがわせます。

 八田さんはデータジャーナリズムの基礎的なポイントに触れたうえで、海外の事例を報告しました。一定の形式を備えたデータであれば、簡単に図表を作成したり、地図と連携させたりできるオンラインサービスについても詳しく説明しました。八田さんによると、データジャーナリズムに本格的に取り組むには、統計学、経済学、プログラミング、デザインなどに関する専門知識が必要です。マルチメディアジャーナリストが担うデータジャーナリズムのほか、専門的な知識を有する地域の人たちと地域の問題に取り組む、協業型のデータジャーナリズムの方向がぼんやりとではありますがイメージされました。

投稿者 yoyu : 2012年3月 4日 23:26