河北新報

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2012年5月 2日

【ソーシャル, 新聞&ネット】

「情報の呼吸法」と 「リアルタイム紀行型ジャーナリズム」

kokyu02.jpg ジャーナリスト、津田大介さんの「情報の呼吸法」(朝日出版社)を興味深く読みました。ソーシャルメディアの活用について、ツイッター中心に解説しています。ツイッターをこれから始める人、使ってみたけれど今ひとつ次の展開が見えない人の参考になるのは間違いありません。個人的には最近ツイッターからフェイスブックに移りつつありますが、津田さんが「第3章 情報は発信しなければ、得るものはない」で書いている「リアルタイム紀行型ジャーナリズム」に強く触発されました。新聞、テレビなど伝統的なメディアに身を置き、これからのジャーナリズムのありようを考えている人にとっても重要な実践例です。ツイッターをもう一度とらえ直してみたい気持ちになっています。

 「リアルタイム紀行型ジャーナリズム」について津田さんは以下のように書いています。

 「被災地のいわきに行ったときに、いま自分がやっていることは『リアルタイム紀行型ジャーナリズム』とでも言えるのではないかと感じました。ツイッターを通じて『今いわきにいます。どこに行ったらいいですか?』と訊くと、現地の人が行くべき場所を教えてくれる。『でもこの地域の現状はこうなんですよ』ということも教えてくれる。
 「現地の生の声が僕を中心に寄せられて、それを僕がリツイートし再配分することで、被災地の現状や知られていない問題を生々しいリアリティで多くの人に伝えることができる」

 津田さんの言う「リアルタイム紀行型ジャーナリズム」について自己流で受け止めてみます。まず、取材活動自体がツイッターによって可視化される点が重要です。取材対象や取材テーマが取材地の様子に詳しい人たちが関与することで決まる可能性があります。取材に関するツイッターでのやりとりが、取材者をフォローしている人の間で共有されるだけでなく、取材者が現地取材を通じて見たり、聞いたりした事柄がリアルタイムで報道されることだってあるでしょう。その報道に関するツイッターの反応も、即座に可視化され、広がります。取材過程が一切、見えない、伝統的なマスメディア的振る舞いとは全く異なります。

 ツイッターが持つ報道的側面といえば、これまでは航空機の墜落を見た人や乗客自身がツイッターでいち速く報道する、というように、とかく「速報」の面が強調されてきたかもしれません。

 津田さんの「リアルタイム紀行型ジャーナリズム」は「リアルタイム」である点で、もちろん「速報」です。同時に旅人が移動しながら取材して歩くようなイメージを受けます。移動型の「モバイルジャーナリズム」といっていいかもしれません。地域に由来する地方新聞社にとって、フリーのジャーナリストは文字通り「旅人」にすぎませんでした。しかし、「リアルタイム紀行型ジャーナリズム」では、「旅人」と問題意識を同じくする人々、その地域の事情に通じている人々がツイッターで多様にかかわるので、一種の参加ジャーナリズムのニュアンスさえ感じます。

 従来型のマスメディアとは全く異なる形で情報が流れる点も重要です。単に情報の流れ方が違うのではなく、情報の受け手自身が発信者になる、リツイートの様式の上に成り立つジャーナリズムでもあります。

 地方新聞社がネット分野で本当に仕事をしようとするなら、ソーシャルメディアの活用も含め「新しいコンテンツ」と「新しい報道のスタイル」をきっちり研究し、実践する必要があります。ちなみに河北新報の地域SNS「ふらっと」は「コンテンツ」「スタイル」の双方を意識しながら手探りしています。

 新聞に掲載されるニュースをオンラインに再掲するだけでは意味がありません。インターネットが持つ特性や可能性を新聞の購読者向けサービスに閉じ込めてしまうのも、それだけではむしろ長期的に問題が残ります。新聞とネットを組み合わせ、あるいはネット単独の仕掛けを使いながらジャーナリズムの新しい形を模索する必要があります。津田さんの「リアルタイム紀行型ジャーナリズム」の実践活動が、伝統的なマスメディアのこれからにとってどんな意味合いがあるかについてしっかり考えてみたいものです。

投稿者 yoyu : 2012年5月 2日 16:56