河北新報

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2012年6月11日

【ソーシャル, ブログあれこれ】

「聞き書き」が記録する震災 「鎮魂と再生」 

chinkon02.jpg 「東北学」を提起してきた赤坂憲雄さん=学習院大学教授、福島県立博物館長、遠野文化研究センター所長=が編集した「鎮魂と再生 東日本大震災・東北からの声100」(藤原書店)は、いわゆる「聞き書き」による震災記録集です。485頁。震災をさまざまな立場で経験した人々100人の言葉にまず耳を傾け、記録しています。聞き書きした筆者たちはいずれも東北に思いを抱く人たちであり、自分自身も何らかの形で震災を経験した人たちです。

 赤坂さんはこの作品について「ささやかなはじまりの石碑(いしぶみ)である」と述べ、やがて形成されるはずの「巨大な記憶のアーカイブの一部を成していくはずだ」と書いています。東日本大震災は歴史的な大災害であり、日本の社会のありようを大きく変えたといわれます。その通りだとは思いますが、ではどのように変わったのか、どのように変えていくべきなのかについて、日本の政治や経済の担い手たちの行動は必ずしも定まっていません。むしろ、震災という事実が示した重要な事柄をスルーし、自らの短期的な都合を優先するかのような動きにも見えます。

 震災を経て本当に大事にしなければならないのは何なのでしょう。それは赤坂さんとそのネットワークに連なる人たちが提案している「聞き書き」を通じて、明らかになることなのかもしれません。つまり、震災の経験に徹底して寄り添うことです。「亡くなった人たちは語ることができない」とも赤坂さんは書いています。だからこそ、生き残った人たちの思いをくみとり、心の奥底で感じる必要があります。その過程を意識的に求めない限り、他人の経験はどこまでいっても他人事。時間の経過とともに希薄になります。政治も経済も再構築されることはないでしょう。

 「聞き書き」という表現スタイルは、マスメディアの報道スタイルや、発信に重きを置くブログ、ツイッターなどのソーシャルメディアとはどう違うのでしょう。東日本大震災が起きた事実を介して「話し手」と「聞き手」の間に何をもたらしているのでしょうか。さらに「読み手」はどのような形で、その関係に参加していくことになるのでしょう。赤坂さんを中心としたプロジェクトは3年計画だそうです。今後のメディアのありようを考えるうえでも、重要なヒントを多数与えてくれています。

 編集協力にあたった出版社「荒蝦夷」の土方正志さんは「赤坂東北学の大きな柱」である「聞き書き」について、あとがきで以下のように書いています。

 「インタビューではない。聞き取り調査でもない。コメントが欲しいわけでもない。そして語り手の人生が透けるような聞き書きは短くては達成できない。私たちは400字詰め原稿用紙にしてひとり10枚の聞き書きを重ねてきた」

投稿者 yoyu : 2012年6月11日 11:40