河北新報

2011年12月13日

【ネット活用, 新聞&ネット】

大震災がもたらした「当事者性」/メル・プラッツ公開研究会

mel031.jpg メディア表現とリテラシーについて語り合う「メル・プラッツ」の第31回公開研究会が2011年12月10日、仙台市の東北大学青葉山キャンパスで開かれました。東日本大震災後、日本のメディアはどこに向かおうとしているのか。そんな問題意識に支えられた議論でした。最も印象的で重要なキーワードは「当事者性」です。日本のメディアに対する批判や提言とともに、極めて前向きな考え方として示されました。震災の衝撃と混乱の中、地方新聞社のありようを手探りしてきた立場でも、重要な手掛かりになりました。

 研究会のテーマは「メディアの森はどうあるべきか:ポスト3.11の語りと記憶から」。仙台市の「せんだいメディアテーク」企画・活動支援室長の甲斐賢治さん、ニューヨークタイムズ東京支局長のマーティン・ファクラ-さん、東大情報学環教授の水越伸さんの3人が報告しました。

 「当事者性」について語ったのは甲斐さんです。甲斐さんは震災後、「3がつ11日をわすれないためにセンター」の設立にかかわりました。市民やNPOなどが撮影した復興の過程を記録保存し、発信する活動に取り組んでいます。

 「今回の大震災で一つ明らかなのはわたしたちは『他者』ではないという点だ。当事者だからこそ語れることがある。被災地で獲得された当時者性によって、わたしたちに必要なメディアを自分自身で動かせるんじゃないかと思い、『忘れん』を立ち上げた」

 「当事者側に立って、自分たちの自身のメディアを持つことは、マスメディアの公平性、公共的な感覚に基づく報道とはまったく違う立場だ。マスメディアとは違う立場で『当事者』として発言できるメディアだ。それはひょっとしたらジャーナリズムではないのかもしれない。僕はジャーナリズムでなくともかまわないと思っている。発信する場所が(メディアテークのような)生涯学習施設で、それを動かすこと自体、生涯学習として重要だと考えた」

 ファクラ-さんは震災直後に被災地に入って報道し続けた経験を踏まえ「福島第一原発の事故にあたって、(放射性物質の拡散予測システム)スピーディ(SPEEDIE)を政府が公表しなかった。政府がそれを隠した事実もさることながら、日本のメディアがそれを報道できなかったことが、おそらく重要な出来事だ」と厳しく批判していました。

 「原発事故に関しては、日本の東京の新聞、テレビは大本営型の報道を続け、どのメディアを見てもほとんど同じ内容だった。わずかに東京新聞が、全国紙が書かないような報道に取り組んだのが目立つぐらいだ。被災地の新聞社として、全国紙の視点とは違った主体性で報道を続けた例もある」

 ファクラーさんによると、ニューヨークタイムズもニューヨークの地方新聞社の性格を強く持っています。同社の紙の新聞の発行部数は約115万部。ニューヨークタイムズのニュースをインターネットで読んでいる読者は3500万人に上っています。

 「日本のメディア状況を展望するアイデアとしては、全国紙とは違う価値観、主体性、多様性を持つ地方紙がその主体性をしっかり守り、インターネットを活用して、全国展開するのがビジネス的にも有望なのではないか」
 「日本の社会は米国や韓国のように対立がなかったので、特色のあるメディアが育たなかったと考えられる。しかし、対立がなかった日本の社会も、今や大きく変わりつつあるし、震災後、日本の大手マスコミに対する国民の不満や不信も強まっている。日本のメディア状況は大きな転換期を迎えている」

 水越さんは「当事者性」に裏付けられる市民メディア、市民ジャーナズムと、ファクラーさんの言う、日本のメディアの現状と展望はつながっている、と強調しました。

 「日本の社会で、決定的に、かつ歴史的に欠けていたのは、個人の『当事者性』だった。ちょっとドラマティックに言えば、『当事者性』は日本の社会では奪われていた。たとえば車に積んだカメラで3時間、被災地を撮影し続けることのリアリティーは非常に重要だ。『デジタル・ストーリー・テリング』のような活動が世界各国、日本でも一部で起きている。自分たちの表現の場を持ち、自分たちについて語ることで、地域に還元していく-。そういう意味での当事者性は非常にミクロな部分だが、ミクロな部分がないと、その上の部分が『だるま落とし』のように崩れてなくなってしまう」

 「(東大情報学環教授の)林香里さんは、最近、『ケアのジャーナリズム』と言っている。調査報道が本質的に持っているジャーナリズムの意味を(人が人と接する際の基本である)『ケア』と結びつけている。これも当事者性に基づいたジャーナリズムといっていい。当事者性の話とジャーナリズムの話は、ジャーナリズムの森の中で階層をなしているのではないか。いろいろな人がかかわりながら、多様性があって、本当の意味でジャーナリスティックなジャーナリズムが徐々にできていくのではないか」

 締めくくりに紹介するのは甲斐さんの発言です。長文ですが重要なのでお付き合いください。

 「わたしたちは被災地で突如、当事者性というものが何か、を提起された。そのことを間違いなく実感した。職業的アイデンティティ以外を許容しない社会がどうも日本にはあるようで、職業的アイデンティティが外れたときに市民としての立場が存在しない社会だ。たとえば今回、福島第一原発の20キロ圏内でカメラを回した人がいた。確かに自分は被災地の様子を自分のカメラで記録すべきだと思った。だけど、一人の市民としてなぜ記録すべきなんだろうかが分からない。自分がカメラを持っている必然性を説明できる根拠がない。それだけ(個人としての当事者性が)後ろ支えされていない状態が、これまでの日本の社会だ」

 「今回の震災で、わたしたちに提起された『当事者性』を、ファクラさんが言う『主体性』と『多様性』をメディアのシステムとしてだけでなく、僕らの身体の中にも開発していく必要がある。メディアに向かう身体として、アイデンティティをもう一度作り直していく。今回、震災が起きたことで間違いなく(市民の側に)『当事者性』が獲得された。このことがファクランさんの言う転換期と関係している。システムがガラッと新しく変わるというよりも、福島の放射能から子どもを守るネットワークのような、新しい形のメディアの解はネット上におそらくすでに存在する。それを発見することが重要だし、それを使いこなせる人が増えていけばいい」

投稿者 yoyu : 15:39

2011年8月28日

【ソーシャル, ネット活用】

iPhoneで動画取材

 東日本大震災では、市民が撮影したビデオがプロの放送で多数紹介されました。現場に居合わせた人だけに可能な、臨場感にあふれた映像でした。いわゆる「市民メディア」の領域がITツールの発達とともにどんどん拡大しつつあることの表れです。米国のジャーナリスト、ダン・グルモアさんは新著「あなたがメディア! ソーシャル新時代の情報術」(朝日新聞出版)の中で、ブログ、SNS、ツイッター、フェースブックなどを使いこなす市民を「メディアクティブ」と呼び、ジャーナリズムの重要な担い手として期待を寄せています。メディアを仕事にする以上、「メディアクティブ」のスキルは身につけておいた方がいいかもしれません。ギルモアさんの主張に共感しつつ、iPhone4を使って動画取材し、オンラインに乗せるプロセスを実践的に試してみました。

 ●回線は?
 動画の場合、3GSでは荷が重いです。取材・データ送信ともに無線LANであるWiFiを使います。
 ●メモリの状態に注意
 動画撮影するにはiPhoneのメモリが不足しないように気を使う必要があります。動作が途中で止まったりしないように、撮影する前に必ずメモリを解放する方が無難なようです。
 ●どこに発表するか?
 取材した動画をオンラインで公開する場はとりあえず(1)YouTube(ユーチューブ)(2)USTREAM(USTユーストリーム)(3)その他が考えられます。また、取材した動画をYouTubeなどに送るだけでなく、動画をオンラインで公開したことを多くの人に知らせ、見てもらう仕組みを考える必要があります。

 「その他」には自社のニュースサイトやSNSサイト、動画サイトも含まれます。当然のことなので、ここでは触れません。

 ●どんな形式で公開するか?
 (1)現場から実況中継する場合
  iPhoneの専用アプリである「Ustream Broadcaster」を使ってUSTで中継 するのが一番。操作手順の簡単さは驚くほどです。「アプリを起動する」「『ライブ配信』を選ぶ」「撮影を開始する」の3ステップだけで、本当にライブ中継がUSTに流れます。中継を始めたことをツイッターやフェースブックに知らせる機能もあります。「Ustream Broadcaster」は無料です。

 (2)撮影した動画を実況ではなく、後刻(後日)、公開する場合
  「Ustream Broadcaster」でも可能ですが、撮影したデータサイズが大きいためか、データを送信するのに時間がかかりすぎます。7分30秒ほどの動画データをUSTに送るのに3時間以上かかりました。この問題はネットでも指摘されていました。何か改善点があるのかもしれませんが、実用的ではありません。

 そのため、「Ustream Broadcaster」の利用はいったんあきらめます。代替プランは以下のように二つ考えられます。

 1)iPhoneにはカメラ(動画)機能を使って撮影し、簡単な操作でYouTubeに送る機能があります。非常に簡単な操作で済みますが、YouTubeの難点は、データを送った後、YouTube側でデータを加工する時間が必要なことです。加工に要する時間はデータサイズによって異なるでしょうか。通信規格との関係で他の制約がないかどうか確認が必要です。そう長い時間ではないので、ものは考えようですが、すぐに公開したい、速報したい場合になじまないかもしれません。
 2)そこで専用アプリ「Tweet Reel」を使ってみました。これは動画コンテンツをツイッターで直接を公開するためのアプリです。自分のツイッターアカウントを登録するだけですぐに利用できます。85円。

 「Tweet Reel」のメニューから「VIDEO」を選んで動画を撮影し、撮影した動画に関する簡単なPRをツイッターに書き込むだけで、コンテンツの所在を記したリンク情報とともに公開されます。過去に撮影したデータをiPhoneの「アルバム」の中から選んで公開することもできます。公開される場はYouTubeでもUSTでもなく「Tweet Reel」専用のウェブサイトです。

 ツイッターとフェースブックを連携させておけば、「Tweet Reel」で動画を公開したことを、フェースブックのネットワークにも知らせることができるわけです。

投稿者 yoyu : 09:17

2011年3月13日

【ネット活用, 新聞&ネット】

「M9.0」とネット、そして人の心

p003.jpg 「3.11」はずっと記憶に残ることでしょう。東日本大震災。マグニチュード8.4の発表から8.8に修正され、さらに本日3月13日になって9.0に修正されました。かつて経験したことのない猛烈な揺れは突然「ガガガガ」ときました。ビルの土台から根こそぎもっていくような。本当にすさまじいものでした。仙台市内にある河北新報社の本社にいました。普通は7階のメディア局にいるのですが、たまたま客があって1階で用談中でした。

 メディア局内はロッカーが倒れ、机の上の書類が散乱するなどひどい状態でしたが、幸いなことに社内ネットワークは無事でした。8階においてあったニュースサイト「コルネット」のためのサーバーも一時ダウンしました。全体的にみて深刻だったのは、ネットワークの上位部分のトラブルのためインターネットに出ていけなくなったことでした。ニュースサイトのサーバー自体は、その日の夜に復旧したのですが、インターネットとの間が遮断されたため外部からは「河北新報のニュースサイトがダウンした」状態が続きました。メールの受発信もできず、多くのみなさんからの励ましのメールにも答えることができませんでした。

 新聞社のネット分野でインターネットが遮断されたのは致命的でした。使える回線をあれこれ試しましたが、すべてアウト。わずかにJリーグのサポーター向け有料サービス「ベガルタモバイル」の取材で使っている、USB通信カード(ウィルコム社)が使えることが判明しました。営業本部の業務用の通信カードも拝借してネット回線をつなぎ、河北新報社のSNS「ふらっと」の「編集室からのお知らせ」を使ってニュースを発信しました。

 まさに窮余の一策でした。SNSサイトのサーバーは他の場所にあるので、地震の被害を受けなかったのです。このSNSを立ち上げたのは4年前です。そのときに冗談交じりで「このサイトがニュースサイトのバックアップになるかもしれない」と言っていたのを思い出します。まさかそれが現実のものになろうとは・・。

 ともかくもインターネット回線を確保できたタイミングで、地方新聞社とパートナー関係にある共同通信社から連絡があり「何らかの形で記事データを送ってくれたら、47ニュースにニュースを掲載したい」との話がありました。「47ニュース」は共同通信と地方新聞社が運営しているニュースポータルです。

 「渡りに船」とはこういうことを言うのでしょう。地震直後の混乱のさ中でしたが、社内で正式に検討し、実施することにしました。共同通信のサポートでヤフーにも一部、データが送られました。河北新報社と友好関係にある社との合同サイト「JWN」の幹事社からも同様の申し出があり、お願いしました。実はヤフーの担当者からはメールで直接、ニュース送信の依頼が来ていたのですが、メールが受信できなかったため、確認したのは翌日のことでした。

 インターネットなしには仕事や暮らしが成り立たないのが現代社会ですが、震災直後の厳しい状況で、本当に助けになるのは人の手、人の心でありました。

 「M9.0」というのは実に衝撃的で、余震があるたびに身体が激しく反応します。そんな中で若い記者たちは地域を走り回り、取材を続けています。震災報道は始まったばかりですが、地域のみなさんとともに何とか乗り越えたいと思います。とりあえず、感謝の気持ちを記しておきます。ありがとうございました。

投稿者 yoyu : 21:48

2010年10月13日

【ネット活用, 新聞&ネット】

ハイパーローカル

 米国に気になる動きがあります。「ハイパーローカルジャーナリズム」とか「ハイパーローカルメディア」と呼ばれる考え方です。要するに、より詳細な地域情報を自在に扱えるようにすることで、インターネットの出現以来、行き詰まった感のあるジャーナリズムやメディアに新しい展望を開こうというわけです。これは4年前から試行錯誤している地域SNS「ふらっと」の大テーマでもあります。

 正直、また米国かという感もあります。米国の新聞モデルが日本以上に苦しい状況にあるのは周知の事実です。「ハイパーローカル」はその再構築プロジェクトとして、ビジネスモデルありきの動きのようです。注目すべきは大手のポータル事業者やメディア事業者まで「ハイパーローカル」をビジネス化しようとしている動きです。

 米国の様子を日本の状況にそのままあてはめることはできないし、そんなに甘いものでもないでしょう。しかし、全体として大手ポータル事業者にしてやられた新聞界が、より詳細な地域情報の分野でも遅れをとるとしたら・・。考えるだに恐ろしい。言わずもがなではありますが、地域情報で遅れをとる米国の新聞界のイメージをむりやり日本に引用すれば、それは地方新聞社の命運そのものです。地域SNS「ふらっと」という模索の事例を軸に置きながら「ハイパーローカル」がもたらす手掛かりについて研究する必要が大いにありそうです。

 なお、本来「超」「過度の」という意味を持つ「ハイパー(hyper)」はインターネット草創期からこの分野に関心を持っている人にとっては懐かしい言葉でしょう。「ハイペーメディア」や「ハイパーテキスト」のように使われ、文字や音声、画像を検索できるシステムを意味しました。紙に記録された文字や画像のアナログ情報だけなら、整理・蓄積、検索には膨大な時間と手間がかかります。デジタル化された「ハイパーな」情報なら検索が自在に行えます。検索できるというだけで大変な価値があった時代の言葉です。その「ハイパー」と今、話題の「ハイパー」が、つながるような、つながらないような・・。

投稿者 yoyu : 12:06

2010年8月19日

【ネット活用, Books】

村上龍の「歌うクジラ」

kujira.jpg 村上龍さんがiPad用の電子書籍として発表した新作「歌うクジラ」には、音楽家、坂本龍一さんの曲が使われています。話の展開に合わせて効果音のように使われていました。CGアニメーションが表紙や章扉に使用され、全体として、書籍のイメージを大切にしながら新しい作品世界を模索しているような印象を受けました。632頁、1500円。

 正直に言えば、文学の世界に野放図に動画系のコンテンツを展開されても、読み手の想像力に出番がなくなるだけのような気がします。動画が欲しいのなら映画やビデオを見れば済むことですから・・。文学世界の電子書籍化では、今後さまざまな挑戦が行われるでしょう。面白いテーマであるのは間違いありません。

 内容について書くのは控えます。格差、移民、高齢化、命の分野における暴走などなど、愚かな権力者と愚かな我(われ)がセットになれば、あるいは現実のものとなるかもしれない。とても不気味な近(?)未来小説です。
 
 想定されている世界のありようが、現代社会に起因するのは当然のことながら、そのリアリティーには感心してしまいました。不思議で過酷な運命をたどる主人公の少年が一人称で語り続けます。構築力、提案力ともに十分。今後、他の電子リーダーでも読めるようになるそうですが、現時点で、書籍になっていないのは、惜しいことだとやはり感じました。

投稿者 yoyu : 15:48

2010年8月 4日

【ネット活用】

使ってますか?Eメール

 Twitter(ツイッター)やFacebook(フェースブック)を使うようになって、eメールを利用する機会が明らかに減っています。TwitterやFacebookでつながる人たちとの間では、eメールを使わなくとも、コミュニケーションが成り立つようになりつつあるからです。TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが今後、暮らしと仕事にどう絡むのかを判断するにはもう少し時間が必要ですが、個人的にはeメールの利用が大きな曲がり角にきているように感じます。

 Eメールの場合、アドレスを公開しているので、公私ともに利用頻度が高くなりました。その分、いわゆる迷惑メールも毎日大量に送りつけられます。プロバイダーや会社のシステムによって、明らかな迷惑メールは自動的に削除されます。それでもなおチェックを逃れた不要なメールが届きます。悪質なウイルス被害からも完全に逃れられるわけではありません。ウイルス被害を未然に防ぐためには、専用の対策ソフトをPCに導入しなければなりません。その結果、PCの動作は限りなく重くなり、不都合極まりない状況も多々生まれます。

 これに対してTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアをうまく使えば、本当に必要な人たちとの間に、本当に必要なコミュニケーション環境を育てられそうです。特段、意識していたわけではないのに、毎日チェックするeメールの受信画面を見ながらそんなことを考えました。

 ちなみにTwitterはより広範な人々とのネットワークづくりと簡易、迅速な情報発信に向いています。一方、Facebookはどちらかといえば、より親密な関係を育てるのに向いているでしょうか。一定の共感を前提に継続的かつ深く意見を交換するにはTwitterはなじまないようです。

投稿者 yoyu : 16:39

2010年7月21日

【ネット活用】

電子書籍雑感

 iPadを使い始めて1カ月半になります。ユーザーとしてだけでなく、地方新聞社のネット部門に携わる一人としても、いろいろ思うところがありますが、とりあえず話題の電子書籍を体験した感想をまとめてみます。

 自分のiPadで読める電子書籍としてはまず「青空文庫」があります。多くのボランティアが著作権の保護期間が過ぎた作品をデジタル化してくれています。古典に属する作品がiPadの自分の本棚に並ぶ感じは、本読みとしては大きな楽しみができたようなものです。ソフトバンクの孫正義さんの伝記「志高く 孫正義正伝」(井上篤夫)、「夏野流脱ガラパゴスの思考法」(夏野剛)に続いて、津田大介さんの「Twitter社会論」を読みました。「志高く 孫正義正伝」「Twitter社会論」は紙の本でも読んでいます。

 「Twitter社会論」電子版には音声コンテンツ(Podcast)が追加されています。書籍に対してツイッターで寄せられた多くの感想について、ラジオ局の座談会形式で津田さん自身が受け止め方を述べています。紙版を電子版にしただけでなく、ネットラジオを含めた多メディア型の双方向コミュニケーション商品の初期的な事例です。新聞の世界でも応用できそうです。

 村上龍さんの「歌うクジラ」は読み始めたばかり。アプリケーションを起動し、表紙を表示すると、荘厳な雰囲気のサウンドが響きます。まるで映画の始まりのようです。どんな仕掛けがあるのでしょう。

 電子書籍は明らかに読書量を増やしそうです。量の問題にとどまりません。指先でページを軽くめくる特有の操作によって、いわゆる斜め読みが容易になりました。ウェブの世界では当たり前のことですが、本を読んでいて調べたいことがあればネットで検索したり、自分が蓄積しているデータを参照したりできます。iPadという、プラットホームは、ウェブブラウジングで得る知識と、書籍がもたらしてくれる情報の間に境目を限りなく少なくするように思うのです。

 電子書籍というと、紙の書籍をデジタル化した商品と考えがちです。確かにその通りなのですが、幾つかの電子書籍を試してみると、従来の書籍コンテンツに音声や動画などを加えた新たな電子商品の可能性を強く感じます。そのことは電子書籍向けの高機能電子端末と新聞との関係に直接かかわってきます。

 第17回東京国際ブックフェアで基調講演したノンフィクション作家佐野眞一さんは、青空文庫の膨大なデータがiPadに入ることを実感して「この時iPadが軽いと感じた」と語ったそうです。iPadの最も評価すべき点は、さまざまなコンテンツや仕掛けと連携するコンセプトになっていることです。

 だから「手で持つには少し重い」というような、単純な事実や感想ではとらえきれない。このようなメディア連携の可能性が高い商品やサービスはあまり見たことがないような気がします。

投稿者 yoyu : 13:35

2010年7月 6日

【ネット活用, 新聞&ネット】

デジタルメモ帳

iphone02.jpg 新聞記者にとってメモ帳とペンは何よりも大事です。もう30年も前、駆け出しのころには手のひらに乗るぐらいのメモ帳を使っていました。社名入りの専用メモ帳でした。いつのころからかA4型の大学ノートを使うようになってメモ帳からは遠ざかっていたのですが、先日、都内で開かれていた写真展を見に行った際、iPhoneをかつてのメモ帳代わりに使えることが分かりました。デジタルなのに、アナログな感覚でメモをとることができ、そのメモがそのままデータベース化されてしまう感じです。

 現場の記者が使っているメモ帳を編集局からもらいました。かつて使っていたものよりも、少し大ぶりになったような気がします。iPhoneはそれよりもだいぶ小さい。手のひらに乗るという意味ではiPhoneの方がしっくりきます。iPhoneをメモ帳として使うには、手書き入力系も含め、いろいろなアプリケーションがあります。なかでもEvernoteというアプリケーションは文書や写真、動画などあらゆる素材を作成、蓄積できるほか、インターネット回線さえあれば、どこにいても、どんな端末からでも編集可能です。無料版は扱えるデータに量的な制限がありますが、インターネットで入手した情報も含め、どんなデータでも収容でき、活用できることから営業マンの世界でも多くの人が利用していると聞いたことがあります。
iphone01.jpg iPhoneをメモ帳として使うには、iPhoneが提供している日本語入力システムを使えなければ話になりません。写真のような小さなキーボードを使います。両手持ち親指入力か、片手持ち人差し指入力のどちらかで使うことになるでしょう。個人的には人差し指でポツポツ入力するのが正確だし、速いです。見ただけで拒否反応を示す人が多いかもしれませんが、日本語変換の辞書機能がなかなか使いやすく、多少の入力ミスがあっても、修正・編集が自由にできるのです。慣れてしまうと、十分使えます。

 写真展は言うまでもなく写真撮影禁止でした。しかし、iPhoneにあらかじめ搭載されている機能やアプリケーションを使えば、静止画や動画の撮影はもちろん、インタビューの録音だってできてしまいます。特定の製品をひたすら持ち上げるような報告になりましたが、取材現場で苦労している記者諸君の選択肢を少しでも広がればとの思いからです。不愉快に思われた方はご容赦ください。

投稿者 yoyu : 11:19

2010年6月22日

【すみません。PRです。, ネット活用】

ノルウェーの学生と電子書籍

 河北新報社が運営している地域SNS「ふらっと」で、新しい企画「World Wide Blog(世界のブログ)」(WWB)が始まりました。海外に住む東北ゆかりのみなさんにブログを書いてもらっています。手法としてはインターネットが登場して以来の伝統的な(?)形です。海外で活躍するみなさんのメッセージを十分に味わってください。また、「ふらっと」が海外在住のみなさんと郷里を結ぶ役割を果たせればうれしいです。

 どんなブログが書かれているかは実際にご覧いただくとして、WWBブログ「ノルウェー便り」の記事を一編だけ紹介します。タイトルは「ノルウェーの学生にとって有難い電子書籍」。筆者はノルウェー・オスロ在住の大学院生、鐙 麻樹(あぶみ・まき)さん=秋田県出身=です。

 鐙さんは「紙を手にしてインクの香りをかぎながら、本を手にする」といった本好きの人々の気持ちや出版業界の問題について触れ、「ノルウェーでも同じ意見を持つ人が多いかと思います」と書いています。その上で、経済的に余裕のないノルウェーの学生にとって、電子書籍がなければ勉学にも支障が出ることを具体的につづっています。

 学生があまりお金がないのは世界共通。そして、ノルウェーでは「紙」という「紙」は全て高く、日本の紙製品の2~3倍の値段はします。この国にいると、日本の書籍や、ノートなどの文房具の安さに本当に驚きます。例えば、私が来学期に履修する「メディアの歴史と機関」という授業に必要な必須テキスト3冊買ったところ、約1000クローネ(約1万4300円)。ほかに7授業履修予定なので、テキストだけでも恐ろしい金額になります。
 ほんの少しの金額(時には無料で!)、インターネットで書籍や文献をゲットできるのは学生にとっては本当に有難いのです。

 iPadが日本でも発売され、いわゆる電子書籍がさまざまに取り上げられています。電子書籍の問題は出版社およびその業界側の視点で語られることがまだまだ多く、今後、日本でどのように展開するかは見通せない部分があります。この手の話はとかく抽象的に理屈で考えがちですが、実際の利用シーンで考える場合、鐙さんの報告のような事例が多くを語ることになるのでしょう。

投稿者 yoyu : 18:14

2010年6月 8日

【ネット活用】

iPadが届いた

ipad.jpg 注文していたiPadが届きました。Wifiタイプ、64ギガ。初期設定が無事終わり、必要なアプリをいくつか入手しました。既に仕事、暮らし両面でiPhoneを活用しているので、移動中に使う端末としてはiPhoneで十分。iPadは自宅や職場などに置いて使うか、iPadでなければならない場面で使うようになると思います。

 とりあえずiPadに導入したのは、ネット上に預けたデータを複数の端末で共有・活用するアプリEvernoteです。Evernoteはいわゆるクラウド技術を使ったアプリで、複数端末をTPOに合わせて活用するにはなくてはならない環境を提供してくれます。プレゼンテーションに使うKeynoteのiPad版も入手しました。文章や写真、動画などの素材を指先の動き一つで組み合わせ、プレゼンテーション資料を作る操作自体、なかなか新鮮です。

 iPadの初期設定にはiTunesという、コンテンツ管理と課金を併せて行う基本ソフトを使うのですが、ノートPCに保存してあった700枚を超す写真を、初期設定の段階で一気にiPad側に渡すことができました。その膨大な写真がKeynoteの資料作りにそのまま使えます。iPhone、iPadが提供するシームレス(境目なし)な環境は、端末間、コンテンツ間の壁を超えた使いやすさにつながっているようです。

 iPadがノートPCにとって代わるとの見方もあるようですが、それぞれに得意・不得意はあるし、何ともいえません。デスクトップ型のPCはさすがに出番が少なくなるでしょう。ノートPCは限りなくビジネスユースに近づき、iPhone、iPadは趣味や娯楽も含めた仕事、暮らし両面を支えるマシンになる予感がしています。

 ノートPCの使いにくさのため、ネットから遠ざかっていた連れ合いがiPadを手放そうとしません。どう使っているかは分かりませんが、予想通りです。

投稿者 yoyu : 16:06

1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11

本ページに掲載の記事・写真などの一切の無断転載を禁じます。
Copyright 2010 ©河北新報社