短歌(6/28掲載)

【佐藤 成晃 選】

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土噛みて大根育つごほうびにどんと土寄せエールひと鍬  (石巻市桃生・佐藤俊幸)

【評】結句の「エールひと鍬」は土へのご褒美だろうが、嫌味がない。農家の具体的な行為の中に作者の喜びが滲んで来ます。佳作。


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ブルーインパルス飛行機訓練天空に巨大な星のエールを描く  (石巻市不動町・新沼勝夫)

【評】スケールの大きさに圧倒される。

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誰が為の宇宙なのか問うように寄せては返す自然の禍福  (東松島市赤井・佐々木スヅ子)

【評】大掴みなところが良い。人間中心の生活を直してくれる自然の力の前に頭を垂れる。

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最上川その川縁に蕎麦の花おしんのように辛抱に実を  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

【評】川べりに咲く質素な蕎麦におしんをそのまま重ねていいか、迷ってしまう。

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晴れわたる車窓流れるみちのく路花咲く果樹に奥羽の残雪  (石巻市わかば・千葉広弥)

【評】みちのくの遅い春を詠いたい気持ちは読めるが、道具立てが多いのではないか。

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大羽を広げて海原信夫翁(アホウドリ)孤島傾斜に雛鳥抱く  (石巻市水押・阿部磨)

【評】孤島のアホウドリの生態を書こうとしているが此処に並べた道具立てが多くてわずらわしくはないだろうか。

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十万円帯に足すなく襷に丁度  (石巻市桃生町寺崎・西条和江)

【評】下の句の七七がありませんでした。俚諺「帯に短したすきに長し」などが裏にあるのだろうか。俚諺にひきずられて作品がふるい印象を持たされてしまわないことです。

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干天の空を仰いで慈雨を乞うもう遅いよと花咲く大根  (東松島市赤井・佐々木スヅ子)

【評】農作物に対する思い入れは農家の一般的な傾向かも知れないがこの作の「慈雨」の「慈」はどうか。無くて済むならない方がいい。思い入れがあまりに強いと選者が弾き飛ばされてしまうのです。

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カッコーもほととぎすも来て早夏に憂さを忘れて季節味わう  (東松島市矢本・川崎淑子)

【評】「早夏」の読み方が分からない。必要ならば「ルビ」を。

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スマホなど無くて成り立つわが暮らし蒼穹仰ぎ姿勢を支ふ  (石巻市開北・星のり子)

【評】ないことが当たり前という妙な強がりを隠してほしい。

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上品山(じょうぼん)の空と野原の接点を風力の翼かすみて回る  (石巻市開北・星のり子)

【評】風力発電のプロペラのさまをもっとリアルに工夫をしてください。

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どくだみの花涼やかに描かれて初夏の風まといし絵手紙届く  (石巻市丸井戸・高橋栄子)

【評】「涼やかに」の内容がもっと具体的に書いてほしい。

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雑草が吾が物顔でのび放題必死にぬいて畑つくりに三日かかれり  (石巻市高木・鶴岡敏子)

【評】定型に収める努力を。雑草にも名前があるので覚えてほしい。次作に期待します。

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レントゲンの陰影写真説明のペンでなぞられ患う吾は  (女川町・阿部重夫)

【評】病んでいる時ほど温かい診断の説明がほしいものだ。作者の立場は理解できるが、次回は温かい説明の場面を詠んでほしいものです。