俳句(8/2掲載)

【石母田星人 選】

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鮎焼くや泳ぐ姿に串を刺し   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】今年も7月1日に鮎漁が解禁になった。鮎は塩焼きがうまい。まず串打ち。右を向けた鮎の口から串を入れる。身をくねらせて中骨を縫うように刺す。串打ちを終えたものをまな板に並べて上から見ると、鮎の群れがくねくねと泳いでいるように見える。この句はその光景と思いを素直に詠んだ。実際に串打ちをしなければこの「泳ぐ姿」の表現は発見できない。

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ソーダ水迷路の多き小さき島   東松島市新東名/板垣美樹

【評】不案内な小島を歩く。至るところに通り抜けできない路地。行ったり来たりを繰り返す。それでもこの句には困った様子や深刻さがない。かえってこの状況を楽しんでいるようにも思える。そう見せるのは「ソーダ水」という季語の持つイメージの力。

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梅雨鴉この世の黒を使ひきる   石巻市小船越/三浦ときわ

【評】雲が垂れこめた梅雨空をわが物顔に飛ぶ鴉。枝に止まった羽の黒は、梅雨空の暗さを吸収したかのようにさらに黒く見えた。中七以下の表現が巧み。

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麦畑は風の遊び場赤子泣く   石巻市相野谷/山崎正子

【評】麦畑を風が渡る。黄金色の穂をなでる様子もその乾いた音も実に心地よい。実際に赤子が泣いたのかもしれないが、風の赤子の存在を思ってしまう。

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青大将のそり手樽の沖のぞく   多賀城市八幡/佐藤久嘉

潮の香のここが産土燕の子   石巻市蛇田/石の森市朗

青蜥蜴石の温みを抱きをり   石巻市小船越/芳賀正利

雲晴れて海月も踊る凪の海   石巻市門脇/佐々木一夫

一輌の電車西日に頭振る   東松島市矢本/紺野透光

打たれても打たれても飛ぶ梅雨の蝶   石巻市丸井戸/水上孝子

満水のダムの響きや二重虹   東松島市矢本/雫石昭一

夏の朝あひる模様の布を裁つ   石巻市中里/川下光子

沙羅の花蕾のかたく天を向く   仙台市青葉区/狩野好子

草笛の音色を置いて今いづこ   東松島市矢本/菅原れい子

ごつごつと岩のかたまり雲の峰   石巻市桃生町/高橋冠

梅雨空へタッチしたがるミニトマト   石巻市恵み野/木村譲

島の百合哀切秘めて崖に立つ   石巻市中里/須藤清雄

コンビニへ歩いて五分夏帽子   石巻市向陽町/佐藤真理子

丁寧に縫はれし母の藍浴衣   石巻市流留/大槻洋子

蝉時雨降るなか母の忌を迎へ   石巻市三ツ股/浮津文好