俳句(12/20掲載)

【石母田星人 選】

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枯葦のそのまま赦す大河かな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】岩手県北部の山に源を発して、追波湾に注ぐ全長249キロの流れ。豊かな土地を形成して、母なる川と親しまれている。下五の「大河」はこの北上川をさす。小さな流れとは全く違う悠久の大河だからこそ枯葦の存在を赦(ゆる)すことができるのだ。枯葦というと寒々とした情景が浮かぶ。だがこの句は一面の枯葦が大河の懐に包まれているようで温かい。

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一夜にて裸となるや大銀杏   石巻市桃生町/高橋冠

【評】神社や寺院、学校などにある銀杏だろうか。「大」とあるので歴史ある巨木なのだろう。それまで徐々に散っていた金色の葉が、霜の降った朝に一気に散り尽くした。辺りには金のじゅうたん。見上げると枝ばかりになった巨木。切字「や」には驚きも乗る。

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古書市を横歩きして十二月   東松島市矢本/紺野透光

【評】本好きにはたまらない古書市。ゆっくり立ち止まりながら手にとって眺めたいところだが、気ぜわしい。季語「十二月」の雰囲気に寄り掛かった一句。

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枝伐りて陽光広く冬構   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】冬ごもりの一環として枝を払ったのだろう。庭木の枝を伐ることは陽光を得るとともに、空の形を整えることでもある。新たな空の表情を楽しめそう。

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白鳥の到来待つや沼静か   仙台市青葉区/狩野好子

熊除けの電柵を張る定義道   石巻市相野谷/山崎正子

霜月の果ての活況さんまかな   石巻市広渕/鹿野勝幸

色変へぬ松に天女の忘れもの   石巻市中里/川下光子

子を思ひ眠れぬ風の浮寝鳥   石巻市蛇田/石の森市朗

炬燵の児海豚と遊ぶ夢の中   石巻市小船越/芳賀正利

初雪やライトアップの五大堂   東松島市矢本/雫石昭一

寒牡丹鳴子こけしの絵付けして   東松島市新東名/板垣美樹

凩に向って駆ける少年団   石巻市吉野町/伊藤春夫

喉奥に濃茶の香り小春かな   石巻市桃生町/佐々木以功子

気嵐に見送りされし船出かな   石巻市門脇/佐々木一夫

冬の波湾をせばめて筏浮く   石巻市南中里/中山文

青空を我が物顔や冬烏   石巻市北上町/佐藤嘉信

己が囲はつひに十字架冬の蜘蛛   石巻市開北/星ゆき

野の星を数えて帰る農納め   東松島市矢本/菅原れい子

黄菊抱き海向く津波地蔵かな   石巻市渡波町/小林照子