俳句(3/21掲載)

【石母田星人 選】

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リハビリの静止三分春の雪   石巻市小船越/三浦ときわ

【評】機能面の能力の低下やその状態を、特定段階まで回復させることは大変なことだ。強い意志も大切だが、訓練を指導する専門職のスタッフや家族など、多くの支えがあってこそ成し遂げられる。この句は、そんな訓練の様子を描いている。リハビリでなくても静止の3分はきつい。それに耐えて体の力を抜くと、窓外に春の雪が舞っているのに気づいた。力のこもる中七から春の雪への解放感が印象的だ。頑張って。

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早春の庭に陶器の栗鼠隠れ   石巻市小船越/芳賀正利

【評】雪解けの日差しまぶしい庭。昨日まで見えていた陶器のリスが見えなくなった。毎年、春先に姿を消す。後日リスが戻ると庭は春一色に変わる。幻想を伴う句と読めるのは「隠れ」のイメージによる。

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避難所の仮設トイレの霙かな   石巻市三ツ股/浮津文好

【評】強制移動を余儀なくされた作者。最初に身を寄せたのが避難所。そこでの記憶は狭い仮設トイレを出て仰いだ霙(みぞれ)の空。暗い空から不安が降っていた。

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窓大きく開けて青空揚雲雀   東松島市矢本/雫石昭一

【評】「開けて」「青空」「揚雲雀」と頭の「あ」の音をそろえた。明るい「あ」音には躍動感が見える。「大きく」には冬からの解放感が込められている。

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春泥によろけ捜しぬ家族(うから)の身   石巻市開北/星ゆき

春星や親に縁のなき子つれ   石巻市蛇田/石の森市朗

涅槃像津波知らせた人何処   石巻市元倉/小山英智

春色の海変らずに十年目   石巻市門脇/佐々木一夫

復興の起重機ゆする春一番   多賀城市八幡/佐藤久嘉

巻石にそっと触れゆく春の川   石巻市蛇田/高橋牛歩

漁網干す磯に朧の夜が来る   石巻市相野谷/山崎正子

冬花火仰ぎて祈る漁師かな   石巻市駅前北通り/小野正雄

西方に浄土あるとや寒鴉   石巻市丸井戸/水上孝子

連翹や青空深く陽を弾く   東松島市矢本/紺野透光

足首を引き寄せてゐる春の泥   東松島市新東名/板垣美樹

鳥たちの忙しき影や春めきて   石巻市広渕/鹿野勝幸

豆飯や医療にはげむ子と会話   仙台市青葉区/狩野好子

古を語り出すかな雛巡り   石巻市中里/川下光子

蟹缶や思ひを馳せる多喜二の忌   石巻市南中里/中山文

ハンカチにそっと包んで春苺   石巻市吉野町/伊藤春夫