俳句(3/7掲載)

【石母田星人 選】

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春星や指跡残る火焔土器   東松島市新東名/板垣美樹

【評】燃え上がる炎をかたどったかのような形状。そんな土器を眺めていたら、力強い意匠、造形の中に指の跡を見いだした。4500年ほど前の縄文時代を生きた製作者のものだ。その指跡から人間の息遣いが聞こえてきた。上五の春星がいい。この季語で現在と縄文時代の過去を巧みにつないでいる。土器の指跡も春の星々も時空を超えて語りかけてくる。

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楽しげに足裏くすぐる春の土   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】雪が消え凍った状態が緩んで顔を出したのは春の土。その上に立ち状態を確認する作者は土作りのプロ。良い作物を育てるため、目覚めたばかりの土に現在の気分を聞く。答えは「楽しげに足裏(あうら)くすぐる」ほどの上機嫌。今年も期待できそうだ。

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蝌蚪の紐池に流れのありにけり   東松島市矢本/紺野透光

【評】蝌蚪(かと)の紐(ひも)とはカエルの卵。池に流れがあると伝えているだけだが、これだけでこの卵の成長過程をイメージすることができる。想像へと誘う写生句。

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玄関に春泥の靴また一足   石巻市中里/鈴木登喜子

【評】近くに、舗装されておらず雨や雪で泥になる通路があるのだろう。その道を通って来た靴が玄関に並んだ。ぬかるみをさかなに楽しい語らいが始まる。

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返信のなきを十年冬昴   石巻市開北/星ゆき

天網の破れし如くぼたんゆき   石巻市小船越/芳賀正利

地震知らぬ若き語り部春の海   東松島市あおい/大江和子

合掌で迎ふる導師春の雪   石巻市桃生町/西條弘子

枯園に羽根一枚を遺しけり   石巻市丸井戸/水上孝子

古民家の梁の太さや牡丹雪   石巻市元倉/小山英智

新築に蝋梅つんと朝の風   仙台市青葉区/狩野好子

秒針のリズムにのりて余寒来る   東松島市矢本/雫石昭一

山頂の風車ころころ春を待つ   石巻市蛇田/石の森市朗

荒磯や波の調べに春きざみ   石巻市門脇/佐々木一夫

縫ひ上ぐるスカート春のワルツかな   石巻市中里/川下光子

蕗味噌や母恋ふ宵のほろにがさ   石巻市南中里/中山文

初午や昼餉に届く稲荷ずし   石巻市桃生町/佐々木以功子

凍結の北上川のしが渡り   石巻市吉野町/伊藤春夫

夜の地震仏間に春の花散す   石巻市蛇田/高橋牛歩

携帯の呼び出しサザン春近し   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美