俳句(4/18掲載)

【石母田星人 選】

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囀(さへづり)の集まる一樹忌日来る   石巻市桃生町/西條弘子

【評】春は鳥たちの繁殖期。求愛の声が集まるこの樹には明るさがこぼれている。鳴き交す声の向こうに海が光る。あの日亡くなった人が愛した海だ。そんなことを思ったらにぎやかな声の中に寂しさが見えた。

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児ら走る六帖八帖桃の花   石巻市開北/星ゆき

【評】間仕切りが取り払われた室内はいつもと違う雰囲気。雛人形が飾られている雛段には調度や道具、ひし餅、桃の花などが並ぶ。女の子の祭りの日。男の子は特にやることがなく退屈。おとなしく座っていることにも限界があり、雛の前を走り回ることになる。それを眺めるのは来春まで暗闇で過ごす雛人形たち。子どもの元気な姿を目に焼き付けて木箱に入る。中七以下は走る姿を追い掛けているようにリズミカルだ。

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仮設出て高台に咲く黄水仙   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】黄水仙の球根とともに高台に引っ越した。地植えか鉢植えか花を咲かせた。一般的にははかなげな印象の黄水仙だが、この句の花には力強さが見える。

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霾(つちふる)やどこまで続くコロナ波   東松島市矢本/雫石昭一

【評】上五は黄砂が降ること。今春は規模が大きく東北地方でも観測された。コロナの次の波も心配だ。中七「どこまで続く」は上五と下五にかかっている。

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若布刈る少年あすは東京へ   石巻市蛇田/石の森市朗

若布売十三浜と名乗りけり   石巻市蛇田/高橋牛歩

天籟も潮騒もなし鹿尾菜干す   石巻市相野谷/山崎正子

白魚の重たき水を泳ぎけり   石巻市丸井戸/水上孝子

五十集屋の天秤計り春潮   石巻市中里/鈴木登喜子

北窓を開けてサロンの始まりぬ   石巻市流留/大槻洋子

犬吠えて遠足の列大乱れ   東松島市矢本/紺野透光

春光やパスタへチーズ降り注ぎ   東松島市新東名/板垣美樹

春の日のあの日の声や海の音   石巻市駅前北通り/小野正雄

雲水の長き合掌春の海   石巻市元倉/小山英智

片栗の花に這ひ寄るカメラかな   石巻市広渕/鹿野勝幸

黒土に花種蒔くやティータイム   仙台市青葉区/狩野好子

春燈の光のリズム家々に   東松島市あおい/大江和子

つんのめる様に歩いて花疲れ   石巻市吉野町/伊藤春夫

幸せのレシピはどこにふきのとう   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

白々と栗駒の嶺春浅し   石巻市桃生町/高橋冠