俳句(5/30掲載)

【石母田星人 選】

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存分に跳ねて暮れたる大でまり   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】大でまりは白い手毬のような花を枝の先端につける。枝先の花は揺れやすく、ちょっとした微風や虫の動きにも反応する。「存分に跳ねて」は一日中、動きを止めることのない姿を的確に描いている。

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針刺しの小紋もやうや花は葉に   石巻市中里/川下光子

【評】着物の端切れを使ってリメークした針刺し。江戸小紋だろうか。無地に見えるくらい細やかな柄が描かれている。昔の着物の生地は上質で美しいものが多い。こうして生まれ変わっても生地の持つ柔らかな表情は失われることがない。針仕事の際に優しく寄り添ってくれる相棒なのだ。下五の季語で時間の流れを語り、読み手にリメーク以前の姿を想像させている。よほど愛着のある針刺しなのだろう。

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植田風はんこたんなの小学生   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

【評】食教育の一環だろうか。昔の衣装で田植えに挑んだ児童。はんこたんなは農作業時に顔を覆う長い布。この句からは、もんぺやすげがさも見えてくる。

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ふるさとの変りし姿夏の草   東松島市矢本/雫石昭一

【評】芭蕉の「夏草や~」は夏草生い茂る景を前にして奥州藤原氏の栄華のはかなさを思った。ここでは故郷の復興という様変わりに全身で向き合っている。

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惑星の小さな丘に躑躅燃ゆ   石巻市小船越/芳賀正利

若葉風自在に舞ふや能舞台   石巻市桃生町/西條弘子

くっきりと馬の鼻筋花林檎   石巻市吉野町/伊藤春夫

土壁に弾けて散るやしゃぼん玉   仙台市青葉区/狩野好子

牧山は魔鬼女の山やあやめ咲く   石巻市蛇田/高橋牛歩

復興道の暗渠にきっと花筏   石巻市開北/星ゆき

上品山に牛の影散る五月晴   石巻市南中里/中山文

民宿の板の間で焚く夏炉かな   東松島市矢本/紺野透光

麗かや視力検査の当てずっぽ   東松島市新東名/板垣美樹

青き空意気揚揚の辛夷かな   石巻市丸井戸/水上孝子

暖かし川面平らに大河かな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

一叢の風にふりむく軒忍   石巻市門脇/佐々木一夫

散策の道は川沿い飛花落花   石巻市中里/鈴木登喜子

野の花にかこまれ遊ぶ水子地蔵   東松島市矢本/菅原れい子

風光り野菜こぞりて背伸びする   東松島市矢本/奥田和衛

母の日の園児描く顔みな笑顔   東松島市あおい/大江和子