川柳(11/29掲載)

【水戸一志 選/評】

 ◎新規感染者数の発表で郡部の市や町の名がぽんぽん出てきた。震源地の都会から、人の接触を介してじわじわと広がっていることは間違いない。問題は複雑だが、3密回避などコロナ対策は地方が有利。被害者が加害者になる悪循環を忘れずに。

===

◎ 過疎地にもコロナの恐怖しのびよる   石巻市鹿又/遠藤錬治

  2横綱休場まるで名誉職   石巻市大街道/岩出幹夫

  美術館何はともあれまずホッと   石巻市蛇田/鈴木醉蝶

  GoToもブレーキかけて右左   石巻市水押/佐藤洋子

  モデルかな秋の夕日の我が影絵   石巻市蛇田/大山美耶紀

  ガラス拭き心の窓も磨きあげ   石巻市築山/飯田駄骨

  女房に隠し持ってる角があり   東松島市矢本/奥田和衛

  礼服を着る度誓うダイエット   石巻市中里/八木寿子

コラム:「時は飛ぶ」

 今年も残すところ一月(ひとつき)余り。時の流れの速さに驚かされます。特に今年は速いと感じる方が多いのでは?

 考えてみると、行き着くところは、やはり新型コロナ。春以来、ほとんどの行事や集会が中止または延期。未知の人との出会いや友人との交流の機会も希薄でした。つまり、折々の「アクセント」になっていた各種イベントが無いままに時が流れた...

 まさに「光陰矢のごとし」。この諺(ことわざ)は唐の時代の中頃の詩が出典とされています。これにあたる英語の諺は何でしょう?

 そのまま英訳してみると、「光陰」は「時」で time、「矢」は arrow、「~のように」は like~。

 " Time passes like an arrow."「時は矢のように過ぎる」となりますが、英語の諺は" Time flies."「時は飛ぶ」なのです。つまり「矢」が登場しない。これは" Tempus fugit."(テンプス フジット)"というラテン語に由来します。tempus は「時」、fugit は「去る」。

 tempus を起源とするのがイタリア語の tempo(テンポ)。これは「速さ」の意味で、日本語にすっかり定着していますね。さらには、フランス語の temps(「タン」のように発音)、スペイン語の tiempo(ティエンポ)などが。

 さて、もうすぐ街に流れるだろうジョン・レノンの" Happy Christmas "。40年前の1980年12月8日は、暴漢に撃たれて亡くなった彼の命日。

 " So this is Christmas. And what have you done?"
 「クリスマスがやってきたね。今年はどんなことをしたんだい?」

 この曲は1971年、ベトナム戦争の終結を願って作られました。

 " War is over, if you want it "
 「戦争は終わる 君が望むなら」

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)

俳句(11/22掲載)

【石母田星人 選】

===

三夕をなぞつてゐたり芒の穂   石巻市桃生町/佐々木以功子

【評】「三夕(さんせき)」は、新古今和歌集に収められている寂蓮、西行、藤原定家の「秋の夕暮れ」を結びとした3首の名歌のこと。ときを忘れて名歌の書に没頭していた作者。筆をおいて外を見るとまさに秋の夕暮れ。現在と鎌倉の世をつなぐように芒がなびいている。

===

日月の過ぎ行く速さ秋つばめ   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】ツバメたちは民家の軒先などで子育てをした後、いったん群れとなりアシ原などをねぐらにする。秋になると一斉に飛び立ち南の国を目指す。この句は渡りに挑む直前の姿を捉えている。その勇姿を見送る作者は一抹の寂しさを感じている。身近に巣もあるのだろう。空の巣の存在にも寂しさが募る。上五中七は大震災からの歳月につながる思いなのかもしれない。

===

個展出て大黄落のとどまらず   東松島市矢本/紺野透光

【評】個展に入る前も黄落していたのだが、出たら大黄落になっていた。潔く散る葉は華やかで明るい。見たばかりの絵の印象が降ってくるようにも感じる。

===

十三夜ぽつんとひとつ池の中   石巻市桃生町/高橋冠

【評】天候に恵まれた今年の十三夜の月は、地球に接近した火星を脇に従えて神々しい輝きだった。池の面に浮かぶのは月。ほのぼのとしたやさしい印象。

===

煌々と月上げてをり干魚棚   石巻市相野谷/山崎正子

海のいろ冬に構える色となり   多賀城市八幡/佐藤久嘉

一斉に蘆の穂絮の海へむく   石巻市小船越/三浦ときわ

紅葉かつ散りてにぎわう光堂   仙台市青葉区/狩野好子

着水の足しなやかに鴨四五羽   石巻市小船越/芳賀正利

謎解きに脳のざわめく冬の草   東松島市新東名/板垣美樹

新米の夕餉明るき家族かな   石巻市中里/川下光子

編隊を一機離れて天高し   東松島市矢本/雫石昭一

柿のれん蔵王連峰眼間に   石巻市吉野町/伊藤春夫

鉾鈴の煌めき放つ実南天   石巻市丸井戸/水上孝子

告知するせぬのあはひや露の玉   石巻市開北/星ゆき

満天星の紅葉散るときさらに燃ゆ   石巻市広渕/鹿野勝幸

急流に群れなす鮭の赤き肚   石巻市南中里/中山文

戻り鰹赤い切り身の満満と   石巻市門脇/佐々木一夫

廃村の駅のホームや神の留守   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

ばさばさと風に鳴るなり縮緬菜   石巻市蛇田/高橋牛歩

川柳(11/22掲載)

【水戸一志 選/評】

 アメリカの次期大統領となるジョー・バイデンさんは先週、78歳の誕生日を迎えた。◎一部に高齢を懸念する向きもあるが、堂々と老人力に期待するという。よく言ってくれた。さすがに川柳人である。長く生きてきたのは、賢くなるためだから。

===

◎ さあ出番バイデンさんの老人力   石巻市不動町/新沼勝夫

  被災地に悲喜こもごもの再稼働   石巻市あゆみ野/日野信吾

  再稼働やはり安全祈るだけ   石巻市蛇田/鈴木醉蝶

  ひとり言テレビにツッコミ多くなり   東松島市矢本/遠藤恵子

  風呂敷の便利な自負を持ち歩く   東松島市矢本/菅原れい子

  宇宙にもラーメン屋台できるかも   石巻市水押/阿部磨

  よだれ舐めうちの赤べこウオーミング   石巻市須江/市川つね子

  エンピツよペンよ尖って生きるべし   東松島市矢本/畑山講也

コラム:転石苔むさず

 かつて英国を旅した時、ビートルズの故郷リバプール(Liverpool)からほど近いマンチェスター(Manchester)を訪れました。世界史の授業で「イギリス産業革命の中心地」と習ったこの都市を、ぜひ見たかったからです。

 通りを歩いていたら、窓に家の写真を並べた店が。住宅の売買をする不動産屋(real estate agent)でした。「どれくらいするのだろう?」と価格を見比べて驚きました。同じ地域の場合、新築同然の家よりも、蔦(つた)に覆われた煉瓦造りの古民家に10倍近い値がつけられているのです。「古き良きものに価値を見出す」というイギリス人の気質について論じた本を読んだことがありますが、それを不動産屋の店先で知ろうとは!

 よく知られた諺(ことわざ)に「転石苔(こけ)むさず/苔を生ぜず」というのがありますが、これは" A rolling stone gathers no moss."(転がる石は苔を集めない。moss=苔)という古いイギリスの諺に由来します。

 川の中にある石など、転がり続ける石には苔が付かない...頻繁に住所や職業を変えたりする人は成功しないという、忍耐の必要性を説く言葉として使われていました。苔ができるためには長い年月がかかるものなので、伝統や歴史を重んじる保守的なイギリスならではの発想と言えましょう。

 一方、アメリカにおいては苔は否定的なものと考えられ、「活発に活動している人は、いつまでも古くはならない、新鮮だ」という全く逆の意味になります。伝統や歴史は古臭くて価値の無いものとする考え方は、かつて新天地を求めてアメリカ大陸に移住した人たちの革新的な精神を反映しているようです。

 ただし、英米の解釈の違いはあくまでも一般的なもので、厳密には個人や文脈によって変わることもあります。

 ちなみにローリングストーンと言えば、イギリスのロックバンドのローリングストーンズを思い浮かべる人も多いかもしれません。これはイギリス風の意味で、風来坊とか、職業不詳な人、あちこち転がり回る人、根無し草などの解釈でよさそうです。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)

短歌(11/15掲載)

【佐藤 成晃 選】

===

鳴く力無き機織(はたお)りの動くなく色鮮しきがことさら愛し  石巻市向陽町/後藤信子

【評】「機織り」は馬追(うまおい)とかスイッチョの仲間の昆虫である。その幼虫であろうか。まだ鳴く力もない幼さ。虫になったばかりで動く力もない。けれども、その色の新鮮さはは例えようがないのだろう。弱くて色鮮やかな幼虫に作者の視線は注がれている。「なく」(「無く」)が繰り返されて否定的な印象を強めて表現しながら「色鮮しき」という。強弱を計算されながらの作歌である。最後に「愛し」と作者の心情があからさまに述べられてしまったところが歌を弱めていないか。心情を隠しておいて「愛し」を漂わせてほしかった。

===

以後五年生きると決めておずおずとすこし重たき日記帳買う  石巻市恵み野/木村譲

【評】店頭に日記帳が並ぶ季節となった。作者は「5年連用日記帳」を買ったのだろうか。5年連用だから、これから先5年間の毎日を記入することになる。日記帳をレジに持っていくまで、「今後5年間生きられるか」と内心で反芻する。この時の気持ちはちょっと複雑だが、私もそんなことを経験しながら日記帳を求めて来た。自分の毎日を書くことは作歌のきっかけになるかもしれない、そんな効用を期待しながらの購入であったが、自分の人生を振り返る「よすが」としてはなかなかのものかとも思う。

===

ぼんやりと斎場への道思い出す彼岸花の赤揺れやまぬ道  石巻市羽黒町/松村千枝子

【評】誰か身近な人との別れの時かも知れない。彼岸花が赤く揺れやまないところから、昨年亡くした主人との別れが詠みこまれた一首だと判断した。あの一大事のさなか、作者の記憶に残ったものは多くはないだろう。落ち着いてみるとそんな季節の花があったかもしれない。いまになって鮮烈に思い出されたのだろうか。主人と別れたあの道を彩ったものは真っ赤な彼岸花だった。改めて立ち止まってはその色を脳裏に留めている作者像を想像したりした。

===

好物の柚味噌(ゆずみそ)なれど誤飲せしを今に思うも病みいし夫を  石巻市南中里/中山くに子

ボランティアの綴りしメモ紙捨てられず津波写真と共に八枚  石巻市大門町/三條順子

今は無い北洋漁業の鮭流し集結港の街の灯恋し  石巻市水押/阿部磨

群なして簗簀(やなす)に跳ねる落鮎(おちあゆ)の成瀬の川は秋深みたり  女川町/阿部重夫

稲刈りを終えた田んぼに青々とひこばえ生えて日をはじきおり  石巻市桃生町/三浦多喜夫

手も出せぬサンマの値札にたまげれば昭和の海が瞼(まぶた)に浮ぶ  石巻市駅前北通り/津田調作

大鍋にコトコト煮込むイチジクを何度もつまみ塩梅(あんばい)みるなり  石巻市水押/佐藤洋子

月光にソーラーパネルの照り映えて隣家は今宵宇宙船のごと  石巻市桃生町/佐藤国代

雁渡るいずこの塒(ねぐら)に帰るやらしばし見とれる山里(さと)の夕暮れ  石巻市飯野/川崎千代子

小刻みに運を使いて生ききしに傘寿になりて使いきる頃  石巻市門脇/佐々木一夫

水鳥の数増す日々や風寒し土手の坂道膝笑うなり  東松島市赤井/茄子川保弘

遠き日の吾子(あこ)のすがたに重なれり小学校の学芸会は  石巻市桃生町/米谷智恵子

川柳(11/15掲載)

【水戸一志 選/評】

 コロナ関連の耳慣れない片仮名語が続出し、振り回された一年。◎年末恒例の「今年の漢字」が、ソーシャルディスタンスの和訳から一字、なんてことにならないか。作者の心配も分かる気がする。主催者は「#2020年の漢字」を募っている。

===

◎ カタカナに今年の漢字じゃまをされ   石巻市開北/安住和利

  忘れもの戻るマスクの四度五度   石巻市渡波町/小林照子

  小遣いを減らす理由の俯瞰的   石巻市蛇田/菅野勇

  コロナには当地生まれのナノバブル   東松島市赤井/片岡シュウジー

  酒飲みにグチを言ってもわからない   大阪・岸和田市/善

  足場とれ姿を出したまきあーと   石巻市美園/澤谷昭子

  核のゴミ穴掘るところモグラいる   石巻市向陽町/佐藤功

  温暖化お節料理に忍び寄る   石巻市水押/阿部磨

コラム:男はつらいよ

 数多くの優れた映画の中で、日本および日本人を見事に描いているのは山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズではないでしょうか。

 主人公の渥美清に個性あふれる役者陣が加わり、人情あふれる笑いと涙の物語。さらに、私が心惹(ひ)かれるのは、寅さんの旅先の風景の見事な映像美です。

 当然、海外でも評判。「英語吹き替え版」がありますが、そのDVDは日本では容易に再生できないとのこと。そこで、「寅さん」をどう英語で表すのか、ちょっとだけ挑戦してみました。

 まずタイトルの「男はつらいよ」。ネットにある「全48作の英語版タイトルリスト」によれば、第1作「男はつらいよ」は" It's Tough Being a Man. "と英訳されています。(英文法で習った「 It is ... being ~=~であることは...だ」の構文)。tough(タフ=骨が折れる)はいいとしても、「つらいよ」という軽い雰囲気を出したい..." How tough being a man! "ではどうでしょうか?

 次に寅さんの常套句をいくつか。

 *「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又」。
  これは定番表現を用いて、
  " I was born and bred in Shibamata, Katsushika. "

 *「姓は車、名は寅次郎、人呼んで風天の寅と発します」
  " Family name is Kuruma, given name Torajiro.
   People call me Futen-no-Tora or Tora the Wanderer. "
  「風天」をどう訳すかは悩ましいところですが、ここでは wanderer(放浪者)としました。

 *「それを言っちゃあおしまいよ!」
  これは難問です。「おしまいよ」をどうするか...
  " You're spoiling every - thing if you talk like that! "
  (そんなふうに言ったら全て台無しになる)。
  あるいは、
  " That's going a bit too far. "
  (ちょっと行き過ぎじゃないか)

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)

俳句(11/8掲載)

【石母田星人 選】

===

山里ははにかむやうに薄紅葉   東松島市矢本/菅原れい子

【評】薄紅葉とは十分に色づく前のはしりの紅葉。そんな薄紅葉の本質をとらえようと、感情移入をして得られた言葉が中七の「はにかむ」。この言葉は人の様子や態度を表す際に用いられる。だが、この句では眼前に広がる薄紅葉の素晴らしさを表すのに使った。華やかに色づく直前に見せる静かな趣。まさにうってつけ。既成の表現から抜け出た一句になった。

===

秋の声津波を語る手話の指   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】「秋の声」は澄んだ秋に聞こえてくる物音。自然の音や人の声など具体的な音ばかりでなく、心に響いてくる秋の気配もいう。再開された語り部活動の光景だろう。震災遺構などで語り部さんの手話が語る津波。心に重く響くこの手話も秋の声のひとつだ。

===

浜茄子を一輪ゆらし今朝の冬   石巻市北上町/佐藤嘉信

【評】季語「今朝の冬」は立冬の朝のことをいう。咲き残った浜茄子が揺れて寂しげな空間だが、季語の効果できりっと身が引き締まり改まった気分になる。

===

よく笑ふ赤子健やか小六月   石巻市小船越/芳賀正利

【評】「小六月」は陰暦十月の異称。立冬すぎから真冬前の暖かな頃合いをいう。よく晴れて春のように暖かい日和には赤ん坊の笑顔がよく似合う。

===

熱気球の色も加はる初紅葉   東松島市新東名/板垣美樹

トランペット遠く流れて鰯雲   東松島市矢本/雫石昭一

残菊や千の佛の石となる   東松島市矢本/紺野透光

師の墓を訪へば俄に鵙の声   石巻市桃生町/西條弘子

秋天や三輪田陶器の深き藍   石巻市南中里/中山文

松手入はらりと池に浮かびけり   仙台市青葉区/狩野好子

ランナーの脚に絡まる秋の風   石巻市蛇田/石の森市朗

橡餅屋のれんを語る女将かな   石巻市丸井戸/水上孝子

曼珠沙華籠るに楽もありにけり   石巻市中里/川下光子

太すぎる母の指環や流れ星   石巻市開北/星ゆき

背の丈比べし柱秋思かな   石巻市広渕/鹿野勝幸

これ以上大きな鍋なし芋煮会   石巻市吉野町/伊藤春夫

スイッチョと鳴いてすがりぬ膝の上   石巻市門脇/佐々木一夫

刈ッ切餅供へ稲刈了りけり   石巻市蛇田/高橋牛歩

紅葉晴守護神在す階二百   石巻市中里/上野空

もみぢ葉のひと葉流るる小川かな   石巻市三ツ股/浮津文好

川柳(11/8掲載)

【水戸一志 選/評】

 ◎新米の味と香りがしっかり伝わってくる一句。最近はあまり聞かないが、米の字を分解して、収穫までに八十八回もの手間がかかると、農作業の大変さを言ったものだ。機械化とともに引き算が始まったが、米の味を噛みしめる幸せは変わらない。

===

◎ 噛むほどに八十八の手間の味   石巻市垂水町/かとれあ

  趣味ひとつ増やして錆びをよせつけず   東松島市矢本/菅原れい子

  リハビリ後チャリのペダルの軽いこと   東松島市赤井/くどうさきこ

  ハンコレス金釘流の名が映える   石巻市蛇田/梅村正司

  何だろうGoTo付けりゃ何でも可   石巻市湊/小野寺徳寿

  ガラケーを抜け出せぬ間に5G   東松島市矢本/川崎淑子

  漂着のクジラも骨格(ほね)で町おこし   石巻市鹿又/遠藤錬治

  腹八分 意識の違い 不十分   石巻市桃生町/忖度放恣