終戦直後に生まれた私にとって「アメリカ」は身近にありました。矢本(現東松島市)にあった駐留軍の「松島キャンプ」(Camp Matsushima)からジープに乗ってやってくる軍人さんたちの姿を幼心(おさなごころ)に覚えています。

 そして、物心ついた小学生の頃、アメリカン・ポップスなどとともにラジオから流れてきたのは、聞きなれない言葉・英語です。特に忘れられないのが「レディ・ファースト」(原語では ladies, first と複数形になります)。「アメリカやイギリスではこれが紳士のマナーなんだ」と子ども心に感心したものです。

 女性を丁重に遇する英米のありようの一つは、聖書の記述にあるように思われます。

人(アダム)はあらゆる家畜、空の鳥、あらゆる野の獣(けもの)に名を付けた。しかし、自分にふさわしい助け手は見つけることができなかった。そこで、神である主は人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、そのあばら骨の一つを取り、そこを肉で閉ざされた。神である主は、人から取ったあばら骨で女を造り上げ、人のところへ連れてこられた。人は言った「これこそ、私の骨の骨、肉の肉。これを女と名付けよう。これは男から取られたからである」(旧約聖書・創世記2)

 「助け手」は helper と英訳されていますが、ヘブライ語の原典では「面と向かって存在する者」「支え合う者」と記されていると、石巻山城町教会の牧師さんから教わりました。

 そう言えば、教会での結婚式では新郎新婦が対等な立場で向かい合い、誓いを立てますね。西洋において「男女平等」が重んじられている根本は、ここにあるように思えます。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)

俳句(2/21掲載)

【石母田星人 選】

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マンホールに魚の絵あり春動く   東松島市矢本/紺野透光

【評】カラフルに色付けされたマンホールのふた。その中で魚の絵が跳ねている。冬の間は雪に埋もれていたのか、この辺りを通っても見ることもなかった。久しぶりに見たら色彩が躍っていた。辺りを眺めると春めいた街。この魚の絵が街を春へと変えている。

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双六に少年火星描き足せり   石巻市小船越/三浦ときわ

【評】天文台に行くと、多くの少年少女に出会う。中には宇宙に魅せられたような子もいる。あの真剣なまなざしは頼もしい限り。掲句の少年も宇宙が大好きなのだろう。双六(すごろく)には盤もあるがこれは絵双六。その「上がり」に「火星に移住」とでも描き足したのだ。やる気満々の彼の号令で家族のこまが「振り出し」に並ぶ。火星を目指して出発だ。笑顔あふれる正月。

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大寒の漁火が闇深うせり   石巻市相野谷/山崎正子

【評】漁火が大寒の闇を造る。漁火の抒情性に寄りかかるとこんな読み。だが掲句はもっと深い。漁火のもとの人間、その労働に焦点を当てている気がする。

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お仏の螺髪に見ゆる明日の春   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】パンチパーマのような髪形が螺髪(らほつ)。高徳院の鎌倉大仏だろうか。大きな螺髪から春の気配が漂ってくるというのだ。視線を上げることで捉えた真実。

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紙漉女揺籠あやすにも似たる   東松島市新東名/板垣美樹

空海の摩崖絵に添ふ紙漉場   石巻市丸井戸/水上孝子

障子開け大寒の陽を招き入れ   石巻市小船越/芳賀正利

点々と子らの靴跡薄氷   東松島市矢本/雫石昭一

あたらしき靴の軽やか春隣   仙台市青葉区/狩野好子

妻を呼ぶ一声高し冬の鳥   石巻市門脇/佐々木一夫

初明かりはや北上川に鴎舞ふ   石巻市蛇田/石の森市朗

雪掻きの持場を分ける夫婦かな   石巻市桃生町/西條弘子

天ぷらの口に崩るるふきのたう   石巻市中里/川下光子

沖を向く黒きタンカー牡丹雪   石巻市向陽町/佐藤真理子

福は内この豆ジャックのものかしら   石巻市蛇田/高橋牛歩

福寿草落葉押しのけ花開く   石巻市桃生町/高橋冠

釣瓶井戸桶さかさまに雪まみれ   石巻市中里/鈴木登喜子

すばれる夜田畑の木々もねむり込む   東松島市矢本/菅原れい子

旅にあって湯宿の庭や松の雪   石巻市三ツ股/浮津文好

工場の煙まつすぐ初電車   東松島市矢本/菅原京子

川柳(2/21掲載)

【水戸一志 選】

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10年の鯰(なまず)でてきてご挨拶   東松島市赤井/片岡シュウジー

【評】震度6強。東日本大震災から満10年の春に、時と場所を狙い撃ちしたような大きな揺れだった。しかも10年前の余震だと言う。鯰には「ふざけるな」と叫びたい。それでなくても異常気象や不漁、コロナで大きなダメージを受けているのだ。

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老妻(つま)からのバレンタイン酒これ最高   石巻市蛇田/菅野勇

お地蔵さんそろそろ帽子ほどくかい   東松島市大塩/小野よし

五輪熱すっかり冷めてマー君へ   東松島市矢本/畑山講也

めんどうと箱から出ないお雛さま   石巻市須江/市川つね子

平熱で一日終える安堵感   石巻市築山/飯田駄骨

日足伸び白スニーカー履きおろす   石巻市蛇田/佐藤久子

クレヨンで描く絵はすべてマスク付け   石巻市蛇田/大山美耶紀

コラム:ジェンダー

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長職をめぐって、森元総理の「女性蔑視発言」が国内外のメディアで報じられ、SNS上で拡散。多くの女性が声を上げるとともに、「性差別」が大きな社会問題になりました。今なお「男尊女卑」の風土から脱却できない日本の姿を国際社会にさらけだす結果となったことは、極めて残念です。

 誰もが知っているように、英語で「男性」は man、「女性」は woman と言いますが、woman は wo+man と分解できます。この wo はどのような意味か、この機会に英語辞典の最高峰オックスフォード英語辞典・第2版(Oxford English Dictionary)を改めて参照すると、wo の語源は wife「妻」と記されています。つまり、man のパートナーというわけですね。

 ところで、今回のタイトル「gender」ですが、これが「性」に関連する「ジェンダー」というカタカナ語として日本語に定着し始めたのは、かなり最近のこと。「性」というと、どうしても sex を連想しがちですが、セックスが生物学的な性差を表すのに対し、ジェンダーは社会的・文化的な性差のことです。

 与那嶺涼子氏によれば「ジェンダー」は「(男性および女性が)『こうあるべき』姿として、それぞれが所属する社会や文化から規定され、表現され、体現されます。それは、服装や髪形などのファッションから、言葉遣い、職業選択、家庭や職場での役割や責任の分担にも及び、更に、人々の心の在り方や、意識、考え方、コミュニケーションの仕方にまで反映されます」(内閣府ホームページ)。

 ちなみに、gender の語源は「起源、種類」などを意味するラテン語 genus です。gene(遺伝子)、gcnre(フランス語=ジャンル、分野)などの語源も同様です。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)

短歌(2/14掲載)

【斉藤 梢 選】

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孤老とはいい言葉なり冬薔薇子や孫たちの荷物とならず   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】詠むことは、自らの心を見つめることでもある。「孤老」という言葉を知った作者は、「いい言葉」だと言う。独りで老いることの「独り」は寂しさを思わせるが、この一首には老いて生きることへの覚悟が詠み込まれていて、「冬薔薇」の姿が作者と重なる。寒さの中に咲く薔薇を心の中に見たのだろうか。「冬の薔薇」ではなく「冬薔薇」としたことで、「ふゆそうび」という音に、薔薇の華やかさよりも凜々しさと冷たさを感じさせる。自身の意志を確かめるようなこの歌は、作者の心にすっと直立しているようだ。

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冬すみれ立ち上がりたき形して庭の小道の足もとに咲く   石巻市桃生町/佐藤国代

【評】ささやかな感動を詠む。「冬すみれ」を見つけた時、小さな花に冬を生きいる懸命さを感じたのだろう。「立ち上がりたき形して」と表現した作者は、「冬すみれ」から生きる力を得たのかもしれない。かがんで見ている姿を想像できる「足もとに」。花を詠む場合、色や形を描写することも大切だが、この歌のように印象に言葉を与えることで、読者もまた、作者と感覚を共有することができる。

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風吹けば緑波立つ冬芹田凍てつく水に農夫は挑む   石巻市桃生町/高橋冠

【評】上の句、「緑波立つ」としたことで、見えない風の動きが見えるようだ。下の句の「挑む」に、冬の芹田での厳しい作業現実を知る。農夫の姿を見て詠んだ「挑む」は、この歌の要。生産者のこのような「挑む」があるからこそ、旬の芹は美味しい。

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ひたすらに昭和平成令和生き戦争震災の記憶は消えず   石巻市不動町/新沼勝夫

【評】「ひたすらに」の思いが一首全体にゆきわたるようだ。歌は人を語る。そして、経験は詠むことによって残る。かけがえのないこの歳月。下の句は、東日本大震災から十年になろうとしている今も消えない震災の脅威を伝え、追悼の思いをも切に語っている。

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己が分喰みて飛びゆく野鳥らの生きゆく術に毎朝会へり   石巻市開北/星ゆき

歩みつつ拾い集めた海の彩短歌(いろうた)に溶かして老いを楽しむ   石巻市駅前北通り/津田調作

白鳥の四羽が仲間の居ぬ場所へ不特定多数と会食せぬごと   東松島市矢本/川崎淑子

津波去り復興せし田に実りたる蘇生の稲や命尊し   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

そのむかし女子高ありてまぼろしの乙女ら匂う紅葉坂道   石巻市駅前北通り/庄司邦生

あたたかき言葉の温度は四十二度今日も歌壇を見たとふ電話   石巻市恵み野/木村譲

あの日より十年経ちて今も尚不明者捜す署員の苦労   東松島市矢本/奥田和衛

父逝きて四十年の星空にあの夜偲ばる一月二日   石巻市中央/千葉とみ子

今宵また活(い)きた証しの一人酒明日につなぐ命の弾み   石巻市わかば/千葉広弥

オオバコの踏まれるほどに強くなる散歩の効き目信じ踏む土   石巻市渡波町/小林照子

船(ふな)おろす海山五穀船霊に供えて祈る航海安全   石巻市水押/阿部磨

目が合ってじっとこちらを見つめてる真っ白猫はオブジェのように   石巻市丸井戸/高橋栄子

川柳(2/14掲載)

【水戸一志 選】

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コロナにも親分子分いるらしい   石巻市桃生町/高橋冠

【評】横暴極まりない新型コロナウイルスを反社会的勢力になぞらえるとは、残念ながらなるほどかもしれぬ。武漢で親分が生まれ、その後ヨーロッパやアフリカ、南米などで顔つきの異なる子分株が勢力を広げようとしている。闘うしかあるまい。

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鬼帰る寒い寒いもあと少し   石巻市渡波町/小林照子

被災地にマー君復帰元気づく   石巻市大街道/岩出幹夫

春漁の準備せわしいヘルメット   石巻市水押/阿部磨

草餅で春をシェアするおすそ分け   石巻市広渕/桂谷和子

国会は頭を下げる教習所   東松島市矢本/奥田和衛

地球上もぐら叩きの穴だらけ   石巻市蛇田/鈴木醉蝶

コロナ君和解しましょう何欲しい   東松島市矢本/斎藤勝彦

 バイデン新大統領の就任式では、恒例により国歌が奏でられました。軍楽隊の演奏とともに、Diva(歌姫)レディ・ガガ(Lady Gaga)が声高らかに歌い上げ、式は厳かな中にも華やいだ雰囲気に。

 この国歌はスーパーボウル(Super Bowl)などの大きなイベントで歌われお馴染みですが、歌詞については、よく知らないという方が多いのでは...(実は私も最近までそうだったのですが)。

 正式な名称は「星条旗」(The Star - Spangled Banner/スター、スパングルド・バナー〔pangled :散りばめられた〕)。

 1812年に勃発した米英戦争の史実に基づいています。1814年9月、ボルティモアのマクヘンリー砦での出来事。詩人のフランシス・スコット・キー(Francis Scott Key)は夜を徹して続いた英国海軍の砲撃に耐え抜いた砦の上に、星15個、縞15本の星条旗が翻っているのを目撃。すぐさま、その感動を書き留めたことに由来します。

 最初の部分だけ記すと...


 Oh, say can you see, by the dawn's early light,
 What so proudly we hailed at the twilight's last gleaming?

 おお、見えるだろうか、夜明けの薄明かりの中、我々は誇り高く声高に叫ぶ
 黄昏の最後の輝きに向けて

 「国歌」は英語で National Anthem(ナショナル・アンセム)と言います。anthem は元々は教会音楽の一種でしたが、特定の集団のシンボルとしての定番曲を意味するようになりました。

 "Ladies and gentlemen, National Anthem"と、開会式などで司会者の独特の渋い声が会場に響き渡ると、一瞬厳粛な気持ちになりますね。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)

俳句(2/7掲載)

【石母田星人 選】

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滴皆大河に集ひ春来たる   東松島市矢本/雫石昭一

【評】水滴はみな循環の旅に出る。山に降った雨は沢から大河に集い海に出る。やがて雲となって、再び山上に雨をもたらす。地下水も湧水となってめぐり、山や土の養分を運ぶ。この物質の移動が生き物の命を育む。水の循環によって生命が維持されているのだ。冬の芽からこぼれた一滴も、屋根から落ちる騒がしい雪解けの水もみな循環の旅に出る。特に春先の出立はごった返して大河も大混雑。さあ、春だ。

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泣初の赤子間もなく眠りけり   石巻市小船越/芳賀正利

【評】泣初は新年になって初めて泣くこと。赤子が泣いて眠ったという句だが、いつもと違ってその行為一つ一つがめでたく愛おしい。赤子は泣くのが仕事。この子はもう今年の初仕事を済ませた。立派な子だ。

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初松籟残月懸る不老山   東松島市新東名/板垣美樹

【評】夜明けの頃、山にはうっすらと見える月がかかっている。近くの松のこずえに吹く風は、新たな年のめでたさを深めてくれる。心が洗われる空間。

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ペン先の動き止めてや寒に入る   石巻市桃生町/佐々木以功子

【評】寒くてペンを握る手が動かなくなったのではない。文字を書いている途中にふと「きょうは小寒で寒の入り」と気づいたのだ。切字の「や」が効果的。

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立春のひかりとなりて少女舞ふ   東松島市矢本/紺野透光

踏み出せば空気の緩む御慶かな   石巻市丸井戸/水上孝子

久々の里の天神梅開く   石巻市南中里/中山文

からっぽを今満たしたき初暦   石巻市開北/星ゆき

神の子のわれも一人や初日の出   石巻市向陽町/佐藤真理子

凧あげへ加減しており河の風   多賀城市八幡/佐藤久嘉

六十階ポインセチアの窓の席   石巻市中里/川下光子

海の幸ひとつ足りずに雑煮椀   仙台市青葉区/狩野好子

三歳がわが家のスター雑煮食ふ   石巻市蛇田/石の森市朗

一月や核を許さぬ法成りて   石巻市広渕/鹿野勝幸

寒の月あくまで尖り肌に刺す   東松島市矢本/菅原れい子

雪しまき海に入りて眠りつき   石巻市門脇/佐々木一夫

大掃除終えて床屋の蒸しタオル   石巻市桃生町/高橋冠

初場所や和服姿の解説者   石巻市蛇田/高橋牛歩

一人より二人の孤独虎落笛   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

口喧嘩できる幸せ今日の寒   石巻市渡波町/小林照子

川柳(2/7掲載)

【水戸一志 選】

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銃社会マスクの方が身を守る   石巻市向陽町/佐藤功

【評】マスクは銃より強し。バイデンさんにぜひ伝えたいようなメッセージだ。生物の進化をたどれば、襲うものを倒す生き物は栄えなかった。身をくるんで耐えた種が長続きしている。核兵器だって、ハンカチ1枚の抵抗に勝てないだろう。

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ワイロ漬どんな味かと試したい   東松島市矢本/鈴屋純次

夢で弾く琴の調べに心晴れ   石巻市新栄/堀内ひろ子

譲れない権利を海の上に引く   東松島市矢本/畑山講也

赤々と夕日食べてる恐竜重機   石巻市井内/高橋健治

待っててね必ず行くよ縄のれん   東松島市あおい/添田潤

生かされてたくさんのドア開けてきた   石巻市あゆみ野/日野信吾

わくわくとGoTo読書何処へでも   東松島市矢本/遠藤恵子

 米ワシントンで1月20日正午前(日本時間21日未明)、ジョー・バイデン(Joe Biden)氏が第46代大統領に就任しました。国際秩序を混乱させ米国内の分断を深めたトランプ政権から、融和と結束を掲げる新しい政権へ。

 バイデン氏は就任演説(inaugural address)を次のように始めました。

" This is America's day. This is democracy's day. A day of history and hope. Of renewal and resolve. Through a crucible for the ages America has been tested anew and America has risen to the challenge."
「今日はアメリカの日です。民主主義の日です。歴史と希望の日、再生と決意の日です。厳しい試練の時を経て、アメリカが新たに試され、挑戦に立ち上がってきた日なのです」

 さらに続けて、

" We have learned again that democracy is precious. Democracy is fragile. And at this hour, my friends, democracy has prevailed."
「私たちはまたしても、民主主義は貴重なものだと学びました。民主主義は壊れやすい。そして皆さん、今、民主主義は勝利しました」

 そして、バイデン氏は結びに向けて次のように語りかけました。

" And together, we shall write an American story of hope, not fear. Of unity, not division. Of light, not darkness. An American story of decency and dignity. Of love and of healing."
「みんな一緒に、アメリカの物語を書きましょう。恐怖ではなく希望の物語を。分断ではなく結束、暗闇ではなく光の物語を。品性と尊厳、愛と癒しの物語を」

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)